第二次スパロボバトルロワイアル

1 :それも名無しだ :2006/06/04(日) 00:54:14 ID:aZCshmWj
第二次スパロワスレです
補完よろ


2 :それも名無しだ :sage :2006/06/04(日) 00:59:59 (p)ID:IarXrfJz(3)
【原則】
前の人の話やフラグを無視して続きを書くのは止めましょう。
また、現在位置と時間、状況と方針は忘れないで下さい。
投下前に見直しする事を怠らないで下さい、家に帰るまでが遠足です。
投下後のフォローも忘れないようにしましょう。
全体の話を把握してから投下して下さい。
【ルール】
EN・弾薬は補給ポイントを利用することで補給することができます。
機体の損傷は、原則として機体が再生能力を持っていない限り直りません。
再生能力自体も制限で弱体化しています。
修理機能の効果は微々たる物だと思われます。
(第一次ではノルス・レイの修理機能は、再生能力の強化になっていました)
乗り換えルール・放送と同時に機体消滅ルールは無しの方向で。
【備考】
議論感想雑談は専用スレでして下さい。
作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
おやつは三百円までです、バナナは含まれません。
スパロボでしか知らない人も居るので場合によっては説明書きを添えて下さい。
水筒の中身は自由です、がクスハ汁は勘弁してつかぁさい。
これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
初めての方はノリで投下して下さい、結果は後から付いてくる物です。
作品の保存はマメにしておきましょう、イデはいつ発動するかわかりません。




3 :それも名無しだ :sage :2006/06/04(日) 01:04:05 (p)ID:IarXrfJz(3)
キャラクター状況テンプレート

【ユーゼス・ゴッツォ 搭乗機体:ジュデッカ(黒)(スーパーロボット大戦α)
 パイロット状況:頭部強打、軽い眩暈
 機体状況:EN残量少、レーダー不調
 現在位置:E-1
 第一行動方針:シヴァーからの逃走
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【時刻:11:00】



4 :それも名無しだ :sage :2006/06/04(日) 01:06:21 (p)ID:IarXrfJz(3)
第2次スパロボロワイヤル企画スレ
(p)http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1148890280/

まとめサイト
(p)http://2nd.geocities.jp/s2matome/index.html


5 :Opening :sage :2006/06/04(日) 06:58:51 (p)ID:z4NG2h9B(4)
うっすらと目を開けて真っ先に考えたのは、どうして自分はこの冷たい床の上で横になっているのかという事だった。
まだはっきりとしない意識のまま、少年――キラ・ヤマトはゆっくりと体を起こした。
そのまま周囲を見回す。そして目に入ってきた光景に、キラはまだ夢の続きを見ているのかと思った。
見知ったアークエンジェルの艦内、ではない。そこは見覚えの無い、広いドーム状の空間だった。
照明器具の類は何一つ無いにも関わらず、ドームの天蓋全体がうっすらと発光しているおかげで
場内はかろうじて人の顔を判別できる程度には明るい。
どうやらこの部屋には他にも大勢人がいるらしく、ざわめきが部屋全体に反響している。
頭にも徐々に血が巡ってきた。しかし、依然として状況が飲み込めない。
記憶を辿ろうにも、ここに来る直前だけが何故かはっきりしない。
「どこなんだ……ここは」
「さあ……わたくしにも、その問いに答えることは出来かねますわ」
何気なく発した独り言に返事が返ってきたことに驚いて、キラは振り返った。
そこにいたのはキラも良く知る少女――プラントの歌姫、ラクス・クライン。
「ここは……君はどうしてここに?」
「分かりません。わたくしも、気がついたらここに……ただ、どうやら他の方々も、同じのようですわね」
ラクスの視線を思わず目で追う。
いつの間にか薄明かりに目が慣れて、さっきよりもはっきりと場の状態が把握できた。
不安げな表情の少女達が、互いに寄り添い合っているのが見える。
赤いアフロヘアーの少年が、苛立った口調で何か叫んでいるのが見える。
奇妙な仮面を着けた男が、腕を組み歩き回りながら物思いに耽っているのが見える。
確かに、望んでこの場所にいる人間はいないようだった。
キラの背中を冷や汗が流れ落ちる。
嫌な予感がする。何か、とてつもなく良くない事が起こるような。
――その予感は、それから程無くして最悪の形で的中することとなる。


『目覚めよ……人間達』

その声が『自分の頭の中から』聞こえてきた時、キラはこの異様な状況についに自分の精神が異常をきたしたのかと思った。
しかしどうやらそうではないらしく、ラクスも、場内の他の人間達も一様に同じ声を聞いたようだった。
ざわめきが場の空気を介して伝播する。
状況を確認しようとキラが口を開きかけた矢先、声が再び脳内に響いた。

『我が名は……アインスト……ノイ=レジセイア……』

混乱する頭を無理に急き立て、キラは何とか今の状況を把握しようと必死になった。
今、声は確かに自分の名を名乗った。という事は、この声の主はどこからか自分達の脳内に語りかけているというのか。
昔読んだ空想小説に出てきた単語が思い出された――テレパシー? いや、そんな非科学的な……
しかし次の一言で、キラの思考は今度こそ完全に停止することとなる。

『……これからお前達には……最後の一人になるまで、殺し合いを、してもらう』



6 :Opening :sage :2006/06/04(日) 06:59:31 (p)ID:z4NG2h9B(4)
場内を完全な沈黙が支配する。
しかしそれも一瞬の事で、戸惑いは細波のように部屋中に広がっていった。
戸惑いは徐々に増大し、やがて決壊する。
「ちょっと、誰だか知らないけど、いきなり人をこんな所に連れてきて、なに勝手な事言ってるのさ!」
赤髪の小柄な少女が、何処にいるのかも知れぬ声の主に向かって叫んだ。
慌てて、傍らの金髪の少女が腕に取り縋って制止しようとする。
「テ、テニアちゃん、落ち着いて!」
「落ち着けるもんかっ! ……ねぇ、聞こえてるんでしょ!? だったらさっさとあたし達を元の所に返してよっ!」
少女の決死の叫びに勇気付けられたのか、場内のあちこちから野次と怒号が飛び交い始める。
まるで自分の中の不安を、無理に動的なものに変えて吐き出しているように。
やがて、新たな声が脳内を震わせた――僅かな苛立ちを含んだようにも聞こえる声が。

『……愚かな……』

瞬間、ドームの床が、壁が、天井が、ぐにゃりと歪んで掻き消えた。
そして代わりにそこに出現したもの――その異様さに、誰もが戦慄する。
異形。それ以外に、その存在を形容する言葉が見つからない。
禍々しく伸びる角、おぞましく蠢く触手、生物とも無機物とも取れない怪物的なフォルム、原色を切り貼りしたような体色……
そして、暴力的なまでの大きさ。
あらゆる進化の可能性を内包した存在が、そこにいた。
会場内の誰もが、この異形の存在こそがその声の主である事を悟る。
再び響く声。

『人間共が……我に抗う事など……永劫叶わぬと知れ』

そして世界はまた逆回りに歪み、たちまち元のドームへと戻る。
先ほどの異形の存在が出現した痕跡など、何一つ残ってはいない。
何が起こった? パニックになりかけた意識で、キラは思考する。
(…………幻、覚…………!?)
それを否定するにはあまりに現実から乖離しすぎていて、それを肯定するにはあまりにリアルすぎる光景。
このテレパシーと同じようにイメージを伝えてきたというのだろうか、それとも……?
あの衝撃の後では、どんな理性的な思考ももはや空しい。
赤髪の少女もやはり無理をして虚勢を張っていたらしく、金髪の少女に抱きかかえられていた。
会場は水を打ったように沈黙を取り戻していた。


7 :Opening :sage :2006/06/04(日) 07:00:04 (p)ID:z4NG2h9B(4)

「ここからは私が…………アルフィミィ、と申しますの。皆様、お初にお目にかかりますの」

ドームの天蓋の頂点から、まるでスポットライトのように光が降りる。
その中心に、蒼い髪の少女が立っていた。
年恰好は十代前半といった所であろうか、どこか人間離れした神秘性を感じさせる。
どうやら場の主導権はあの声の主からこの少女へと移ったらしく、アルフィミィと名乗った彼女はゆっくりと話し始めた。
「まず……先ほどの通り、皆様には殺し合いをしていただきますの」
殺し合い。その言葉が聞こえた瞬間、場の空気が僅かに張り詰めた。
キラの隣で、ラクスが無意識に身構えるのを感じた。
「皆様一人ひとりには、それぞれ機動兵器が一機と食糧や地図などの最低限の荷物が支給されますの。
 各自それを受け取り次第、ここから『箱庭』へと転送いたしますの」
アルフィミィは淡々と説明を続ける。
「そこで最後の一人になるまで、殺しあっていただきますの。最後に残った優勝者は元の世界に戻してあげますの。
 それだけではありませんの、優勝した方には素敵なご褒美が――」
「……アルフィミィ嬢。少し、よろしいか」
説明を中断する声の主に、アルフィミィだけでなく会場全体の視線が集まった。
全身黒尽くめのスーツを身に纏った男だった。毅然とした態度で数歩前に歩み出る。
「あなたは……思い出しましたの。お噂はかねがね、ですの……Mr.ネゴシエイター」
「そのような社交辞令を聞くとは思わなかったが……まあいい。
 アルフィミィ嬢、三つほど質問がある。答えていただけるだろうか」
「熱心な方がいてくれて嬉しいですの。答えられる範囲でお答えいたしますの」
「それは結構」
ネゴシエイターと呼ばれた男は軽く咳払いをして、それから口を開いた。
「まず第一。そもそもこの殺人ゲームには何の意味があるのか。第二に、なぜ我々が選ばれたのか。そして第三に――」
彼はそこで一旦言葉を区切り、
「我々の何処にこの馬鹿げたおふざけに付き合ってやる道理があるのか、だ」
一気に言い切った。
会場中を、ざわめきが駆け抜ける。
(なんて人なんだろ……)
黒スーツの男の後ろ姿を見ながら、キラは内心で驚嘆した。誰もが聞きたくとも聞けずにいた事を、彼はあっさりと……
アルフィミィは僅かに思案しているようだったが、すぐに男の方へ向き直った。

「分かりましたの。順番にお答えいたしますの」
会場内の誰もが、彼女の言葉に耳を傾ける。
「まず一つ目は……秘密ですの。言えませんの」
「……何?」
「それから二つ目……これも言えませんの。言う必要もありませんの」
「……アルフィミィ嬢、貴女の対応には残念ながら誠意が欠けていると言わざるを得ない。
 それとも、そのような説明で我々が納得するとでも?」
「納得していただく必要はありませんの……私達の言うとおりにしてくれればそれでいいですの」
「…………」
黒服の男の表情が僅かに歪む。しかし彼が次の言葉を発する前に、アルフィミィは第三の答えを口にしていた。

「三つ目の答えは、あなたの首元にありますの」

訝しげに自分の首に手をあてた男の顔が、瞬時に強張った。その反応に不審なものを感じたキラも、思わず自分の首に――
そして驚愕した。自分の首に、冷たく硬い感触を持つ何かが装着されている。
咄嗟にラクスの方を振り返る。ラクスも同じ事を考えていたらしく、こちらを見る表情に戸惑いの色が浮かんでいる。
そして彼女の細い首に、鈍い金属光沢を放つ首輪が嵌っていた。
ラクスの反応を見るに、どうやらキラ自身の首に嵌っているのも同じものらしい。
どうやら他の参加者達も同様の事実に気付いたらしく、戸惑いの声が同時多発的に起こった。
首輪に手をかけ、何とか外そうと試みる人までいる。
アルフィミィは満足そうに頷き、再度ルール説明を開始しようとした。
しかしそれはまたしても遮られる事となった――今度は、女性の声によって。


8 :Opening :sage :2006/06/04(日) 07:00:58 (p)ID:z4NG2h9B(4)
「お嬢ちゃん……」
金髪をポニーテールに結んだ女性が、アルフィミィに呼びかける。
女性は、アルフィミィのことをまるで昔から知っているかのような、形容し難い表情を浮かべていた。
「……何か用ですの?」
「……最初にあなたがこの部屋に入ってきた時から、何となく嫌な予感はしてたのよ。
 ねぇお嬢ちゃん……これはいったいどういう事? あなたにはもうあの連中のいいなりになる理由なんてないはずだわ。
 それに何より、このゲームっていうのは――」
「……私は貴女を知りませんの。ですから、何の事だか分かりませんの」
「え……お嬢ちゃん?」
予想外の返答に、エクセレンと呼ばれた女性は狼狽を見せた。
代わりに彼女の恋人と思しき男性が、エクセレンの後を引き継ぐ。
「何かあるのかもしれないと思ってさっきから黙って聞いていたが……分からないな、どういう事だ? お前は――」
「知らないと言っていますの。用が無いなら話しかけないでほしいですの」
「アルフィミィ!」
「お嬢ちゃん!?」
「……もういいですの。貴女には、これからの説明の『実験台』になってもらいますの」
明らかに動揺を隠せない二人に残酷な言葉を投げつけ、アルフィミィは他の参加者の方へ向き直る。
「皆様! このゲームには、三つの禁止事項がありますの!
 一つ目は、一日二回の放送で発表される『禁止エリア』に侵入すること!
 二つ目は、この首輪を力づくで外そうとしたり、強い衝撃を与えたりすること!
 三つ目は、最後の死者が出てから24時間以内に誰も死亡者がでないこと!
 そしてこれらに違反した時はペナルティが与えられますの――それは、」
そこで言葉を区切り、アルフィミィはエクセレンの方へ身体全体を向ける。
アルフィミィの言動を目の当たりにして、エクセレンの顔に悲しみと寂しさと憂いとが同居した悲痛な色が浮かぶ。
「お嬢ちゃん……まさか、本当に私たちのこと……?」
「…………さよなら、ですの」
そして、少女は両手を小さく一度、叩いた。

炸裂音。

エクセレンの身体は二、三度大きく痙攣し、そのまま重力に任せて冷たい床に倒れ伏した。
一瞬遅れて雨のように降り注ぐ、血と肉の混合物。動かない彼女の周囲に、赤い水溜りが広がっていく。
彼女はもう何の表情も浮かべてはいなかった――いや、もはや表情そのものが存在しなかった。
なぜなら彼女のその端整な美貌は、突如爆発した首輪によって飛び散ってしまったのだから。
「…………エクセ、レン…………?」
すでに物言わぬ彼女の名を呼びながら、彼女の恋人がよろめきながら歩み寄っていく。
一歩、二歩、そこで床に広がる赤を見て、彼は茫然自失の顔つきのままその場にくずおれて膝を突いた。
無言で肩を震わせる彼を僅かに一瞥してから、アルフィミィは仮面のような表情のまま淡々と説明を続ける。
「皆様の首輪には、人一人殺すのに十分な威力の爆弾が仕込んでありますの……言う事を聞いてくれない悪い子は、お仕置き、ですの」

悲鳴を上げる者さえ、いなかった。
不自然とでも形容すべき静寂が、部屋中を満たしていた。
たった今誰もが目にした、あまりにあっけなくてあまりに現実離れした、死。
もはや、誰一人として疑う者はいなかった。
この首輪をつけている限り、自分達の生殺与奪の全ては赤の他人の手のひらに握られているということ。
そして、自分達はもはや殺人ゲームのコマの一つに過ぎず、主催者の言うとおりに殺し合う以外に道は残されていないことを。


【エクセレン・ブロウニング 死亡】
【残り53人】


【プログラム開始】


9 :恋と呪い ◆ZbL7QonnV. :sage :2006/06/04(日) 07:06:33 (p)ID:CpoOpVj4(6)
 支給された機体の中、テンカワ・アキトはこれからの事について考えを巡らせていた。
(殺し合いだと……? 馬鹿げている……だが、その馬鹿げたゲームに巻き込まれた事もまた確か……。
 どうする……このゲーム、乗るべきか……?)
 ラピス・ラズリのサポートを受ける事が出来ない現在、アキトの身体機能は著しく低下している。
 だが、幸いにもと言うべきか。自分に支給された機体――
 YF−21の操縦方法は、パイロット自身を制御系等に組み込むBDIシステムである。
 このシステムのおかげで、アキトは不十分な肉体であっても機体を手足の延長として使う事が出来ていた。
 いや、それだけではない。
 センサーと接続された脳神経は、アキトにかつて失ったはずの感覚を取り戻させていた。
 そう、見えるのだ。
 はっきりと、目が見える。
 ラピス・ラズリのサポートを受けていた時を遙かに上回る精度で、全天周360度の光景が見えるのだ。
 YF−21のセンサーを通じて、アキトは失われたはずの視力を取り戻していた。
 ……戦える。
 この機体があれば、自分は戦う事が出来る。
 しかし――


10 :恋と呪い ◆ZbL7QonnV. :sage :2006/06/04(日) 07:07:16 (p)ID:CpoOpVj4(6)
「…………」
 ……自分には何を犠牲にしても生き残らなければならない理由があった。
 それは、復讐。
 妻と己の五感を奪い、自分の人生を狂わせた奴等――火星の後継者。
 奴等を皆殺しにする為ならば、悪魔にも魂を売ると彼は誓った。
 だが――何故なのか。
 何故、このゲームに――“彼女”が――――!

「…………ユリカ」
 あの会場で、確かに見た。
 視力補助のバイザー越しに、自分は確かに確認したのだ。
 同姓同名の別人ではない。
 このゲームには、遺跡に取り込まれたはずの妻が――ミスマル・ユリカが参加している。
 あの主催者に救い出され、そしてこの殺し合いに参加させられてしまったのか――?
 いや、それともボソンジャンプのような時間干渉技術を使い、今ではない時代のユリカを連れて来たとでも言うのか?
 ……だが、どちらにしろ、あれはユリカだ。
 このゲームに勝つと言う事は、彼女を殺さなければならないという事。
 そしてこのゲームの勝利を諦める事は、復讐を諦めなければならないという事。
 ……どうする?
 このゲームに勝つ事を諦めて、復讐を断念するのか……?
 ……無理だ。そんな事、出来る訳がない。
 ならば、殺すのか?
 彼女を――ユリカを、この手で――
 殺せるのか?
 自分は――彼女を――

 ――殺せるのか?





11 :恋と呪い ◆ZbL7QonnV. :sage :2006/06/04(日) 07:08:04 (p)ID:CpoOpVj4(6)
「…………殺せるわけが、ないだろうっ!」
 ……血を吐くような声で、言う。
 復讐は諦められない――
 だが、彼女は殺せない――
 ならばどうしろと――
 いったい、俺にどうしろとッッッッ!!

 そして彼が迷いの中、今後の方針を決めかねているその時だった。



「あ、あの……すいません。あなたは、このゲームに乗っている人……なんですか……?」
「っ…………!」

 ……怯えを含んだ、聞き知った声。

 通信機の画像に視線を向けると、そこには求めて止まない最愛の女性が――


12 :恋と呪い ◆ZbL7QonnV. :sage :2006/06/04(日) 07:09:37 (p)ID:CpoOpVj4(6)
【テンカワ・アキト 搭乗機体:YF−21(マクロスプラス)
 パイロット状況:良好、苦悩
 機体状況:良好
 現在位置:D-7
 第1行動方針:……ユリカと話す
 最終行動方針:???】

【ミスマル・ユリカ 搭乗機体:無敵戦艦ダイ(ゲッターロボ!)
 パイロット状況:良好、不安
 機体状況:良好
 現在位置:D-7
 第1行動方針:戦闘機に乗った人(アキトとは気付いていない)と話をする
 第1行動方針:仲間を集める
 最終行動方針:ゲームから脱出】

【初日 12:40】


13 :DARK KNIGHT ◆T0SWefbzRc :sage :2006/06/04(日) 08:49:35 (p)ID:dVGW5O2D(6)
「…なんなんだよ」
薄く明るい、計器の立ち並ぶコックピットの中で、少年はポツリと漏らした。
「またかよ」
ボソボソとした声で、言葉を続ける。突然に立たされた舞台。巻き込まれた自分。
「戦争の次は殺し合いかよ」
少年は過去に似た経験をしていた。落ちてきたロボット、出会った少女達。崩れた日常。学園生活。
「でも、同じ事だ。あの時と」
ただ、流されるままにロボットに乗り、流されるままに戦った。そう、ただ流されるままだった。
自分の力が及ばない、運命という流れの下に自分は戦わされている。
「そうだ、あいつら」
ふ、と自分を巻き込んだ、三人の少女の事を頭に浮かべる。
「あの、怒ってた奴。テニアだよな。他の二人も居た…」
訳の分からない実験のために、素性の知れない組織に監禁されていた少女達。
自分と同じ、ただ訳も分からないままに巻き込まれ続けた少女達。
彼女達も、あの部屋に居た。そして確かに彼と同じ舞台に立たされている。
「震えてたな、テニア」
赤い髪の小柄な女の子。フェステニア・ミューズ。彼女は確かに怯えていた。
化け物の幻影を見て。そしてその後の出来事を見て、なお一層に。
「恨むなよ、俺のせいじゃない。俺のせいじゃ…」
その姿を頭から振り払い、少年は目の前のモニターを見据えた。




14 :DARK KNIGHT ◆T0SWefbzRc :sage :2006/06/04(日) 08:55:08 (p)ID:dVGW5O2D(6)
 岩山の間を縫うように青い影が疾駆する。
その姿はまるで風。音も無く、流れるように進んで行く。
乗りこんで、マニュアルに目を通して間もないと言うのに少年は与えられた機体を実に良く動かし
ていた。
「ダイレクトフィードバックシステムか…。運が良かったのかな、分かりや
すい操縦法の機体で」
その機体の持つ、特殊な操作系。パイロットの考えを直機体の動きにに反映させるという代物だ。
しかし、だからといって本来ただの学生でしかなかった少年が初めて乗ったロボットの運動能を、
ここまで引き出せるものだろうか。
「武器は剣、見た目は甲冑でマントまで着いてる。まるで騎士だな」
それは、少年の資質故だった。
少年の元々居た世界の、少年が乗っていた、いや、乗らされていた機体。
その機体の持つ未知の力、サイトロンによって引き出されていた少年の騎士としての資質。
「ヴァイサーガ」
この世界で与えられた、新しい力。
「ヴァイサーガ、か」もう一度だけ名前を呟く。
そうして少年は、ようやくはっきりと自分が何に乗っているのか自覚出来た気がした。
「くそ、殺し合いか…」
少年は日本で教育を受け、それに考えを合わせて育ってきた。
当然、突然殺し合え、と言われて納得出来る様な倫理観は持ち合わせてはいない。
だが。無機質な、冷たい首輪に手を当てる。
「死んだんだ。そして、殺されるかもしれないんだ」
首から上が無くなった女。逆らえば、殺される。そうでなくても…。
嫌な考えが頭を横切る。この殺し合いに乗る人間。自分の命が掛っているのだ。当然居るだろう。
もしかして、こんな場所に集められた人間だ、生粋の殺人鬼も紛れているのかもしれない。
「しかたない」
知らない人間ばかりのことだ、いや、知った人間でも相手が殺し合いに乗ってるかどうかは分から
ない。誰だって死にたくはない。この状況だ、確かに仕方のない事だ。
もしかして、乗ってない振りをして油断を誘うような輩もいるかもしれない。
「そうだ、しかたないだろ」
だが、殺される前に殺してしまえば決して殺されない。しかも全員殺せば帰れるのだ。
「やれっていうなら、やってやるさ…!!」少年は、『紫雲統夜』は、はっきりとした口調で言い放った。



15 :DARK KNIGHT ◆T0SWefbzRc :sage :2006/06/04(日) 08:56:13 (p)ID:dVGW5O2D(6)
【紫雲統夜 搭乗機体:ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A)
 現在位置:A-8、北東
 第一行動方針:岩山を抜ける
 第二行動方針:敵を殺す
 最終行動方針:ゲームで優勝し、無事に帰る】
【初日 12:45】


16 :純真なる抗体、真紅の悪鬼 :sage :2006/06/04(日) 09:44:29 (p)ID:E1XuNESH(7)
「………」
殺し合い……か。
「……昔を思い出す、な」
負の感情を求め、戦いにばかり明け暮れていたあの頃。
もう、終わったと思っていたのに……また、戦わなければならない。
「………ジョシュア」
ジョシュア・ラドクリフ。
居るはずだ、この会場のどこかに。
「やはり、会いに行かないと、な」
そうだ。
ジョシュアなら何とかしてくれるはずだ。

「参ったな………」
アルバトロ・ナル・エイジ・アスカは、少なからず戸惑っていた。
グラドス軍からみんなを逃がすため囮に出たら………これだ。
「まずは何処へ……ッ!?」
レーダーに反応。慣れない巨体を動かし、視認する。
「………アレは?」
こちらには気付いていない、が………
「………駄目だ!」
急加速。ブースターを点火し急降下。

「……ユウゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」
「!?」
上空からの強襲、何か、憎悪に満ちたモノが迫る。
ラキは………ラキの乗る蒼いブレンパワードは、とっさに動けず固まってしまう。
と、………
「危ない!」
背後から体当たり。ブレンパワードよりも大柄なその機体。
「ジョシュア……?ジョシュアなのか?」
ラキは、見覚えのあるその機体、共に戦ったジョシュアの乗っていた機体、俗に……フォルテギガスと呼ばれるスーパーロボットに聞く。
エイジはビームハンマーを敵機体の居た方向に射出し牽制しながら、言う。
「違う!僕の名はエイジ、君は狙われている!早くここから逃げよう!」
「逃がすものかッ!ユウ!」
真紅の翼を携えた機体は……真ゲッター1は、ゲッターサイズでビームハンマーを切り払い追いすがる。
「クッ……バイタルジャンプは、他人も一緒に飛ばせるのか?……答えろ、ブレン」
蒼いブレン……ネリー・ブレンもブレンバーでチャクラ射撃、援護する。が、悪鬼のごとき真ゲッター1は、慣性機動を無視した動きで避ける。
(…………)
(………ブレン、行けるか!?)
「……よし、掴まれ。エイジッ!」
「え?うわッ!」
「ゲッタァァァァァ!ビィィィィィィムッ!」
胸部展開、ゲッター線を収束した光条が二体の居た場所をなぎ払う。
そう、居た場所だけを。



17 :純真なる抗体、真紅の悪鬼 :sage :2006/06/04(日) 09:49:04 (p)ID:E1XuNESH(7)



「………どこに行ったの」
ネリー・ブレンとフォルテギガスは、その場から消えていた。
バイタルジャンプ……ブレンパワードとグランチャーだけが使える、バイタルネットを介した瞬間移動法。
どうやらこの、地球かそうでないかもわからないようなこの地にもバイタルネットは通っているらしいが……
バイタルネットに非常に似通ったモノ、そんなものでもあるのだろうか。
あるいは……オルファンの意思か。
だが………
そんなこと、今は関係無い。
「ねぇ、どこに行ったの?私のユウ、私の……私だけを見てくれるユウ……」
真ゲッター1のパイロット……クインシィ・イッサーは、弟の幻だけを見つめていた。



【グラキエース 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード)
 パイロット状況:健康
 機体状況:少しEN減少、フォルテギガスの体当たりの時の傷
 現在位置:??(バイタルジャンプにより何処かへと移動した)
 第一行動方針:ジョシュアと合流
 最終行動方針:未決定】

【アルバトロ・ナル・エイジ・アスカ 搭乗機体:フォルテギガス(スーパーロボット大戦D)
 パイロット状況:健康
 機体状況:少しEN消費、機体は無事
 現在位置:???(バイタルジャンプにより何処かへと移動した)
 第一行動方針:当面はラキについていく
 最終行動方針:未決定】

【クインシィ・イッサー 搭乗機体:真ゲッター1(真(チェンジ!)ゲッターロボ〜世界最後の日〜)
 パイロット状況:情緒不安定
 機体状況:問題無し。ゲッタービーム一発分のEN消費
 現在位置:B-1
 第一行動方針:ユウの撃破(ネリー・ブレンにユウが乗ってると思い込んでいる)
 最終行動方針:とにかくユウを殺す】

【時刻:12:30】

※バイタルジャンプは機体のEN残量が十分な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べないということにします。


18 :天駆ける少女  ◆YmyLBuF3ag :sage :2006/06/04(日) 10:41:49 (p)ID:+vqDaXOC(2)
見晴らしのいい草原に少女は立っていた。
「また、人が死んだりする戦いなの……?」
先ほどの、女性の首が吹き飛んだ光景を思い出し、少女は首をぶるりとふるわせた。

少しの間呆然としていたようだったが、ようやく回りの様子に気を配る余裕ができてきたらしく、少女はつぶやく。

「何なんだろ、この世界。ものすごく不自然な気がする」
「草も、木もみんなまがい物みたい。生きてる、って気配がしない」
生体エナジーが希薄とでもいうのだろうか。知り合いの天才少年物理学者にでも聞けば何かわかったかもしれない。

「ねえ、君もそう思うでしょ?」
唐突に、宇都宮 比瑪は傍らに立つ身の丈3mは超えようかという…
ロボットに声をかけた。

「って、喋れないか、君」
ちょっと照れたようにつぶやく比瑪。だが、案に反して答えは返ってきた。

「ラーサー」
やや間延びした、だが確かな返答。

「君、喋れるんだ!」
「ラーサー」
「すごいよ君! 突然こんなことになって、ちょっと不安だったけど。うん、一緒にがんばろう!」
「ラーサー」
何げに会話が成立しているのがすごい。

与えられた知識によれば、このロボットに入ることによって、天駆ける超人に変身できるらしい。
しかしそんな能力よりも、比瑪はこのロボットと意思が通じ合えることが嬉しかった。

(あの部屋には依衣子さんがいた、まずは探してみよう。
 そう、誰とだって分かり合えるはず。あのオルファンとだって私たちは分かり合えたんだから!)

