29話「ウルズ6」
◆Onlx.bOl5I


「スナイパーたるもの………狙撃地点は選ばねぇけどな」
クルツは、機体を走らせていた。
広域散布兵器のファランクスミサイルや弾道誘導兵器リニアミサイルランチャー、
超射程大火力の折畳式戦車砲Fソリッドカノン………重戦車のようなこの機体は、
接近戦を苦手とするクルツにとっては、とてもありがたい機体だ。
しかも、この機体は、汎用兵装接続ラックがいくつもあり、撃破した機体の重火器類を携行出来そうな感もある。
まさに歩く火薬庫だ。
だが、機体がいいからと言ったところでクルツは満足しない。
「同時に狙撃屋は現実主義者でな……一度狙撃した地点からは二度と撃ちやしない」
クルツが砲撃を行ったのは、B−2の砂浜。その砂浜にただ一つあった、機体が隠れるほどの岩。
その岩陰から、砲撃を行ったのだ。
「セオリーなら東に逃げるが………」
クルツは南に真っ直ぐむかっていた。
確かに、東に行った方が草原や森が近く隠れる場所は多い。だが────
セオリーとは誰しもが知っているもの、常識のことだ。一流の傭兵、超一流のスナイパーならその裏を掻くことも時にはまた必要なのだ。
「───さぁて、どうすっかな」
クルツの考えはこうだ。
まずこのゲームの一番ベストな終らせ方はなにか?──それは、全員が無事に元の世界に帰還し、このゲームを無かったことにすること。
一番ダメだが、最低限の終らせ方は?───自分だけが生き残る、つまりゲームに乗ることだ。
「──ゲームに乗ってない参加者を探す。そいつらに協力し、この糞ふざけたゲームをぶち壊す。
 ──旗色が悪いようなら、裏切って皆殺しだ」
傭兵は現実主義者だ。特にスナイパー───狙撃屋は。




B−2とB−3の境目───
どうやら賭けには勝ったらしい。レーダーには、さきほどの赤い悪鬼の反応はない。
クルツは、そのまま南下しようとした。
「ん………?」
空気が、空間が震えている。ちょっと先の空間が目に見えて歪む。
「……何だ?」
────シャッ!
奇妙な音がしたかと思うと………蒼のアンチボディと、禍々しい巨人が姿を現した。
「ッつ!」
とっさにクルツは、ファランクスミサイルの一斉掃射シークエンスを作動、
効果範囲をアンチボディと巨人の半径50mほど、ちと狭いがその分収束させたミサイルの嵐を浴びせかける。
「っくぅ…………!」
バシュシュシュシュシュシュ………!
ミサイル発射。軽減されたとはいえ、発射の反動は容赦なくコクピットを襲う。
「…………」
───シュゥゥ───ドガガガガガガァァァン!!!
全弾、命中。煙が巻き上がる。
クルツは思う。ミサイル発射は控えよう。吐く。
それに………
「どうせ───効きやしなかったんだろ」
煙の中から、蒼のアンチボディが、───生命の力を秘めた障壁を展開させ───現れた。
「いきなり何をするんだ」
若い女の声。抑揚の無い、感情を抑えた声。
(おほっ、可愛い声じゃないの……声はな)
「び、びっくりした………」
巨人からも声、こちらは──なんだ、男か。
とにかく、状況を整理しないといかん。
ウルズ2もウルズ7もいない───これは、俺一人だけの"ミッション"なのだ。
「一つ聞く………アンタら、このゲームに乗ってンのか?」
「このゲーム?」
クルツの疑念に、蒼のアンチボディのパイロット───アイスドール、グラキエースは、
心底不思議な感情を込めた声で答えた。
「私は、ジョシュアを探してるだけだ」


【クルツ・ウェーバー 搭乗機体:ラーズアングリフ(スーパーロボット大戦A)
 パイロット状況:冷静、アンチボディの出現にちょっと驚き
 機体状況:Fソリッドカノン一発消費、ファランクスミサイル1/3消費
 現在位置:B-2南端
 第一行動方針:アンチボディのパイロットと話す
 第二行動方針:ゲームをぶち壊す
 第三行動方針:駄目なら皆殺し
 最終行動方針:ゲームから脱出】

【グラキエース 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード)
 パイロット状況:健康、冷静
 機体状況:チャクラシールドがあったので、無事。バイタルジャンプによりEN1/4減少
 現在位置:B-2南端
 第一行動方針:西に行く
 最終行動方針:ゲームから脱出】

【アルバトロ・ナル・エイジ・アスカ 搭乗機体:フォルテギガス(スーパーロボット大戦D)
 パイロット状況:びっくり。腰を抜かしている?
 機体状況:無事。ENを少し浪費。
 現在位置:B-2南端
 第一行動方針:この場はラキに任せる
 最終行動方針:ゲームから脱出】

【初日 14:30】


NEXT「仮面の作戦会議」
BACK「Impact of The Red」
一覧へ