26話「Power trip」
◆vQm.UvVUE.
何処とも知れない空をプリベンターウインド
ゼクス・マーキスの駆る黒いの機体が行く。
不思議、いや不自然な体験か。
あのドームで気づくまで、たしかに自分は火星に向かうシャトルにいたはずだ。
まるでビデオのコマを飛ばしたかのように、シャトルの中からあの場所に移動していた。
そしてあの場所で頭に響いてきた声。
「神だとでも言うのか」
神―――――或は悪魔か、あの異形を見るに後者の公算が高いが。
数十名の異なる人間を本人にすら気づかれる事なく一瞬で移動させこんな首輪をはめる。
さらにあのテレパシーのような能力に加えこの空間を作り上げた力。
常識では考えられない減少だ。
そこで自嘲する。
「そんな事を考えている場合でもないか」
今考えなければいけないことは一つ。
どうやってこのキルゲームを終わらせるかだろう。
ゲームに乗り勝者になる?
論外だ、あのスーツの男の言葉どおり、このゲームに乗る道理などない。
例え結果それで自分が死ぬ事になってもだ。
だとするならばすべき事は一つしかない。
この首輪をどうにしかして、このゲームからの脱出またはあの怪物の打倒、それ以外はないだろう。
あの怪物を倒す、限りなく難しい事だが不可能ではないだろう。
あの空間で見た限りではこのゲームに乗ろうとする人間は少なかったように見えた。
そういった者達と協力できれば或は。
そして機動性が高く武装は少ないが遠近万能なこの機体が与えられた事も幸運だった。
(接近専用のソードに強力なライフル、そして高機動か、トールギスを思い出すな)
機体の色は真逆だがこの機体はゼクスに良く馴染んだ。
これならば万が一ゲームに乗った参加者と戦う事になろうとも
そう簡単に遅れをとる事はないだろう。
(なるべくなら戦闘は避けたいところだが)
そんな彼の思いを裏切るかのようにすでに戦端は開かれていた。
「やめろよ!こっちには戦う気なんてないんだ!」
プラネットディフェンサーを展開させカミーユが叫ぶ。
しかし相手は取り合おうともせず、猛攻を続ける。
本来ならば勇者が乗るべきスーパーロボット。
だが、今それに乗る男は勇者などとは程遠い男だった。
「ひゃぁ〜ははははははぁっ!こいつはいいぜ、この力があればエイジの野郎だってぶっ殺してやれる!」
本来は勇者がいるべきそこで、ゴステロは凶笑をあげる。
「ありがたい事だぜ!俺にこんな力とこんな舞台を用意してくれて、おまけにプレゼントまで貰えるなんてようっ!」
スターガオガイガーの圧倒的な力が徐々にメリクリウスの鉄壁を崩し始める。
「くそっ!俺はこんなところで死ぬわけにはいかないのにっ!」
焦燥するカミーユ、このままでは落とされるのも時間の問題だ。
そこにオープンにしていた回線から通信がはいり、それとともに漆黒の機体が現れる。
「こちらプリベンターウインド、そこの二機、すぐに戦闘を停止するんだ!」
聞きなれない男の声、しかしどうやらこのゲームには乗ってないようだ。
「こちらカミーユ・ビダン、一方的に仕掛けられてるんだ!俺はこのゲームに乗る気はない!」
少しの間。そして再び相手から通信が入る。
「了解した、これからそちらを援護する」
そう答えるやいなや漆黒の機体はスターガオガイガーに対して攻撃を開始した。
「たかだか一体増えたところで、この俺様に勝てると思っているのかよっ!」
ゴステロは笑う、事実新しく現れた黒い機体をも、スターガオガイガーは圧倒していた。
相手からの攻撃はプロテクトシュードで弾き、すぐさまブロウクンファントムで反撃に移る。
速度では相手が圧倒するががパワーが違う。
「まさかこれほどの機体があるとはな!」
ディバイデットライフルを撃ちながらゼクスはそう一人ごちる。
今自分が乗るメディウス・ロクス、通信を受けたカミーユという少年が乗るメリクリウスはまだ分かる。
