92話  「少女ハンター・ランドール」  ◆9NAb4urvjA



D-7に放送が流れそこを進む百式の中から肉が金属に叩きつけられる音が何度も何度も木霊する。
「クソ!あいつら人の命を弄びやがって!!」
「落ち着くニャ!マサキ!」
「そうだニャ!この状況ではオイラ…」
「俺は誓ったんだ!風の魔装機神操者になる以上誰も死なせねぇって!
 あんな思いは誰にもさせないって!」
彼の脳裏には両親のことやシュウ・シラカワの襲撃によって数多くの命を失った者達や
奪われた命に涙を流す人々のことが思い起こされていた。




「ニャラこんなところで油を売っている場合じゃないニャ!」
「!?」
「クロの言うとおりだニャ!」
そしてマサキは思い出す、何のために戦ってきたかを、いかなる思いを抱いて戦ってこれたかを。
「……ああ、そうだな。こんなところでクヨクヨしている場合じゃねえよな。
 すまねぇ、クロ、シロ」
マサキは傷ついた右手を握り締め決意を新たにする。
―――――もう絶対誰も死なせねぇ!!
「毎度のことニャ気にすることないニャマサキ」
「クロの言うとおりだニャ」

―――――それに……こんなところで立ち止まっていたらあいつらにも笑われちまうよな。
炎の魔装機神操者の説教を水の魔装機神操者の優しさを大地の魔装機神操者の笑顔を
自分についてきたパイロットを常に機体や己を見守ってきた人物を自分を兄と慕う少女を、
そして自分を取り巻くすべての人達のことを思い出す。
「絶対にあの化け物や殺しあいに乗った奴らをぶっとばしてラ・ギアスに帰るぞ!!」
「……マサキ、意気込みはいいけど…」
「…どうやってこんな所で人を探すつもりニャ?」
百式の中に寒い風が吹く。
「……なんとかならあ」
「にしてもここはどこニャ」
「この機体でギリギリの地下道ニャんて中途半端ニャ広さニャ」
現在彼らはC-7で見つけた地下道の入り口になぜか突入しそのまま進んでいた。
理由などない。あるとすればマサキが空も飛べない非可変機のMSで
サイバスターを追ったのが原因である。
「いくらなんでも空を行く相手を追って地下に行くなんて無茶苦茶ニャ」
「マサキの方向音痴ここに極まれりニャ」
「……うるせえ!」
そんな漫才を彼らがしていると突然轟音が唸る。
「なんだ!?」
地下道が揺れ中にいる百式とマサキ達はなすすべなく揺らされ続ける。
「うぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉおぉ!?」
「じじじじじじ地震かニャ!?」
「にににににに逃げるニャ!?」
だがこの状況では機体を動かすことすら叶わずに彼らは揺さ振られ続ける。





「あいててててて、コンソールに頭ぶつけちまった」
「生き埋めにニャらニャいだけましニャ」
「この状況じゃたいして変わらニャいけどニャ」
一時間程揺さ振られ続けたがなんとか彼らは生き残り辺りを見回す。
「……これじゃあ後戻りできないな…」
百式のメインカメラが背後を映す、
そこには通った道が完全に埋もれたありさまが映し出されていた。
「…前を行くしかねえか……」
前方の窮屈な一本道の通路に視線を向ける。
「ニャら今のまま敵に出会ったらお陀仏ニャから」
「あたし達が偵察にでるニャ」
マサキは少しの間逡巡したが
「気をつけろよクロ、シロ」
二匹に辺りの偵察を任せることにする。
コクピットハッチを開け二匹の猫がそこから出る。
「さて、俺は機体の調子でも診るか」
そうしてマサキは百式の計器を調べ始めた。




「クソ!あちこちの装甲と関節がボロボロじゃねえか!」
二匹の使い魔が彼のもとを離れている間、マサキは機体を内外からざっと調べると天井から
落ちてきたコンクリートなどの塊や破片により金色の全身はその美しさを失っており、また
機体のダメージが予想以上に酷いということが判明した。
だが、資材もなく整備士でもない彼は直すあてもなくただ苛立ちを募らせるばかりである。
そうしているとマサキの耳に足音が聞こえてきた。
「お〜い、マサキ〜」
「遅えぞシロ……クロはどうした?」
「それが大変ニャんだニャ!
 オイラ達がこの先を偵察していると怪我した女の子を見つけたんだニャ!」
「ああ!?何だと!!」
「他にも、めちゃくちゃばかでっかい恐竜が地上を徘徊していたニャ」
「恐竜だと!?」
「とにかく急ぐニャ!今クロがみてるけど女の子は怪我してて息が荒かったニャ!」
「分かった!今すぐ行くぞ!」
そうして一人と一匹は百式に乗り込み先に進む。