「私、宇津宮比瑪。君、お名前は?」
「ワタシハ ペガス ラーサー ヒメ」
「よろしくね、ペガス!」

【宇都宮比瑪 搭乗機体:ぺガス(宇宙の騎士テッカマンブレード)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:C-3
 第一行動方針:依衣子(クインシィ・イッサー)を探す
 最終行動方針:主催者と話し合う】

【時刻:12:30】

備考:テッカマンブレードへの変身機能ですが、誰でも変身できるように改造されています。
   ただ、ぺガスが他の人の言うことを簡単に聞くかどうかは別の話。
   テッカマンの能力は原作準拠(30分で暴走、ボルテッカは変身一回に付き一発)


19 :月の戦神と黄金の指 ◆IA.LhiwF3A :sage :2006/06/04(日) 10:43:06 ID:5Gaael2A
 A−8。球体のように端と端が密接しあうこの世界の地形にとっては不適切な表現かもしれないが、地図上では最南西に位置するその場所。
 幾重にも連なる荒涼の山並み。その中において、一際高く聳え立つ山の頂に、その機体は堂々たる様子で腕を組み佇んでいた。
 モビルトレースシステムと呼ばれる、操縦者の動きをダイレクトに機体へと伝えるという特殊な操縦方法によって動かされるその機体の名は、
 ガンダムファイト第13回大会におけるネオジャパン代表MF、大会登録番号GF13-017NJ――シャイニングガンダム。
「ふん、中々面白い乗り物じゃあないか。『地に足が着いている』とはよく言ったものだな?」
 漆黒のファイティングスーツに身を包んだギム=ギンガナムは、コックピットの中、組んでいた腕を解き軽々と跳躍した。機体もそれに倣う。
 山から山へ、一切のバランスを崩すことなく飛び移る機体。着地のたびに、重力を乗せた両足が山脈を震わせ、間接部分が撓る。
 が、熾烈な格闘戦を想定して設計された機体は、この程度の移動で悲鳴を上げはしない。
 武人と呼ばれた男、ギンガナムにおいてもそれは同様である。2500年もの時を渡り演習を繰り返してきた部門の家柄は、伊達ではない。
 やがて連峰は途切れ、広がるのは雄大に生い茂った草野原。A−7へと移行したことになる。
 跳び上がった機体の勢いをブースターなりで殺すこともせず、ギンガナムの駆るシャイニングガンダムはそこに降り立った。
 大地が一層荒々しく揺れを起こし、急降下によって生じた突風が機体の周囲を吹き荒れて、繁茂する緑を大きく靡かせる。
 機械の巨人は着地の際に折り曲げていた膝を上げて、仁王立ちの格好でその場に停止した。
 当然コックピットの中のギンガナムも、シャイニングガンダムと寸分違わぬ仁王立ちの状態である。そのままの体勢で、彼は高笑いを上げた。
「ふはははははっ! こいつはいい、黒歴史の中で拝見させてもらった時から目に掛けてはいたが、このマシンは小生によく馴染んでくれる!」
 黒歴史。人々が闘争本能の赴くままに繰り返した戦乱の歴史において登場したこの機械人形のことを、ギンガナムはよく知っている。
 何しろ、自身の愛機であるターンXの武装、溶断破砕マニピュレーターに対して、
 元々はシャイニングガンダムの必殺技である『シャイニングフィンガー』の愛称を与えたのは、他でもない彼自身なのだから。
 実際のところ、ギンガナムの身体能力は本来のMFを駆るパイロット、ガンダムファイター達のそれと比べれば明らかに劣ってはいたが――
 侍の気骨を持つ男とネオジャパン製MF。その二つは、能力や適正を取り払った何らかの領域において、惹かれあうところがあったのだろう。
「ノイ=レジセイアとかいったか、あの声は。要は戦をやれと言うのだろう?
 その要求に応じてやるのも、よかろう――闘争によって人は突き動かされるのだからな!
 シャイニングガンダムとギム=ギンガナムが、黒歴史に代わり万人に示してくれる! 人のあるべき姿というものをなぁ!!」
 我が世の春――戦乱に満ちた情景を待ち望んでいたギンガナムにとって、このゲームは願ってもない絶好の機会。
 真のシャイニングフィンガーをも手に入れて、至極満ち足りた戦闘神が今、動き出す。


【ギム=ギンガナム 搭乗機体:シャイニングガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
 パイロット状況:絶好調である。
 機体状況:異常なし
 現在位置:A-7
 第一行動方針:参加者を見つけ次第闘いを挑む】

【時刻:14:00】


20 :純真なる抗体、真紅の悪鬼 ◆9cdcQ8fLVY :sage :2006/06/04(日) 12:00:10 (p)ID:E1XuNESH(7)
「………」
殺し合い……か。
「……昔を思い出す、な」
負の感情を求め、戦いにばかり明け暮れていたあの頃。
メリオルエッセ…破滅の王の手先、端末、……抗体として生きていた頃。
もう、終わったと思っていたのに……また、戦わなければならない。
「………ジョシュア」
ジョシュア・ラドクリフ。
居るはずだ、この会場のどこかに。
「やはり、会いに行かないと、な」
そうだ。
ジョシュアなら何とかしてくれるはずだ。

「参ったな………」
アルバトロ・ナル・エイジ・アスカは、少なからず戸惑っていた。
グラドス軍からみんなを逃がすため囮に出たら………これだ。
「まずは何処へ……ッ!?」
レーダーに反応。慣れない巨体を動かし、視認する。
「………アレは?」
こちらには気付いていない、が………
「………駄目だ!」
急加速。ブースターを点火し急降下。

「……ユウゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」
「!?」
上空からの強襲、何か、憎悪に満ちたモノが迫る。
蒼いブレンパワードに乗る女………グラキエースは、とっさに動けず固まってしまう。
と、………
「危ない!」
背後から体当たり。ブレンパワードよりも大柄なその機体。
「ジョシュア……?ジョシュアなのか?」
ラキは、見覚えのあるその機体、共に戦ったジョシュアの乗っていた機体、俗に……フォルテギガスと呼ばれるスーパーロボットに聞く。
エイジはビームハンマーを敵機体の居た方向に射出し牽制しながら、言う。
「違う!僕の名はアルバトロ・ナル・エイジ・アスカ、君は狙われている!早くここから逃げよう!」
「逃がすものかッ!ユウ!」
真紅の翼を携えた機体は……真ゲッター1は、ゲッターサイズでビームハンマーを切り払い追いすがる。
「クッ……バイタルジャンプは、他人も一緒に飛ばせるのか?……答えろ、ブレン」
蒼いブレン……ネリー・ブレンもブレンバーでチャクラ射撃、援護する。が、悪鬼のごとき真ゲッター1は、慣性機動を無視した動きで避ける。
(…………)
(………ブレン、行けるのか!?)
「……よし、掴まれ。エイジッ!」
「え?うわッ!」
「ゲッタァァァァァ!ビィィィィィィムッ!」


21 :純真なる抗体、真紅の悪鬼 ◆9cdcQ8fLVY :sage :2006/06/04(日) 12:04:33 (p)ID:E1XuNESH(7)
胸部展開、ゲッター線を収束した光条が二体の居た場所をなぎ払おうとした。が、
(………左!?)
「つッ!」
……ドォォン!!
緊急回避。左方から質量砲撃、それから避けるため上空へ飛び上がる。が、完全には避けきれず脚部に披弾する。
「邪魔をォ………?」
クインシィは、砲撃のあった方向を見るが………誰も、いない。
レーダーの反応もない。
「何なんだ?………ッユウ!」
呆気に取られた間、ブレンパワードは消えていた。

「ぃい〜ッやっほぉ〜!」
クルツ・ウェーバーは喝采をあげていた。
「鬼さんこちらっ手の鳴る方へ〜だ!へへっ、やっぱ見えてないでやんのっと」
ジャミングを最大限に効かせ、物陰に潜ったその機体。そう簡単には見付からないはず。
なにより………
「さすがの鬼にも遠すぎたかな〜?」
隣のエリアからの、超長距離砲撃。クルツの狙撃の腕と、この機体の性能。慣性無視軌道を見切るのは初めてだが、何とかうまくいった。
「この俺を舐めんなよ………」
一方的な攻撃を見て、隙だらけだったから攻撃した。クルツにとってはたったそれだけのこと。
またしばらく、隠れて狙撃。
狙撃屋の本領発揮だ
「鬼に見付からなきゃいいんだ……逃げるか」
クルツはまた、赤い砲撃戦機体……ラーズアングリフの計器類を睨みはじめた。

「………どこに行ったの」
ネリー・ブレンとフォルテギガスは、その場から消えていた。
バイタルジャンプ……ブレンパワードとグランチャーだけが使える、バイタルネットを介した瞬間移動法。
どうやらこの地にもバイタルネットは通っているらしいが……
感じられるのは………違和感。
紛い物の大地、バイタルネットも、本物とはおもえないほど………そう、オーガニックさがない。
だが、
そんなこと、今は関係無い。
「ねぇ、どこに行ったの?私のユウ、私の……私だけを見てくれるユウ……」
真ゲッター1のパイロット……クインシィ・イッサーは、弟の幻だけを見つめていた。
先程、砲撃されたことなど気にもとめずに……。



22 :純真なる抗体、真紅の悪鬼 ◆9cdcQ8fLVY :sage :2006/06/04(日) 12:06:01 (p)ID:E1XuNESH(7)
【グラキエース 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード)
 パイロット状況:健康
 機体状況:少しEN減少、フォルテギガスの体当たりの時の傷
 現在位置:C-1(バイタルジャンプにより移動)
 第一行動方針:ジョシュアと合流
 最終行動方針:未決定】

【アルバトロ・ナル・エイジ・アスカ 搭乗機体:フォルテギガス(スーパーロボット大戦D)
 パイロット状況:健康
 機体状況:少しEN消費、機体は無事
 現在位置:C-1(バイタルジャンプにより移動)
 第一行動方針:当面はラキについていく
 最終行動方針:未決定】

【クインシィ・イッサー 搭乗機体:真ゲッター1(真(チェンジ!)ゲッターロボ〜世界最後の日〜)
 パイロット状況:情緒不安定
 機体状況:脚部に披弾。飛んでいるため少々バランスが悪くなったこと以外問題無い。ゲッタービーム一発分のEN消費
 現在位置:B-1
 第一行動方針:ユウの撃破(ネリー・ブレンにユウが乗ってると思い込んでいる)
 最終行動方針:ユウの殺害】


【クルツ・ウェーバー 搭乗機体:ラーズアングリフ(スーパーロボット大戦A)
 パイロット状況:絶好調
 機体状況:フォールディングソリッドカノン一発消費
 現在位置:B-2
 第一行動方針:近くにいる敵機を狙撃
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【時刻:12:30】

※バイタルジャンプは機体のEN残量が十分な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べないということにします。


23 :悪の美学 ◆ZbL7QonnV. :sage :2006/06/04(日) 14:13:22 (p)ID:CpoOpVj4(6)
「……美しい」
 自らに与えられた機体を眺め、レオナルド・メディチ・ブンドルは溜息を吐いた。
 彼が見据える視線の先には、優美な印象を受ける純白の機体。
 兵器としての無骨な印象に程遠い、芸術品的な美しさを持つ機体があった。
 その名を、サイバスター。地底世界ラ・ギアスにおいて、最強の呼び声も高い“魔装機神”の一つ。
 それが、ブンドルに支給された機体であった。
「なんと……なんと、美しいのか。
 サイバスター……まるで大空に羽撃く白鳥のようだ……」
 胸元の薔薇を指で挟み、それを佇むサイバスターに向ける。
 美を愛し、美の為に生きる。それが彼、レオナルド・メディチ・ブンドルである。
 サイバスターの優美な姿は、彼の美意識を刺激するに十分過ぎるものであった。

「サイバスターよ、お前の美しさに私は誓おう。
 この醜き催しを企てた無粋な主催者……あの者達に、我が美学を知らしめてくれんと……」
 ――悪には美学が存在する。それが、ブンドルの持論である。
 ドクーガに席を置き最高幹部にまで上り詰めた彼の背景には、自らの美学に対する絶対的な信念があればこそだった。
 その美学が、ブンドルに告げていたのだ。
 このバトルロワイアルとやら――美しくない!

「……醜き者よ、今は驕っているが良い。だが、醜き者は滅ぶべき定めにある」
 首輪の線を指でなぞり、ブンドルは小さな声で言う。
 ドクーガの情報局長として、熾烈な情報戦争を勝ち抜いて来た彼である。
 首輪に盗聴機能が仕組まれているだろう事には、とっくに見当が付いていた。
 だからこそ、彼は言った。
 この醜悪な遊戯盤を見下ろして、悦に浸っている主催者へと語り掛けたのだ。

「このレオナルド・メディチ・ブンドルが、滅びの美学を叩き込んでくれよう……」


24 :悪の美学 ◆ZbL7QonnV. :sage :2006/06/04(日) 14:14:52 (p)ID:CpoOpVj4(6)
【レオナルド・メディチ・ブンドル 搭乗機体:サイバスター(魔装機神)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好(ただしハイファミリアは使用不可能)
 現在位置:A-8
 第1行動方針:首輪の解除
 最終行動方針:自らの美学に従い主催者を討つ】

【初日 12:20】


25 :仮面の舞踏会 ◆caxMcNfNrg :sage :2006/06/04(日) 17:18:47 (p)ID:Zk8xtLJk(2)
立ち並ぶ廃墟の間に、赤い巨人の姿があった。
大地に膝をつき、頭部の角を前方に向けた鋼鉄の巨人。
その隣で一人、仮面をつけた男が思案に耽っている。
 白を基調にした厚い布地の衣服に、頭部全面を覆う仮面。
明らかに場違いな格好をした彼の名は、ユーゼス=ゴッツォ。
バルマー帝国第七艦隊の副司令官・・・いや、実質上の支配者である男である。
・・・もっとも、リュウセイ・ダテを始めとするSRXチームや、
優秀なサイコ・ドライバーである彼等を中核としたαナンバーズ、
そして己が分身である、イングラム・プリスケンの手によって、
彼の野望は、その身と共に潰えたはずであった・・・

(そうだ、確かにあの時、我が身は因果地平の彼方へと消え去ったはずだ・・・)

だが、こうして五体満足で存在している。
・・・殺し合いという、腹立たしいゲームの盤上ではあるが。

(主催者・・・レジセイアといったか・・・の見せた力・・・
 そして、勝者に与えられるという、自らの望む世界・・・
 もしや、あれはアカシック・レコードの・・・ならば、あの怨念も・・・)

「・・・どちらにしろ、ここで滅するわけにもいくまい」
 ユーゼスの小さな声が、仮面に遮られ虚空に消える。
「そうだ、この身が現世にあるのだ・・・私は滅びぬ!
 イングラムよ、三度目の邂逅は近いぞ・・・!」
 その言葉と共にユーゼスは、自らの隣にある赤色の巨人を見上げる。
PTX-003C――『古い鉄』という、不名誉な名を与えられた機体を・・・

「ふむ・・・射程距離に不安が残るが・・・まあよいだろう」
 アルトアイゼンに近づきながら、ユーゼスは仮面の下で笑みを浮かべる。
「私の念動力で補えば、充分に生き残れ・・・」


26 :仮面の舞踏会 ◆caxMcNfNrg :sage :2006/06/04(日) 17:20:01 (p)ID:Zk8xtLJk(2)
 不意に・・・上空からの日差しが途絶え、ユーゼスの言葉は途切れた。
仮面の下の笑みを凍りつかせ、ゆっくりと振り返る。

 そこには自らの機体の、ゆうに二倍以上はあろうかという巨人が佇んでいた。


「・・・答えてください、貴方はこのゲームに乗っているんですか?」
 目の前の機体から響く女性の声に、ユーゼスは即答した。
「このゲームを壊そうとしているのも私だ」



【ユーゼス=ゴッツォ 搭乗機体:アルトアイゼン(スーパーロボット大戦IMPACT)
 パイロット状況:良好(ちょっと驚いたのも私だ)
 機体状況:良好
 現在位置:D-4
 第一行動方針:目の前の女性(ベガ)と会話
 最終行動方針:生き残る】

【ベガ 搭乗機体:月のローズセラヴィー(冥王計画ゼオライマー)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好(ビットも健在)
 現在位置:D-4
 第一行動方針:目の前の人物(ユーゼス)と会話
 最終行動方針:仲間を集めて、ゲームから脱出】

【初日 12:30】


27 :悩める少年 :sage :2006/06/04(日) 18:26:44 ID:fiwrpl3w
「……どうしよう」
少年カズイ=バスカークは悩んでいた
女の人が……死んだ…夢じゃないかと、なんどもなんども頬をツネった
痛かった、なんどツネっても痛かった!
これは多分夢じゃない…だったら、殺し合わないといけないのか?
冗談じゃない、そんなこと僕はこめんだ
…それじゃあ、殺し合いに生き残る為に何をしなければならないのか?
隠れようにも、この金色のMSは目立ちすぎだし…
カズイが思考にふけっていると、ふと視界に緑色のMSが目にはいった。
「逃げなきゃ!」
カズイが機体を動かそうとした時
通信がはいる
「おい、そこの金ピカのやつ、お前はこのゲームにのっているのか?」
【カズイ=バスカーク 搭乗機体:百式(機動戦士Zガンダム)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:C-4
 第1行動方針:緑色のMS(マサキ)と話す
 最終行動方針:生き残る】
【マサキ=アンドー 搭乗機体:旧ザク(機動戦士ガンダム)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:C-4
 第1行動方針:金ピカのやつ(カズイ)と話す
 最終行動方針:???】


28 :戦場を駆ける歌 ◆gw.2K3uEb6 :sage :2006/06/04(日) 18:34:20 (p)ID:29/P/jY3(5)
ズドオォォォン。
大きな破壊音とともにたちこめる砂埃、倒れる木々、そして二つの機体。
森の中で出会った二人のエースパイロット。
形は違えどともに平和の為と信じ戦い続けてきた歴戦の勇である。
それが正しかったかはわからないが、互いの信じる正義を貫くために闘い続けてきた。
そこには信念があった、守りたい何かがあった。

今、二人のその理由は薄く、揺らいでいた。
それでも・・・お互いに死ぬことはできなかった。



29 :戦場を駆ける歌 ◆gw.2K3uEb6 :sage :2006/06/04(日) 18:35:25 (p)ID:29/P/jY3(5)
──ゲーム開始直後
ザフト軍のエースパイロット、アスラン・ザラ。
与えられた機体はアナハイム・エレクトロニクス社で開発された
モビルスーツの凡庸性とモビルアーマーの高機動・高火力の両方を兼ね備えた拠点防衛用の機動兵器。
RX-78GP03S、コードネームにデンドロビウムの名を冠するガンダム試作3号機であった。

「ガン・・・ダム?連邦が新しく開発したものなのか?
・・・いや、しかしコンセプトが大分違うみたいだな。ミーティアとドッキングしたジャスティスよりもでかいな。
なるほど、操縦機構は理解した。
あとは実際に動かしてみて誤差を修正する・・・」

周囲に機体反応が無いことをレーダーで確認したのち、試射を行ったときだった。
何も無い空間から機体が突如姿を現した。
見覚えのある機体、かつて親友がその機体に乗り、そして死んでいった機体。
ブリッツガンダムだった。


30 :戦場を駆ける歌 ◆gw.2K3uEb6 :sage :2006/06/04(日) 18:36:12 (p)ID:29/P/jY3(5)
──同時刻
秘密結社OZに所属するエースパイロット、ライトニングカウントの二つ名を持つ男、ゼクス・マーキス。
与えられた機体はX207、電撃侵攻用モビルスーツ、ブリッツガンダム。
特殊兵装搭載可能なX200系フレームで製造されており、一定時間機体を不可視にしてレーダーすらも無効化できるステルス機能、『ミラージュコロイド』を有している。

一通りの操作説明を理解したゼクスはレーダーに点滅表示された機体反応を見た。
即座にステルス化し、発見されるのを防いだ。
「ゲーム参加者かどうか見極める必要があるな・・・」
ゼクスはゲームに乗る気などなかった。
しかし襲ってくる相手ならば撃墜もやむをえないとも考えていた。
ゆっくり、気づかれないように徐々に近づく。
緊張感が次第に高まってくる。
汗がほほを伝って落ちたとき、ゼクスの目には自分に向けられた銃口が確かにうつっていた。
「クソ!!見つかったか・・・!問答無用で襲ってくるとは・・・いきなりゲームに乗ってるやつと出会うとはついてないな」
銃口から放たれるビームを咄嗟に避け、そして即座に反撃を行った。



31 :戦場を駆ける歌 ◆gw.2K3uEb6 :sage :2006/06/04(日) 18:38:40 (p)ID:29/P/jY3(5)
「あの機体は・・・ニコル・・・!!ニコルの機体で・・・お前!!!」
続けて放たれるビームを避けつつ、奇襲を仕掛けようとしていたブリッツガンダムを敵だと認識するまで時間はかからなかった。
そしてこちらからも反撃を行う。
お互い咄嗟のことに頭が混乱しつつも、一つの考えがまとまっていく・・・目の前にいるのは「敵」である、と。
それが勘違いであるとは誰が分かるだろうか、誰が確認できようか。
お互いの銃口からでるビームでともに牽制しながらチャンスをうかがう。
激しいビームのやりとりを行いながら、一瞬のすきをついて
ガンダム試作3号機から多数のマイクロミサイルが飛び交っていく、
ドオオォォォォォン。
大きな音とともに砂埃が視界を覆う。
「やったか・・・?」
そう思ったとき、思いもよらない方向、背後の死角からの攻撃が放たれた。
砂埃にまぎれ、ステルス化したブリッツにより奇襲。
放たれたビームは試作3号機を確実に捉えていた。
「く・・・避けられないか!?ならば・・・」
放たれたビームが試作3号機に当たるか否かという瞬間に、放たれたビームが突如何かに防がれた。
「く・・・なんだ?シールド・・・バリアーか!?」
「はぁはぁ・・・Iフィールド・・・助かった・・・。」

互いに距離をとり、一呼吸おいて再び交戦が開始されようとしたとき、
少し離れた位置から大きな声が響いた。
「おまえらあぁぁぁ!戦いなんてやめて、俺の歌を聞けえぇぇぇぇぇ!!!」
パイロットの歌に呼応するように”神の未知なる音”の名を冠する機械の神・ラーゼフォンから衝撃破が放たれた。
二人のエースパイロットの間を衝撃が駆け抜けて行く。
二機の機体の動きが止み、熱気バサラと呼応するラーゼフォンのデュエットが林を木霊していた。



32 :戦場を駆ける歌 ◆gw.2K3uEb6 :sage :2006/06/04(日) 18:39:55 (p)ID:29/P/jY3(5)
【アスラン・ザラ 搭乗機体:ガンダム試作3号機(0083スターダストメモリー)
 パイロット状況:緊張
 機体状況:軽微損傷、EN消耗
 現在位置:B-6
 第一行動方針:バサラ、ゼクスの様子を伺う
 最終行動方針:未決定】

【ゼクス・マーキス 搭乗機体:ブリッツガンダム(ガンダムSEED)
 パイロット状況:緊張
 機体状況:軽微損傷、EN消耗
 現在位置:B-6
 第一行動方針:バサラ、アスランの様子を伺う
 最終行動方針:未決定】

【熱気バサラ 搭乗機体 ラーゼフォン:(ラーゼフォン)
 パイロット状況:好調
 機体状況:損傷無し
 現在位置:B-6
 第一行動方針:二人の争いを自分の歌で止める
 最終行動方針:主催者に歌を聴かせてゲームを止めさせる】



33 :魔神、起動! ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/04(日) 19:41:29 (p)ID:2WRBv484(3)
「・・・光子力ビームにミサイルパンチ・ブレストファイアーか。すごいなこりゃ、動く弾薬庫だ。」
陽光がさんさんと降り注ぐ硝子張りのコクピットの中、ガロードは嘆息した。
彼が引き当てたカード、それは並みのMSとは比較にすらならない、それこそガンダムクラスをも上回る
重武装・重装甲の要塞のごときロボット“マジンガーZ”。
「このスロットルが出力系で、このスイッチがロケットパンチか・・・」
天性の操縦センス故か、ガロードはMSとはまるで異なる操縦システムを次々とモノにしてゆく。


一通りチェックを済ませ、ガロードは改めて現実的な思考に戻る。

  殺しあい

戦禍で荒廃した世界を腕一つで生き抜いてきたガロードである、当然自分の手を汚したことも一度や
二度ではない。必要とあればこの手で人を殺すことに躊躇いもない。
しかし同時に、彼は人を殺すということを忌避すべきモノであると知っている。死なないで済むなら、
殺さないで済むのならそれにこしたことはない。


34 :魔神、起動! ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/04(日) 19:43:06 (p)ID:2WRBv484(3)
「とりあえず、ティファがいなくて良かった。」
このゲームで最初に集められた、あの金髪の女性が殺された場所にティファの姿は無かった。(代わりにとある兄弟がいたが)
彼女は巻き込まれていない、と考えていいだろう。
最大の懸念が晴れ、ガロードの思考は一つの目標へと集約していく。

 生き残る

どんなに絶望的でも、どれだけ無謀でも、ガロードは諦めない。
生きている限り足掻き続ける、死んだ後のことは死んだ後に考えればいい。

「ティファ、待ってろ。オレは絶対に生きて帰るからな!!」

少年の咆哮に応じるように、漆黒の魔神は重々しく第一歩を踏み出した。


35 :魔神、起動! ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/04(日) 19:44:00 (p)ID:2WRBv484(3)
【ガロード・ラン 搭乗機体 マジンガーZ:(マジンガーZ)
パイロット状況:好調
機体状況:良好、スクランダー無し
現在位置:B-1
第一行動方針:周囲の捜索
最終行動方針:ティファの元に生還する】


36 : ◆YmyLBuF3ag :sage :2006/06/04(日) 20:28:30 (p)ID:+vqDaXOC(2)
18 :天駆ける少女  ◆YmyLBuF3ag :sage :2006/06/04(日) 10:41:49 (p)ID:+vqDaXOC(2)
見晴らしのいい草原に少女は立っていた。
「また、人が死んだりする戦いなの……?」
先ほどの、女性の首が吹き飛んだ光景を思い出し、少女は首をぶるりとふるわせた。

少しの間呆然としていたようだったが、ようやく回りの様子に気を配る余裕ができてきたらしく、少女はつぶやく。

「何なんだろ、この世界。ものすごく不自然な気がする」
「草も、木もみんなまがい物みたい。生きてる、って気配がしない」
生体エナジーが希薄とでもいうのだろうか。知り合いの天才少年物理学者にでも聞けば何かわかったかもしれない。

「ねえ、君もそう思うでしょ?」
唐突に、宇都宮 比瑪は傍らに立つ身の丈3mは超えようかという…
ロボットに声をかけた。

「って、喋れないか、君」
ちょっと照れたようにつぶやく比瑪。だが、案に反して答えは返ってきた。

「ラーサー」
やや間延びした、だが確かな返答。

「君、喋れるんだ!」
「ラーサー」
「すごいよ君! 突然こんなことになって、ちょっと不安だったけど。うん、一緒にがんばろう!」
「ラーサー」
何げに会話が成立しているのがすごい。

与えられた知識によれば、このロボットに入ることによって、天駆ける超人に変身できるらしい。
しかしそんな能力よりも、比瑪はこのロボットと意思が通じ合えることが嬉しかった。

(あの部屋には依衣子さんがいた、まずは探してみよう。
 そう、誰とだって分かり合えるはず。あのオルファンとだって私たちは分かり合えたんだから!)

