68話「引き合う風」
◆y12NUCIPVs
D−5の北部平原に白く輝く機体とその前に佇む人影があった。
「ふう、やはりこの機体は美しい。醜いものによって傷つけられた心を癒すには、やはり
美しいものを見るのが一番だな」
そう呟きながら、サイバスターに魅了されているレオナルド・メディチ・ブンドルは振動
を感じ自分に近づく機体に気付きコックピットに入り、三機の機体の内一機に見入った。
「ふむ、他の二機はともかくあの金色の機体。見る者を魅了する金色、そしてそれに劣ら
ぬ流線的なフォルム、シンプルな造形美。そして、百年その美しさを保つように
両肩に刻まれた文字。おお…美しい」
そう感動しながら離れたところで止まった三機の動きを待つことにする。
最悪だ。D−4の補給ポイントに向かう途中に圧倒的な力を持ち立ちふさがる機体を見て
マサキ=アンドーはそう思った。
あの純白の機体を俺が見間違えるものか――――
「マ、マサキ」「あ、あにょ機体は」
「ああ、分かってるぜ。クロ、シロ」
「あの機体を知っているのかマサキ?」
カミーユ・ビダンが彼の異変に気付き尋ねる。
「ああ、知っているぜカミーユ。あいつはサイバスター、高位精霊と契約したラングラン
を守護する四体の魔装機神の内の一体だ」
「な、なら、に、逃げようよ」
彼の言葉を聞いたカズイ=バスカークは既に逃げ腰である。
「無理だ、風の魔装機神のスピードはこっちの三体を軽く凌駕するし、パワーもフルカネ
ルリ式永久機関を積んでるから先刻のには劣らねぇ。それに自分を中心として周囲の敵を
破壊する広範囲攻撃のサイフラッシュ、一発限りだが戦艦もぶっ壊すコスモノヴァ。接近
戦にはディスカッターが装備されている」
「聞いている限りでは死角なしの機体だな」
「まさか、あの機体に開発中のMSZ-010以上のスペックがあるなんて」
二人のエースパイロットにとっては戦局を変える機体は知っていても信じがたい話
だが、先刻の黒い機体のような例もあり彼が信用に値する人間だと判断できるので
彼の言葉を信じ純白の機体をより一層警戒する。
「で、でも、マサキさんが先刻言ってたようにそんな選らばれた勇者しか乗れないような
機体なら悪い人が乗ってるわけじゃ」
「いや、ゲアスつぅ強制魔法を使えば不可能じゃねぇ。あの化け物かあいつが使ったかは
わからねえがな」
マサキの脳裏にはかつて大地の魔装機神ザムジードが焔のゲアスに制御された光景が思い
浮かべられた。
とはいえどういうことだ?あいつの声が聞こえねぇ―――――
あのときにも聞こえた魔装機神の苦しむ声が聞こえないのが気になった。とはいえあの時
よりは遠く離れているし、自分が始めて魔装機に乗った時のように他の人間にも操縦方法
を頭に直接伝えるような化け物が自分とサイフィスに警戒し何らかの干渉をしているかも
しれないと思うと別段不思議ではないと自分を納得させる。
ウェンディやセニアなら何か分かるんだろうがいない人間のことを考えたってしかたねぇ。
あいつに乗り込んで俺が呼びかければ全てはっきりする筈だ―――――
「そ、そんな」
「それより、気をつけろ。いつ仕掛けてくるかわからねえぞ」
数十秒間お互い睨み合ったが向こうから動く様子がないようだ。
「…このままじゃらちがあかねぇ、俺が交渉する。もし、ゲームに乗った奴だったら俺を
置いて逃げろ」
「なら、足止めの役は俺がする!この機体が一番適任だ!それにメリクリウスが不調でな
ければニアミスすることはなかった!」
「自分だけの責任だと思うなカミーユ!全機の調子を確かめながら用心の為この速度で移
動するのは仕方のないことだ。それは全員承知したはずだ」
「でも、ゼクスさん!」
マサキとてこんな所で死んでしまう心算もないが相手は自分の愛機であり放っておくには
危険すぎる力を持ち、何より絶対に汚してはいけない翼であることが他の人間に任せると
いう選択肢を己に選ばせない。
「俺は魔装機神操者マサキ・アンドーだ!絶対にサイバスターを悪用させるわけにはいか
ない責任がある!」
「大丈夫ニャ、こんニャのデュラクシールやらネオグランゾンやらにルジャノールで
喧嘩を売るよりマシだニャ」
「そうだニャ、ここはオイラ達に任せるニャ」
「カミーユ、ここは彼らに任せよう」
「マサキ達を見捨てるんですかゼクスさん?!」
無論ゼクス・マーキスとてマサキには死んで欲しくはないが、カズィを後ろに乗せている
以上自分は危険な行為はできず、間合いを詰めるのに適しているトールギスを思わせるような
機体相手ではこの距離でカズィを二人にたくすのは危険である。
もっとも戦闘状態になれば一旦距離を置き、カズィをカミーユに託し自分が足止めになる
つもりではあるが。
「そのかわり、まずは交渉を優先させろ。ゲームには乗っていないかもしれん」
とはいえ、根拠はないが彼ならこの状況をヒイロ・ユイのようになんとかしてしまえる
かも知れないという思いがあったからこそ接触をまかせるつもりになったのである。
「ああ、わかったぜ、おっさん。いくぞ、クロ、シロ!」
「おっさんではない!私はまだ19だ!」
そのゼクスの魂のセリフを聞くことなく百式はサイバスターに向かって行った。
【レオナルド・メディチ・ブンドル 登場機体サイバスター(魔装機神)
パイロット状態:ご機嫌
機体状態:サイバスターモード、良好
現在位置:D−5北部
第一行動方針:金色の美しい機体に見惚れている
第二行動方針:首輪の解除
最終行動方針:自らの美学に従い主催者を討つ】
【マサキ=アンドー 搭乗機体:百式(機動戦士Zガンダム)
パイロット状況:健康、サイバスターを警戒、シロとクロも健康
機体状況:良好
現在位置:D−5北部
第一行動方針:サイバスターに接触する(交渉優先)
第二行動方針:サイバスターを邪悪な者には渡さない
第三行動方針:D−4の補給ポイントに向かう
第四行動方針:味方を集める
最終行動方針:ゲームからの脱出またはゲームの破壊】
【ゼクス・マーキス 搭乗機体:メディウス・ロクス(スーパーロボット大戦MX)
パイロット状況:健康、サイバスターを警戒
機体状況:良好
現在位置:D−5北西部
第一行動方針:マサキを待つ
第二行動方針:D−4の補給ポイントに向かう
第三行動方針:味方を集める
最終行動方針:ゲームからの脱出、またはゲームの破壊】
【カズイ=バスカーク 搭乗機体:メディウス・ロクス(スーパーロボット大戦MX)
パイロット状況:サイバスターにびびってる
機体状況:良好
現在位置:D−5北西部
第一行動方針:ゼクス達についていく
第二行動方針:D−4の補給ポイントに向かう
第三行動方針:AI1を完成させる
最終行動方針:ゲームからの脱出または優勝またはゲームの破壊】
【カミーユ・ビダン 搭乗機体:メリクリウス(新機動戦記ガンダムW)
パイロット状況:健康、サイバスターを警戒
機体状況:EN残量少
現在位置:D−5北西部
第一行動方針:マサキを待つ
第二行動方針:D−4の補給ポイントに向かう
第三行動方針:味方を集める
最終行動方針:ゲームからの脱出またはゲームの破壊】
【初日:16:00】
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