「ここニャ!この亀裂の中で見つけたんだニャ!」
百式が通路を進んで五分もしないうちに目的地に到着した。
迷わなかったのは道が一しかないからである。
天井から遠くはない位置にある亀裂の中を覗き込むとはたしてそこには気を失っているらしい
少女と黒猫がいた。
「クロ!容体は!?」
「あ!マサキ!この子、出血とかはしてないけど右足が折れてるニャ、
 すぐに手当てした方がよさそうニャ」
亀裂の中からクロが顔を覗かせる。その亀裂はそこから延びる折れた水道管が地面に
接してはいるものの人が進めるようなものではなく。
また、亀裂も猫が通れるようなものであり、人間が通ることは不可能であった。
「チッ!これじゃあ運びこめねぇ!…仕方ない少々手荒だが…クロ!気をつけろよ!」
そうして百式の両手で亀裂を押し広げ、あっさりと壁は崩れ穴が広がる。
「操縦頼んだシロ」
「了解したニャ」
マサキは操縦をシロに任せ百式の掌に乗り穴まで運ばせる。
そして壁にもたれかかるピクリとも動かない少女の側に屈み込む。
「ミオぐらいの年齢……か?」
「10代後半ぐらいってとこじゃニャいのかニャ?」
とりあえずは、そこにあった鉄パイプとハンカチで折れた足を固定する。
「……う〜ん……」
「気が付いたか?」
「……バカロランの…意気地なし……」
寝言らしい。
「たく、ミオといいこの女といいもうちょっとマシな寝言は言えねぇのかよ」
文句を言いながらもゆっくりと抱きかかえる。すると何か小石のような物が落ちる音がした。
「なんだ?」
「小石ニャ」
マサキがクロを見ると小石を突っついていた。
「そんなもんほっとけよ」
「そうもいかニャいニャ。この子が持っていたものだしニャ。
 案外マサキがウェンディにプレゼントしたみたいに誰かからの贈り物ニャったりして」
「茶化すな。そう思うんなら拾っとけ」
そのままクロは石を銜え、二人と一匹は百式の掌に乗りコクピットまで運ばれる。
そうしてコクピットに潜り込み医療キットを使い少女に簡単な手当てを施す。
「とりあえずはこれでよし、だな」
とはいえ、医者でないマサキでは満足な治療もできず、
またそのことを彼自身も自覚していたため憤りを感じたが今はここから脱出するのが
先だと思い、少女に振動を与えなぬようゆっくりと百式の足を進める。
そして天井を見上げる。


「待っていろ!恐竜だか怪獣だか知らねえが後でぶっとばしてやらぁ!!」



【マサキ・アンドー 搭乗機体:百式(機動戦士Ζガンダム)
 パイロット状況:良好、シロとクロも健康
 機体状況:外見がボロボロ、機体各部の装甲や駆動系にダメージ、現在低速で移動中
 現在位置:D-7地下道
 第一行動方針:地下道からの脱出
 第二行動方針:少女の身の安全を確保したい 
 第三行動方針:サイバスターを追いたい
 第四行動方針:サイバスターを邪悪な者には渡さない
 第五行動方針:味方を集める
 第六行動方針:恐竜を倒す
 最終行動方針:ゲームからの脱出またはゲームの破壊
 備考:謎の小石はクロが銜えています。
     地下道はマサキ達が確認できている範囲では一本道です。
     マサキ達がどこに出現するかは次の書き手に任せます】


【ソシエ・ハイム 搭乗機体:百式(機動戦士Ζガンダム)
 パイロット状況:睡眠中、右足を骨折、疲労大
 機体状況:良好
 現在位置:D-7地下道
 第一行動方針:休息をとる
 第二行動方針:新しい機体が欲しい
 第三行動方針:仲間を集める
 最終行動方針:主催者を倒す
 備考:右足は応急手当済み】

【初日 20:30】


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