「私、宇津宮比瑪。君、お名前は?」
「ワタシハ ペガス ラーサー ヒメ」
「よろしくね、ペガス!」

【宇都宮比瑪 搭乗機体:ぺガス(宇宙の騎士テッカマンブレード)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:C-3
 第一行動方針:依衣子(クインシィ・イッサー)を探す
 最終行動方針:主催者と話し合う】

【時刻:12:30】

備考:テッカマンブレードへの変身機能ですが、誰でも変身できるように改造されています。
   ただ、ぺガスが他の人の言うことを簡単に聞くかどうかは別の話。
   テッカマンの能力は原作準拠(30分で暴走、ボルテッカは変身一回に付き一発)
>>18
与えられた知識によれば、このロボットに入ることによって、天駆ける超人に変身できるらしい。
しかしそんな能力よりも、比瑪はこのロボットと意思が通じ合えることが嬉しかった。



比瑪はなによりこのロボットと意思が通じ合えたことが嬉しかった。

に改定お願いします。


37 :赤い彗星 ◆T0SWefbzRc :sage :2006/06/04(日) 20:35:27 (p)ID:dVGW5O2D(6)
 NT能力と因縁。二人が引き合い、お互いが遭遇するのは当然のことであった。
「お前は…シャアか!?」
「そうだ。フフフ、久しぶりだな、アムロ」
「シャア!貴様!」
「おっと。私はこのような愚かなゲームに乗るつもりはない。機体を収めてもらおうか」
「いや、シャア…」
「信用出来ないか?だが、私とて貴様との決着を着ける場所は選びたいのだ」
「そうじゃなくてだな…」
「ならばどうした」
「その、だな。」
「ん?」
「だ、大丈夫なのか、それは?」
「……。」



38 :赤い彗星 ◆T0SWefbzRc :sage :2006/06/04(日) 20:38:10 (p)ID:dVGW5O2D(6)
 空高く、某大佐のパーソナルカラーのように赤い戦闘機が飛んでいる。
エースと呼ばれる女性の思い出の機体。
「なあ、アムロ」
その戦闘機と並列して飛んでいる機体から通信が入る。
「どうした、シャア」
「その機体、色といい、設定といい、私向」
「断る」
いや、機体ではない。その細長い円筒形のボディ。
風を切る、流線形の先端。そして、危険を示す独特のマーク。
「いけずだな。自爆するぞ?」
「貴様も死ぬだろうが」
ボディこそ真っピンクに塗ってあり、なんか先端に角が付けてあるが見間違えようがない。
「それより、少しスピードを下げろ」
「こっちは戦闘機に乗ってるんだ。あまり下げると動かし辛い」
「摩擦熱と風圧で、私の体が持たん時が来ているのだ!」
「分かった。分かったからそんな切ない声出すな…」
赤い彗星、シャア・アズナブルに支給された物。それは…
「どうして核ミサイル外部にシートが付いているのだろうか?」
人類の生みだした最悪の兵器だった。
「知るわけないだろう。というか、乗るなよ」
「仕方あるまい。生身で歩くよりはマシだ。
シートに、マニュアルによれば、だが、高い耐熱性や環境調整能、更には通信機能まで付いている
という実に都合の良いパイロットスーツも掛けてあった事だしな。
ヘルメットのデザインも素晴らしい。
事実、このような高空を、このスピードで飛んでも耐えることが出来ている。
不幸中の幸いというのだろうか」
「いや、こんな所に連れてこられて、そんな物を支給されている時点でもう不幸中の不幸だと思う
んだが…。そういえば、それはどうやって操縦してるんだ?」
「シートに乗ってシートベルトを締めていればファンネルを動かす要領で動かせるようだ」
「サイコフレームでも入っているのか?」
「私が知るわけあるまい」
「もっともだな…」
ミサイルの上でふんぞり返っているネオジオンの総帥を見て、思わずアムロは溜め息を吐く。
(なんで俺はこんな奴に付き合っているんだ?)
チラリ、とシャアに目をやる。
(置いていこうか…?)



39 :赤い彗星 ◆T0SWefbzRc :sage :2006/06/04(日) 20:42:21 (p)ID:dVGW5O2D(6)
アムロは思った。確かにミサイルは速い。その最大速度は戦闘機の比ではないだろう。しかし。
「これは中々キツイものだな」
パイロットが外部に居る以上、その肉体的な面を考えれば戦闘機でも十分にブッチギることが出来
るのではないだろうか。
(いや、出来る!)
そう結論付けた瞬間だった。
「そうだ、アムロ。予め言っておくが」
「私を置いていこうとしたら追い縋って貴様ごと自爆するからな」
シャアの一言で場は凍った。
「ハ、ハハ、俺とお前は今、協力関係にあるんだ。
そんなことする訳がないだろう?
(NTの感覚で分かった…。コイツ、マジだ。マジで自爆するつもりだ)」
「そうか。フ、済まなかったな。疑ったりして。
だが、今の君は私にとっての生命線なのだ。不安になる気持ちも分かってくれ。
(貴様が何を考えてたかなんてお見通しだというのだ!)」
「ハハハ…(頭痛がしてきた…)」
「フフフ…(別の機体が欲しいな…)」
こうして、ライバル同士の奇妙な協力関係は結ばれたのだった。

【アムロ=レイ 搭乗機体:VF-1Jバルキリー(ミリア機)(マクロス7)
 パイロット状況:軽い眩暈、ストレス性の頭痛
 機体状況:良好
 現在位置:G-1
 第一行動方針:シャアと核ミサイルをなんとかする
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【シャア=アズナブル 搭乗機体?:核ミサイル(スーパーロボット大戦α外伝)
 パイロット状況:風圧、加重、摩擦熱により少し疲労
 機体状況:真っピンク
 現在位置:G-1
 第一行動方針:アムロをダシに別の機体を入手する
 第二行動方針:もしくは隙を見てアムロから機体を奪う
 第三行動方針:核ミサイルをなんとかする
 最終行動方針:ゲームからの脱出
備考:特殊なパイロットスーツとシャアのセンスでは素敵なヘルメットを所持、装着
核ミサイルは外部にシートが取り付けてあり、シャア色シャア角カスタムが施されている
核ミサイルはシートに乗った人間の意思で自在に動き爆発する?
また、離着陸も問題なく行える】
【14:30】



40 :護るために ◆tgy0RJTbpA :sage :2006/06/04(日) 21:51:33 (p)ID:oXzgeF0R(2)
背の高い木々が乱立する森林がある。
その合間を縫うように陽光が差し込み、薄く森の中を照らしている。
光を受けるのは木々だけではない。
地にひざまずくようにしている緑色と白に塗り分けられた巨人が光の下にあった。
腕の外側、折り畳まれたアームが特徴的な巨人は森林に影を投げかける。
その影に隠れるように立っているのは黒髪の少年だ。少年は腕を震わせ、巨人を殴りつける。
「ざけんな……」
呟くような声だが、力ない声ではない。どこかから聞こえる川音を除けば、他に音は聞こえない。
風さえも、吹いてはいなかった。
「ざけんな、ざけんなッ!」
少年は巨人に思いをぶつけるかのようにして口を開く。まるで、呪詛の言葉を紡ぐようだ。
夢だと思いたかった。悪夢だと信じたかった。
だから、もう一度巨人に拳を叩きつける。返ってくるのは鈍い音と痛みだ。
あくまでこれは現実として、少年――神名綾人にのしかかる。
逃げ出したかった。だが、それは容易ではない。確かな戒めが、ひんやりと首に巻きついているからだ。
常に死神の鎌を首に当てられている。そんな感覚が、現実になったようだ。
とてつもなくリアルだった。
以前、ドーレムによって現実とは違う世界に送り込まれたことがある。
あのときは、リアルではなかったために心を掻き毟られた。だが、今は正反対だ。
あまりにも鮮明なリアリティが、綾人を掻き乱している。


41 : ◆tgy0RJTbpA :sage :2006/06/04(日) 21:53:55 (p)ID:oXzgeF0R(2)
不安だった。そして、その不安を共有出来る人はいない。自分は、一人ぼっちだ。
綾人は思う。朝比奈もこんな気持ちだったのだろうか、と。
そのことを考えた瞬間、綾人は弾かれたように顔を上げる。現実を恐怖するあまり、大切なことを忘れていた。
「朝比奈……」
呟くと、背筋がゾッとした。恐れが原因ではない。ここにいない人のことを想っての震えだ。
今、自分はここにいる。たった一人で、ここにいる。
ならば。
朝比奈浩子は、今も一人で震えているのではないだろうか。
あの部屋でたった一人、孤独と恐怖に押しつぶされているのではないだろうか。
自分たちの住んでいた世界が偽りの箱庭だったこと。心を許せる人がいないということ。
そして――青い血が流れているということ。
知らない世界で、そんなことを心に燻らせ、震えているのではないだろうか。
綾人は巨人に叩きつけたままの手を離し、見上げる。
こんなことをしている場合ではなかった。早く帰って、朝比奈のところに行かなければ。
生き残らなければならない。決めたのだから。必ず護ると、決めたのだから。
だから、戦おう。生き残って、元の世界へ帰ろう。
「護るんだ。俺が、朝比奈を」
力を込め、そう呟く。自分自身を鼓舞するために。決意を染み込ませるように。
「やってやる。やってやるよ……!」
綾人は巨人に乗り込む。護るために、戦うことを決意して。

【神名綾人(ラーゼフォン) 
 搭乗機体:アルトロンガンダム(新機動戦士ガンダムW  Endless Waltz)
 現在位置:B-5森林地帯
 パイロット状態:健康
 機体状態:良好
 第一行動方針:帰るために他の参加者を探し、殺す。
 最終行動方針:ゲームに乗る。最後まで生き残り、元の世界へ帰る】

【初日:12:30】


42 :人とコンピューター ◆IcNDxBraWs :sage :2006/06/04(日) 22:26:45 (p)ID:k+fGZvPn(2)
「おい、コンピューター!この機体についての説明は今ので終わりだな?」
「ああ、そうだ。そして私の名前はコンピューターではない。トモロ0117だ。」
「は!そんなことはどうでもいいんだよ。」
B-3の上空を飛行する機体、いや戦艦と呼ぶべきか。
白き箱舟Jアークの艦内で金髪の青年、ジョナサン=グレーンは喋っていた。
彼と会話しているのはJアークの制御コンピューター・トモロ0117。
「ク、クフハハ!どうやら俺は当たりを引いたようだな!バロンズゥをも上回る力!!フハハハハハ!!」
ジョナサンはトモロからこの機体の武装、出力そしてキングジェイダーへの変形の説明を聞き、その内容に歓喜した。
「おい、コンピューター!そのキングジェイダーとやらにはどうやってなるんだ?え?」
今だこの機体を引いた幸運に酔いながらジョナサンは尋ねる。
だが・・・
「だから、トモロ0117だといっている。それと・・・お前がキングジェイダーへの変形を行うことは出来ない。」
「・・・あ?なんでだよ?」
トモロの言葉を聞きジョナサンはその理由を尋ねる
「お前のような心の持ち主ではキングジェイダーへの変形など出来ない。それが理由だ。」
「はぁ!?何ふざけたこと言ってやがる!!俺の何が悪いんだよ!!」
さっきまでの幸福感など吹き飛び、ジョナサンは激昂した。
「この殺し合いで!これだけの力!俺に使えないはずなどないっ!!さぁ教えろ!コンピューター!!」
叫ぶジョナサンにトモロはあきれたように言う。
「言うだけは言おう。今お前の立っている所でフュージョンと言ってみろ。」
「ハハっ!初めから言ってればいいんだよ!!」
変形の方法を聞き出し機嫌がよくなったジョナサンは早速試してみる。
「フュージョンッ!!」
しかしジョナサンの声が空しく響いた以外に変化はない。
「フュージョンッッ!!!!」
もう一度言ってみる
しかし相変わらず艦内にはJアークの稼動音しか聞こえない。
「・・・キサマァッ!!この俺になんて事をさせやがる!!何も起きないじゃねぇか!!!」
再び激昂しトモロに向かって叫ぶ。
「お前には出来ないといっただろう。勇気を持つものならジェイダーへとフュージョン出きるはずだ。」
「勇気だと!?この俺が臆病者だと言うのか!!」
冷静に答えを返すトモロにますます頭に血が上り激しく言い放つ。
しばらくジョナサンがトモロに向かって自分がキングジェイダーへの変形を行うことが出来ないことの苛立ちをぶつけていた。
「だいだいこんな物を使うのにに勇気なんて必要なものかよ!!バロンズゥは・・・」
「まて、前方に他の参加者の機影がある。」
突然の報告にジョナサンが黙る。
「どこにいるんだよ?」
「前方だと言っただろう。人型機動兵機のようだ。」
それを聞きジョナサンがしばらく黙る。
モニターに映された白い機体を少しばかり見て。
そして言う。
「戦えそうかよ?」
「戦えないとは言わない。だが戦いずらいだろう。」
「・・・ほんとに俺ではキングジェイダーへの変形はできないんだな?」
「くどいぞ。」
「・・・っち!!役立たずが!!」
「私がいないとこの艦は機能を十分に発揮できないぞ。」
「あ!?なんだと!?」
またもや口論になりかけたその時
「あ、あの・・・すみません。あなたはこのゲームに乗った人ですか?
乗っていないのなら・・・よければなんですけどこのゲームから逃げるために協力しませんか?」
通信から聞こえた声は少年のようだった。



43 :人とコンピューター ◆IcNDxBraWs :sage :2006/06/04(日) 22:32:16 (p)ID:k+fGZvPn(2)
【ジョナサン・グレーン(ブレンパワード) 
 搭乗機体:Jアーク(勇者王ガオガイガー)
 現在位置:Bー4上空
 パイロット状態:健康 (少し怒り気味)
 機体状態:良好 (キングジェイダーへの変形は不可)
 第一行動方針:とりあえず生き残る
 最終行動方針:???】

【キラ・ヤマト(機動戦士ガンダムSEED)
 搭乗機体:ガンダムF−91( 機動戦士ガンダムF−91)
 現在位置:B−4陸地
 パイロット状態:健康
 機体状態:良好
 第一行動方針:ゲームに乗ってない参加者を見つける
 最終行動方針:ゲームから抜け出す】

【初日:12:15】




44 :若い、黒い、脅威 ◆B042tUwMgE :sage :2006/06/04(日) 23:27:20 (p)ID:O0etI8+z(3)
「ったく、面倒なことに巻き込まれちまったなぁ……」
 コクピットに付きながら、ベルナルド=モンシアは一人途方にくれていた。
 いきなりの殺し合い開幕宣言。戦争ではない、敵しかいない戦場。
 友軍機は存在せず、他の『死の第四小隊』メンバーも不在だ。
「敵が全員ジオンの奴らってんなら話は早いんだが……ん?」
 どうするべきかとモンシアが思案していた最中に、さっそく敵影反応が。
「一直線に俺に向かって来てるてことは……どうやら殺る気みてぇだな」
 徐々に視覚でも確認できるようになってきた。その『黒い何か』は、モンシアの機体目掛けて一直線に伸びてくる。
 そのスピードは正に疾風――モビルスーツでもこれだけの運動性を発揮できる機体は中々ない。
「速いじゃねぇか。だがよぉ……どうにも動きが直線的過ぎるぜ。パイロットは若造か?」
 向かってくる変動性のない動きから、モンシアは敵機のパイロットを経験にかける素人と判断した。
 機体に頼りきっただけのスピード。よほど強力な武装でもしているのだろう。そうでなければ、こんな馬鹿な直進はありえない。
「しっかし、まさかこの俺がガンダムを動かすことになるとはな」
 敵はこちらに攻撃を仕掛けてくるつもりだろう。あまりにも好戦的な直進をしている。
 無駄に命は狩りたくないが、自分自身も死ぬつもりはない。
 ならば――戦ってやろうじゃねぇか。
 モンシアは熟練パイロットを思わせる手付きでその支給機体――ガンダムヘビーアームズ改を起動した。

  〜〜〜〜〜

 迫る黒い機体、その姿を知る者は、それを『ブラックゲッター』と呼んだ。
 漆黒のボディに備え付けられたマントは、巻き起こる風により轟音を生み出す。
 ブラックゲッターの腕には取り付けられた刃は、目の前の標的を狙っていた。
 見たところガンダムタイプ……連邦のモノだろうか?
 詳細は知る由もないが、今は殺し合いの真っ最中なのだ。例え相手がガンダムだろうがザクだろうが、やらねばならない。
「――殺し合いを、するんだ」
 バーナード=ワイズマンは、既に決めていた。
 この殺し合いにおける、成すべきことを。
「――全部殺して、生き残る」
 だから、バーニィはゲッターの力を借りた。
「――うわあああああ!」
 がむしゃらに突進し、目の前のガンダムに斬りかかる。
 戦法など思いつかなかった。ただ、この強力すぎるゲッターの力を信じて。


45 :若い、黒い、脅威 ◆B042tUwMgE :sage :2006/06/04(日) 23:28:21 (p)ID:O0etI8+z(3)
 直進するブラックゲッターに、無数のミサイルが襲い掛かる。
 全身が武器の塊であるヘビーアームズ改の特長を生かし、モンシアは惜しみなく攻撃を浴びせた。が、
「くそっ、けっこうやるじゃねぇか!!」
 ブラックゲッターの動きは確かに直線的ではあったが、そのスピードは並大抵のモビルスーツでは追いつけない。
「一匹目から無駄遣いはしたくねぇんだがよ……くらいやがれェェ!!!」
 それでも、ヘビーアームズ改が誇る重装備はさすがのものだった。
 襲い掛かるは、上下左右前方後方全ての位置から降り注ぐホーミングミサイル。
「!」
 気づいた時に既に遅し――逃げ場は、なかった。
 爆炎が、黒いゲッターを包む。

  〜〜〜〜〜

「……逃げやがったか?」
 ミサイルが命中した瞬間、モンシアは勝利を確信した。
 だが、爆煙が収まりその場に残されたのは――漆黒のマントのみだった。
 跡形もなく消し飛んだと思えなくもないが、辺りに残骸が散らばっていないのはおかしい。
 爆煙に紛れて逃げたと思うのが、一番自然だ。
 しかし、放ったミサイルは間違いなく命中した。
 何発命中したかは知らないが、無傷であるはずはあるまい。でなければ逃げる理由がない。
 あの機体の耐久力がどれほどのものかは知らないが、それでもそう遠くには行っていないはず。
「野放しにしたままってのは危険だな……ああいう輩はさっさと始末しとくにかぎるぜ」
 モンシアは、名も知らぬ標的を追う。
 殺し合いに乗る気はないが、殺されてやる義理もない。

  〜〜〜〜〜
 
 襲撃に失敗したバーニィは、酷く焦っていた。
「――クソッ」
 一言だけ漏らす。今は、独り言を吐く余裕もない。
 突然参加を強制させられた殺し合い。齎されたザクを越える機体。
「――生き残ってやる」
 バーニィは、漆黒のゲッターに勝利を願った。
 生きるためには、殺すしかない。そのためにゲッターの力を。
 先の戦闘でブラックゲッターのスペックは分かった。どうやらザク以上に一筋縄ではいかないらしい。
 しかし、その分備わった力は強大だ。何しろあれだけのミサイルを受けきって、なおも健在なのだから。
 この力をうまく使いこなせれば、きっとガンダムにも勝てる。
 バーニィは、ゲッターに勝利を願った。


46 :アンチボディ、二体 ◆f3zMLtBTIk :sage :2006/06/04(日) 23:29:11 (p)ID:d9Cyfsa0(2)
『当たれ…当たれ当たれ当たれ、当たれえッ!』
相対している真紅の人型が持つ銃剣のようなものから、エネルギーの奔流が次々と放たれる。
それらを必死に避けつつ、ジョシュアは相手のパイロットに呼びかけた。
「止めてくれ!俺は君と殺しあうつもりなんてないんだ!」
『うるさいうるさいうるさいッ!あんただって聞いただろ、この殺し合いのルールを!
あんただって見たんだろ、あの女の人が…あの人が…うっ、うわぁぁぁぁぁっ!』
駄目だ。相手はかなり錯乱しているらしく、こちらの言う事に耳を傾けてくれない。
しかし、それも仕方のない事だとジョシュアは思った。
外見と声の感じからして、まだ二十歳にも満たない女の子だろう。
そんな存在が殺し合いに参加しろと強制され、人の死ぬ様を間近で見させられたのだ。平静を保っていられるわけがない。
『あたしだって殺したくない!だけど、この殺し合いから生きて帰るには他の全員を殺すしかないんだ!
だから…あたしは、あんたを殺さないといけないんだぁぁぁっ!』
思った以上に形勢はこちらが不利だ。この「ブレンパワード」という機体―そう呼ぶにはいささか生物的すぎるが―が自分に支給されたとき、
このブレンはまだ生まれたての赤ん坊だったのだ。
コックピットの内壁を通じて流れ込んできた情報によるとブレンも目の前の真紅の機体のような銃剣状の武器を扱えるらしいのだが、
生憎それらしいものは辺りになかった。
(くそ…こうしている間にも、ラキが襲われてるかもしれないのに…!)
あの空間で見た少女の事を思い出し、焦りが募る。
ここに着てからすぐに探しに行こうと思ったのだが、いきなりこの機体に襲われたのだ。
幸い傷は負っていないが、これ以上避け続ける自信はそうはない。
(分の悪い賭けはあまり好きじゃないが…やるしか!)
本当は出来るだけ無傷で戦闘を止めさせたかったが、この状況ではそうも言ってられない。
意を決して、真っ直ぐに真紅の機体を見据える。
「よし…行くぞ、ブレン!」
ジョシュアの掛け声に応じるかのように、ヒメ・ブレンも顔を上げて真紅の機体へと向かっていく。
『く…来るな、来るなッ!』
放たれたエネルギー波を障壁で受け止め、そのまま勢いを落とさずに零距離まで近づいていき拳を振り上げる!
『う…うわぁぁぁぁぁっ!?』
「行けぇぇぇぇぇっ!」




「…なんとか、なったか…お疲れ様、ブレン」
額の汗をぬぐい、ブレンを労わるように内壁を撫でてやる。
あの時、正面から殴りつけると見せかけて「バイタル・ジャンプ」…瞬間移動で背後を取り、思いっきり体当たりを仕掛けたのだ。
思わぬ不意打ちを受けた相手は当然対応できずにもろに攻撃を受け…水面に叩きつけられた。
水中から機体を引きずり出してコックピットを開けると、そこには短い赤い髪をした女の子がぐったりとしていた。
口元に手をかざすと、微かに風を感じる。自分の策はどうにか成功したようだ。
(どうにか、気絶させるだけですんだか…よかった)
とりあえずその子を機体から降ろし、自分もその近くに腰を下ろす。
彼女の意識が戻ったら、まずは手荒に扱ったことを詫びよう。
その上でもう一度説得すれば、あるいは彼女も信用してくれるかもしれない。
とにかく、それまでは待つしかない。
(ラキ…どうか、無事でいてくれ…!)
手を組み、額を押し当てて目を瞑りながら、ジョシュアは切に願った。


47 :若い、黒い、脅威 ◆B042tUwMgE :sage :2006/06/04(日) 23:29:20 (p)ID:O0etI8+z(3)
【ベルナルド・モンシア(機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY) 
 搭乗機体:ガンダムヘビーアームズ改(新機動世紀ガンダムW〜Endless Waltz〜)
 現在位置:H−3
 パイロット状態:良好
 機体状態:ホーミングミサイル弾数1/2消費
 第一行動方針:黒い機体(ブラックゲッター)を追撃する。
 最終行動方針:未定】

【バーナード・ワイズマン(機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争)
 搭乗機体:ブラックゲッター(真(チェンジ!)ゲッターロボ 地球最後の日)
 現在位置:H−4
 パイロット状態:軽い疲労
 機体状態:損傷軽微 マント損失
 第一行動方針:ブラックゲッターを使いこなす
 最終行動方針:優勝する】

【初日:13:00】


48 :アンチボディ、二体 ◆f3zMLtBTIk :sage :2006/06/04(日) 23:30:37 (p)ID:d9Cyfsa0(2)
【ジョシュア・ラドクリフ 搭乗機体:ヒメ・ブレン(ブレンパワード)
 パイロット状況:健康
 機体状況:少しEN減少、損傷ほぼ皆無
 現在位置:B-3
 第一行動方針:アイビスが目覚めるまで待機
 第二行動方針:グラキエースを探す
 最終行動方針:未決定】

【アイビス・ダグラス 搭乗機体:クインシィ・グランチャー(ブレンパワード)
 パイロット状況:気絶中
 機体状況:少しEN減少、損傷ほぼ皆無
 現在位置:B-3
 第一行動方針:…
 最終行動方針:未決定
 備考:第二次α開始時ら辺の、いわゆる「鬱ビス」状態です】


49 :金髪お嬢とテロリスト ◆9cdcQ8fLVY :sage :2006/06/04(日) 23:59:00 (p)ID:E1XuNESH(7)
「参ったわね………こんな機体じゃ、クロノクルにも勝てやしない」
仮にもザンスカールのエースパイロットに、割りと失礼なことを呟いた。
「………ていうか、バイクじゃないの。コレ」
バイクのようなマシン………プロトガーランドに乗り、パイロットスーツではなくライダースーツを着る彼女は、カテジナ・ルース。
強化手術を受けてから女らしくなってきた体のラインが、くっきりと解るタイプだ。
胸も、今にもはちきれんばかりに押し上げられている。
「………ドゥカー・イクやレンダじゃないんだから」
とりあえずはガーランドを南に走らせ、ツーリングを楽しむことにした。

「………」
目の前の機体は、まだ俺には気付いちゃいない。
「………ククク」
この機体なら、アレは簡単に殺れる。だが………それじゃ面白くない。
「………遊んでみて、もう一匹ばかし出てくるのを待つとするか………」
そう呟やき、不死身のテロリスト……九龍とも呼ばれるガウルンは、動きだした。


「待ちなァ、嬢ちゃん」
「ッ!?」
いきなり、前方にあらわれた機体に驚き、カテジナはガーランドを急停止させた。
見覚えのあるライン……作られたメーカーは違うようだが、それはまさにMSだった。
(ザンスカール製でも、リガ・ミリティアでもない………でも、ガンダム?)
「嬢ちゃんよォ、この近くに人見なかったかァ?」
暗色系で統一され、赤いアーマーを前面に展開しているが………間違いなくガンダムだ。
「………いいえ、見てないわ」
「そうかい、じゃあ………死になッ!」
「ッ…!」
その機体はアーマーを後方へ展開しはじめた。その隙に、カテジナはガーランドを、ガウルンの反対側へと突っ走らせた。


それから、15分ほど。
カテジナは一つ、ミスを侵していた。
ガウルンの乗っていた機体。それはMSではなく………
「ひゃぁぁぁっはぁぁぁ!マスタークロォォォス!」
MF……モビルファイター、マスターガンダムだったことだ。
ガウルンは、手拭い状の武器をガーランドに伸ばすが、ガーランドはそれを全て間一発で避ける。
(いつまでも、こんなんじゃ………!)
「捕まえたぜぇ!」
いつのまにか、前方へと周り込まれた。MFの俊敏性……故か。
(後少しは遊んでみてもいいが……誰も居ないみてぇだしな。潮時か)
「死にな!ダークネスフィンガー!!」
「つうっ!」
カテジナは轟音とともに迫り来る死を覚悟した。



50 :金髪お嬢とテロリストと執事とアフロ ◆9cdcQ8fLVY :sage :2006/06/05(月) 00:01:15 (p)ID:E1XuNESH(7)



………覚悟していたが、轟音が響き渡るばかりで、痛みも終局も訪れなかった。
「…………?」
「おぉ、大丈夫ですかな?」
見れば、マスターガンダムへと………
「こっちも、………ガンダム?」
砲撃の雨あられを降り被せる機体があった。
「申し遅れました、お嬢様。私、ギャリソン・時田と申します。こちらは、ガンダムレオパルドデストロイでございます」
ガンダム……レオパルドデストロイは、マスターガンダムへと撃った砲撃を緩めた。が、……
「ほほう、あれだけの銃撃を」
「へっ、効かねぇよ。……効かねぇなぁ!」
マスターガンダムは、銃撃の大半を蹴り払い、受けとめ、避け続けていた。
(やっと骨のあるやつが出てきたじゃねぇか……)
当初の目的である、別の人物。しかもかなり腕がたつらしい。
こいつはここらで殺っておきたい。
「死ねや、爺さん!」
「残念ですが、あなたの相手は私ではありません」
「はぁ!?………ッ」
遠方から、しかしその巨体にとっては近距離からの攻撃が来る。
「吹ッ飛べ!G・ワイドブラスター!!」

大質量ビーム砲撃。威力は高く遠距離も対応可能な、機体の本来の使い道たりえる砲撃。当然、当たれば……堕ちる。
「うおっと………!」
今度はガウルンが間一発で回避した。撃った方向には……巨大な「盾」が一体。
「コスモ様、ご支援感謝いたします」
「……それよりあいつは!?ギャリソンさん、戦況を!」
「エネミー1、フレンド2、アナザー1ですな。敵機は格闘戦機体のようですが、ただの機体ではございませぬ。私の機体の砲撃をほぼダメージ無しで切り抜けてございます。アナザー1は味方と解釈してもよろしいでしょうが、小型ですので支援優先かと」
「……了解!」
ギャリソンから戦況の報告を聞いたコスモ………ユウキ・コスモは、ジガンスクード・ドゥロの両腕に装備されていた巨大なアンカーのような武器を打ち鳴らした。



51 :金髪お嬢様と執事とアフロ ◆9cdcQ8fLVY :sage :2006/06/05(月) 00:05:54 (p)ID:K2weuTem(2)


「確かに………」
戦況は不利。
敵は小型機1体、砲撃戦型機1体、特機が1体の計三体。
このマスターガンダムでも持つか解らない。しかも……
「ッ……ぐ……」
体を蝕む病……全身に転移した癌の激痛。モビルトレースシステムは体を激しく動かすため、一度止まると厳しい痛みが走る。
「………ククク」
ここは………


