Scenario IF 30話  「Night of the Living Dead」  ◆ZbL7QonnV.



 ごうごうと燃え盛る炎に呑み込まれ、全てが灰の中に消え去ろうとしていた。
 木も、草も、花も、なにもかもが燃え落ちていく。
 この場で起きた戦いの痕跡を消し去ろうとするかのように、炎の顎は飽く無き暴食を続けていた。
 ……だが、それは如何なる悪魔の導きか。
 その燃え盛る火よりも尚紅い機体は、炎の中より起き上がろうとしていた。

 ガンダムレオパルドデストロイ――
 本来ならば炎の中に消え逝くはずだったそれは、まるで墓場の底から蘇るゾンビのように、ゆっくりと立ち上がり始めていた。
 パイロットであるギャリソン時田の命は、既に無い。マスターガンダムとの死闘によって、とうの昔に失われている。
 だから今現在機体を操縦しているのは、彼であろうはずもなかった。
 だが、それならば誰が?
 この劫火に覆い尽くされた森の中、レオパルドを操縦しているのは誰なのか?
 ……その疑問に対しては、こう答える他にない。
 かつてギャリソン時田であり、そして今は不死の怪物になった者、と。
 そう。レオパルドのコクピットに居るのは、DG細胞に侵食されてゾンビ兵と成り果てた、ギャリソン時田その人であった。
 あの時――マスターガンダムに敗れ去った後、ガウルンに植え付けられたDG細胞は、レオパルドを汚染する事に成功していた。
 それも、コクピット内部に放置されていたギャリソン時田の死体ごとである。
 その結果、ギャリソンの死体はゾンビ兵に変化。DG細胞の自己再生機能によって回復したレオパルドと共に、今一度の“生命”を得る事に成功したのである。
 もっとも、それはギャリソン本人にとっては、望まざるべき事だろう。
 かつての記憶も感情も無く、ただ目に付く物を破壊する事しか出来ない、DG細胞の操り人形。
 そんなものに身体を作り変えられて、喜ぶ人間など居ようはずもない。
 だが、皮肉なものだ。DG細胞に全身を犯された今のギャリソンは、もはや何を思う事も、何を感じる事も無い。
 ただ、死体を弄ばされているに過ぎないのだから……。

「……………………」
 装甲に穿たれた無数の傷跡が、ゆっくりと銀の細胞に覆われていく。
 ずしん、ずしんと重厚な足音を轟かせながら、ガンダムレオパルドデストロイは燃え盛る森を後にしていった……。



【ゾンビ兵 搭乗機体:ガンダムレオパルドデストロイ(機動新世紀ガンダムX)
 パイロット状況:DG細胞感染
 機体状況:ダメージ中、コクピット損傷、全武装弾数残少
      ヒートアックスとビームナイフは非装備、DG細胞感染
 現在位置:B-5密林(大規模な火災が発生中)
 第一行動方針:破壊
 最終行動方針:???
 備考:DG細胞の働きにより、機体に自己再生機能が備わりました
    エネルギーと弾薬は自己再生機能により少しずつ回復していきます
    ゾンビ兵を排除すれば、レオパルドを他の人間が操縦する事も可能です
    DG細胞に感染した存在(ガウルン、マスターガンダム)に対して反応を示す可能性があります
    機体の形状が変化するほどの自己進化は行いません
    ギャリソン時田の記憶や戦闘経験は完全に失われています】

【初日 20:30】