128話B「『未知』と『道』」
◆C0vluWr0so
ユーゼスからの通信から数分後、ベガは待ち合わせ場所に到着した。
それから遅れること更に数分、ユーゼスも到着。
しかし……ユーゼスの乗機は、ベガの見知らぬ物に変わっている。
どこか禍々しさを感じさせるその姿に、ベガは不安を覚えながらもユーゼスへと通信を入れた。
「ユーゼス、今のところ基地に近づく人間はいませんでした。そちらはどうですか?
どうやら、機体が変わっているようですが……」
「上々だ。機体に関しては……探索の途中でこの機体を発見した。
この機体の名は……『ゼスト』だ。どうやら我々の来る前から此処にあったようだ。
既にパイロットは死亡していたが、この機体には自己再生能力があるらしい。戦闘には問題ない。
メリクリウスの防御力は魅力だが、この機体の方が総合的に優れている」
ユーゼスの言葉に納得しながらも、どこか受け入れることが出来ない自分がいることにベガは気付く。
あくまで自分たちの乗機は兵器に過ぎない。生きるか死ぬかの瀬戸際で、たかが道具にこだわってはいられない。
それでも、ユーゼスの行動は余りにも合理的すぎる。まるで感情が欠落しているかのように。
中尉の愛機だというアルトアイゼンを乗り捨てたときもそうだ。
自分も反対はしなかったが、機動兵器乗りにとって、自分の愛機とは家族のようなものだ。
あそこに乗り捨てていったことで、中尉との関係の悪化を招いていたかもしれない。
けれど、ユーゼスは他者との関係に全く気を払っていない。カミーユに敵視されようと、まるで他人事のように振る舞っている。
「それともう一つ報告しておくことがある。
メディウスをチェックしてみたところ、OSに細工の跡があった。
カミーユには黙っていた方がいいだろうが……カズイの仕業だ」
「――! 彼が、メディウスの乗っ取りを謀ったと? 中尉はそのようなことは言っていませんでしたが……」
「不器用な男だということだ。カミーユとの衝突も避けられただろうに……死者の悪行を自己の正当化の理由には使えない、といったところだろうか」
「……二人が戻ったときに、私の方からそれとなく話してみます。
カミーユには信じ難いことかもしれませんが……
それでユーゼス、話したいこととは?」
ようやく話が本題に入り、ユーゼスは機体から降り、ベガにも同様に降りるように促す。
ベガがユーゼスの側まで近づいたところで、ユーゼスはベガに数枚の紙を差し出した。
「これは?」
「黙って見てくれればいい。重要な案件だ」
その紙には、こう書かれていた――
――――――――――――――――――――――――――
盗聴の危険性を考え、口頭ではなく紙を用いて情報を伝える。
おそらく今後も重要な話題に関してはこの形式を使うことになるだろう。
紙を使ったのは緊急時の隠滅のしやすさを考えてのことだ。
いざというときには即座に破棄することを徹底しろ。
今回伝えたいことは、「首輪」に関する情報だ。
私たちが所持している首輪は二つ――それに加え、各自の首の数だけあるわけだが、ここでは無視しよう。
この二つの首輪を回収したことで、私たちは幾つかの情報を得ることが出来た。
参考までにだが、それを基にした私の推論も書いておく。
◆事前にアルフィミィから得た情報
・首輪の爆破条件について
→禁止エリアへの侵入
→首輪を外す行為、及び強い衝撃
→24時間以上死者が出ない
一つ目と三つ目に関してはアルフィミィの言葉をそのまま信じるしかない。
だが、二つ目に関しては違う。基地で回収した、半壊の首輪。
壊れるほどの衝撃を与えたにも関わらず、首輪は爆発していない。
それに加え、あれほどの損傷を受けているため、容易に首から抜け落ちる。
つまり、この首輪は、首輪を外すという禁止行為にも抵触している。
・何故この首輪は爆破されなかったのか?
→首輪には更に複雑な爆破条件がある?
→例えば死亡後は爆破せず?
→明らかに死亡するようなダメージには敢えて反応せず?
(アインストならば個々人の耐久力も熟知している可能性大)
この問題に関しては私たちが知らない首輪のメカニズムが存在しているはず。
現段階では特定は不可能だが、そのメカニズムを逆手に取れば首輪解除に利用可能?
◆首輪に付いた赤い宝玉
・宝玉の有無で首輪に変化?
→中尉の話から首輪の制御装置の可能性も
中尉の話を聞く限り、この赤い宝玉はアインストの技術によって作られた物。
宝玉の破壊で変質した機体が元に戻るといった事例もある。制御装置の可能性大?