「逃げますかな?」
「あばよ!後からまた狩ってやるぜぇ!」
マスターガンダムは機動兵器とは思えない機動で撤退していった。
(退いた……か)
緊張か放たれたカテジナは、体の放熱をするため、ライダースーツのファスナーにてをかけ、胸もとギリギリまでおろした。
フルフェイスヘルメットを取り、長い髪を解放する。
「ふぅ………ありがとう。ギャリソンさん、と言ったかしら?」
「ああ、お嬢様。私のことはギャリソンと呼んでいただければ結構です」
「で………あなたたちは?」


「……そう」
「特に目的は無いって所ですな」
一通り自己紹介をして、互いの状況を話し合う。
「アンタは?」
「私も……知った人は居なかったから」
「そうか……」
ギャリソンは、カテジナが髪を掻き上げる仕草を見て、感じた。
(お姉さんの魅力、というヤツですかな?)
確かに金髪のお姉さん+ライダースーツという組み合わせは破壊力がある。
「じゃあ、とりあえずは西にでも行きましょうか」
「あ?いつアンタがついてくるって決まったんだよ」
「うるさいわね。私の機体も一人じゃ何も出来ない。だから、特機の君が前衛、砲撃機のギャリソンさんが後衛、小型で小回りの利く私が遊撃支援。悪くないチームだと思うけれど?」
「ちょうどいいですな。あとは対空対地支援機でもあればいいのですが」
「……チッ」
決まった。
そして、ここにお嬢と執事とアフロという、なんか割と異質なチームが結成された。


52 :お嬢と執事とアフロ ◆9cdcQ8fLVY :sage :2006/06/05(月) 00:09:02 (p)ID:K2weuTem(2)
【カテジナ・ルース 搭乗機体:プロトガーランド(メガゾーン23)
 パイロット状況:健康、なんかすごくエロいライダースーツを着ている。
 機体状況:完全無事。バイク形態。
 現在位置:C-5
 第一行動方針:西に行く
 最終行動方針:ゲームから脱出】


【ギャリソン・時田 搭乗機体:ガンダムレオパルドデストロイ(機動戦士ガンダムX)
 パイロット状況:健康
 機体状況:全弾薬の半分近くを消費
 現在位置:C-5
 第一行動方針:西に行く
 最終行動方針:ゲームから脱出】


【ユウキ・コスモ 搭乗機体:ジガンスクード・ドゥロ(スーパーロボット大戦OG2)
 パイロット状況:健康
 機体状況:無事。ENを少し浪費。
 現在位置:C-5
 第一行動方針:西に行く
 最終行動方針:ゲームから脱出】


【ガウルン 搭乗機体:マスターガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
 パイロット状況:全身持病の癌の激痛。無理すれば戦闘可能
 機体状況:全身に弾痕あり。装甲がへこんだ程度なので戦闘は支障無し。
 現在位置:B-5
 第一行動方針:物陰で休む
 第二行動方針:近くにいる敵機を攻撃
 最終行動方針:皆殺し】

【時刻:14:30】

※マスターガンダムがDG細胞に犯されているかどうかは次以降の書き手に任せます。


53 : ◆caxMcNfNrg :sage :2006/06/05(月) 00:14:23 ID:gKAcuDxU
「これ・・・髭のない、ホワイトドール?」
 それが、支給された機体に対する少女の感想だった。
白を基調とした色の機械人形・・・ホワイトドール。
機体の姿形こそ、彼女の知識にあるものとは違うが、
それは少女のよく知る黒歴史の遺産と酷似していた・・・

 数十分後、素早く操縦法をマスターしたソシエは、
南北に走る道路の上空を、南へと向けて下っていた。
(他の人たちと・・・皆と力を合わせれば、あんな化物でも倒せる!)
 そう、それに、こちらにはホワイトドールがあるのだ。
「髭が無くったって、ホワイトドールはホワイトドールよ!」


 少女は知らない。その機械人形は黒の暦に記されているような物ではないという事を。





―――――――――皆様、類似品にはご注意しましょう―――――――――――



【ソシエ・ハイム 搭乗機体:機鋼戦士ドスハード(戦国魔神ゴーショーグン)
 パイロット状況:良好(機体がガンダム系だと勘違いしています)
 機体状況:良好(AIは取り外され、コクピットが設置されています)
 現在位置:E-5空中を南下中
 第一行動方針:仲間を集める
 最終行動方針:主催者を倒す】

【時刻 12:30】


54 :邪龍空に在り :2006/06/05(月) 02:17:28 (p)ID:+J7nzLcR(3)
男はコンソールに足投げ出し、己の身何がに起きているのかを考え溜め息を吐いていた
「殺し合い、ですか…」
レジセイアと名乗った化け物によって連れてこられたこの世界、
「ガンエデンは存在しない世界とはいえ、どこにでも似た存在は居るものだね。いやはや、なんとも面倒なことに巻き込まれたものだ」
ガンエデンの僕として延命を受け、様々な輩の下についてきた
「ケイサル・エフェス…、あの怨念ともにあの馬鹿共に殺られた時は駄目かと思ったがね…ふふ、まだついてるようだ、ね」
微笑がこぼれる。αナンバーズに倒されたはずの孫光龍は自らの運の良さに酔いしれながらも、機体の起動に取り掛かった。
「しかし、なんとも不思議な機体だね。生物的、昆虫を彷彿させるね。少々気味が悪い」
孫光龍は支給された赤色の昆虫型ロボット「レプラカーン」の動力源が何であるかある程度想像がついていた。
「さしずめ、生きる力、と行ったところかな?ふふ、もってこいじゃないか!!」
オーラバトラーはオーラ力を動力源とする。
そこに普通のオーラと異なった強く、そして歪んだ力、念動力を流しこんでやれば…
「ほぉら、そうだそうだ!もっと吸え、そして私に力を!!力、力をブグゥッ、ガハッ」


55 :腰巾着空に在り :2006/06/05(月) 02:31:52 (p)ID:+J7nzLcR(3)
強すぎる力が行き場を求め暴れだしたのだ。
レプラカーンのサイズが見る間に大きく膨れ上がっていく
「止まれぇ、止まるんだよ!!」
念動力を止め、孫光龍は大きく深呼吸をした
「暴走すると厄介なのは、世界共通だからねぇ。しかし、これは良い物だ。真・龍王機とは勝手が違うが、実に僕向きだ」
レプラカーンが大空に飛び立つ
「見極めなければね、誰に付くかが大切だ。間違えれば、あの美人と同じようにボンッか…
面白い。
さぁ行くとしよう。空が僕を喚んでいる。なんてね、アカシックレコードなのかね、これも」
孫光龍空に在り


56 :それも名無しだ :2006/06/05(月) 02:42:20 (p)ID:+J7nzLcR(3)
【孫光龍】
機体:レプラカーン(ダンバイン)
パイロット状態:健康
機体状態:損傷無し(ハイパー化の兆し在り)
現在位置:F-1
【第一行動方針】情報収集
【第二行動方針】不明
【最終行動方針】生き残る


57 :彼女の答え ◆Y3PBSdzg36 :sage :2006/06/05(月) 02:47:46 (p)ID:Wv+0/HZA(2)
「これが私の機体ね…」
カティアはそうつぶやくと機体を調べ始めた
しばらくして、
「これは!?」
この機体、VF22S・Sボーゲル2Fには反応弾つまり核兵器が搭載されていたのだ
とりあえず持っていることで相手の戦意削減にもなるが…
(できれば使いたくはないですね)
次に索敵をして敵がいないことを確認して考えをまとめようとする
(統夜たちが無事でいて欲しいけど…)
しかし、これは殺し合いなのだ
最後に立っているのは一人なのだ
だが…
(私は、殺せない)
(他に方法はないけれど、私は逆らってみせる)
仲間を集めゲームを脱出する、それが彼女の出した答えだった

(だけど…
あの場所で見た統夜は何かが違っていた
いまの明るい統夜じゃなくてまだ最初のとき、戦うのを拒絶していたころのような…)

「…とにかく仲間を見つけることからはじめましょう」
彼女は行動を開始した


58 : ◆Y3PBSdzg36 :sage :2006/06/05(月) 02:52:33 (p)ID:Wv+0/HZA(2)
【カティア・グリニャール 搭乗機体:VF22S・Sボーゲル2F(マクロス7)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:E-2
 第一行動方針:仲間を集める
 第二行動方針:統夜、テニア、メルアを見つける
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【時刻 12:25】


59 :花言葉は「勇敢」 ◆vBGK6VSBWM :sage :2006/06/05(月) 02:59:28 (p)ID:bvQ0oLUw(2)
「アインストだかなんだかしらねえが、こんな事許せるかよっ!」
 一人だけの艦橋で少年―兜甲児―が叫ぶ。
 Drヘルとの一年以上にも及ぶ戦いを終え、彼はアメリカへの留学直前にこの殺し合いの場に連れてこられた。
 あの部屋での記憶を蘇らせば、ふつふつとこの理不尽なゲームに怒りがこみ上げる。
 Drヘルの一味でさえもあそこまで残酷な仕打ちはしなかったはずだ。
 今すぐにでも、このゲームを打ち壊しあの化け物を倒しにいきたかった。
 だが支給された機体、いや戦艦であるナデシコ級一番艦「ナデシコ」ではその巨躯からして、身動きがとりにくい。
 そしてこのナデシコを動かす上で兜甲児に決定的に足りなかったものがある。
 それはIFSと呼ばれるナノマシンを体内に注入し自分の意思をダイレクトに機体に伝える為のシステムである。
 当然、ナデシコの存在した世界とは異なる世界の住人である甲児がIFSを持っているはずが無かった。
 
 もどかしさを感じながらもどうする事も出来ず、コンソールに右手を置く。
 すると今まで感じた事の無い感覚が全身に伝わる。
 右手には見たことのない模様が浮かび、ナデシコの様々な部分から動き始めた音が聞こえる。
「こいつが、IFSって奴なのか・・・でもいつの間に。」
 連れ去られた間に体をいじられたのかと思うといい気持ちはしない。
 だが、おかげでどうやら操縦する事はできそうだ。


60 :& ◆6.x14AMM0o :sage :2006/06/05(月) 03:00:42 (p)ID:bvQ0oLUw(2)
 しかし、まだ問題は残る。
 戦艦はマジンガーの様にパイロット一人がいれば良いというものではない。
 オペレーター、通信士、操縦士など、様々な人間が居ることではじめて成り立つのである。
 だが、「オモイカネ」と呼ばれるコンピューターが使用できればそれもどうにかなるはずである。
「オモイカネ、俺に力を貸してくれ!」
 IFSというなれない操作方法にぎこちないながらもオモイカネに語りかける。
 だがオモイカネからの返答は一切無い。
 本来、正規クルーではない甲児に不審を抱いているのかオモイカネは沈黙を続けるだけである。
「お願いだ!俺はこのゲームに乗っているわけじゃない!どうにかして止めたいんだ!
 だから、どうしてもお前の力が必要なんだ!オモイカネ!」
 構わず、甲児はオモイカネに伝え続ける。
 殺し合いを止めたいと言う熱い勇敢な意思を。
 数秒の沈黙の後、ナデシコが浮上する。
「答えてくれたのか、オモイカネ。・・・へへっ、これからよろしくな相棒!」

 ―花言葉は勇敢、その通りの思いを乗せナデシコは動き出す―

【兜甲児 搭乗機体:ナデシコ(機動戦艦ナデシコ)
 パイロット状況:良好、少し興奮気味
 機体状況:良好
 現在位置:D-3
 第一行動方針:ゲームを止める為に仲間を集める。
 最終行動方針:アインスト達を倒す】


61 :冥王計画 :2006/06/05(月) 04:26:50 (p)ID:3y7AszVU(4)
この機体に選ばれた者は幸運であっただろうと思う。
このゲームの目的である生き残る事を容易にする事が出来るのだから…
ただし、身体だけは…
「美久!返事をしろ!」
「確か…ジュドー君だったかしら?流石、ニュータイプね。機体に乗っただけで全部分かるなんて」
「何を言っている?…この身体はジュドーと言うのか?成る程。例え、洗脳されても俺自身の記憶と人格を再生するように組んだ再生プログラムが、本来は、俺以外のパイロットを受け付けないというプログラムとの矛盾を解消するにはこうするしかなかったか。」


62 :それも名無しだ :2006/06/05(月) 04:41:00 (p)ID:3y7AszVU(4)
「ジュドー君!何を言ってるの?」
「俺は、ジュドーではない!マサキだ!命令する。状況を話せ!」


なかなか面白い。
レジセイア…もしかしたら、システムの更なる改良が見込める存在だ。
そして、レジセイアに会うには…
「美久!まずは、ここが冥府の始まりだ!」
…しかし、この違和感は何だ?


63 :それも名無しだ :2006/06/05(月) 04:45:54 (p)ID:3y7AszVU(4)
【ジュドー・アーシタ】
機体 ゼオライマー(冥王計画ゼオライマー
状態 良好
場所 D4
第一方針 システムの更なる改良
第二方針 ???


64 :それも名無しだ :2006/06/05(月) 04:52:27 (p)ID:3y7AszVU(4)
【ジュドー・アーシタ】
機体:ゼオライマー
パイロット状態:充実
機体状態:充実
場所:D5
第一方針:システムの改良
第二方針:役に立つ駒を手に入れる
最終方針:???


65 :……ぶっちゃけ、すっげー恥ずかしかった。 ◆ZbL7QonnV. :sage :2006/06/05(月) 05:23:41 (p)ID:J5kBRwJ+(2)
 ゲームの開始から、およそ二時間。
 カテゴリーFの共感能力によって互いの位置を確認したフロスト兄弟は、背中を預けられる人間同士合流すべきとの結論に辿り着き、互いの情報を交換しながら機体を移動させていた。
 彼らの目的はただ一つ、兄弟揃って生き延びる事。
 故に、この殺し合いに乗る事は出来ない。兄弟の片方を殺して生き延びるなど、彼らに出来る訳がなかった。
 兄弟揃って生き延びるには、このゲームを壊すしかない。
 その為にはまず、自分達の意に添わない人間の排除、そして首輪の解除である。
 そう結論付けた兄弟は、まずは自分達の戦力を確認すべく、合流後機体の慣らしを行っていたのだが……。

「に、兄さん……本当にやるのかい?」
「当たり前だ、オルバ。まずは機体の性能を確かめん事には、動き様が無いからな」
「だ、だけど……なんて言うのかな、これはちょっと……」
「恥ずかしがっている場合か、オルバ!」
「に、兄さん……」
「……お前の気持ちは分からなくもない。だが、この状況で生き残る為に手段を選んではいられない」
「それは……そう、だけど……」
「何の因果か我ら兄弟、対になる機体を与えられた。そして、単体での性能は既に確認した。
 ならば次は、我々に支給された機体の真なる力……それをこの目で確かめん事にはどうにもならん」
「で、でもさあ、ちょっとこれは……」

 兄に対して絶対の信頼を置く彼にしては珍しく、オルバはシャギアの言葉に言いよどむ。
 互いの状況を確認する事によって、二人は自分達に与えられた機体が二機揃ってこそ真の力を発揮出来る事を知った。
 ……だが、何と言えば良いのだろうか。
 オルバ・フロストは“それ”を使う事に、そのキーワードを言う事に、妙な気恥ずかしさを感じざるを得なかったのだ。
 まあ兄の方はと言えば、真顔で“私の愛馬は凶暴です”等と言う台詞を吐ける男である。
 こっぱずかしい台詞を吐かせるのならば、自分の遙か上を行く。
(そういう彼にしてみても“愛しています、殺したいほど……”とかは相当に恥ずい台詞だと思うが)
 オルバが感じている気恥ずかしさなど、だからこそ全く感じていない様子だった。
 だが、自分は……。

「ええい、オルバよ! 悩むな、躊躇うな! さあ、私と一緒に――」
「っ――――!」
 途惑いを見せる弟に、シャギアは力強い声で言う。
 そうなると、強い態度で出られると兄に逆らえないのが弟である。
 そんな弟の悲しい習性が、オルバの身体を突き動かし――
 その“キーワード”を、とうとう叫ばせてしまっていた!





66 :……ぶっちゃけ、すっげー恥ずかしかった。 ◆ZbL7QonnV. :sage :2006/06/05(月) 05:24:27 (p)ID:J5kBRwJ+(2)
『――ガドル・ヴァイクラン!!!!』

 ……ぶっちゃけ、すっげー恥ずかしかった。



【シャギア・フロスト 搭乗機体:ヴァイクラン(第3次スーパーロボット大戦〜終焉の銀河へ〜)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:C-3
 第1行動方針:意に添わない人間の排除
 第2行動方針:首輪の解析及び解除
 最終行動方針:オルバと共に生き残る(自分達以外はどうなろうと知った事ではない)
 備考:ガドル・ヴァイクランに合体可能(かなりノリノリ)】

【オルバ・フロスト 搭乗機体:ディバリウム(第3次スーパーロボット大戦〜終焉の銀河へ〜)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:C-3
 第1行動方針:意に添わない人間の排除
 第2行動方針:首輪の解析及び解除
 最終行動方針:シャギアと共に生き残る(自分達以外はどうなろうと知った事ではない)
 備考:ガドル・ヴァイクランに合体可能(かなり恥ずかしい)】

【初日 14:00】


67 : ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/05(月) 16:27:58 (p)ID:hQAriE4r(10)
「無敵戦艦ダイッ!!」
遠目に見るだけで全身から冷や汗が吹き出る。
己が命を賭けて戦った恐竜帝国最強のメカザウルスを傍目に、巴武蔵は歯噛みしていた。
今の彼では勝ち目は無いが、だからと言って目の前の敵を放置するわけにはいかない。
このふざけた殺し合いの舞台であの無敵戦艦がどれほどの破壊と殺戮を振りまくか検討も
つかない。
仲間が要る、己の背中を任せられる仲間が、後を託すに値する友が。

巴武蔵はビルの陰に身を隠していた塔機をゆっくりと慎重に後退させる。
赤青白のトリコロールカラーに身を包んだ巨人・RX-78“ガンダム”は
巨大なハンマーを片手に東へと離脱して行った。


68 : ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/05(月) 16:34:41 (p)ID:hQAriE4r(10)
【巴武蔵 搭乗機体:RX-78ガンダム(機動戦士ガンダム)
パイロット状態:緊張
機体状況:良好、オプションとしてハイパーハンマーを装備
現在位置:D-7 南部市街地
第一行動指針:無敵戦艦ダイに見つからずに東へ移動
第二行動指針:無敵戦艦ダイ打倒の為に信頼できる仲間を集める
第三行動指針:主催者を倒しゲームを止める
備考:無敵戦艦ダイの中の人がハ中人類ではない可能性には思い至ってません】

【初日 12:20】


69 :全ては愛のため ◆u34lXU/BOY :sage :2006/06/05(月) 16:35:52 (p)ID:cyNRTqu9(7)
「どうしよう、これから……」
機体に乗り込んだはいいが……これからどうしよう?
テニアは町の片隅に機体を移し、行動の指針を考えていた。
このゲームには、彼女の知り合いが3人いる。すなわち……統夜、カティアちゃん、メルアちゃんの三人。
統夜は確実にゲームに乗らないと思う。
最初の頃は、頼りなく、すぐ怒鳴ることもあった彼は、闘いを通して成長した。
アル=ヴァンにも認められるほどに。カティアちゃんと、メルアちゃんもとてもゲームに乗るとは思えない。
「やっぱり、統夜達を探すのが一番かな?」
しかし、どうしても嫌なイメージが頭の片隅に残る。
先程、首を吹き飛ばされた女性の姿が焼きついてはなれない。3人がゲームにのっていなくても、確実に
ゲームに乗る人は現れる。その人たちが、統夜達を殺さないなんて保証はどこにもない。
カティアちゃんやメルアちゃんは、私と同じで、そこまでうまく機体を扱えない。死ぬかもしれない。
が、統夜は大丈夫だろう。
統夜の腕なら、絶対に負けない。負けないはずだ。それでも、なおあの女性の姿が統夜とダブる。
(そんなはずない!統夜なら絶対に大丈夫だ!)
目をつぶり、頭を振って幻想を振り払う。そうだ、彼の腕は一緒に乗りつづけた自分が一番知っている。
「はぁ……」
ため息をつき、違うことを考えることにする。じゃあ、仮にうまく合流できたとして……それからどうする?
このゲームから、脱出する?どうやって?首輪はどうする?脱出の方法なんて、思いつかない。
なら、結局一人になるまで戦うしかないのか?あの化け物は、願いをかなえてくれると言っていた。
ふと、くだらない仮定が頭をよぎる。統夜は負けない。負けないなら、勝つということだ。


70 :全ては愛のため ◆u34lXU/BOY :sage :2006/06/05(月) 16:36:35 (p)ID:cyNRTqu9(7)
もし、統夜が一人勝ち残ったとして……彼は何を望むだろう。
もし、誰かを生き返らせるとかなら、誰を生き返らせるか?
どこまでもIfの仮定。実はまったく違うのかもしれない。でも……
体が縮こまるのがよく分かった。もしそうなったら間違いなく、自分ではない。生き返らせるなら、おそらくカ
ティアちゃんだろう。最後の戦いの前、彼女が統夜に告白して……それから2人は一緒に住んでいるのだ。
確かに、統夜は私たちを嫌ってはいない。でも、今彼が一番強く好意を寄せているのは間違いなく……
  カティアちゃん
胸が、締め付けられるように痛い。
あの時、ラフトクランズを統夜が拾ってきたとき、自分もすぐに統夜がどうしようとしているかわかった。
統夜と離れるのが、どうしても嫌だった。だから、私は格納庫に行って……統夜とカティアちゃんを
見つけた。そして、2人が話していることも……
ほんの、ワンテンポの差だった。もし、あと数分早く格納庫についていれば、全て逆転していたはずだ。
でも、現実は今目の目にある通り。カティアと、統夜はお似合いだと思う。それに、カティアは私の大切な
友達だから……
自分も統夜が好きなのに、妥協して。
今になって、いや今まで感じていたけど、隠していたものが、こんな状況になって噴出した。
自分はとても惨めだ。
抱き上げた膝に顔を埋める。しばらくそうしていたかった。けど、それも許されない。
「あ、あの、誰か乗ってますか〜?返事をしていただけませんか?」
「その声……メルアちゃん!?」
「ええっ?テニアちゃんですか?」
自分の殻にこもっていたからだろう。気付かなかったが、何時の間にか目の前にメルアちゃんの乗った機動
兵器があった。
「よかった〜、心細かったんですよ、こんなことになっちゃって……」
「いや、こっちも同じだよ。でも突然目の前にいるんだもん。驚いちゃったよ。」
さっきまでの自分を隠して、「いつもの自分」を貼り付ける。
殺し合いの場に似つかわしくない会話がそこにあった。


71 :全ては愛のため ◆u34lXU/BOY :sage :2006/06/05(月) 16:37:18 (p)ID:cyNRTqu9(7)
「いっしょに、統夜さんを探しましょう」
しばらく、くだらないことを話した後、メルアちゃんが言い出した。
「え……」
「どうしたんですか?」
つい、言葉に詰まってしまった。少しだけ、「いつもの自分」がはがれそうになる。
「いや、なんでもない。一緒に行こう!」
そう言って二人並んで移動しようとしたとき、
カラン、カラン……
「?」
空から、小石より少し大きい程度の石が降ってきて、機体にぶつかった。
見上げると、ビルの屋上に、ある巨大な影があった。
「テニアちゃん、あれ!」
「わかんない、どうする、話し掛ける!?」
私たちがうろたえる。その間に、赤いマフラーをなびかせ、空へと舞い上がり、
「避けて!テニアちゃん!」
足が突然紫電を走らせ、こちらに急降下してくる――!
私は左に、メルアちゃんは右に。咄嗟に機体を横っ飛びさせる。
さっきまで自分たちがいた場所に、稲妻の弾丸が落ちてクレーターを穿つ。
「逃げましょう!テニアちゃん!」
「でも!そっちにいけそうにないよ!?」
「別々です!逃げるほうが先決です!見てください!」
見ると、50mはあろうかという巨人は、ゆっくりとメルアちゃんのいる場所に方向転換していた。
迷っている暇はない。
「分かった!またあおうね!」
喋りながらも機体をフル稼働で移動させる。向こうもまた、同じだった。
「はい!必ず統夜……」
突然、メルアちゃんとの通信が途絶えた。砂嵐のような、不快な音を残して。
「メルアちゃん……?」
嫌な予感がする。とても、嫌な予感が。
油が切れた機械のように、ぎこちなく振り向く。
ラフトクランズ。
青いラフトクランズだった。
メルアちゃんを串刺しにしたのは。
「メルアちゃぁぁぁぁんっ!!」
もう写らない通信機に叫ぶ。しかし、答えはない。代わりに聞こえてきたのは……


72 :全ては愛のため ◆u34lXU/BOY :sage :2006/06/05(月) 16:38:13 (p)ID:cyNRTqu9(7)
「我らがフューリー再興のためにィィィ!!我がラフトクランズの塵となれェェェ!!」
あの、グ=ランドンの声だった。
「そんな……」
グ=ランドンは確かに、あの時死んだはずだ。なのに何故!?
「貴様らまとめてェェェ、ヴォーダの闇に送ってくれるゥゥゥッ!!」
「訳分からないこと叫んでんじゃねぇ、ジジィ!」
マフラーをまいた巨人から声がした。
「我を阻むものに呪いあれかしィィ!!」
Fモードのソードに突き刺さったメルアちゃんの機体を振って、巨人にぶつけようとする。
しかし、巨人は回し蹴りを繰り出して、いとも簡単にそれを砕いた。
もう、間違いない。
メルアちゃんは死んだのだ。
「ああ……ああああ」
さっきまで考えていたことが、現実となった。
「あああああああああああああああッ!!」
そして私は、訳のわからない叫びを残し、逃げるように走り出した。



73 :全ては愛のため ◆u34lXU/BOY :sage :2006/06/05(月) 16:38:56 (p)ID:cyNRTqu9(7)
テニアが逃げ去る間、どちらもテニアにもう目を向けることもなく、お互いの敵を見据えていた。
「我が剣でェェェ!!消えろォォォ!!」
Fモードのソードを最大まで伸ばし、巨人…・…大雷凰に振り降ろした。
「そんな長物に当たるかよ!」
軌跡を完全に見切り、一気に竜馬が……大雷凰が駆ける。
しかし、地面に当たると同時、Fモードのクリスタルは砕け散り、刀身が消滅する。
一気にラフトクランズに高速で接近していた大雷凰に、通常モードに戻った刃を横薙ぎに切った。
「チィィィィィィッ!!」
ついた慣性でそのまま吸い込まれるようにラフトクランズが迫るが、ギリギリで両足で踏ん張ってブレーキを
かけた。残った前方へ流れる力を使い、前方宙返りの要領でラフトクランズの頭を超える。
「おりゃぁぁぁ!!」
「むぅぅぅん!!」
お互い振り向き様に、電撃の足を、水晶の剣を振るう。
ぶつかり合い、拮抗した力が周りに物理現象となって破壊していく。
だが、やはり10m近いサイズの差のため、上から押しつぶすように力をかけられ、ラフトクランズが膝を突く。
「まだだ!まだ負けぬゥゥゥ!!」
急にラフトクランズの輪郭がおぼろげになり、左右2対ずつ、計4体のラフトクランズが姿をあらわした。
「何ィ!?」
「我がフューリーの技術はァァァアアア世界一ィィィィイイ!!」
4体が、本体のラフトクランズを抑える大雷凰に特攻同然でぶつかっていく。
するとたちまち緑の結晶へと変化し、大雷凰を包み込んだ。
「絶望せよぉぉぉぉぉヲヲヲオオオオオォォォヲ!!」
拘束を逃れたラフトクランズは後ろに引くように飛び上がり、ソードモードからガンモードへと武器を切り替え
腹へ接続した。
「オルゴンライフルゥゥファイナルモォォードーォオッ!!」
緑のエネルギーの濁流が大雷凰を消し飛ば……

されなかった。
「おおをををおおおお!?」
「このジジィィィ!!死にやがれぇぇぇ!!!」
驚くことに、大雷凰は僅かに露出した両足のブースターを全力で動かし、その状態のまま空へと舞い上がったのだ。
咄嗟に武器を捨て、シールドとオルゴンクラウドを展開する。
そこへ大雷凰がぶつかった。
オルゴンクラウドを難なく貫いた大雷凰によりシールドを弾き飛ばされ、ラフトクランズは姿勢を大きく崩した。
対して。
「これで終わりだァァ!ライジングメテオ・インフェルノォォォォ!!!」
ぶつかった衝撃で水晶を砕き、自由になった体が、勢いを更に上乗せして迫る!
胸のプラズマコンバーター展開し、足のブースターが唸りを上げた。
明度が3段階は上がるような稲妻がラフトクランズを焼く。
「うぉぉぉおおおおおおお!!!」
ラフトクランズの体が真っ二つになり、下半身が爆炎を撒き散らす。
そして、大雷凰は静かに大地に降り去った。


