35話 「美しくない」 ◆T6.9oUERyk
蒼空の彼方に僅かな染みが一つ浮かび上がる。
少しずつ大きくなっていくそれを外部センサーを通して認識しながら、テンカワアキトは通信を開く。
「・・・こちらガイ、聞こえるか?」
『はい、こちらユリカ。感度良好です!』
「8時の方角からUnKnown一機接近中、かなりの高空を飛んでいる。」
『8時の方角ですか、こっちの計器は何も捉えてません。やはりレーダーは効いていない様ですね。具体的な高度・速度はわかりますか?』
「いや、こっちも光学センサーでしか捉えていない。もう少し近づかないと具体的な数値はわからないな。」
『・・・わかりました、ガイさんはそのまま当艦の直援で待機して下さい、通信可能距離まで接近したら私が交信してみます。』
「了解。」
通信が終了すると、テンカワアキトは無敵戦艦ダイの上空で旋回飛行を続けながら少しずつYF-21の高度を上げていく。
空戦では高度を取ることが大きなアドバンテージに繋がる。電波状況の極端に悪いこの“箱庭”では通信可能距離も限られてくるのだが、
そのギリギリの高度までは上昇しておくに越したことはない。
直下では巨大怪獣そのものと言った外観の無敵戦艦ダイが足を止め、二つの鎌首をもたげ接近する未確認機を待ち構えている。
そのまま、ジリジリと時間は流れる
美しき風の魔装機神“サイバスター”を駆るブンドルはゲーム開始から3時間以上経てようやく己以外の参加者に遭遇した。
「戦闘機か」
近づくにつれて少しずつ判明したその正体は、近代のジェット戦闘機のようだ。
「ふむ、美しい航空機ではあるが・・・」
彼の元居た世界にある戦闘機、あるいはその発展型程度の機体ならこのサイバスターの脅威ではないが、
全く未知の技術で作られた物なら警戒が必要だろう。
「まあ、あちらに交戦の意思は無いようだが。」
こちらが相手に気付いたように、相手もこちらに気付いているはずである。
その上で離脱も接近もせず定点旋回を続けるということは、相手には交渉の意思があるということだ。
その意思に応じ、ブンドルも一定の速度を保ちながらダークブルーの戦闘機に接近する。
あと少しで通信可能な距離まで近づき、ブンドルはふと戦闘機の下を見る。
「・・・・」
見る見るうちに不機嫌に顔になり、そして行き成り機体を方向転換。純白の神鳥は一気に速度を増し、北の空へと飛び去ってゆく。
「まったく、美しくない・・・」
接近してきたUnNnownはあと少しで通信が可能、というとこで突如方向転換、何故かそのまま凄い速さで北の方へ飛び去ってしまった。
『あれ、あれれ!?何で行っちゃうんですか〜?』
「・・・」
『どうしたんでしょうか?私たち何か不味いことしましたかな・・・』
「・・・」
テンカワアキトは眼下の巨大怪獣をYF-21の下部センサーで捉え
「ハァ・・・」
盛大に溜め息をついた。
【レオナルド・メディチ・ブンドル 登場機体サイバスター(魔装機神)
パイロット状態:不機嫌
機体状態:サイバードに変形、良好
現在位置:D-6
第一行動方針:美しくない機体(無敵戦艦ダイ)から離れる
第二行動方針:首輪の解除
最終行動方針:自らの美学に従い主催者を討つ】
【テンカワ・アキト 搭乗機体:YF-21(マクロスプラス)
パイロット状態:やや頭痛
機体状態:良好
現在位置:D-7
第一行動方針:ユリカを守る(そのためには、自分が犠牲になっても構わない)
最終行動方針:ユリカを元の世界に返す(そのためには、どんな犠牲も厭わない)】
【ミスマル・ユリカ 搭乗機体:無敵戦艦ダイ(ゲッターロボ!)
パイロット状態:首をひねっている
機体状態:良好
現在位置:D-7
第一行動方針:仲間を集める
最終行動方針:ゲームからの脱出
備考:YF-21に乗っているのがアキトだと知りませんが、もしかしたらとは思っています
アキトの名前はガイだと思っていますが、若干の疑問もあります】
【初日 15:20】
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