Scenario IF 11話 「絶望の中の太陽」 220
バトルロワイアル――殺し合い
こんな絶望的な状況下でも、私の心はまだ折れていない。いまだ希望に満ち溢れている。
そう私、宇都宮
比瑪の心は!!
ベガスに乗った比瑪は森の木々の隙間を縫うように飛んでいた。
武装が無いベガスでは、ゲームに乗った参加者に見つかる=死。イニシアチブを取る事が最重要課題だ。
逃げるにしても機動力には自信があるベガスだが、生身の比瑪では耐えられない。
レーダーに引っ掛かるわけにもいかない。出力をMinにしてギリギリの高さを飛ぶ。
「ねぇベガス君、このまま行けば街まで行けそうだね」
「ラーサ」
いつも通りの通じているのかどうか分からない会話が弾む。
順調だった。とても順調「だった」
だった……
比瑪はつい先程までの何事も無かった時間、今まで生きてきた中で経験した記憶が意識と関係なく溢れ出てくる。
眼前の巨人が今から自分の命を奪う。
そう考えただけで心が折れてしまいそうになる。
「小生、このギム・ギンガナムと勝負しろ!!」
そう言って空から降り立った巨人、シャイニングガンダムは腕を組み仁王立ちしたままこちらを見下ろしている。
シャイニングガンダムが降り立ってから18年に等しい2分が過ぎた。
「ふんっ、興に乗らん。女を斬り捨てたとて、武門の名家に傷がつくだけだ。お主、今回は見逃してやろう。立ち去るがよい」
ギンガナムの声には少なからず落胆の色が混じっていた。
「見逃…す…?」
「そうだ、見逃してやる。それともここで殺し欲し
「あなた良い人ですね」
比瑪の口から出てきた言葉はギンガナムの予想外だった。
「何を言っ
「ですよね」
比瑪の絶望に染まっていた顔が輝きを放つ。
「いくら殺し合えと言われたからって、本気で殺し合う人なんて居ないですよね!!」
「おい、お主何を言っ」
「バトルロワイアル……。謎の強大な力によって集められた哀れな人間達。我を忘れる者。
悲しみに暮れる者。死に逝く者。そして強大な力に立ち向かう者。運命の歯車は今動き出す」
シャイニングガンダムはモビルトレースシステムを採用した新機軸の機体だ。
そのシャイニングガンダムが一歩退いたということは、ギンガナムが一歩退いたことを意味する。
「あなたのその誇りに満ちた態度、威厳ある声、当に獅子!!獅子とは繋いではおけない者……、
Mr.アンチェイン!!あなたはあの怪物を倒すため立ち上がるんですね!!」
妄想モードフルスロットルの比瑪の気迫が遂にギンガナムを追い詰める。
「小生は戦うために、ここに居るのだ、そのようなことはせん!!」
超ポジティブ比瑪にはそのような言い訳は逆効果だった。
「そう言いなが(はっ!もしかして盗聴を気にして警戒してるんじゃ…、うわぁこの人頭良いなぁ)」
超ポジティブ比瑪の自己推論、自己発展、自己完結の三大スキルをフル活用して導き出された答えは、
背を向けしゃがみ込む比瑪。
「そういうことだったんですね……」
「何がそういうことなのだ……」
この時、ギンガナムの武人たる誇りを兵法家としての本能が抜き去る。
逃走。
「私も連れて行って下さい!!!」
比瑪がもう一度シャイニングガンダムを振り返った時、そこには小さくなっていく巨人が見えた。しかし、
「行くよベガス君!今この瞬間に死んでる人がいるかもしれない。あの人はそれを見逃せないの(断定)。
私達に出来ることなんて無いかもしれない。だけど必ずどうにかなるよね!だって私達はオルファンとも解り合えたんだから!!!!」
逃げる巨人、追いかける(追い詰める)美少女。
実にシュールな光景であった。
【ギム・ギンガナム
搭乗機体:シャイニングガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
パイロット状態:健康。電波怖い電波怖い
機体状態:損傷無し。移動にEN消費
現在位置:ifなんで特に設定無し
第一行動方針:比瑪から逃げる
第二行動方針:戦うに値する戦士を探す
最終行動方針:バトルロワイアルを勝ち抜く】
【宇都宮
比瑪
搭乗機体:ベガス(宇宙の騎士テッカマンブレード)
パイロット状態:健康。ナチュラルハイ
機体状態:損傷無し。移動にEN消費
現在位置:ifなんで特に設定無し
第一行動方針:仲間を集める
第二行動方針:ゲームを壊す
最終行動方針:主催者と分かり合う】
【IF】