74 :全ては愛のため ◆u34lXU/BOY :sage :2006/06/05(月) 16:39:39 (p)ID:cyNRTqu9(7)
―― 一方
いったいどれほど走っただろうか?私には、丸一日走った気がする。
メルアちゃんが死んだ。もう、会うこともない。できない。涙で前がろくに見えなかった。
「あっ!?」
ベルゲルミルがすっ転んだ。自分が、前も見ずに動かしていたからだ。
こけて地面に突っ伏す形になると、色々混ぜ込んだわけの分からない思いがとめどなく沸いてくる。
私は友達一人、助けられない。統夜と一緒にいたい。統夜ならどうにかしてくれる。でも、統夜は本当の意
味で私なんて見てない。カティアちゃんもこんな風にいつ死ぬか分からない。カティアちゃんは死んでも生き
返る。でもメルアちゃんはもう無理だ。私は……
突然、目の前に緑色の光が展開される。そして、姿をあらわしたのは、上半身だけとなったラフトクランズだった。
「っ……!」
機体を引き起こして距離を取る。
「おお……おおぉぉ……」
聞こえてくるのは、呻き声。
マシンナリーライフルを抜いて、ラフトクランズへ向ける。さっきまで自分の中に溜まっていたドロドロをまとめ
て掻き出すように叫んだ。
「あんたが!何で生きてるのよ!しかも……なんでメルアちゃんを!」
しかし、テニアの激情に、グ=ランドン心底不思議そうに答えた。
「フューリー再興のため……我らが民のため……我ら以外の種族など……」
こいつは生きてるときと一緒だ。ほかの人たちのことをまるで考えてない。ゴミ程度にしか考えてない。
トリガーを抑える指に力が入る。
「なんで……そんな理由のために!?」
「ならば……お前にはないのか?」
「何が!?」
「胸をかきむしるほどに願い、腕を伸ばしても届かなかった願いが……変えたい過去が!」
「……!」
胸をかきむしるほどに願い、腕を伸ばしても届かなかった願い……変えたい過去……
ある。それは――
「戦争の勝者を変え、フューリーに栄光を……!この闘いは……その最大の機会なのだぁぁぁ……!」
「それは……」
パシュ
軽い音を立てて、ラフトクランズのコクピットは消え失せた。
メルアちゃんを殺した相手だからだろうか。罪悪感はまるでなかった。
機会。そうだ、チャンスなのだ。胸をかきむしるほどに願い、腕を伸ばしても届かなかった、変えたい過去を
変えるチャンス。統夜が、こちらをもう振り返らないなら、振り返る世界を作ればいいのではないか?
どうせ、死んだらもう自分に次はないのだ。
弱った人なら殺す。強い人は取り入って隙を見て殺す。襲ってくるなら力を見て逃げるか、倒すか決めれば
いい。幸い、このベルゲルミルは、とても強力なロボットだ。黒い想いが自分を満たす。
「見てて、統夜……必ず勝って見せるから」


75 :全ては愛のため ◆u34lXU/BOY :sage :2006/06/05(月) 16:40:23 (p)ID:cyNRTqu9(7)
【メルア=メルナ=メイア 搭乗機体:ジム・カスタム(機動戦士ガンダム0083 )
 パイロット状況:死亡
 機体状況:バラバラ】

【グ=ランゾン・ゴーツ 搭乗機体:ラフトクランズ(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:死亡
 機体状況:下半身消滅、コクピットブロック破壊】

【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:ステルスマーダー化
 機体状況:良好
 現在位置:C−8
 第1行動方針:参加者の殺害
 最終行動方針:優勝】

【流 竜馬 搭乗機体:大雷凰(バンプレストオリジナル)
 パイロット状態:良好
 機体状態:良好
 現在位置:C- 8
 第一行動方針:サーチアンドデストロイ
 最終行動方針:ゲームで勝つ】

【残り52名】

【12時50分】



76 :情け無用のロンリーウルフ ◆eK/Y5OG4jw :sage :2006/06/05(月) 17:00:38 (p)ID:jBOPQZ+M(2)
「……気にいらねぇな」
コクピットのシートに深くもたれて、木戸丈太郎――ブラスター・キッドは独りごちた。
殺し合い。あの訳の分からない化け物は、確かにそう言った。
そして、見せしめにでもするかのように殺された女性。
銀河の必殺仕事人、コズモレンジャーJ9のメンバーであるキッドにとって、死は決して遠い世界のものではない。
キッド自身、幾多の悪人共をハンドガン片手に闇の中へと葬り去ってきた。
必要とあれば自分の手を血で汚すことに躊躇いは無い。事実、自分は今までそうやって生きてきた。
しかし、それとこれとは話が別だ。
悪に苦しめられる人々を救いその無念を晴らす為に、J9は今まで戦ってきたのだ。
自分の銃は、決して罪無き人の命を奪う為にあるのではない。
始末屋にだって誇りはある。いきなり殺し合えと言われて、はいそうですかと従うほど安い生き方はしていない。
それに……こんな所で殺し合いに乗っているようでは、仲間達に会わせる顔が無い。
アイザック、お町、ボウィー。いくつもの死線を共に越えてきた仲間だからこそ分かる。
あいつらが今の自分の立場でも、決して殺し合いに乗ったりはしない。
あくまでアウトローらしく、最後まで自分の信念に従うはずだ。
だからこそ、自分もここで無様な姿を見せる訳にはいかない。
「銀河に名高きJ9をこんな首輪一つで飼い馴らせると思ったら、大間違いだ」
背中に背負ったウルフのマークは、伊達ではないのだ。


身体を起こし、操縦桿を握る。
機体の操縦方法こそブライガーとは大きく異なる物だったが、キッドはすでに器用にものにしていた。
まずは他の参加者を探そう。
他人をむやみに信用できるほど平和ボケしているつもりは無いが、それでも情報を集めなくてはどうにもならない。
それに他の参加者も自分と同じように連れてこられたのなら、ゲームを快く思わない奴もいるだろう。
しかし、相手が殺しを望まない人間では無かったとしたら?
生粋の悪人ならまだいい。こちらも容赦をしてやる余地は無いからだ。
そうでは無く、ただ恐怖に駆られて襲ってくるような相手だったら?
――やりたくは無いが、そのときは覚悟を決めるしかない。
「善人を泣かすような奴らには情無用……だったな、アイザック」
どんな理由があろうと、野放しにしておいてはただいたずらに死人を増やすだけだ。
いざとなったら非情に徹するしかない。
「……ま、今はそんな事考えてたってしょうがねぇな」
一瞬浮かんだ影もどこかへ消えて、キッドの目には不敵な光が宿る。
スラスターを展開。バスターランチャーを肩に担いで、彼の乗機は走り出す。
その額に輝くドクロのマークは、天下無頼のアウトローにこそふさわしい。


「さ〜て、ちょっくらお出掛けと参りますか!」



【木戸丈太郎 搭乗機体:クロスボーンガンダムX2(機動戦士クロスボーンガンダム)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好。バスターランチャーを所持
 現在位置:E-6
 第一行動方針:他の参加者と接触
 第二行動方針:ゲームに乗っている奴らには情無用(場合によっては殺害も辞さない)
 最終行動方針:未決定】



77 :情け無用のロンリーウルフ ◆eK/Y5OG4jw :sage :2006/06/05(月) 17:01:24 (p)ID:jBOPQZ+M(2)
時間書き忘れました

【12:40】


78 :人間様をなめるなよ ◆crnnAi5R12 :sage :2006/06/05(月) 17:47:09 ID:ja+S/fao
「クズめ!」
 コックピットを殴りつけ、神 隼人は頭を冷やす。
 ついさっき起こった出来事は、恐竜帝国と戦い死んでいった、武蔵の事を思い起こさせるに十分だった。
「化物が……人間に歯向かってただで済むと思うな」
 敵討ちをしよう。
 知らない女だけではない。この馬鹿げたゲームに集められ、そして死んでゆく全ての人の。
 その為には戦力が要る。皮肉なことに、その戦力は化物に与えられたものだが。
 まずは自分の手を確認しよう。そう思い、隼人は期待の説明書を読み始めた。
「YF-19、か」
 説明書を読み終わり、確認するように機体の名を呼ぶ。
 自分は中々いい機体を引いたらしい。
 大気圏内巡航速度はマッハ5、ピンポイントバリアという防御装置に加え、多数のミサイルを持ち、ステルス機能まで有している。
「物凄い戦闘機だ。変形まで出来るのか……」
 それに加え、最大の特徴は、フォールドシステム。要するにワープが可能という超高性能機だ。
 素晴らしい。出来るのなら分解して新しいゲッターの研究に役立てたい機能だ。しかし、それは元の世界に帰れればの話。
 今は、主催者を殺すことを第一に考えなければ。
「この身体さえ万全なら、お前を完璧に扱ってやれるんだがな……」
 自分の体を蝕んでいる病は深刻だ。
 VF-19の運動能力は素晴らしい。恐らくこのゲーム一、二を争うことだろう。
 しかし、余り激しい機動をしたり、大きなダメージを負ってしまうと、自分の方が先にくたばってしまう。
 単独での戦闘は、自分の身体では無理がある。
 となると、同じ志のものと組むしかない。
 単独の者と手を組む。これはだめだ。相手がゲームに乗った奴だった場合のリスクが大きい。相手から持ちかけられでもしない限り、此方からの接触は避ける。
 やはり二人以上の組と接触するべきか。仮に本性を隠したケダモノが潜んでいても、二対一ならそうそうやられはしない。
「俺はボインちゃんが好きなんでな……敵は討たせてもらう。化物め」
 その言葉を宣戦布告とし、彼は翼を天へと向けた。
 
 
【神 隼人 搭乗機体:YF-19(マクロスプラス)
 パイロット状況:良好(但し、激しい運動は危険)
 機体状況:良好
 現在位置:H-4
 第一行動方針:高高度からの、地上偵察。
 第二行動方針:二人以上の組との合流(相手が一人の場合、少なくとも自分から接触する気はない)
 最終行動方針:主催者を殺す】



79 :心に、悪魔宿りて  ◆YmyLBuF3ag :sage :2006/06/05(月) 18:03:00 ID:zeFxCMs/
「やっぱり見渡す限りこの世界が広がるだけ…か。簡単には逃がさないって訳だ」
あたりを森に囲まれた都市の一角。高層ビルの屋上に赤い人影が一つ。
「変身しても首輪はついたままか。いまいましいね」
人影は喉元に手をやり呟いた。
これで自分が死ぬかは分からないが、命をかけて確かめる気にはならなかった。
とりあえずあたりの様子を確かめ終えたのか、人影はひょいとフェンスを乗り越え……あろうことか高層ビルから飛び降りた。

何事もなかったかのように着地した赤い人影…テッカマンエビルは、
地面に横たわる黒い巨体に近づき、その機体に乗り込んだ。
「ふふ、モビルスーツ、か。思ったよりおもしろいおもちゃみたいだね」
操縦のため人間形態になった相羽シンヤは、与えられた記憶を確認しコクピットの中で独りごちる。

「人間どもを全滅させるだけなら僕の力だけでも十分だろうけど、わざわざ探すのも面倒くさいからね。
 このデカブツなら向こうからやってきてくれるだろう。
早くこんなゲームは終わらせて、タカヤ兄さんとの決着をつけにいかないとね」
 ここにはいない宿敵に想いを募らせるシンヤ。
 彼は、このゲームを兄との勝負の障害程度にしか考えていないようである。 

「それじゃ人間どもをたたきつぶしにいこうか。この木偶と僕の力ならたやすいことだからね」
シンヤは胸にしまったクリスタルをなぜながらそうつぶやいた。
その言葉には全く妥協の余地はなく、その双眸にはなんの躊躇も見られない。

かつて一人の少女を狂わせたその機体は、赤い悪魔を身に宿し、今、ゆるやかに巨躯を震わせ始めた……。

【相羽シンヤ 搭乗機体:サイコガンダム(機動戦士Ζガンダム)
 パイロット状況:良好、変身可能(今は人間形態:テッカマン形態では操縦しにくい)
 機体状況:良好
 現在位置:G-6
 第一行動方針:他の参加者を全滅させる
 最終行動方針:元の世界に帰る】

【時刻 12:45】

(備考:ブラスター化前。エビル初登場の少し後くらいの想定です)


80 :Power trip ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/05(月) 19:53:59 (p)ID:dXyzAV3x(6)
何処とも知れない空をプリベンターウインド
ゼクス・マーキスの駆る黒いの機体が行く。

不思議、いや不自然な体験か。
あのドームで気づくまで、たしかに自分は火星に向かうシャトルにいたはずだ。
まるでビデオのコマを飛ばしたかのように、シャトルの中からあの場所に移動していた。
そしてあの場所で頭に響いてきた声。
「神だとでも言うのか」
神―――――或は悪魔か、あの異形を見るに後者の公算が高いが。
数十名の異なる人間を本人にすら気づかれる事なく一瞬で移動させこんな首輪をはめる。
さらにあのテレパシーのような能力に加えこの空間を作り上げた力。
常識では考えられない減少だ。
そこで自嘲する。
「そんな事を考えている場合でもないか」
今考えなければいけないことは一つ。
どうやってこのキルゲームを終わらせるかだろう。
ゲームに乗り勝者になる?
論外だ、あのスーツの男の言葉どおり、このゲームに乗る道理などない。
例え結果それで自分が死ぬ事になってもだ。
だとするならばすべき事は一つしかない。
この首輪をどうにしかして、このゲームからの脱出またはあの怪物の打倒、それ以外はな

いだろう。
あの怪物を倒す、限りなく難しい事だが不可能ではないだろう。
あの空間で見た限りではこのゲームに乗ろうとする人間は少なかったように見えた。
そういった者達と協力できれば或は。
そして機動性が高く武装は少ないが遠近万能なこの機体が与えられた事も幸運だった。
(接近専用のソードに強力なライフル、そして高機動か、トールギスを思い出すな)
機体の色は真逆だがこの機体はゼクスに良く馴染んだ。
これならば万が一ゲームに乗った参加者と戦う事になろうとも
そう簡単に遅れをとる事はないだろう。
(なるべくなら戦闘は避けたいところだが)


81 :Power trip ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/05(月) 19:54:34 (p)ID:dXyzAV3x(6)
そんな彼の思いを裏切るかのようにすでに戦端は開かれていた。

「やめろよ!こっちには戦う気なんてないんだ!」
プラネットディフェンサーを展開させカミーユが叫ぶ。
しかし相手は取り合おうともせず、猛攻を続ける。
本来ならば勇者が乗るべきスーパーロボット。
だが、今それに乗る男は勇者などとは程遠い男だった。
「ひゃぁ〜ははははははぁっ!こいつはいいぜ、この力があればエイジの野郎だってぶっ

殺してやれる!」
本来は勇者がいるべきそこで、ゴステロは凶笑をあげる。
「ありがたい事だぜ!俺にこんな力とこんな舞台を用意してくれて、おまけにプレゼント

まで貰えるなんてようっ!」
スターガオガイガーの圧倒的な力が徐々にメリクリウスの鉄壁を崩し始める。
「くそっ!俺はこんなところで死ぬわけにはいかないのにっ!」
焦燥するカミーユ、このままでは落とされるのも時間の問題だ。
そこにオープンにしていた回線から通信がはいり、それとともに漆黒の機体が現れる。
「こちらプリベンターウインド、そこの二機、すぐに戦闘を停止するんだ!」
聞きなれない男の声、しかしどうやらこのゲームには乗ってないようだ。
「こちらカミーユ・ビダン、一方的に仕掛けられてるんだ!俺はこのゲームに乗る気はない!」
少しの間。そして再び相手から通信が入る。
「了解した、これからそちらを援護する」
そう答えるやいなや漆黒の機体はスターガオガイガーに対して攻撃を開始した。


82 :Power trip ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/05(月) 19:56:50 (p)ID:dXyzAV3x(6)
「たかだか一体増えたところで、この俺様に勝てると思っているのかよっ!」
ゴステロは笑う、事実新しく現れた黒い機体をも、スターガオガイガーは圧倒していた。
相手からの攻撃はプロテクトシュードで弾き、すぐさまブロウクンファントムで反撃に移

る。
速度では相手が圧倒するががパワーが違う。

「まさかこれほどの機体があるとはな!」
ディバイデットライフルを撃ちながらゼクスはそう一人ごちる。
今自分が乗るメディウス・ロクス、通信を受けたカミーユという少年が乗るメリクリウス

はまだ分かる。
だが、対峙する敵は圧倒的だ。今乗っている機体が乗りなれたエピオンだったとしても勝

てるかどうか・・・
「彼が離脱する隙ぐらいは作りたいものだが」
現状ではジリ貧だ。
カミーユも頑張っているがメリクリウスのエネルギーが何処まで続くか怪しい。
せめて、もう一人味方がいれば隙を作る事ぐらいは出来そうなものだが。
そこにメディウスのレーダーに反応が起こった。
「接近する機体が二つ?」
ややゆっくりとしたスピードでその機体は接近してくる。
「様子見だとでも言うのか?しかし、有り難い」
そう呟くとゼクスは一気にメディウスをスターガオガイガーに接近させる。


83 :Power trip ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/05(月) 19:57:20 (p)ID:dXyzAV3x(6)
無論ゴステロも接近する機体には気づいていた
だが、彼はそれを一笑に付した。
今更、どれだけ増えようとも関係ない、今の自分は誰にも止められない。
「ひゃーっはははっ!いいぜぇ、まとめて殺してやるよ!この俺様がな!」
が、現れた金色の機体を見た瞬間、一瞬思考が停止する。
「ザカールだとぉっ!ル・カインの野郎もいやがるのか!」
しかし、地を行くその機体はカラーこそ同じだがザカールではない。
そして一瞬の隙を突き、ゼクスのメディウス・ロクスが迫る。
「あめぇんだよ!」
すぐに接近する機体がザカールではないと判断したゴステロが
再びブロウクンファントムをカウンター気味に放つ。

次の瞬間、ゴステロの眼前、プラネットディフェンサーにより停止するブロウクンファン

トム。

「お前は生きてちゃいけないんだよ!」
上空から今まで防御に徹していたカミーユのメリクリウスのビームソードが
「これで終わりにさせてもらう!」
正面からメディウス・ロクスのコーティングソードが迫る。
「チィィィィィッ!」
一瞬の反応で身を引かせるが二人のエースの攻撃は確実にスターガオガイガーの装甲を切

り裂いた。


84 :Power trip ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/05(月) 19:57:41 (p)ID:dXyzAV3x(6)
「畜生!ここは分が悪いか、いいか!てめぇ等はこの俺様が確実に殺してやるからな!覚

えてやがれ」
オープンチャンネルでそう叫ぶと、ゴステロはこの場から飛び去った。
「何とか凌いだようだな」
「ええ、正直駄目かと思いましたが」
相手が後から現れた二機に気をとられなければ、やられていただろう。
ゼクスは、新たに現れた金色と緑のMSに通信を入れる。
「君達のおかげで助かった、感謝する」
少しの間の後、なぜか怪訝そうな声で二人の少年の声が聞こえた。
「え?何だって?」
「僕達、道に迷ってただけですけど」


85 :Power trip ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/05(月) 19:57:57 (p)ID:dXyzAV3x(6)
【ゼクス・マーキス 搭乗機体:メディウス・ロクス(スーパーロボット大戦MX)
 パイロット状況:健康
 機体状況:良好
 現在位置:C-5
 第一行動方針:味方を集める
 最終行動方針:ゲームからの脱出、またはゲームの破壊】

【カミーユ・ビダン 搭乗機体:メリクリウス(新機動戦記ガンダムW)
 パイロット状況:やや疲労
 機体状況:EN残量少
 現在位置:C-5
 第一行動方針:ゲームに乗っていない人間を探す
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【カズイ=バスカーク 搭乗機体:百式(機動戦士Zガンダム)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:C-5
 第1行動方針:街の方に向かおうとしていた
 最終行動方針:生き残る】

【マサキ=アンドー 搭乗機体:旧ザク(機動戦士ガンダム)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:C-5
 第1行動方針:街の方に向かおうとしていた
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【ゴステロ 搭乗機体:スターガオガイガー(勇者王ガオガイガー)
 パイロット状況:興奮状態
 機体状況:EN減少、胸部と頭部に損傷
 現在位置:D-5
 第一行動方針:エイジ、ゼクス、カミーユを殺す
 最終行動方針:生き残り優勝】


【初日:12:55】


86 :それも名無しだ :sage :2006/06/05(月) 22:17:56 (p)ID:hQAriE4r(10)
「勇、勇・・・どこに居るの?」
抜けるような青空に悪鬼の如き人型機動兵器が一機。
「本当にしょうがない子、ちっともじっとしていないで、いつも心配ばかりかけて・・・」
死神の鎌のを手に、悪魔の翼を背に、赤い鬼は天を駆ける。

やがて、鬼は市街地上空へと差し掛かり
「見られてる?」
不快感、誰かが自分を覗き見している。
クインシィ・イッサーは機体を静止させ、周囲を見渡す。
視線が一点で止まり
「そこかぁぁぁぁあ!!」
悪鬼は逆落としに一つのビルへと
「こそこそと、不愉快なんだよぉぉぉおっ!!」
巨大な戦斧がビルを打ち砕く


87 :それも名無しだ :sage :2006/06/05(月) 22:21:51 (p)ID:hQAriE4r(10)
「うおぉぉぉ!ロケッッットォ・パァァァァンチィ!!」
回線を通して響いたその雄叫びにクインシィが反応した瞬間。
立ち上る煙と破片の貫き漆黒の拳が飛来。着地の直後のわずかな隙を付かれ
悪鬼はなす術も無く、豪腕に殴り飛ばされた。

「行き成り見つかるなんて、もう神様なんて信じないぞ、俺」
煙幕を突破して襲撃者へと迫りつつガロードはぼやく。

つい先ほど、東と南からの戦闘音を耳にしたガロードはマジンガーをビルの
一つ(都合のいいことに、大型車両用のガレージがあった)に隠し、肉眼で
接近する機体がないか監視していた所、この赤い機体が飛来。生身でビルの
影に隠れつつ見張っていたのに、気付かれ降下してきたので大慌てで機体に
乗り込んだのだ。

粉塵を抜けた魔神は起き上がろうとする赤鬼へドリルミサイルの打ち込み
「問答無用ってなぁ、自業自得だぜ!ルストハリケェェェン!」
魔神は容赦なく腐食性の吐息を浴びせる。
「殺しはしないぜ、色々と聞きたいこともあるからな。ついでに食いもん。」


88 :それも名無しだ :sage :2006/06/05(月) 22:28:21 (p)ID:hQAriE4r(10)
「くぅぅ、この!」
歯噛みして動かそうとするが、腐食性の強風を浴びせられた機体は内部機器こそ無事だが
間接部が逝かれてまともに動作しない。
『殺しはしないぜ、色々と聞きたいこともあるからな。ついでに食いもん。』
回線を通して聞こえる少年の声
そのあまりにふざけた(依々子主観)言動に、何かがぶち切れた。

「なめるなぁぁ!どうしたゲッター!お前の力はこんな物じゃないないだろう!?お前は…
お前は強い子なんだから!!」
瞬間、悪鬼の形が崩れた
『な、なんだぁ!?』
融けるように崩れた形は、直ぐに一つの形を成す。
尖がり帽子の様な頭部に細い足。そして腕には…
「これが…この子の力?」
『形が変わった?ちぃ、ルストハリケーンも効いてねぇ!』
暴風を止め、魔神は鉄拳を繰り出す、が
「ドリル・テンペストォォォ!!!」
右腕の巨大なドリルから迸る竜巻が、飛来する鉄拳を明後日の方向へと弾き飛ばし
『うわぁぁぁ』
あまりの豪風に重量20tの鉄の巨人が吹き飛ばされ空を舞う。
強烈な回転モーメントを加えられた魔神は姿勢制御すら儘ならず、激しく回転しながら
地に叩き付けられた。


89 :それも名無しだ :sage :2006/06/05(月) 22:31:40 (p)ID:hQAriE4r(10)
「うぅ…」
霞がかった思考がだんだんと明瞭になってくる。
「いててて、オレは」
全身に走る痛みに顔をしかめながら身を起こしたそうとして、ガロードは気付いた。
身体が自由に動かない。よく見てみると、支給品の毛布とロープで簀巻きにされている。
「お目覚めかい?」
声のしたほうに顔を向けてみると…

赤い悪魔を背景に、勝ち誇った顔で自分を見下ろす少女がいた。


90 :それも名無しだ :sage :2006/06/05(月) 22:39:22 (p)ID:hQAriE4r(10)
【クインシィ・イッサー 塔乗機体:真ゲッター1(真(チェンジ!)ゲッターロボ〜世界最後の日)
パイロット状況:上機嫌
機体状況:ドリルテンペスト一発分EN消費、戦闘のダメージがやや蓄積
現在位置:B-1 市街地
第一行動指針:捕虜(ガロード)から情報を引き出す
第二行動指針:勇の撃破(ヒメ・ブレンに勇が乗っていると思い込んでる)
最終行動指針:とにかく勇を殺す】

【ガロード・ラン 塔乗機体:マジンガーZ(マジンガーZ)
パイロット状況:簀巻き、全身鞭打ち
機体状況:装甲にダメージ蓄積、片腕喪失(ただし近くに落ちている)
ドリルミサイルを10発ほど消費ルストハリケーン一発分のEN消費
現在位置:B-1 市街地
第一行動指針:目の前の少女と会話
第二行動指針:なんとかして毛布を解いてもらう
最終行動指針:ティファの元に生還】

備考:ガロードを簀巻きにしている毛布は支給品。ロープは適当に拾ったものです。
真ゲッターはゲッター1に戻っています。以後も自在にモーフィング可能かどうかは不明です。
B-1の市街地のビルの一つが砕け散り、周囲に戦闘の痕跡があります。


91 :マジンガーZvsゲッターロボ! ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/05(月) 22:43:47 (p)ID:hQAriE4r(10)
トリップとタイトル忘れてた


92 : ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/05(月) 22:48:52 (p)ID:hQAriE4r(10)
【クインシィ・イッサー 塔乗機体:真ゲッター1(真(チェンジ!)ゲッターロボ〜世界最後の日)
パイロット状況:上機嫌
機体状況:ドリルテンペスト一発分EN消費、戦闘のダメージがやや蓄積
現在位置:B-1 市街地
第一行動指針:捕虜(ガロード)から情報を引き出す
第二行動指針:勇の撃破(ヒメ・ブレンに勇が乗っていると思い込んでる)
最終行動指針:とにかく勇を殺す】

【ガロード・ラン 塔乗機体:マジンガーZ(マジンガーZ)
パイロット状況:簀巻き、全身鞭打ち
機体状況:装甲にダメージ蓄積、片腕喪失(ただし近くに落ちている)
ドリルミサイルを10発ほど消費ルストハリケーン一発分のEN消費
現在位置:B-1 市街地
第一行動指針:目の前の少女と会話
第二行動指針:なんとかして毛布を解いてもらう
最終行動指針:ティファの元に生還】

備考:ガロードを簀巻きにしている毛布は支給品。ロープは適当に拾ったものです。
真ゲッターはゲッター1に戻っています。以後も自在にモーフィング可能かどうかは不明です。
B-1の市街地のビルの一つが砕け散り、周囲に戦闘の痕跡があります。
>>90
【初日 12:40】


93 :マジンガーZvsゲッターロボ!(修正版) ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/05(月) 23:28:07 (p)ID:hQAriE4r(10)
【クインシィ・イッサー 塔乗機体:真ゲッター1(真(チェンジ!)ゲッターロボ〜地球最後の日)
パイロット状態:上機嫌
機体状態:ダメージ蓄積、ドリルテンペスト1発分EN消費
第一行動指針:捕虜(ガロード)から情報を聞き出す
第二行動指針:勇の撃破(ネリー・ブレンに勇が乗っていると思い込んでいる)
最終行動指針:とにかく勇を殺す】

【ガロード・ラン 塔乗機体:マジンガーZ(マジンガーZ)
パイロット状態:簀巻き、全身鞭打ち
機体状態:装甲にダメージ蓄積、片腕喪失(近くに落ちている)
ドリルミサイルを10発ほど消費、ルストハリケーン一発分EN消費
第一行動指針:目の前のお姉さんと会話
第二行動指針:なんとかして毛布をほどいて貰う
最終行動指針:ティファの元に生還】

備考:ガロードを簀巻きにしている毛布は支給品、ロープは適当に拾った物です。
真ゲッターはゲッター1に戻っています、以後もモーフィング変形が可能かは不明です。
B-1市街地のビルの一つが砕け散り、周囲には戦闘の痕跡が残っています。


94 :Impact of the Red ◆IA.LhiwF3A :sage :2006/06/06(火) 01:04:05 (p)ID:Gv1oZ9gx(5)
 搭乗者の精神力を糧に動く。その特性からオーラバトラーと呼ばれるマシンの一種であるその機体は、
 現在は通常の運用とは一風違った動力、念動力によって飛行を続けている。
「さあて……そろそろケイサル=エフェスに代わる、僕の付き従うべき相手が見つかってもいい頃なんだがね……」
 赤い強獣の甲殻に身を包んだそれ、レプラカーンのコックピットの中にて、孫光龍は呟いた。
 自らの行動理念――身の安全を確保するために、自分より上の力を持った者の下に付く――に基づき行動を開始して、
 既にかれこれ3時間近くが経過している。
 その間に、彼の駆るレプラカーンは二つのエリアを東に跨ぎ、H−1へと移行していた。
 現在、彼は市街地を目指している。地図上で言えば正反対の方向へと移動していることになるが、
 地図の解説によると、この世界は球体のようにエリアの端と端が密接しているということなので問題はない。

