32話  「闇色をした『王子』さま」  ◆caxMcNfNrg


「あ、あの……すいません。
 あなたは、このゲームに乗っている人……なんですか……?」
愛する女性の放った、その疑問に・・・テンカワ・アキトは暫しの逡巡の後、
「いや・・・」
と、短く答えた。

「よかった・・・ゲームに乗ってる人だったら、どうしようかと思いました・・・」
 アキトの答えに、ユリカが安堵の声を漏らす。
どうやら、こちらが誰であるかに気づいていないらしい・・・
(当然か・・・今の俺は、彼女の知るテンカワ・アキト・・・
 あの頃の俺とは、まったく雰囲気が異なっているからな・・・)
 その上、頭部がパイロットメットに覆われているのだ。仕方がない。
「・・・それでですね。
 よかったら私と一緒に、このゲームから脱出する方法を探しませんか?
 仲間が大勢集めて、あの化物を倒しちゃいましょう!」
アキトがそんな事を考えている間にも、通信機からの声は途絶えることなく続く。
「それに、私の仲間や貴方の知り合いだって、私達の事を探しているはずです。
 ですから、ここで諦めないで、皆で力を合わせれば・・・」
「仲間、か」
 オウム返しに呟いたその言葉に、ユリカは大きく頷いた。
「はい!私の仲間・・・私、ナデシコっていう艦の艦長なんですけど・・・
 その艦に乗っているクルーの皆・・・ルリちゃんに、メグミちゃんに・・・」
 元々の話から脱線し、ナデシコのクルーの名前をあげていくユリカ。
しかし、アキトはそれらの名前・・・そして何より、彼女の喋る言葉、
一つ一つに懐かしさと胸に溢れる何かを感じていた。
「それから、アキトが・・・私の大切な人が、きっと私の事を探してくれているはずです!」
「・・・・・・そうか・・・・・・」
「それに、貴方の大切な人たちも、貴方の事を探してるはずです。
 だから・・・私と一緒に頑張って、ここから脱出する方法を探しましょう?」
 彼女の言葉に・・・アキトはしばし、目を瞑る・・・そして・・・

「いいだろう・・・」
「それじゃあ・・・」
 歓喜の声をあげる最愛の女性を、通信機越しに見つめながら・・・黒衣の王子は言った。
「・・・君が大切な人の元へ帰るまで、俺が君の事を守り抜こう」
 その言葉に驚きの表情を浮かべるユリカ。
「・・・アキト・・・?」
 彼女の漏らした呟き――疑問は、誰に聞かれるでもなく、艦橋に消えた。




「・・・ところで貴方のお名前は?あ、私はミスマル・ユリカです!」
「俺は・・・・・・・・・ガイだ」
「・・・そ、そうですか・・・あの、良かったら着艦しませんか?」
「いや・・・・・・見回りもかねて、この艦の周辺空域で待機する」



【テンカワ・アキト 搭乗機体:YF-21(マクロスプラス)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:D-7
 第1行動方針:ユリカを守る(そのためなら、自分が犠牲になっても構わない)
 最終行動方針:ユリカを元の世界に帰す(そのためなら、どんな犠牲も厭わない)】

【ミスマル・ユリカ 搭乗機体:無敵戦艦ダイ(ゲッターロボ!)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:D-7
 第1行動方針:仲間を集める
 最終行動方針:ゲームから脱出
 ※1、YF-21に乗っているのがアキトだとは知りませんが、もしかしたらとは思っています
 ※2、アキトの名前はガイだと思っていますが、若干の疑問もあります】

【初日 13:20】


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