だが、対峙する敵は圧倒的だ。今乗っている機体が乗りなれたエピオンだったとしても勝てるかどうか・・・
「彼が離脱する隙ぐらいは作りたいものだが」
現状ではジリ貧だ。
カミーユも頑張っているがメリクリウスのエネルギーが何処まで続くか怪しい。
せめて、もう一人味方がいれば隙を作る事ぐらいは出来そうなものだが。
そこにメディウスのレーダーに反応が起こった。
「接近する機体が二つ?」
ややゆっくりとしたスピードでその機体は接近してくる。
「様子見だとでも言うのか?しかし、有り難い」
そう呟くとゼクスは一気にメディウスをスターガオガイガーに接近させる。
無論ゴステロも接近する機体には気づいていた
だが、彼はそれを一笑に付した。
今更、どれだけ増えようとも関係ない、今の自分は誰にも止められない。
「ひゃーっはははっ!いいぜぇ、まとめて殺してやるよ!この俺様がな!」
が、現れた金色の機体を見た瞬間、一瞬思考が停止する。
「ザカールだとぉっ!ル・カインの野郎もいやがるのか!」
しかし、地を行くその機体はカラーこそ同じだがザカールではない。
そして一瞬の隙を突き、ゼクスのメディウス・ロクスが迫る。
「あめぇんだよ!」
すぐに接近する機体がザカールではないと判断したゴステロが
再びブロウクンファントムをカウンター気味に放つ。
次の瞬間、ゴステロの眼前、プラネットディフェンサーにより停止するブロウクンファントム。
「お前は生きてちゃいけないんだよ!」
上空から今まで防御に徹していたカミーユのメリクリウスのビームソードが
「これで終わりにさせてもらう!」
正面からメディウス・ロクスのコーティングソードが迫る。
「チィィィィィッ!」
一瞬の反応で身を引かせるが二人のエースの攻撃は確実にスターガオガイガーの装甲を切り裂いた。
「畜生!ここは分が悪いか、いいか!てめぇ等はこの俺様が確実に殺してやるからな!覚えてやがれ」
オープンチャンネルでそう叫ぶと、ゴステロはこの場から飛び去った。
「何とか凌いだようだな」
「ええ、正直駄目かと思いましたが」
相手が後から現れた二機に気をとられなければ、やられていただろう。
ゼクスは、新たに現れた金色と緑のMSに通信を入れる。
「君達のおかげで助かった、感謝する」
少しの間の後、なぜか怪訝そうな声で二人の少年の声が聞こえた。
「え?何だって?」
「僕達、道に迷ってただけですけど」
【ゼクス・マーキス 搭乗機体:メディウス・ロクス(スーパーロボット大戦MX)
パイロット状況:健康
機体状況:良好
現在位置:C-5
第一行動方針:味方を集める
最終行動方針:ゲームからの脱出、またはゲームの破壊】
【カミーユ・ビダン 搭乗機体:メリクリウス(新機動戦記ガンダムW)
パイロット状況:やや疲労
機体状況:EN残量少
現在位置:C-5
第一行動方針:ゲームに乗っていない人間を探す
最終行動方針:ゲームからの脱出】
【カズイ=バスカーク 搭乗機体:百式(機動戦士Zガンダム)
パイロット状況:良好
機体状況:良好
現在位置:C-5
第1行動方針:街の方に向かおうとしていた
最終行動方針:生き残る】
【マサキ=アンドー 搭乗機体:旧ザク(機動戦士ガンダム)
パイロット状況:良好
機体状況:良好
現在位置:C-5
第1行動方針:街の方に向かおうとしていた
最終行動方針:ゲームからの脱出】
【ゴステロ 搭乗機体:スターガオガイガー(勇者王ガオガイガー)
パイロット状況:興奮状態
機体状況:EN減少、胸部と頭部に損傷
現在位置:D-5
第一行動方針:エイジ、ゼクス、カミーユを殺す
最終行動方針:生き残り優勝】
【初日:12:55】
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