「――ん?」
 風を切って機体を進ませていると、前方に二つの機影が見えた。双方共に、やけに悠長な速度で飛んでいる。
 形状を見る限り、二機ともに人型機動兵器の類ではない。戦闘機と――何だ、あれは。
「……ミサイル、だって?」


 その2機、正確には一機と一基であるが――も、後方から接近してくる機体の存在に気が付いていた。
「どうやら他の参加者のようだな。奴との通信回線を開けるか、アムロ?」
「貴様のせいで捕捉されたようなものだというのに、よく言う――戦闘になったときは、分かってるな?」
「私とて死に様は選ぶさ。核の炎に焼かれて朽ち果てるのは望みではない。ああ、それとだな」
「何?」
「可能な限り、相手の機体は傷付けるなよ。私の機体となるのだからな」
「…………」
 様々な思惑が絡み合う中、白き流星と赤い彗星はそこで会話を切って、背後に迫るレプラカーンへと機体(とミサイルの先端)を向けた。
 真紅に染まった昆虫型の機体。見慣れたMSとはテクノロジーのまるで違う、異形のフォルム。
 シャアがぽつりと、「赤い……」と洩らしたのが聞こえたが、とりあえずは無視しておいた。

「そこで制止しろ、赤い機体のパイロット!」
 繋がった通信回線に向けて、鋭い口調で言う。
 アムロの乗るバルキリーは銃撃戦向けの機体、対して目の前の機体は腰に挿してある一振りの剣を見る限り、
 接近戦を得意としているようだ。戦闘に突入したときのことを考えると、これ以上距離を縮めるのは得策ではない。
 ゲームに乗っていない相手であれば、これで止まってくれる筈だが――

「……ミサイルか。ミサイル……あははは、ははははははっ! こりゃいい、傑作だ! 世の中何が起こるか分からないものだね!
 けれど、悪いね。君達は僕の御眼鏡に適わないようだ――聞こえていたら君達の支給された機体の不幸を呪うがいいさ、はははははははっ!!」
「ええい、戯言を! 第一最後の台詞は私のパクリではないか!」
「黙ってろ、シャア! それとさっさと下がれっ!」
 確かに第3者から見れば笑いを堪えきれない図であるのは分かるが、行動を共にしているこちらからしてみればこの状況は笑い事ではないのだ。
 相手がゲームに乗っている者であるならば、それこそアムロは死に物狂いでシャアを守らなければならない。シャアが核ミサイルに乗っている限り。
 剣を抜き、閃光の如きスピードで突っ込んでくる紅の虫型機体に対し、
 アムロもまた紅の戦闘機を『バトロイド』と名付けられた人型形態へと変形させて迎え撃つ。
 戦闘機、中間形態、人型への変形機構。これこそがバルキリーの最大の特性であり、真骨頂であった。


95 :Impact of the Red ◆IA.LhiwF3A :sage :2006/06/06(火) 01:05:52 (p)ID:Gv1oZ9gx(5)
「何、可変機だって!?」
 単なる一戦闘機と高を括っていたのだろう、レプラカーンが機体の勢いを若干弱める。当然、その隙を見逃すアムロではない。
「堕ちろっ!」
 ガンポッドを腰溜めに構えて連射する。これ以上ないタイミングで放った銃撃は正確にレプラカーンの胸部を捉え、爆散させる――
 ――筈だった。相手が並の機体であれば。
 無数の銃弾がレプラカーンへと直撃する寸前、金属同士がぶつかり合うような甲高い音を立て、空中で弾かれてあらぬ方向へと飛んでいく。
 レプラカーンの全身が、磁場のようなものに包まれ守られている。機体には傷一つ付いておらず、決定打となるはずだった攻撃は完璧に防がれていた。

「何だと――Iフィールド? 違う、実弾すら通用しないだと!?」
「ふふふ……いわゆるバリアってやつさ!」
 だからといって、万能にも程があるだろう――内心で悪態を吐くがどうにもならない。再びレプラカーンが突撃を仕掛けてくる。
 ガンポッドでは止められない。アムロはバルキリーを再度ファイター形態へと戻し、接近してくるレプラカーンと距離を取るべく後方へと一旦離脱。
「おやおや、旗色が悪いと見るやいなや逃げるのかい? なかなか利口だけど……僕が逃がすわけないだろうっ!!」
 背後で何かを打ち出す音がした。遠距離に対応出来る武装も積んであるとは、サイズの割に多彩な戦闘スタイルを持つ機体のようである。
「――当たるものか!」
 バルキリーの機体を僅かに逸らし、強大な熱量を持った光の噴流を回避する。そのまま音速の壁を突き抜け、追い縋るレプラカーンを引き剥がす。
 どうやら飛行速度においては、こちらの方が格段に上であるらしい。となれば、ドッグファイトに付き合ってやる道理はない。一撃離脱で片を付けるまでだ。
 十二分に互いの距離が離れたのを確認して、アムロはバルキリーを一気に反転させた。すっかり小さくなった赤い機影に向かって、逆に最大戦速で接近する。
 迎撃のつもりか、レプラカーンの両脚部から同時に榴弾が放たれるが、何しろ距離が距離である。
 一切の勢いを殺さずにバルキリーを突っ込ませて、アムロはその二発をも躱してみせた。
 ――これならどうだ、迂闊な奴め!
「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
 それは怒濤の如き、されどある種の芸術的な軌跡を描いて殺到する飛翔弾。裂けていく空気、舞う白煙。バルキリーから放たれた相当量のミサイルは、
 その全弾がレプラカーンの赤いボディへ吸い込まれるように飛んでいった。命中する瞬間を見届けることもなく、バルキリーは再度急速反転。
 遠ざかる二機の距離。そして、後方から続けざまに響いてくる爆裂音。アムロはバルキリーの速度を緩めつつ旋回させて、
 雄大な青空に発生した爆煙と機体を向き合わせた。全てのミサイルが無事に命中したらしい。流石に、この一撃で仕留めきれないなどということは――



「いやいや、いいものを見せてもらったよ」
 仕留め切れていなかった。


96 :Impact of the Red ◆IA.LhiwF3A :sage :2006/06/06(火) 01:07:16 (p)ID:Gv1oZ9gx(5)
「……冗談じゃない」
「はは、中々の手応えだったよ。けれどね、僕の念動力によって存分に膨れ上がったオーラバリアだ。どんな攻撃も通用する筈がないのさ!」
 勝ち誇ったような笑みとともに、レプラカーンのパイロットがご丁寧に解説してくれた。
 なるほど、パイロットの思念を感じて増幅する力――どちらかと言えば、Iフィールドよりもサイコフレームの特性に近い力を持つ機体ということか。
 ――厄介な相手だな。実際にどの程度の威力まで無効化出来るかは知らないが、今あるバルキリーの武装で通用するのか?
 アムロは思考を巡らせる。バルキリーが持つ最強の一撃は、ゼントラーディと呼ばれる巨人類の大型戦艦すら撃沈するという反応弾であるが、
 万が一それすらも有効打にならなかった場合もはや打つ手はない。パイロットの口調からは相当の自信が伺える。まさか、ということもありそうだ。
 先刻の空中戦から、逃げ切ることは容易であるということは分かったが、そうなると残されたシャアの核ミサイルが――
 ――シャア?
「おい――」
 ミノフスキー粒子の濃度が異様に高いこの世界では、目視に頼る以外周囲の状況を把握する方法はない。
 アムロは目の前にいる敵機のことも忘れ、バルキリーでその場を大きく旋回して辺りを見回してみた。
 ――いない。
 あのショッキングピンクに角突きという、恥ずかし過ぎる流線型の姿が何処にもない。
 知らぬ間に撃墜された、などということは在り得ない。このエリア内での核ミサイルの爆発というのは、同時にアムロの死をも意味するからである。
 とすれば、残された答えは一つしかない。
 ――逃げられた。アムロを囮に、一人でこそこそと。

「シャアアアアアアアアアアア! 貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ロンド・ベル隊のエースパイロットは、ネオ・ジオン軍総帥の姑息過ぎる逃走にありったけの怒りを込めて叫んだ。


「フフフ……アムロ。大局的に状況を見るということが出来んから、貴様は永遠にパイロットでしかいられんのだ!」
 バルキリーではレプラカーンを堕とすことは出来ない。そのことに気が付いた3秒後くらいには、
 シャアは核ミサイルへと思念を送り戦いの場から遠ざかっていた。当然のことながら、何の躊躇いもなく。アムロに対して申し訳ないなどという情念もなく。
 しかしまあ、見る限りバルキリーとレプラカーンの飛行速度には相当の開きがあったので、アムロの実力ならば充分に撤退可能であろう。
「そうでなくては私のライバルなど務まらんぞ、アムロ。貴様とはいずれ決着を付けるのだからな――」




「――いずれとは言わず、今すぐに付けてやってもいいんだぞ、シャア?」

 空気が凍りついた。


97 :Impact of the Red ◆IA.LhiwF3A :sage :2006/06/06(火) 01:08:42 (p)ID:Gv1oZ9gx(5)


「――まったく。実際あっさり逃げられてしまっては、笑うしかないね……」
 レプラカーンのオーラソードを鞘に収めつつ、光龍は自嘲気味にそうぼやいた。
 とはいえ、収穫が何もなかった訳ではない。想像以上のオーラバリアの耐久性。小さなボディに秘められたそのスペック。
 そう捨てたものではない。むしろ初戦にしては上出来と言っても良かった。結局のところ、相手は自分に傷一つ付けられず、
 這う這うの体で逃げることしか出来なかったのだから。
「――はは、素晴らしいじゃないかレプラカーン!
 今の僕を従えることが出来るような主なんて、このゲームの中に本当にいるのか? なんてね――あははは、はははははっ!!」
 高笑いを上げる光龍をよそに、コックピットの外、レプラカーンの機体は少しずつ、けれど着実に、その質量を増し始めていた。



 けれど、その辺の脅威は今のところこの二人にとっては知ったこっちゃなかったのであった。
「捕まった!? 何をする気だ、アムロ!」
「たかが核ミサイル一基、バルキリーで振り回してやる!」
「馬鹿なことは止めろ! 私の体調不良は始まっているんだぞ!!」
「バトロイド形態は伊達じゃない!!」
「くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」」

 ……知ったこっちゃなかったのであった。



【アムロ=レイ 搭乗機体:VF-1Jバルキリー(ミリア機)(マクロス7)
 パイロット状況:そうやって貴様は、永遠に他人を見下すことしかしないんだ!
 機体状況:ガンポッド、ホーミングミサイル共に若干消費
 現在位置:H-2
 第一行動方針:とりあえず核ミサイルをぶん回す
 第二行動方針:シャアと核ミサイルをなんとかする
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【シャア=アズナブル 搭乗機体?:核ミサイル(スーパーロボット大戦α外伝)
 パイロット状況:大佐の命が……吸われていきます……
 機体状況:真っピンク
 現在位置:H-2
 第一行動方針:方針とか考える余裕ない。助けて
 第二行動方針:アムロをダシに別の機体を入手する
 第三行動方針:もしくは隙を見てアムロから機体を奪う
 第四行動方針:核ミサイルをなんとかする
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【孫光龍 搭乗機体:レプラカーン(聖戦士ダンバイン)
 パイロット状態:オーラバリアの多用により若干の疲労、精神的には至って良好
 機体状態:オーラキャノン一発消費、グレネード二発消費、ハイパー化の兆し在り
 現在位置:H-1
 第一行動方針:情報収集
 第二行動方針:己の力を上回る主を見つける
 最終行動方針:生き残る】

【初日 15:00】


98 :Impact of the Red ◆IA.LhiwF3A :sage :2006/06/06(火) 01:10:27 (p)ID:Gv1oZ9gx(5)
>>97
>第一行動方針:情報収集

>第一行動方針:情報収集のために市街地を目指す

に修正。


99 :憎悪 ◆u34lXU/BOY :sage :2006/06/06(火) 07:56:40 (p)ID:zwk4J0+F(7)
「どうしよう、これから……」
機体に乗り込んだはいいが……これからどうしよう?
テニアは町の片隅に機体を移し、行動の指針を考えていた。
このゲームには、彼女の知り合いが3人いる。すなわち……統夜、カティアちゃん、メルアちゃんの三人。
統夜は確実にゲームに乗らないと思う。
最初の頃は、頼りなく、すぐ怒鳴ることもあった彼は、闘いを通して成長した。
アル=ヴァンにも認められるほどに。カティアちゃんと、メルアちゃんもとてもゲームに乗るとは思えない。
「やっぱり、統夜達を探すのが一番かな?」
しかし、どうしても嫌なイメージが頭の片隅に残る。
先程、首を吹き飛ばされた女性の姿が焼きついてはなれない。3人がゲームにのっていなくても、確実に
ゲームに乗る人は現れる。その人たちが、統夜達を殺さないなんて保証はどこにもない。
カティアちゃんやメルアちゃんは、私と同じで、そこまでうまく機体を扱えない。死ぬかもしれない。
が、統夜は大丈夫だろう。
統夜の腕なら、絶対に負けない。負けないはずだ。それでも、なおあの女性の姿が統夜とダブる。
(そんなはずない!統夜なら絶対に大丈夫だ!)
目をつぶり、頭を振って幻想を振り払う。そうだ、彼の腕は一緒に乗りつづけた自分が一番知っている。
「はぁ……」
ため息をつき、違うことを考えることにする。じゃあ、仮にうまく合流できたとして……それからどうする?
このゲームから、脱出する?どうやって?首輪はどうする?脱出の方法なんて、思いつかない。
なら、結局一人になるまで戦うしかないのか?あの少女は「素敵なご褒美」と言っていた。
「素敵なご褒美」って……なんだろう。おそらく、あの怪物の力を使って何かをする、ということだろうか。
仮に、そうだとしたら、それは大変なものではないだろうか?何しろ、あの怪物は凄い力を持っているのは
間違いないのだ。それを使って何かを成すというなら……
ふと、くだらない仮定が頭をよぎる。統夜は負けない。負けないなら、勝つということだ。
もし、統夜が一人勝ち残ったとして……「ご褒美」が誰かを生き返らせるとかなら、誰を生き返らせるか?
どこまでもIfの仮定。実はまったく違うのかもしれない。でも……
体が縮こまるのがよく分かった。もしそうなったら間違いなく、自分ではない。生き返らせるなら、おそらくカ
ティアちゃんだろう。最後の戦いの前、彼女が統夜に告白して……それから2人は一緒に住んでいるのだ。
確かに、統夜は私たちを嫌ってはいない。でも、今彼が一番強く好意を寄せているのは間違いなく……


100 :憎悪 ◆u34lXU/BOY :sage :2006/06/06(火) 07:58:07 (p)ID:zwk4J0+F(7)
  カティアちゃん
胸が、締め付けられるように痛い。
あの時、ラフトクランズを統夜が拾ってきたとき、自分もすぐに統夜がどうしようとしているかわかった。
統夜と離れるのが、どうしても嫌だった。だから、私は格納庫に行って……統夜とカティアちゃんを
見つけた。そして、2人が話していることも……
ほんの、ワンテンポの差だった。もし、あと数分早く格納庫についていれば、全て逆転していたはずだ。
でも、現実は今目の目にある通り。カティアと、統夜はお似合いだと思う。それに、カティアは私の大切な
友達だから……
自分も統夜が好きなのに、妥協して。
今になって、いや今まで感じていたけど、隠していたものが、こんな状況になって噴出した。
自分はとても惨めだ。
抱き上げた膝に顔を埋める。しばらくそうしていたかった。けど、それも許されない。
「あ、あの、誰か乗ってますか〜?返事をしていただけませんか?」
「その声……メルアちゃん!?」
「ええっ?テニアちゃんですか?」
自分の殻にこもっていたからだろう。気付かなかったが、何時の間にか目の前にメルアちゃんの乗った機動
兵器があった。
「よかった〜、心細かったんですよ、こんなことになっちゃって……」
「いや、こっちも同じだよ。でも突然目の前にいるんだもん。驚いちゃったよ。」
さっきまでの自分を隠して、「いつもの自分」を貼り付ける。
殺し合いの場に似つかわしくない会話がそこにあった。
「いっしょに、統夜さんを探しましょう」
しばらく、くだらないことを話した後、メルアちゃんが言い出した。
「え……」
「どうしたんですか?」
つい、言葉に詰まってしまった。少しだけ、「いつもの自分」がはがれそうになる。
「いや、なんでもない。一緒に行こう!」
そう言って二人並んで移動しようとしたとき、
カラン、カラン……
「?」
空から、小石より少し大きい程度の石が降ってきて、機体にぶつかった。
見上げると、ビルの屋上に、ある巨大な影があった。


101 :憎悪 ◆u34lXU/BOY :sage :2006/06/06(火) 07:59:07 (p)ID:zwk4J0+F(7)
「テニアちゃん、あれ!」
「わかんない、どうする、話し掛ける!?」
私たちがうろたえる。その間に、赤いマフラーをなびかせ、空へと舞い上がり、
「避けて!テニアちゃん!」
足が突然紫電を走らせ、こちらに急降下してくる――!
私は左に、メルアちゃんは右に。咄嗟に機体を横っ飛びさせる。
さっきまで自分たちがいた場所に、稲妻の弾丸が落ちてクレーターを穿つ。
「逃げましょう!テニアちゃん!」
「でも!そっちにいけそうにないよ!?」
「別々です!逃げるほうが先決です!見てください!」
見ると、50mはあろうかという巨人は、ゆっくりとメルアちゃんのいる場所に方向転換していた。
迷っている暇はない。
「分かった!またあおうね!」
喋りながらも機体をフル稼働で移動させる。向こうもまた、同じだった。
「はい!必ず統夜……」
突然、メルアちゃんとの通信が途絶えた。砂嵐のような、不快な音を残して。
「メルアちゃん……?」
嫌な予感がする。とても、嫌な予感が。
油が切れた機械のように、ぎこちなく振り向く。
ラフトクランズ。
青いラフトクランズだった。
メルアちゃんを串刺しにしたのは。
「メルアちゃぁぁぁぁんっ!!」
もう写らない通信機に叫ぶ。しかし、答えはない。代わりに聞こえてきたのは……
「我らがフューリー再興のためにィィィ!!我がラフトクランズの塵となれェェェ!!」
あの、グ=ランドンの声だった。
「そんな……」
グ=ランドンは確かに、あの時死んだはずだ。なのに何故!?
「貴様らまとめてェェェ、ヴォーダの闇に送ってくれるゥゥゥッ!!」
「訳分からないこと叫んでんじゃねぇ、ジジィ!」
マフラーをまいた巨人から声がした。
「我を阻むものに呪いあれかしィィ!!」
Fモードのソードに突き刺さったメルアちゃんの機体を振って、巨人にぶつけようとする。
しかし、巨人は回し蹴りを繰り出して、いとも簡単にそれを砕いた。
もう、間違いない。
メルアちゃんは死んだのだ。
「ああ……ああああ」
さっきまで考えていたことが、現実となった。
「あああああああああああああああッ!!」
そして私は、訳のわからない叫びを残し、逃げるように走り出した。


102 :憎悪 ◆u34lXU/BOY :sage :2006/06/06(火) 08:00:34 (p)ID:zwk4J0+F(7)
テニアが逃げ去る間、どちらもテニアにもう目を向けることもなく、お互いの敵を見据えていた。
「我が剣でェェェ!!消えろォォォ!!」
Fモードのソードを最大まで伸ばし、巨人…・…大雷凰に振り降ろした。
「そんな長物に当たるかよ!」
軌跡を完全に見切り、一気に竜馬が……大雷凰が駆ける。
しかし、地面に当たると同時、Fモードのクリスタルは砕け散り、刀身が消滅する。
一気にラフトクランズに高速で接近していた大雷凰に、通常モードに戻った刃を横薙ぎに切った。
「チィィィィィィッ!!」
ついた慣性でそのまま吸い込まれるようにラフトクランズが迫るが、ギリギリで両足で踏ん張ってブレーキを
かけた。残った前方へ流れる力を使い、前方宙返りの要領でラフトクランズの頭を超える。
「おりゃぁぁぁ!!」
「むぅぅぅん!!」
お互い振り向き様に、電撃の足を、水晶の剣を振るう。
ぶつかり合い、拮抗した力が周りに物理現象となって破壊していく。
だが、やはり10m近いサイズの差のため、上から押しつぶすように力をかけられ、ラフトクランズが膝を突く。
「まだだ!まだ負けぬゥゥゥ!!」
急にラフトクランズの輪郭がおぼろげになり、左右2対ずつ、計4体のラフトクランズが姿をあらわした。
「何ィ!?」
「我がフューリーの技術はァァァアアア世界一ィィィィイイ!!」
4体が、本体のラフトクランズを抑える大雷凰に特攻同然でぶつかっていく。
するとたちまち緑の結晶へと変化し、大雷凰を包み込んだ。
「絶望せよぉぉぉぉぉヲヲヲオオオオオォォォヲ!!」
拘束を逃れたラフトクランズは後ろに引くように飛び上がり、ソードモードからガンモードへと武器を切り替え
腹へ接続した。
「オルゴンライフルゥゥファイナルモォォードーォオッ!!」
緑のエネルギーの濁流が大雷凰を消し飛ば……

されなかった。
「おおをををおおおお!?」
「このジジィィィ!!死にやがれぇぇぇ!!!」
驚くことに、大雷凰は僅かに露出した両足のブースターを全力で動かし、その状態のまま空へと舞い上がったのだ。
咄嗟に武器を捨て、シールドとオルゴンクラウドを展開する。
そこへ大雷凰がぶつかった。
オルゴンクラウドを難なく貫いた大雷凰によりシールドを弾き飛ばされ、ラフトクランズは姿勢を大きく崩した。
対して。
「これで終わりだァァ!ライジングメテオ・インフェルノォォォォ!!!」
ぶつかった衝撃で水晶を砕き、自由になった体が、勢いを更に上乗せして迫る!
胸のプラズマコンバーター展開し、足のブースターが唸りを上げた。
明度が3段階は上がるような稲妻がラフトクランズを焼く。
「うぉぉぉおおおおおおお!!!」
ラフトクランズの体が真っ二つになり、下半身が爆炎を撒き散らす。
そして、大雷凰は静かに大地に降り去った。


103 :憎悪 ◆u34lXU/BOY :sage :2006/06/06(火) 08:01:28 (p)ID:zwk4J0+F(7)
―― 一方
いったいどれほど走っただろうか?私には、丸一日走った気がする。
メルアちゃんが死んだ。もう、会うこともない。できない。涙で前がろくに見えなかった。
「あっ!?」
ベルゲルミルがすっ転んだ。自分が、前も見ずに動かしていたからだ。
こけて地面に突っ伏す形になると、色々混ぜ込んだわけの分からない思いがとめどなく沸いてくる。
私は友達一人、助けられない。統夜と一緒にいたい。統夜ならどうにかしてくれる。でも、統夜は本当の意
味で私なんて見てない。カティアちゃんもこんな風にいつ死ぬか分からない。カティアちゃんは死んでも生き
返る。でもメルアちゃんはもう無理だ。私は……
突然、目の前に緑色の光が展開される。そして、姿をあらわしたのは、上半身だけとなったラフトクランズだった。
「っ……!」
機体を引き起こして距離を取る。
「おお……おおぉぉ……」
聞こえてくるのは、呻き声。
マシンナリーライフルを抜いて、ラフトクランズへ向ける。さっきまで自分の中に溜まっていたドロドロをまとめ
て掻き出すように叫んだ。
「あんたが!何で生きてるのよ!しかも……なんでメルアちゃんを!」
しかし、テニアの激情に、グ=ランドン心底不思議そうに答えた。
「フューリー再興のため……我らが民のため……私さえ戻れば……フューリーはまた立て直せる……
そのためなら、我ら以外の種族など……」
こいつは生きてるときと一緒だ。ほかの人たちのことをまるで考えてない。ゴミ程度にしか考えてない。
トリガーを抑える指に力が入る。
「なんで……そんな理由のために!?」
「ならば……お前にはないのか?」
「何が!?」
「胸をかきむしるほどに願い、腕を伸ばしても届かなかった願いが……」
「……!」
胸をかきむしるほどに願い、腕を伸ばしても届かなかった願い……変えたい過去……
ある。それは……
「本来なら、ヴォーダの闇へと消えるだけの私がまた生を得たのだ・……偶然拾ったこの命、私がやらねば
誰がやる……?」
「そんな……何で他人のことを考えないのさ!あんただって、それさえ考えてれば、アル=ヴァンや統夜み
たいになれたかもしれないのに……」
「ク……ククク、クハハハハハハ!!」
突然狂ったように笑い出すグ=ランドン。


104 :憎悪 ◆u34lXU/BOY :sage :2006/06/06(火) 08:02:13 (p)ID:zwk4J0+F(7)
「実験体ごときが、私を哀れようというのか!愚か!愚かななり!集まったとき分かったぞ!あの場には他
の実験体もいた!あの逆賊の子もいた!あの神々しいまでの威圧感!お前も見ただろう!?この世界よ
り逃げる術など無し!貴様らも仲間同士殺しあうがよい!ハハハハハハ!!
絶望せよォォオヲオオヲヲヲオオオオォォォォオオオオオオオオオオオオッ!!」
「ッ!そのメルアちゃんを殺したアンタが言うなァァァァアア!!」
パシュ
軽い音を立てて、ラフトクランズのコクピットは消え失せた。
メルアちゃんを殺した相手だからだろうか。罪悪感はまるでなかった。
だが、グ=ランドンの言葉が深く圧し掛かる。
結局、1人になるまで殺しあうしかない。逃れる術など無い。
他人を殺すのは、確かに怖い。けど、自分だって、戦争で、散々統夜と機体を駆って戦っていたのだ。
殺してないはずが……ない。
殺すのは怖い。でも、死ぬのはもっと怖い。
でも……結局、帰るには統夜とカティアちゃんも殺さないといけないといけないのか?
「カティアちゃんと、統夜……」
あの、2人を殺す?無理だ。だって、2人とも、大切な友達だから……
「でも……」
さっきの、あくまで仮定だった話がまた首をもたげる。
もし、生き返る言うのなら、
カティアちゃんが死んだら、統夜が。
統夜が死んだら、カティアちゃんが。
捨て鉢な気持ちで心が荒む。どうせ、死んだらもう自分に次はないのだ。なら、やるべきことは一つしかない
じゃないか。
弱った人なら殺す。強い人は取り入って隙を見て殺す。襲ってくるなら力を見て逃げるか、倒すか決めれば
いい。幸い、このベルゲルミルは、とても強力なロボットなのだ。
「………こうなったら、やるしかないじゃないか」
コクピットの中で吐き捨てるようにテニアは言った。



105 :憎悪 ◆u34lXU/BOY :sage :2006/06/06(火) 08:03:12 (p)ID:zwk4J0+F(7)
【メルア=メルナ=メイア 搭乗機体:ジム・カスタム(機動戦士ガンダム0083 )
 パイロット状況:死亡
 機体状況:バラバラ】

【グ=ランドン・ゴーツ 搭乗機体:ラフトクランズ(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:死亡
 機体状況:下半身消滅、コクピットブロック破壊】

【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:ステルスマーダー化
 機体状況:良好
 現在位置:C−8
 第1行動方針:参加者の殺害
 最終行動方針:優勝】

【流 竜馬 搭乗機体:大雷凰(バンプレストオリジナル)
 パイロット状態:良好
 機体状態:良好
 現在位置:C- 8
 第一行動方針:サーチアンドデストロイ
 最終行動方針:ゲームで勝つ】

【残り52名】

【12時50分】



106 :憎悪 ◆u34lXU/BOY :sage :2006/06/06(火) 11:11:46 ID:drAxWCEf
スイマセン、これ以上再投下して要領喰わせるのは不味いんで、
テニア関係のちゃん付けのところ(メルアのセリフ以外全てですね)を全て消して、>>101の
「メルアちゃぁぁぁぁんっ!!」

「メルアッ!嘘でしょ!?返事して!!」
に変更をお願いします。


107 :ウルズ6 :sage :2006/06/06(火) 15:35:18 (p)ID:VfER9SAM(3)
「スナイパーたるもの………狙撃地点は選ばねぇけどな」
クルツは、機体を走らせていた。
広域散布兵器のファランクスミサイルや弾道誘導兵器リニアミサイルランチャー、
超射程大火力の折畳式戦車砲Fソリッドカノン………重戦車のようなこの機体は、
接近戦を苦手とするクルツにとっては、とてもありがたい機体だ。
しかも、この機体は、汎用兵装接続ラックがいくつもあり、撃破した機体の重火器類を携行出来そうな感もある。
まさに歩く火薬庫だ。
だが、機体がいいからと言ったところでクルツは満足しない。
「同時に狙撃屋は現実主義者でな……一度狙撃した地点からは二度と撃ちやしない」
クルツが砲撃を行ったのは、B−2の砂浜。その砂浜にただ一つあった、機体が隠れるほどの岩。
その岩陰から、砲撃を行ったのだ。
「セオリーなら東に逃げるが………」
クルツは南に真っ直ぐむかっていた。
確かに、東に行った方が草原や森が近く隠れる場所は多い。だが────
セオリーとは誰しもが知っているもの、常識のことだ。一流の傭兵、超一流のスナイパーならその裏を掻くことも時にはまた必要なのだ。
「───さぁて、どうすっかな」
クルツの考えはこうだ。
まずこのゲームの一番ベストな終らせ方はなにか?──それは、全員が無事に元の世界に帰還し、このゲームを無かったことにすること。
一番ダメだが、最低限の終らせ方は?───自分だけが生き残る、つまりゲームに乗ることだ。
「──ゲームに乗ってない参加者を探す。そいつらに協力し、この糞ふざけたゲームをぶち壊す。
 ──旗色が悪いようなら、裏切って皆殺しだ」
傭兵は現実主義者だ。特にスナイパー───狙撃屋は。