優先して調査の必要有り。
・B-5で回収した首輪
→宝玉があるにもかかわらず通常の首輪とは異なる形状
→制御装置である宝玉が暴走?
→時間の経過と共に形状の変化は続いている
この首輪はイレギュラー的存在? 宝玉の暴走だとしても何らかの外部的要因は存在するはず。
今後の変化によっては爆弾としての機能を停止する可能性有り。変化を逆算することでオリジナルの推測も?
◆首輪解除に関しての今後の方針
・内部の解析と赤い宝玉の機能解明
→半壊した首輪から内部機構を確認可能
→変質済み首輪の変化次第で宝玉の機能解明?
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◆アインストの目的と今後の我々の行動方針
・アインストの目的は?
→過去のそれと変わっていないのなら人間という種の観察?
→人間という種の抹殺を目的にするには非効率過ぎる
観察というなら首輪が適任ではある。首輪から生体情報を取得しているのなら、それが首輪爆破の条件に関与の可能性も。
たかだか数十人を殺すだけならばこのような大がかりな舞台を用意する必要も無い。
異なる世界から人間を集めたのは多様性の確保のためか?
・我々の最終目的
→可能ならばアインストの打倒。最低でも脱出
→出来る限り多くの人間を救出
・脱出について
→四方を囲まれた空間(調査の必要有り)
→脱出しても再び連れ戻される可能性(やはり打倒は必須か?)
まずは首輪の解除と同時進行で同士を集める必要有り。
出来れば首輪の解除、この空間の調査、殺人者の撃退、他者の保護を複数のグループで分担。
この殺人ゲームに乗った人間に対抗するための戦力は必須。
・今後の方針
→重要な拠点である基地を守りながら他者と接触
→ある程度の人数が揃った時点で複数のグループに分け各自で行動
――――――――――――――――――――――――――
「まだ足りない部分はあるが、今後の指標にはなるはずだ」
「さすがですね、ユーゼス! 何時の間にここまで考えてたのかしら」
「それはあくまで予想であり、決して真実ではない。重要なのはその場その場での判断だということを忘れてもらっては困る」
「ええ、分かっています。ですが……これは私たちの希望となりうるものです」
ユーゼスを真っ直ぐ見つめ、大きく頷くベガ。彼女は考える。
……彼は確かに誤解されやすい。けれど、その願いは……生きて帰ろうとする意志は同じなんだと。
彼の無神経な振る舞いが仲間との衝突を招くかもしれないが、そこは自分が上手くフォローしなければならない。
それが仲間としてしなければいけないことだ。ユーゼスも私たちの仲間なのだから。
そして彼女は確信する。
……ユーゼスがいれば、必ず生きて帰れる。
我が子のことを、思う。帰らなければいけない。死ぬわけにはいかない。
今の彼女にとって……ユーゼスは、まさに『道』に見えた。
【ユーゼス・ゴッツォ 搭乗機体:メディウス・ロクス(スーパーロボット大戦MX)
パイロット状態:良好
機体状態:第二形態へ移行完了 良好
現在位置:G-6基地
第一行動方針:半壊した首輪の解析
第二行動方針:AI1の育成、バーニィへの『仕込み』
第三行動方針:首輪の解除
第四行動方針:サイバスターとの接触
第五行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒
最終行動方針:主催者の超技術を奪い、神への階段を上る
備考1:アインストに関する情報を手に入れました
備考2:首輪を手に入れました(DG細胞感染済み)
備考3:首輪の残骸を手に入れました(六割程度)】
【ベガ 搭乗機体:月のローズセラヴィー(冥王計画ゼオライマー)
パイロット状態:良好(ユーゼスを信頼)
機体状態:良好
現在位置:G-6基地
第一行動方針:G-6基地の警護
第二行動方針:首輪の解析
第三行動方針:マサキの捜索
第四行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒
最終行動方針:仲間を集めてゲームから脱出
備考1:月の子は必要に迫られるまで使用しません
備考2:ユーゼスの機体を、『ゼスト』という名の見知らぬ機体だと思っています
備考3:ユーゼスのメモを持っています】
【バーナード・ワイズマン(機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争)
搭乗機体:なし
パイロット状況:頭部に軽い傷(応急処置済み)、後ろ手で柱に縛りつけられている
現在位置:G-6基地地下発電所
機体状態:
第一行動方針:ユーゼスに協力するのか選択
最終行動方針:生き残る】
【メリクリウス(新機動戦記ガンダムW)
機体状況:良好
現在位置:G-6基地内部】
【二日目3:30】
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