78話「ガンダムファイト」
◆op3oYkZryw
ビームの火線が森を焼き、ビームの帯が大木を切り裂く。
人の手が入っていない密林の中で二体の巨人がワルツを踊る。
立ち込める黒煙。燃え上がる木々。MSとMFの駆動音。
だが、森の中でマスターガンダムを駆るガウルンにとってはこの戦場はとても神聖なものであり
彼の生きるべき世界である。
そんな彼をもってしてもガンダムレオパルドデストロイを駆るギャリソン時田は容易に刈り取ることが
できない相手であった。
(ちっ。老いぼれのくせに思った以上にやるじゃねえか)
彼は襲ってくるブレストガトリングを避けながらダークネスショットを撃つ、だが向こうは当然のように
避け再びセパレートミサイルを撃ってくる。
ガウルンはやりづらいと思った。遠距離装備の碌についていないこの機体ではこのままでは向こうに
押し切られてしまうだろう。
「弾切れまで凌ぐか?」
コクピットの中でそう呟き。自分の甘い考えに心の中で唾を吐く。
(いつからそんな甘い考えをするようになったんだ?ガウル〜ン)
突然攻撃が止む。だが、経験から弾切れとは思わなかった。おそらく向こうは残弾も少なく
味方を追うために一気に勝負を決めるつもりだろう。
(いいぜ。乗ってやろうじゃないか、じいさん!!)
ガウルンはブースターを噴かせマスターガンダムをレオパルドデストロイに突撃させる。
リストビーム砲とビームシリンダーによる砲撃が襲いくる。
だが、ガウルンはそれらをマスターガンダムのマント型シールドで受け止めながら敵機に近づく。
「ダークネスゥゥゥゥゥゥゥゥゥフィンガァァァァァァァァァァァァ」
そして、シールドが破壊されると同時に左腕のダークネスフィンガーを相手に叩きつける。
だが、レオパルドは右腕に持ったヒートアックスで受け止める。
「右腕を忘れちゃいけないぜ!!」
そうして、左腕がビームシリンダーで塞がった機体の胴体に右腕を叩きつけようとする。
だが、ビームシリンダーの側面から突然生えた光に受け止められた。
ギャリソンがあらかじめ右手に持っていたビームナイフを無理矢理機動させたのである。
「なに!!」
「ほっほっほっ、予測済みでございます」
そうして、レオパルドは至近距離でホーネットミサイルを叩きつける。
それはマスターガンダムの胴体に直撃し、機体を吹き飛ばす。ギャリソンは距離をとりマスターガンダムに
全弾を叩き込もうとする。
ガウルンは起き上がろうとしたが疲労と癌の痛みにより立ち上がることができずに襲ってくるであろう衝撃
に身を硬くする。
(ここまでか?)
まるでこれまでの思い出が走馬灯のように思い出される。
幼いころから戦争漬けだったこと、名が知れ渡る頃には殺した数が四桁を優に超えていたこと。
(ああ、結構楽しい人生だったじゃねえか)
自分と同じようにカシムが死体を処理していた姿を始めて見たこと、カシムが宿にしていた村を
焼き払ったこと、カシムとカリーニンに雪辱戦を仕掛けられ額に銃弾が撃ち込まれ間一髪助かったこと、
カシムがガールフレンドと共に自分から逃げ出したこと、カシムが腑抜けた奴らを守るため自分と戦ったこと。
そして、コダールと共に海に投げ出され気が付いたらここにいたことが。
(まだだ!まだ死ねねぇ!!)