108 :ウルズ6 ◆Onlx.bOl5I :sage :2006/06/06(火) 15:37:52 (p)ID:VfER9SAM(3)



B−2とB−3の境目───
どうやら賭けには勝ったらしい。レーダーには、さきほどの赤い悪鬼の反応はない。
クルツは、そのまま南下しようとした。
「ん………?」
空気が、空間が震えている。ちょっと先の空間が目に見えて歪む。
「……何だ?」
────シャッ!
奇妙な音がしたかと思うと………蒼のアンチボディと、禍々しい巨人が姿を現した
「ッつ!」
とっさにクルツは、ファランクスミサイルの一斉掃射シークエンスを作動、
効果範囲をアンチボディと巨人の半径50mほど、ちと狭いがその分収束させたミサイルの嵐を浴びせかける。
「っくぅ…………!」
バシュシュシュシュシュシュ………!
ミサイル発射。軽減されたとはいえ、発射の反動は容赦なくコクピットを襲う。
「…………」
───シュゥゥ───ドガガガガガガァァァン!!!
全弾、命中。煙が巻き上がる。
クルツは思う。ミサイル発射は控えよう。吐く。
それに………
「どうせ───効きやしなかったんだろ」
煙の中から、蒼のアンチボディが、───生命の力を秘めた障壁を展開させ───現れた。
「いきなり何をするんだ」
若い女の声。抑揚の無い、感情を抑えた声。
(おほっ、可愛い声じゃないの……声はな)
「び、びっくりした………」
巨人からも声、こちらは──なんだ、男か。
とにかく、状況を整理しないといかん。
ウルズ2もウルズ7もいない───これは、俺一人だけの"ミッション"なのだ。
「一つ聞く………アンタら、このゲームに乗ってンのか?」
「このゲーム?」
クルツの疑念に、蒼のアンチボディのパイロット───アイスドール、グラキエースは、心底不思議な感情を込めた声で答えた。
「私は、ジョシュアを探してるだけだ」


【クルツ・ウェーバー 搭乗機体:ラーズアングリフ(スーパーロボット大戦A)
 パイロット状況:冷静、アンチボディの出現にちょっと驚き
 機体状況:Fソリッドカノン一発消費、ファランクスミサイル1/3消費
 現在位置:B-2南端
 第一行動方針:アンチボディのパイロットと話す
 第二行動方針:ゲームをぶち壊す
 第三行動方針:駄目なら皆殺し
 最終行動方針:ゲームから脱出】



109 :ウルズ6 ◆Onlx.bOl5I :sage :2006/06/06(火) 15:39:20 (p)ID:VfER9SAM(3)
【グラキエース 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード)
 パイロット状況:健康、冷静
 機体状況:チャクラシールドがあったので、無事。バイタルジャンプによりEN1/4減少
 現在位置:B-2南端
 第一行動方針:西に行く
 最終行動方針:ゲームから脱出】


【アルバトロ・ナル・エイジ・アスカ 搭乗機体:フォルテギガス(スーパーロボット大戦D)
 パイロット状況:びっくり。腰を抜かしている?
 機体状況:無事。ENを少し浪費。
 現在位置:B-2南端
 第一行動方針:この場はラキに任せる
 最終行動方針:ゲームから脱出】

【時刻:14:30】


110 :もうあの頃には戻らない ◆B042tUwMgE :sage :2006/06/06(火) 20:44:47 (p)ID:qW49hr59(2)
「また……なのか」
 参加者名簿を見ながら、ザフトエリート兵士の象徴である赤服を着たアスラン・ザラは嘆く。
「また……俺にキラと戦えというのかッ!?」
 分かり合えた友人との――再戦の兆しに。

 アスラン・ザラ、キラ・ヤマト、ラクス・クライン。
 この三名は、同じ世界よりこの殺し合いに召集を受けた仲間関係にある。
 しかし、その関係に至るまでには長く、遠い道のりがあった。
 アスランはザフトのパイロット、キラは連合のパイロット、そしてラクスはプラントの歌姫と、それぞれが異なる位置に身を置き、アスランとキラに至っては敵同士という対極の関係であった。
 だが、それもかつての話。
 お互いの戦友であるニコル、トールの死。連合の卑劣極まりないサイクロプス発動。カガリという二人を繋いでくれた友人の存在。
 そして何より、アスランを導いてくれた元婚約者の存在。
 数々の試練と葛藤を乗り越え、アスランとキラはやっと剣の向き揃えることが出来たのだ。
 今さら戦う理由など、ない。

「それは、ここが殺し合いの舞台でもだ!」
 誰が友を殺してまで生き延びようとするものか――アスランは、このゲームに抗うことを決意した。


【アスラン・ザラ(機動戦士ガンダムSEED)
 搭乗機体:ガイキング(大空魔竜ガイキング)
 現在位置:F−1
 パイロット状態:良好
 機体状態:良好
 第一行動方針:キラ、ラクスとの合流
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【初日:12:20】


111 :仮面の作戦会議 ◆IcNDxBraWs :sage :2006/06/06(火) 21:57:12 (p)ID:8rd/y77S(3)
D-4の廃墟にたたずむ二体の巨人。
その足元で2人、共に顔を仮面で隠し何か話している。
「・・・やはり、私とベガ殿が元いた世界は全くの別物、異なる次元の世界のようだな。」
「信じがたいけれどそのようね。私もバルマーなんて言葉聞いたことないもの。」
ユーゼスとベガは出合ったすぐ後、二人はその場で少しばかり会話をし、ユーゼスの提案でD-4のエリアに大きく広がる廃墟郡へ移動した。
共にゲームからの脱出を試みるもの同士、まずは情報交換ということでそれぞれ自分がこのゲームに参加するまでのいきさつを話していた。
何でも彼女はガルファなる組織に誘拐され、気がつけばあの化け物がいるドームにいたそうだ。
「それにしても、本当に信じられないのは地球が他の惑星へ侵略を行ったということね・・・」
それを聞くとユーゼスは仮面の下でうっすらと笑みを浮かべる。
先ほどユーゼスはレディファーストなどといってベガから先にゲーム参加までの話を聞いた。
すると何と何と、彼女は地球人だというではないか!
これでは間違っても自分がバルマー人で地球を侵略してましたなどという事は言えない。言える訳がない。
地球人からただでさえ見れば変人なのだ。
そこでユーゼスは閃いた。
そうだ、地球とバルマーの立場を逆にすればよい。
あの憎きリュウセイ・ダテとイングラム・プリスケンに罪をかぶせて・・・、などと考えたのだ。
ユーゼスとは別次元から来たベガがこのことを知る訳もなく、話を聞き驚きはしたものの一応は納得したようだ。
「世界には様々な可能性が存在する。私とベガ殿の世界は別の可能性を進んでいった、ということだろう。」
「そういうことになるのかしらね・・・。」
(フフ・・・、それにしても面白いことを聞いた。GEARに機械帝国ガルファ、そして銀河をも支配する力を持つというデータウェポン・・・。
いずれも聞いたことのないものばかり。このゲームの主催者をの持つ技術を手に入れればそれらを手にすることも出来る。
ますますやる気が出てくるのも私だ。
・・・それにしてもまた地球か。地球へ集まっていく超技術と超パワー・・・。やはりアカシックレコードはバルマーではなく地球を・・・。)
「物思いにふけってるところ悪いけれど、いいかしら?」
「あ、ああ。かまわん」
ベガにそう尋ねられユーゼスは一時思考を停止する。
「身の上話も終わったのだし、そろそろこれからの行動について話をしません?」
「ふむ、そうだな。ではまず・・・」
そこまで言うとユーゼスはそこらへんに転がっている手ごろな石で壁になにやら書き始める。
そして、


112 :仮面の作戦会議 ◆IcNDxBraWs :sage :2006/06/06(火) 22:00:15 (p)ID:8rd/y77S(3)
『これからのことは口ではなくこういったメッセージで返してもらいたい』
同時に
「仲間を集めることだな。それについてはゆっくりと、考えていくとしよう」
ベガも伊達にGEARの副指令をやっていた訳ではない。
ユーゼスのメッセージを見、言葉を聞きベガは瞬時に理解する。
『盗聴の可能性、ね?』
という壁にメッセージを書くと共に
「そうね、それが一番でしょう」
と返事をする。
(ほう・・・この女、馬鹿ではないようだな)
ベガの反応にユーゼスは少しばかり満足する。
(共に行動する以上あまり馬鹿な存在では困るからな)
『やはり首輪かしら?』
『可能性がある、というだけだ。極めて高いがな。機体の通信も盗聴されいるかもしれん。
首輪には盗聴器だけでなく、カメラも付けられている可能性もある。用心するに越したことはない。』
ユーゼスの意見にベガは感心する。
(この人・・・見た目はただの変人だけれど頭脳はたいしたものね・・・。)
いや、でもこんな見た目で頭もアレだったら・・・、と考えかけてベガはやめた。
(今は今後の方針を決めるのが先ね)
ベガが次のメッセージを書き出す
『やはりゲームからの脱出には、首輪の解除が必要不可欠だとは思うけれど・・・、可能なのかしら?』
『そこなのだ。私とそれなりの設備があれば可能だが・・・。主催者がそのようなものを用意していない場合既に詰んでいる可能性がある。
例え設備を見つけ解析出来たとしても解析結果自体がダミー、外そうとしてそのまま首と永遠におさらばということもありえる。
だが・・・ゲームから脱出するためにはやるしかあるまい』
そこまで書くとユーゼスはメッセージを書いていた石ころを投げた。
(そうね・・・出来なくてもやるしかない。あの子たちのためにも私はこんなゲームで死ぬ訳にはいかないわ)
『分かったわ。まずは解析に必要な設備を探しましょう。』
その言葉を見るとユーゼスは無言でうなずいた。
「善は急げとも言うわ。今すぐいきましょう!」
共に機体に乗り、ゲーム脱出のために飛翔する。
(やはり・・・他の者も私と同じく自分の意思でこのゲームに参加しているわけではない、か・・・。
主催者の暇つぶしに殺し合わせられるのか、それとも別の目的か・・・。
まあよい。私はあの主催者の技術を奪い再び神への階段を昇るだけだ・・・。)
二つの仮面。かたや希望を、かたや野望をその眼に秘め、ゲーム脱出のため動き始める。

【ユーゼス=ゴッツォ 搭乗機体:アルトアイゼン(スーパーロボット大戦IMPACT)
 パイロット状況:良好(やる気が出てきたのも私だ)
 機体状況:良好
 現在位置:D-4
 第一行動方針:首輪の解析
 最終行動方針:主催者の超技術を奪い神への階段を昇る】







113 :仮面の作戦会議 ◆IcNDxBraWs :sage :2006/06/06(火) 22:01:47 (p)ID:8rd/y77S(3)
【ベガ 搭乗機体:月のローズセラヴィー(冥王計画ゼオライマー)
 パイロット状況:良好(ユーゼスを少し変人だと思っている)
 機体状況:良好(ビットも健在)
 現在位置:D-4
 第一行動方針:首輪の解析
 最終行動方針:仲間を集めて、ゲームから脱出】

【初日 12:50】



114 :もうあの頃には戻らない ◆B042tUwMgE :sage :2006/06/06(火) 22:02:40 (p)ID:qW49hr59(2)
>>110を破棄して再投下します。


「また……なのか」
 ザフトエリート兵士の象徴である赤服を着たアスラン・ザラは嘆く。
「また……俺にキラと戦えというのかッ!?」
『殺し合いの』の開催宣言――あの場に確かに同席していたキラ・ヤマト――分かり合えた友人との――再戦の兆しに。

 アスラン・ザラ、キラ・ヤマト、ラクス・クライン。
 この三名は、同じ世界よりこの殺し合いに召集を受けた仲間関係にある。
 しかし、その関係に至るまでには長く、遠い道のりがあった。
 アスランはザフトのパイロット、キラは連合のパイロット、そしてラクスはプラントの歌姫と、それぞれが異なる位置に身を置き、アスランとキラに至っては敵同士という対極の関係であった。
 だが、それもかつての話。
 お互いの戦友であるニコル、トールの死。連合の卑劣極まりないサイクロプス発動。カガリという二人を繋いでくれた友人の存在。
 そして何より、アスランを導いてくれた元婚約者の存在。
 数々の試練と葛藤を乗り越え、アスランとキラはやっと剣の向き揃えることが出来たのだ。
 今さら戦う理由など、ない。

「それは、ここが殺し合いの舞台でもだ!」
 誰が友を殺してまで生き延びようとするものか――アスランは、このゲームに抗うことを決意した。


【アスラン・ザラ(機動戦士ガンダムSEED)
 搭乗機体:トライダーG7(無敵ロボトライダーG7)
 現在位置:F−1
 パイロット状態:良好
 機体状態:良好
 第一行動方針:キラ、ラクスとの合流
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【初日:12:20】


115 : ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/06(火) 23:37:32 (p)ID:mXqokXY7(3)
「いい天気だぜ、絶好のライブ日和だ・・・」
巨人の肩に乗った青年は、立ち並ぶ木々の梢を見下ろしながらギターをかき鳴らす。
激しく、情熱的な歌声が周囲に木霊し、静寂な森は一転して生命の息吹に彩られた。

熱唱すること数分。
肩の上で一曲歌い終えた青年は、ふと隣にある巨人の頭部を見つめる。
「うん・・・?お前もオレの歌が気に入ったか?」
しばし見つめ・・・やがて青年は破顔。
「そうかそうか、やっぱり観客がいると歌い甲斐があるな。」
何やら満足げに何度もウンウンと頷いている。

傍目から見ると、かなり危ない光景である。


やがて青年は巨人の肩で仰向けに寝転がり、
「まったく、こんなに天気がいいのに・・・ツマンネエこと考えやがってッ!」
瞬く間に不機嫌そうに顔をしかめる。

「殺し合い・・・たぁ」


116 :ミュージックスタート! ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/06(火) 23:40:31 (p)ID:mXqokXY7(3)
寝転がったまま黙考すること十数分。

「やめたっやめたっ!」
いきなり勢い良く起き上がり
「考えたって何もはじまりゃしねぇ。」
言いながら巨人の首元・コクピットに乗り込む。
「ったく、殺し合いなんざ下らねぇぜ!」
内部のスパイラルフローに跨り、計器をチェック。動力始動。
スロットルを握る熱気バサラの腕と連動するように白の巨人は足を踏み出し

「いくぜぇ、相棒!この箱庭にオレのサウンドを響かせてやる!!」

その叫びに答えたかの如く
第一歩を踏みしめた瞬間、エルガイムの首が僅かに上下した。


117 :ミュージックスタート! ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/06(火) 23:44:16 (p)ID:mXqokXY7(3)
【熱気バサラ 登場機体:エルガイム(重戦機エルガイム)
現在位置:G-3 森
パイロット状態:良好
機体状態:良好
第一行動指針:殺し合いなんざ下らねぇぜ!オレの歌を聴けー!!
最終行動指針:この箱庭にオレのサウンドを響かせてやる!】

【初日 13:30】


118 :インターミッション ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/06(火) 23:52:45 (p)ID:BJHo5tP5(6)
「おい、そこの金ピカのやつ、お前はこのゲームに乗っているのか?」
なんて事なんだ、よりによっていきなり他の参加者と当たるなんて。
というより、何で僕がこんなゲームに参加しなければいけないんだ。
僕なんてコーディネイターでもなんでもない、ただのナチュラルなのに。
「おい、そこの金ピカ、聞こえないのか」
まずい、このまま何も答えないと攻撃されるかもしれない。
幸い相手は積極的に参加してるようなわけでもないようだし・・・・・・
でも、それが罠だったらどうしよう、もしかして僕からいろいろ聞き出したらズドンと・・・・・・
「もしかして通信機が生きてないのか?それとも使い方がわからないのか?とっとと返事しろよ」
まずい、相手は相当いらだってきたようだ。
「ご、ごめん、僕はMSは乗ったことなくて」
「なんだ、一般人か?だけどここに移動したとき操縦や操作方法は頭ン中に流れ込んでき

ただろう?それとも俺だけか?あれは」
それは自分にもあった事だ、どういうわけだかこのMSはコーディネイターではないナチュ

ラルの自分にも操れるようだし色々な操作方法も何故だかわかる。
「ちょっと惑っちゃって」
「あーそうか、まあラッキーだったぜ、どうやらゲームに乗ってるってわけじゃないよう

だしな」
「それじゃあ君も?」
「ああ、こんな胸糞の悪いゲームに誰が乗るってんだ、俺はとりあえずこのゲームに乗っ

てない奴等を集めてこのゲームをぶち壊してやるつもりさ」
「でも、この首輪はどうするの?これがある限りどうしようもなんじゃ・・・・・・」
そうだ、もし主催者に逆らうような事をすればあの女の人のように・・・・・・
「逆にいえばこの首輪さえ外しちまえばどうとでもなるって事だろ?どうだ?俺について

こないか?こんなとこに一人でいても危険なだけだろ?」
確かに、一人でいても危険なだけだし、今は彼を信じるほかないのかも・・・
「・・・・・・分かったよ、とりあえず君を信じるよ、僕はカズイ、カズイ・バスカーク」
「俺はアンドー・マサキだ、とりあえず街のほうに向かおうぜ、地図によると南の方にあ

るみたいだ」
そういうと、彼の緑色のMSは北に向かって歩き出した。


119 :インターミッション ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/06(火) 23:53:43 (p)ID:BJHo5tP5(6)
「という訳なんですよ」
終始マサキは、「迷ってはいないここで戦闘している気がした」と主張し続けたが、そこに説得力はなかった。
「なるほど、つまり我々は彼の方向感覚の無さに助けられたというわけか」
「僕等にとってはラッキーでしたね」
ゴステロを追い払った後、ゼクス達4人は機体を降り、今までの経緯とお互いの経緯につ

いてを話し合っていた。
「しかし、CE、AC、そして地底世界ラ・ギアスですか、にわかには信じられない話ですね」
カミーユがそう呟く。
異なる4つの世界、そんなものそう簡単に信じられるわけじゃない。
「俺としては有り得る話だけどな、俺のいた所にもヴォルクルスってとんでもない怪物が

いたしな、これに近い体験もしたことがある」
マサキはそういうが他の3人にすると、やはり夢物語だ。
「それと分かった事が一つあるぜ、ここにいる全員が地球人だって事だ」
そうなのだ、異なる4の世界があるというのにすべての世界には地球がある。
「何か意味があるのかな?」
「さーな、でも何かヒントになるかもしれないだろ?」


120 :インターミッション ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/06(火) 23:55:04 (p)ID:BJHo5tP5(6)
「そうだな、しかしそれを考えるのは後でもいいだろう、問題はこれからどうするかだが」
そう、今は仲間を集めるのが先決なのはここにいる4人の共通の認識事項だ。
「どうします?カズイ君達は街を目指していたようですけど」
「そうだ、街みたいな目立つ場所なら誰かいるかもしれないだろ?」
「僕はただマサキに付いていっただけだけど」
「それはやめた方が無難だな」
その意見をゼクスがそう否定する。
「何でだ?」
「恐らくこのゲームに乗った参加者も同じことを考えているはずだ、街と補給ポイントは確実に抑えられている
と思った方がいい」
そう、ゴステロのようにゲームに積極的に参加している参加者はそういった場所をまず抑えるだろう。
「じゃあ、どうします?闇雲に探すのも大変ですし」
カミーユがそう尋ねる、確かにこの広い地形では闇雲に探し回っても人と出会える可能性は少ないだろう。
「同じ危険を侵すなら補給ポイントだ、カミーユのメリクリウスのエネルギーを補給したいのもある、
メリクリウスの防御力は我々の生命線にもなりかねないしな」
「そうですね、さっきの戦闘のおかげでもうエネルギーもかなり減ってしまいましたし」
「危険はあるけど他の参加者に会えるかもしれないしな」
「マサキ、君の見てる方向に補給ポイントは無いよ・・・」
ゼクスの提案に反対するものはいなかった。
「それとカズイ、君はMSの操縦はまったくした事は無いといっていたな」
「はい、そうですけど」
「幸い私のメディウスは複座で操縦は私一人でできる、メディウスに乗るといい」
これはカズイにとっては有り難い提案だった。一も二も無く同意する。
「という事は一機捨てる事になりますね、ならマサキ、百式に乗り換えた方がいい、性能は段違いだ」
「OK、俺としてもこいつのトロトロした動きに飽き飽きしてたんだ」
そして全員が機体に乗り込む。
こうして、ゼクス達一行はこの場に旧ザクを置き去りに補給ポイントへ向かうのだった。


121 :インターミッション ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/06(火) 23:55:25 (p)ID:BJHo5tP5(6)
【ゼクス・マーキス 搭乗機体:メディウス・ロクス(スーパーロボット大戦MX)
 パイロット状況:健康
 機体状況:良好
 現在位置:C-5
 第一行動方針:補給ポイントに向かう
 第二行動方針:味方を集める 
 最終行動方針:ゲームからの脱出、またはゲームの破壊】

【カミーユ・ビダン 搭乗機体:メリクリウス(新機動戦記ガンダムW)
 パイロット状況:健康
 機体状況:EN残量少
 現在位置:C-5
 第一行動方針:補給ポイントに向かう
 第二行動方針:味方を集める
 最終行動方針:ゲームからの脱出またはゲームの破壊】

【カズイ=バスカーク 搭乗機体:メディウス・ロクス(スーパーロボット大戦MX)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:C-5
 第一行動方針:ゼクス達についていく
 第二行動方針:補給ポイントに向かう
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【マサキ=アンドー 搭乗機体:百式(機動戦士Zガンダム)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:C-5
 第一行動方針:補給ポイントに向かう
 第二行動方針:味方を集めえる
 最終行動方針:ゲームからの脱出またはゲームの破壊】

 【初日:13:30】


122 :Power trip -AI1- ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/06(火) 23:58:37 (p)ID:BJHo5tP5(6)
メディウス・ロクスの複座に座った瞬間、カズイの頭の中に再び流れるものがあった。
しかし、それは操縦などとは関係ない、あるものに対する知識。
(ツェントル・プロジェクト・・・自己再生・・・自己進化・・・・・・自己増殖・・・・・・・・・ターミナス
・エナジー・・・・・・・・・ラズムナニウム・・・ガルムレイド・・・・・・学習・・・・・・超エネルギー体
・・・・・・・・全てを一つに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ALL INONE・・・・・・AI1)
カズイは震える。
これは・・・・・・これは歓喜だ。
(はは・・・・・・はははははははは!凄い!これなら僕は生き残れる!
僕はAI1とともに生き残れる!これならあの怪物にだってきっと勝てる!キラにだって勝てるんだ!)
このゲームに参加したときの絶望感が消えていく。
「どうした、気分でも悪いのか?」
震えだしたカズイを見て、ゼクスがそう尋ねる。
「いえ、ちょっと緊張しちゃって」
とりあえずはそう答える。
(ゼクスさん達がこのまま上手くやってくれるならそれでいいけど、もし駄目なら、僕は一人でこのゲームを勝ち抜く、
このメディウス・ロクスが、いや、AI1があれば簡単だ、この力があれば地球に戻った後でも、僕は英雄になれる!
今までの足手まといじゃないんだ!そうだ、もしゼクスさん達が駄目になったらこの力を持ってキラの所に行こう、
キラに見せ付けてやるんだ、今の僕の力を!)
内心で笑いながらカズイはゼクスに気付かれないようにAI1の情報を引き出す。
一人の少年を狂気に染めて、AI1は待ち続ける、己の進化を。


123 :Power trip -AI1- ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/06(火) 23:59:31 (p)ID:BJHo5tP5(6)
【カズイ=バスカーク 搭乗機体:メディウス・ロクス(スーパーロボット大戦MX)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:C-5
 第一行動方針:ゼクス達についていく
 第二行動方針:補給ポイントに向かう
 第三行動砲身:AI1を完成させる
 最終行動方針:ゲームからの脱出または優勝またはゲームの破壊】

補足:C-5に旧ザクが1機乗り捨てられています

【初日:13:31】


124 :歌と現実 :sage :2006/06/07(水) 01:19:57 (p)ID:xXeRogLR(7)
汎用人型決戦兵器 EVA-00 PROTO TYPE。
それがラクス=クラインに与えられた機体だった。
その形状は彼女が知るモビルスーツとはかけ離れており、いわば【巨人に鎧を着せたモノ】とでも形容すればいいのだろうか。
ブルーに染められたボディ、一つ目の頭部。
そして―――"人造人間"という肩書き。

(…にしては、"人間らしさ"を感じませんわね)
ウェットスーツのような構造のプラグスーツを身に纏い、L.C.L.という液体に満ちた(呼吸はできる)コックピット、エントリープラグの中で、ラクスはそんなことを考えていた。
(ヒトが造りしヒト………わたくしたちコーディネーターとは随分毛色が違うけど、この子には魂はないのかしら?)
彼女自身も造られた人間―――厳密には第2世代であるが―――『コーディネーター』の肩書きを持つため、この機体には興味が持てた。
だが、この機体からは命や精神、そして感情が全く感じられない。
(プロトタイプだから?いえ………あるいは、ヒトを造ることなど………)
その考えに至ると、急に自分の存在が怖くなった。
元の世界でコーディネーターが迫害されていることもあって、自分達が『あってはならない存在』なのかもしれないと思ったからだ。
「いけませんわね、こんな弱気では」
殺し合いと言う極限状況に置かれているから、などという言い訳は通用しない。そんな状況に置かれているからこそ、前向きにならないといけないのだ。
そう自分に言い聞かせ、ラクスはまるで母体の中にいる胎児のような気分で、モチベーションを高める為に、歌を歌う。


『静かな〜この夜に〜あなたを〜待っ(ry』

魂なき人造人間に、人類の持ちうる最高峰の歌声が響いた。


125 :歌と現実 :sage :2006/06/07(水) 01:20:48 (p)ID:xXeRogLR(7)

一曲歌い終えたラクスは一息ついて、これからどうするのかを考える。
「まず、キラと合流したいですわね」
見ず知らずの他人よりは、自分と共に戦った仲間のほうが信用できるのは当然だ。最初の場所で会ったキラは、確かに彼本人だった。
様々な死線を乗り越え、精神的にも強くなったキラなら容易にこんなゲームに乗ることは無いだろう。
次に、この首輪だ。希望的観測だが、ここに集められた者の力を結成すれば或いは外せるかもしれない。そしてあの化物を倒すことも。
「………茨の道ですわね」
かもしれない、という一縷ですらない望み。生き残りたいのなら、ゲームに乗るのが一番手っ取り早いだろう。
だが、殺し合いに乗るという選択肢はラクスには考えられなかった。

ピピッ

電子音が聞こえ、L.C.L.に映像が浮かび上がる。かなりのスピードで何かが接近している。
機影がモニターに移る。
映った機体は、見覚えがある機体だった。


126 :歌と現実 :sage :2006/06/07(水) 01:21:37 (p)ID:xXeRogLR(7)

破砕球が飛び、実体弾が迫る。
「フィールド、展開ですわっ!」
六角形の力場が破砕球を弾く。
六角形の力場が実体弾を弾く。
零号機が銃を取り出して構える。
レイダーが大口径の銃から発射された劣化ウラン弾を変形して回転しながらかわし、その勢いで接近。
そして大型クローの付け根に位置する短距離プラズマ砲【アフラマズダ】を放つ。
プラズマ砲が迫る。六角形の力場がプラズマ砲を弾く。

つい先程始まった戦闘は、互角に進んでいる。
いかなる通常兵器も展開されたA.T.フィールドには通じない。
とはいえ、EVA零号機もアンビリカルケーブルのせいであまり縦横無尽に動き回ることはできず、高速で移動しながら攻めてくるレイダーに攻撃が当てられない。