こんな老いぼれに殺されている場合ではない。自分は愛しいカシムに会わなければいけないのだ。
そう想うと力尽きたはずの体に力が満ち溢れる。そうして殺到する砲撃に右手を向ける。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
右手のダークネスフィンガーをオーバーロードで起動させ本来以上の出力をだし相手の攻撃を機体にあたる直前
で関止める。
「な、なんと!!」
「喰らいやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
そうして巻き起こった爆煙を隠れ蓑にし相手に接近して再び右のダークネスフィンガーをぶつける。
それをギャリソンはヒートアックスとビームナイフの二段構えで受け止める。
「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!」
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
両者の間で閃光が煌めき火花が散る。一見互角の勝負かと思われたがマスターガンダムが押され始める。
戦闘によるダメージと先刻のオーバーロードの所為で出力が上がらないためである。
「このまま押し切らせてもらいますぞ!!」
そのままレオパルドが一歩踏み込む。
そのとき、レオパルドの背後に何かが突き刺さり中のパイロットを押しつぶした。それはマスターガンダムの左手で
あった。ガウルンはあらかじめディスタントクラッシャーを爆煙に紛らせレオパルドの背後を貫かせたのである。
不可能にも思えるが普段からラムダドライバー機に乗る彼にとってはこの程度のイメージングは
決して難しいことではなかった。
「じいさん、団体さんがそのうち行くだろうから閻魔にでも伝えといてくれ。死因は俺で」
ダークネスフィンガーを止めディスタントクラッシャーを引き抜く。
そして、パイロットを失ったレオパルドは仰向けに音を立てて倒れた。
「さて、どうすっかなこれから」
そうは言ったもののすでにやる事は決まっていた。あの腑抜けてしまったカシムを元に戻せねばならない。
聖人の目をしたカシムを殺す自分、殺される自分、犯す自分、犯される自分。
どういう結末を迎えるにしてもそれ以外の最後など自分にはありえない。
そのためにはここからなんとしてでも生き残ろう、ついでにあのフロアで見かけた奴のお友達の首も
持っていこう、少しは腑抜け具合が治るかもしれない。
そんなことを考えながら敵機から斧や銃火器等の使えそうな装備を取り外す。
「流石にこいつは規格が合わねえか」
そう思いながらビームナイフを弄っているとビームの刃が発生する。
「お、使えるのかこいつはいいな。ん?」
体に妙な違和感を感じる。
調べてみるとどういう理屈か分からないが頭に仕込んだチタン合金の部分と義足が妙な金属質
の細胞に覆われ癌による痛みも何時の間にか消えている。
「まったくマスターガンダム様々って所か」
そう思いその場を後にしようとしたが転がる敵機が目に入る。
コクピットが破壊され使い物にならない機体である。
このままでは後ろで発生している火事に巻き込まれるだろう。
「カシムの野郎なら念のためとか言ってぶっ潰すんだろうが…」
あることを思いつきそれを実行することにする。
それは、マスターガンダムの破片を機体のコクピットに埋め込み妙な現象を誘発させることである。
こうすればこの機体は使い物になるかもしれない。
「クックックッ。カシム、舌なめずりは三流とかいうけどよ。一度しかない人生を楽しまなくっちゃ損だぜ」
もし、この機体が火事を生き残ることができればきっと楽しいドラマが待っていることだろう。
そうしてガウルンは休憩場所を探すためその場を後にした。
【ガウルン 搭乗機体:マスターガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
パイロット状況:疲労大、DG細胞感染、気力120
機体状況:全身に弾痕多数、胸部装甲破損、マント消失、ダメージ蓄積、 EN80%消耗、
DG細胞感染、損傷自動修復中、ビームナイフとヒートアックスを装備
現在位置:B-5密林
第一行動方針:自分と乗機の休息
第二行動方針:近くにいる敵機を攻撃
第三行動方針:皆殺し
第四行動方針:できればクルツの首を取りたい
最終行動方針:元の世界に戻って腑抜けたカシムを元に戻す
備考:九龍の頭に埋め込まれたチタン板、右足義足、癌細胞はDG細胞に同化されました 】
【ギャリソン時田 搭乗機体:ガンダムレオパルドデストロイ(機動新世紀ガンダムX)
パイロット状況:圧死
機体状況:ダメージ蓄積、コクピット破壊、全武装弾切れ、
ヒートアックスとビームナイフは非装備、DG細胞感染?
現在位置:B-5密林
備考:B-5密林で火事発生。レオパルドにDG細胞が感染したかどうかは次の書き手に任せます】
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