『どうか剣を収めてください、わたくしに戦う意思はありません』
ラクスは戦闘が始まる前と同じ通信を送るが、レイダーのパイロットは全く聞く耳を持たず攻撃を続ける。
レイダーはMA形態に変形し、機関砲で牽制しながら接近し、再びMS形態に変形して攻撃を繰り返す。
ラクスは戦闘兵器での戦闘に慣れていない。だが、搭乗者の脳波を通じてダイレクトに動かせるEVAならある程度は戦える。
加えて敵機、GAT-X370レイダーは零号機の三分の一程度の大きさ。
パワーでは負けるはずもないし、巨体ゆえの弱点、小回りの利かなさによる隙もA.T.フィールドのおかげでカバーされている。
レイダーが一旦離れる。
旋回してEVAの真後ろの廃墟に回り、口の開口部より100mmエネルギー砲【ツォーン】を発射する。
廃墟はエネルギー砲に貫かれ、爆音とともに崩れ落ちる。レイダーは防盾砲を構えながら空中に静止し、攻撃の効果を伺う。
粉塵が舞う。その中で何かが光った、と思った瞬間、ビームのようなものが飛び出してくる。
運よくビームはレイダーを逸れるが、廃墟と化した街のビルを次々と薙ぎ倒しながら飛んでいき、見えなくなった。
その余りにも埒外な威力に一瞬レイダーは動きを止めてしまい、ズシンという轟音が響いたのが聞こえたときはもう手遅れだった。
粉塵を払い、巨大な手がレイダーを掴む。先の轟音は今のビームを放ったライフル(と呼ぶには巨大すぎるが)を地面に取り落とした音の様だ。


127 :歌と現実 :sage :2006/06/07(水) 01:22:58 (p)ID:xXeRogLR(7)


『あなたもMSのパイロットなら知っているはずです、陽電子砲の威力を』
三度通信を繋いだラクスは、内心自分もポジトロンスナイパーライフルの威力に驚いていた。
アークエンジェルの陽電子砲と比べても遜色ない大出力の攻撃を、カートリッジで連射可能と知った時は流石にブラフだろうと思ったが、一応狙いを少し外しておいてよかった、と胸を撫で下ろす。
『そのモビルスーツ、レイダーの最大武器は先程のエネルギー砲のはずですわ、それもA.T.フィールドには通じなかった』
できるだけ優しく語りかける。そして相手の反応を観察する。
相手が元からこのゲームに乗るような冷酷な相手なら機体を破壊してこの場を立ち去るが、恐怖でこのような行動を起こしてしまったのなら、できれば説得して仲間に加えたい。
『………………』
相手は全くの無反応だ。相手の息遣いは聞こえるので、通信機は壊れていないはずだ。
ラクスは訝り、もう一度通信を入れる。
『貴方は何故このようなゲームに乗って、何のために戦うのです?』
『………………』
『死ぬのが怖いのですか?』
ラクスはここで一旦言葉を切り、反応を伺う。
『死ぬのは怖くない』
唐突にレイダーのパイロットが言葉を発した。
『だが、死ぬわけにはいかない』
では、私と共に――――と言おうとした瞬間、銃撃音が響く。
レイダーが防盾砲を放っているのが見えた。
『何を―――?』
A.T.フィールドにはそんなものは通じないはず。
だが、レイダーが狙ったものは別の物だった。
地面に落ちたポジトロンスナイパーライフル。撃ち抜かれて行く。
ラクスは咄嗟に零号機の腕でボディを庇い、A.T.フィールドを作動させる。

――――――廃墟が消滅するほどの爆発と、轟音が起きた。


128 :歌と現実 :sage :2006/06/07(水) 01:24:02 (p)ID:xXeRogLR(7)

何もなくなった廃墟跡に巨人が佇む。
膝を突き、完全に機能を停止している。その胸には大穴が開いている。
エントリープラグは射出され、地面に転がっている。
「う………うう………」
ラクスは胸を押さえ、痛みに震えている。
(まさか………あんなことをするなんて)
レイダーは零号機に掴まれていたため、A.T.フィールドの中にいた。
爆発自体は耐え切れたが、いかに強力なシールドでもその内側に這入られれば無意味だ。
そして全武装での一点集中攻撃。EVAの特殊装甲を抜く程の誤差がない精密射撃によって零号機は倒れた。
EVAのダメージはパイロットに直接伝わる。
故にラクスは経験したことのない激痛を覚えていた。
ふと上を見上げると、霞んだモニターにレイダーが防盾砲を構えているのが見えた。
弾丸が発射される。エントリープラグを突き破り、ラクスを貫く。幾度も幾度も、貫く。
(アスラン………キラ………)

――――痛みが消えた。


L.C.L.の中で、自分の歌が聞こえたような気がした。

いつまでもいつまでも、歌が響いていた。


129 :歌と現実 :sage :2006/06/07(水) 01:25:02 (p)ID:xXeRogLR(7)
レイダーが飛ぶ。
爆音は間違いなく周囲に響いただろう。長居はできない。
パイロットの名はヒイロ=ユイ。テロリストである。
(………リリーナ)
彼は元の世界にいた、自分を変えた女性のことを考えていた。
テロリストである自分を恐れず正面から向き合った妙な女。
ヒイロは彼女を少し尊敬していた。だが、現在彼女は自分が敵対するOZのスポンサー、ロームフェラ財団の傀儡にされようとしている。
声しか聞いていないが、先程の女はどこかリリーナに似ていた。
心に蔭りが射す。自分がこれからやろうとしていることを僅かに躊躇う。だが、止めるわけにはいかない。
(リリーナ………俺は必ず生き残り、元の世界に戻る。そしてお前を殺しに行ってやる)
このゲームにどれだけの人数が参加しているのかは分からない。
だがいいだろう、人を殺すのには慣れている。
ヒイロは天を仰ぎ、呟く。

「答えろ、ノイ・レジセイア――――」





「俺は後、何人殺せばいい?」

【ラクス=クライン 搭乗機体:EVA零号機(新世紀エヴァンゲリオン)

 パイロット状況:死亡
 現在位置:E-3
 機体状況:胸に大穴、エントリープラグ内にラクスの歌が響いている?】


【ヒイロ=ユイ 搭乗機体:レイダーガンダム(機動戦士ガンダムSEED)
 パイロット状態:良好
 機体状態:良好
 現在位置:F-3
 第一行動方針:参加者の殺害
 最終行動方針:元の世界に戻ってリリーナを殺すため、優勝する(リリーナが参加していることは知らない)】

備考:E-3の周囲一マス程に爆発音が聞こえました。E-3の廃墟が消滅しています。

【初日 13:00】


130 :歌と現実 :sage :2006/06/07(水) 01:32:53 (p)ID:xXeRogLR(7)
【残り51名】


131 :闇色をした『王子』さま ◆caxMcNfNrg :sage :2006/06/07(水) 02:31:13 (p)ID:QIG9HAKQ(3)
 アキトの答えに、ユリカが安堵の声を漏らす。
どうやら、こちらが誰であるかに気づいていないらしい・・・
(当然か・・・今の俺は、彼女の知るテンカワ・アキト・・・
 あの頃の俺とは、まったく雰囲気が異なっているからな・・・)
 その上、頭部がパイロットメットに覆われているのだ。仕方がない。
「・・・それでですね。
 よかったら私と一緒に、このゲームから脱出する方法を探しませんか?
 仲間が大勢集めて、あの化物を倒しちゃいましょう!」
アキトがそんな事を考えている間にも、通信機からの声は途絶えることなく続く。
「それに、私の仲間や貴方の知り合いだって、私達の事を探しているはずです。
 ですから、ここで諦めないで、皆で力を合わせれば・・・」
「仲間、か」
 オウム返しに呟いたその言葉に、ユリカは大きく頷いた。
「はい!私の仲間・・・私、ナデシコっていう艦の艦長なんですけど・・・
 その艦に乗っているクルーの皆・・・ルリちゃんに、メグミちゃんに・・・」
 元々の話から脱線し、ナデシコのクルーの名前をあげていくユリカ。
しかし、アキトはそれらの名前・・・そして何より、彼女の喋る言葉、
一つ一つに懐かしさと胸に溢れる何かを感じていた。
「それから、アキトが・・・私の大切な人が、きっと私の事を探してくれているはずです!」
「・・・・・・そうか・・・・・・」
「それに、貴方の大切な人たちも、貴方の事を探してるはずです。
 だから・・・私と一緒に頑張って、ここから脱出する方法を探しましょう?」
 彼女の言葉に・・・アキトはしばし、目を瞑る・・・そして・・・

「いいだろう・・・」
「それじゃあ・・・」
 歓喜の声をあげる最愛の女性を、通信機越しに見つめながら・・・黒衣の王子は言った。
「・・・君が大切な人の元へ帰るまで、俺が君の事を守り抜こう」
 その言葉に驚きの表情を浮かべるユリカ。
「・・・アキト・・・?」
 彼女の漏らした呟き――疑問は、誰に聞かれるでもなく、艦橋に消えた。


132 :闇色をした『王子』さま ◆caxMcNfNrg :sage :2006/06/07(水) 02:32:06 (p)ID:QIG9HAKQ(3)



「・・・ところで貴方のお名前は?あ、私はミスマル・ユリカです!」
「俺は・・・・・・・・・ガイだ」
「・・・そ、そうですか・・・あの、良かったら着艦しませんか?」
「いや・・・・・・見回りもかねて、この艦の周辺空域で待機する」



【テンカワ・アキト 搭乗機体:YF-21(マクロスプラス)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:D-7
 第1行動方針:ユリカを守る(そのためなら、自分が犠牲になっても構わない)
 最終行動方針:ユリカを元の世界に帰す(そのためなら、どんな犠牲も厭わない)】

【ミスマル・ユリカ 搭乗機体:無敵戦艦ダイ(ゲッターロボ!)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:D-7
 第1行動方針:仲間を集める
 最終行動方針:ゲームから脱出
 ※1、YF-21に乗っているのがアキトだとは知りませんが、もしかしたらとは思っています
 ※2、アキトの名前はガイだと思っていますが、若干の疑問もあります】

【初日 13:20】


133 :修正、最初の四行が抜けてました ◆caxMcNfNrg :sage :2006/06/07(水) 02:33:05 (p)ID:QIG9HAKQ(3)
「あ、あの……すいません。
 あなたは、このゲームに乗っている人……なんですか……?」
愛する女性の放った、その疑問に・・・テンカワ・アキトは暫しの逡巡の後、
「いや・・・」
と、短く答えた。

「よかった・・・ゲームに乗ってる人だったら、どうしようかと思いました・・・」


134 :The two negotiators  ◆Fk59CfYpJU :sage :2006/06/07(水) 11:59:08 (p)ID:ruOFIp8S(10)
「…狂ってる」
広大な草原の只中で、リリーナ・ドーリアンは目前に鎮座する機体を見詰めながら呟いた。
一体、ここはどこなのか。先程この目で見た、あの化け物は。そして、あの不思議な少女は何者なのか。
突きつけられた疑問はあまりに多く、そしてその答えを知る術を彼女は持たない。
一つだけ解っている事は、自分が掲げる理想とはまるで正反対の『殺し合い』に巻き込まれてしまったということだけ。
完全平和主義。
有史以来―――否、それよりも以前から人々が望み続け、その生活の場を宇宙にまで広げた今なお迎える事の出来ずにいる世界。
それがかつて無慈悲な弾圧の前に滅び去った国サンクキングダムと、そして、その血を引く彼女の掲げる理想だった。
だが、今自分の置かれている状況はなんなのか。
気がつけば見知らぬ部屋に押し込まれていて、わけもわからない内に爆弾付きの首輪を嵌められ、殺し合いを強要されている、この現実は。
―――狂ってる。
先程発した言葉を、胸の中でもう一度呟く。こんな殺し合い、認められるわけが無い。
眼前に鎮座する戦闘機―――自らに支給された機体を、リリーナは睨み付ける。
彼女はここに降下してすぐ、機体から降りた。マニュアルに目を通してすらいない。
完全平和主義を掲げる彼女にとって、兵器は忌むべきものであり、そんなものに身を預けているのが耐えられなかったのだ。
アルフィミィと名乗ったあの少女は、参加者一人一人に機動兵器を支給すると言っていた。
つまりは、私にこの戦闘機が支給されたように、他の参加者にもこのような戦闘機が―――あるいは、モビルスーツが支給されている可能性もある。
そんな状況で機体を捨てるという行為が、どんな結果をもたらすか。勿論彼女にわからないわけはない。
怖くないと言えば、嘘になる。
服の胸元を握り締め、リリーナはゆっくりと息を吐いた。
機体を捨てる事で、自分の死ぬ確率は格段に高くなる。だが、それでも彼女は自分の中に流れる血に刻まれた想い故に、操縦桿を握る事を拒んだのだ。
そして、同時に彼女は期待していた。いや、それは願望と呼ぶ方がふさわしいだろうか。
彼の姿を見たのは、ほんの一瞬だった。
参加者全員の集められたあの部屋で、遠目にかすかに見えた後ろ姿は、すぐに他の参加者の影へと隠れてしまいその姿を追うことはかなわなかった。
だが、彼女は確かに目にしたのだ。たとえほんの一瞬であろうとも、見紛うわけはない。
自分を殺すと言った、空の彼方からやってきたあの少年の姿を。
その時、じっと見詰めていた戦闘機の遥か向こうに、僅かに揺れ動く黒い影を見つけ、リリーナはその身を強張らせた。
―――他の参加者だ。
無意識に、リリーナは唾を飲み込んだ。
身勝手に震えだす足を歯を食い縛る事で叱咤して、リリーナは遠くに霞む他の参加者の影へと足を踏み出す。
戦闘機の脇を通り過ぎ、彼方の参加者と自分を遮るものが無くなったところで、彼女は立ち止まった。
ゆっくりと、だが確実に近づいてくる参加者の影を見据え、毅然と背筋を伸ばしてその接近を待つ。
彼女は、あの参加者に自らの完全平和主義を説くつもりでいた。
賛同が得られるかどうかはわからない。
だけど、一人でも多くの参加者に命を奪い合う事の虚しさを、互いに争い合う事の愚かさを伝える事が、自らに課せられた使命なのだ。
そう信じて、彼女はじっと黒い影の接近をじっと待ち続ける。
だが、もしあの参加者がゲームに乗っていたら。
もしあの参加者が、人の命を奪う事になんら躊躇いを覚えないような相手だったとしたら。
否応無く湧き上がる不安を押し殺し、その不安を振り切るかのように、リリーナはぽつりと呟いた。
「ヒイロ…。早く私を殺しにいらっしゃい。私が他の誰かに殺される、その前に…」
その言葉とは裏腹に、彼女は想い焦がれていた。
あの無口で無愛想な少年が、ゲームに乗った参加者に襲われる自分の前に颯爽と現れ、救い出してくれる。
それは現実から目を背けた夢物語であったが、果たして彼女の思い描くその陳腐なシナリオを、一体誰が笑えるのか。
この狂った殺戮の宴の中、その身一つで抗う事を決めた少女のささやかで力強い拠り所を嘲る事の出来る者など、この世界には誰一人として存在しないのだ。
不安と期待。二つが複雑に絡まりあう胸中を持て余しながら、それでも少女は自らへと歩みを進める黒い機体から目を逸らすことなく、じっと待ち続ける。


135 :The two negotiators  ◆Fk59CfYpJU :sage :2006/06/07(水) 12:00:08 (p)ID:ruOFIp8S(10)
「私はリリーナ・ピースクラフト。争うつもりはありません。見ての通り、機体からも降りています。話を聞いてもらませんか?」
やがてこちらへと歩み寄ってきた黒い機体へ向けて、リリーナは毅然とした態度で、
ドーリアンではなく、完全平和主義を背負うピースクラフトの―――今の自分が名乗るべき名前を告げた。
その声が届いたのか否か、黒い機体の歩みが止まった。その場にじっと佇んだまま、無言で静かにこちらを見下ろしている。
黒い機体との距離は、およそ10M強。だが、数十Mを越すであろう巨体の前には、その程度の距離に意味など無い。
ほんの数歩、足を踏み出す。あの機体の主が彼女を殺そうとしたならば、たったそれだけで事足りるのだ。
黒い機体からの返答は無い。
実際のところ、彼女が黒い機体へと呼びかけてから未だ一分も経過していない。だが、今の彼女にとってそれだけの僅かな時間は実際の何倍に感じられた。
そして、胸の奥へと押し込んだ恐怖心によって増幅された時間の流れは、彼女が心に築き上げた決意の城壁に容易く亀裂を生じさせる。
(―――ヒイロ)
それでもリリーナは漆黒の機体を見詰めたまま、想い人の名を支えに怯えを隠して自身の何倍にもなる巨体を前に毅然と立ち続けた。
「交渉とは、互いが対等の立場にあって初めて成立するものだ。意味も無く自らの不利を招くような行動は、相手につけこまれることになる」
やがて黒い機体から、落ち着いた男性の声が降り注ぐ。
どうやら、問答無用で襲い掛かってくるような相手ではなかったようだ。安堵に胸を撫で下ろし、再び黒い機体へと声を張り上げる。
「機体から降りると言う事がどれだけ危険な事かは重々承知しているつもりです。
ですが、たとえどのような状況であろうと、武力を誇示した状態で対話をするのは私の望むところではありません」
「…君は、勇気と蛮勇は別物であるということを知るべきだな。その精神は尊敬に値するが、法の秩序から解き放たれた今の状況ではなんの力も無い。
仮に私がこの殺し合いに乗っていれば、その時点で君の信念は命と共に失われる事になる」
黒い機体が、一歩足を踏み出した。
リリーナの全身を戦慄が駆ける。背中を冷たい汗が伝っていくのを自覚した。
「あの女性が殺される様を見ていなかったわけではあるまい。知っているかね?人間とは、己の利になる事の為ならばどんな行いも出来るものだ。
金、権力、女。その対象は数あれど、それらはすべて命あってこそ享受出来る物だ。
その命を失うかどうかの瀬戸際に、君の言う事に耳を傾ける余裕がある人間がそう多いとは思えないが?」
降り注ぐ声と、圧倒的な威圧感を伴ってこちらを見下ろす黒い巨体の姿に反射的に後ずさりしそうになる身体を押さえつけ、
バイザーに覆われた巨人の顔を見詰め返した。
「…それでも、私は人を信じます。それは私にとって、命をかけるに値する理由なのです」
揺るぐ事の無い決意を宿し、リリーナは言い放つ。黒い機体はそれ以上近づいてこなかった。
「…やれやれ。見かけによらず強情なお嬢さんだ」
ややあって、黒い機体から溜息交じりの声が発せられる。
直後、黒い巨人のコクピットが開け放たれた。その中から、前へと倒れるように開いたコクピットの装甲の上へと全身を黒いスーツに包んだ若い男性が姿を見せる。
「そちらが譲らないというのであれば、こちらから折れよう。これで私と君の立場は対等だ」
襟に手をやって乱れた衣服を軽く直し、黒衣の紳士はそう言ってリリーナに向き直った。
「貴方は…」
その人物に、リリーナは覚えがあった。
あの参加者全員の集められた部屋で、ただ一人真っ向から主催者達に質問をぶつけた、あの人物。
ゲームのルールを説明した少女は、確か彼の事をこう呼んでいた。
「ネゴシエイター…交渉人」
「よくご存知で」
膝を突いた機体のコクピットからひらりと地面へ飛び降りると、ネゴシエイターは芝居がかった仕草で胸元に手を添え、高らかに言い放った。
「改めて名乗らせて貰おう。私の名はロジャー・スミス。知っての通り、ネゴシエイターを生業としている。では、話を伺おうか、お嬢さん」





136 :The two negotiators  ◆Fk59CfYpJU :sage :2006/06/07(水) 12:01:35 (p)ID:ruOFIp8S(10)
ネゴシエイター、ロジャー・スミスは、銃を持たない主義だ。
凶悪な犯罪者との交渉を行うその職業において、その主義は異端と言わざるを得ない。
事実、彼に恨みを持つ人間の数は両の指では到底足りるものではない。命の危険に晒された事も、数え切れないほどにある。
だが、彼はそれでも銃を持つ事をしなかった。
それは、彼が根っからの"ネゴシエイター"であることの証明である。
彼の仕事はあくまで交渉であり、彼にとっての武器は無粋な鉛弾ではなく、その弁舌なのだ。
尤も、ネゴシエイションにすら値しない相手には鉛弾とは比べるべくも無い巨大な鉛の拳を叩き込んだ事は多々あるが。
だが、それでも彼は人の命を奪った事は無い。
無意味に人の命を奪うような真似は断じてしない。それがロジャー・スミスの法であり、そのルールが彼に銃を持たせる事をしなかった。
―――その彼をして殺し合いを迷わせるほどに、今彼らが置かれている状況は狂っているのだ。
ノイ=レジセイア、といったか。あの主催者は。
この狂った殺し合いに巻き込まれることとなった元凶たる、あの巨大な化け物の姿を思い出す。
そして、あの空間で見せ付けられた光景をロジャーは振り返った。
見ただけで嫌悪を催すような凶暴性を称える外見とは裏腹に、彼―――と言って良いのかどうかはわからないが―――は実に人の心理というものを理解していた。
いきなり殺し合いをしろ、と言われて素直に頷くような人間は、それこそ快楽殺人者でもなければいるはずはない。
それを彼らは、こちらの言い分を一切聞く事もせずに参加者全員の目の前であっさりと一人の人間を殺して見せた。
自分達の力を示し、そして同時に相手を屈服させるにはこれ以上ないデモンストレーションだった。
あのような光景を、死という生物の持つ最大級の恐怖を唐突に、
そしてああも理不尽に突きつけられては、自らの保身の為にゲームに乗ってしまう者も出てくるだろう。
意味も無く人の命を奪う事を、彼はけして是としない。だが、それは厳然たる秩序が存在していればこその話だ。
今自分がいるこの世界には、秩序も法律も存在しない。あるのはただ、見ず知らずの人間と殺し合いをしろという、イカれた命令だけ。
そのような状況下で、見ず知らずの不特定多数の誰かがこちらを殺そうと向かってくる中で、果たしてその主義を掲げたまま生き延びる事が出来るのか。
正当防衛、という法律がある。
明確な殺意を持って襲ってくる相手を撃退する事は、罪に問われる事はない。
そして、緊急を迫られる場面において自らの命を守るために他の誰かを犠牲にする事は、心理的、客観的に見てどうかという問題を捨て置けば、
これも緊急避難という法によって許されるものだ。
他人を蹴落とし、このゲームの優勝を目指すことは、法的になんら問題はない―――。
そこまで考えて、ロジャーは一人苦笑を漏らした。
法も秩序も無いといっておきながら、
その失われたはずの法に縋って自らを正当化しようとする自分の滑稽さに唇を歪めて自嘲すると、ロジャーは支給された機体を発進させた。
人を殺す事は、彼の主義に反する。だが、だからといって座してただ殺されるのを待つほど、自分は消極的ではない。
どの道、このようなところで死を迎え入れるほど、彼は人生に飽いてはいないのだ。
そうして、生き残るために戦うことを―――人を殺す事を辞さない覚悟を固めていた彼が最初に出会った人物は―――。
「私はリリーナ・ピースクラフト。争うつもりはありません。見ての通り、機体からも降りています。話を聞いてもらませんか?」
―――あろうことか機体を降り、その身を曝け出して真っ向から自分へと対話を求めてきたのだ。
自らの危険も省みず、ゲームに乗っているかどうかもわからない自分を前にその身一つで対話を求めるその少女の姿に、何故だかロジャーは僅かな苛立ちを覚えた。
皮肉めいた言い回しで機体の足を踏み出しても、少女は一歩も退こうとはしない。
苛立ちを抱えたまま、ロジャーは機体を降りて少女の前へと姿を現せた。対話を求める相手には、同じ立場で接する。それが彼の流儀だからだ。


137 :The two negotiators  ◆Fk59CfYpJU :sage :2006/06/07(水) 12:02:18 (p)ID:ruOFIp8S(10)
そうして互いに生身を見せ合い向き合うと、リリーナと名乗った少女はゆっくりと、そして真摯に語り始めた。
自らの掲げる理想、完全平和主義。
そして、その理想にしたがって武力を掲げる事なく、対話によってこの殺し合いを止めると言うその信念を。
馬鹿げている。話を聞きながら、ロジャーはそう思った。
薄氷の上を素足で歩くようなものだ。そのような事が実現できるわけがない。
恐らくは、冷静に現状を見詰め、生き残るためにゲームを勝ち抜く事を選んだ参加者もいることだろう。
そのような相手に、そんな理想論など通じるはずは無いだろう。
それどころか、恐怖に囚われ、殺される前に殺せという短絡的な思考に行き着いた哀れな参加者と出会うだけでも、
彼女の想いは容易く蹂躙され、打ち砕かれるのだ。
だというのに。
そのような絵空事を大真面目に語るリリーナの姿に、ロジャーは何故か、眩しさのようなものを感じていた。
そして、同時に気付く。自らの心に巣食う、苛立ちの正体を。
法を遵守する事に逆らう犯罪者を相手に言葉だけを武器に立ち向かうネゴシエイターでありながら、
その誇りを捨て、容易く力に頼る事を選んでしまった自分に対し、力を否定して、自らの理想を信じてその身一つで抗おうとする彼女の姿に、
本来の自分の―――未だ荒削りでありながら、誠意を持って言葉を紡ぐネゴシエイターの姿を、ロジャーは確かに垣間見たのだ。
(…成る程。つまり、私は、この少女に嫉妬していたと言うわけだ)
組んでいた腕を解き、右の掌を額に押し当てる。
思い出せロジャー・スミス。お前は、誰だ?お前は、一体なんだった?
(そうだ。私は―――)
記憶を失った街、パラダイムシティ。
国家ではなく、企業が―――自らの利益を求め、自己に都合の悪い事は改竄することも厭わない者が支配する街で、自分は一体何を成していたのか。
(―――私は、誰にも縛られず、自らのルールと正義に従い生きる、ネゴシエイターではなかったのか!)
気がつけば、リリーナの言葉は止まっていた。切れ長の瞳が、じっとロジャーを見詰めている。返答は?その瞳が、無言でロジャーにそう語りかけていた。
額に当てていた手を下ろし、ロジャーの黒い瞳が真っ直ぐにリリーナの瞳を射抜く。返答は、もう決まっていた。
「解りました。貴方の依頼、受けましょう」
「…依頼?」
それまで無言であった黒衣の紳士が発した予想外の言葉に、眉を潜めたリリーナが鸚鵡返しに聞き返した。
そんな様子に構うことなく、ロジャーは続く言葉を紡ぎだす。
「依頼内容は、このゲームの平和的解決。交渉相手は、主催者及びゲームに乗った参加者達。報酬は―――」
「待ってください!私は貴方に依頼するつもりなど…それに、報酬として渡せるようなものなんか、何も持っていません!」
「ご安心したまえ。報酬なら、既に受け取っている」
自身の言葉を遮って叫んだリリーナに、ロジャーはかすかな笑みを唇に貼り付けて再び芝居がかった仕草で胸に手を添える。
「君は私の誇りを思い出させてくれた。それは、どんな財宝にも勝る報酬だ。私にとって、命をかけるだけの理由に値する」
思いがけない言葉に呆気に取られるリリーナの様子に笑みを深め、ロジャーはその背後の空へと視線を移した。
そのままリリーナに歩み寄り、肩に手をおくと庇うようにしてロジャーはその身を前に出す。
「では、ここから先は私の仕事だ。下がっていたまえ、リリーナ嬢」
ロジャーの言葉の意味を理解できず、リリーナは眉間に皺を寄せ、ロジャーが見詰める方向へと目を向ける。
その瞳に映ったのは、こちらへと接近してくる一機の紫色をした重厚な機体の姿だった。





138 :The two negotiators  ◆Fk59CfYpJU :sage :2006/06/07(水) 12:02:57 (p)ID:ruOFIp8S(10)
「交渉とは、互いが対等の立場であって初めて成立するものだ。先ずは機体から降りてはくれないか?」
「…断る」
モニターに映る全身黒尽くめの男がこちらを見上げて発した言葉を、九鬼は短く拒絶した。
九鬼正義は軍人である。
唐突にこのような状況に巻き込まれ、戸惑いはあったが、冷静さを失うような真似はしなかった。
この箱庭に放り出された彼がまず最初に行った事は、あくまで冷静に状況の把握に努めることだった。
といっても、現状では解らない事の方が多かったが。
数少ない解った事のうち、まず一つは、自分に支給された機体の名前と特性。
ドラグナー2型カスタム。
そう名付けられたこの機体は、全身に火器を搭載した重武装の機体だった。
距離をとっての射撃戦には有利だが、逆に距離を詰められての接近戦には不向きである。
そしてもう一つ確かなのは、あのドームに集められた人間の内、たった一人を残して全員がその命を失うまでこの狂った殺し合いは続くと言う事。
無論、彼とてこのような場所で殺されるつもりはない。ならば、自分が生き残るために成すべき事は何か。
殆ど時間をおかず、彼は結論を導き出す。彼の至った結論は、実に単純明快だった。
最後の一人になるまで殺し合いが続くと言うなら、その最後の一人になればいい。
しかし、その為の障害は多い。なにせ自分の命が掛かっているのだ。死に物狂いで向かってくる者もいるだろう。
ならば、どうするか。これも簡単だ。自分で戦わなければ良い。
あのドームの中にいた人間は、目算でおおよそ40人から50人。それだけの人数を相手に真正面から戦いを挑むなど愚の骨頂。
ほうっておけば、好戦的な者がその数を勝手に減らしてくれるだろう。自分は他の参加者同士が潰し合い消耗するのを悠々と眺めていればいい。
とはいえ、やはり保険の一つは欲しい。
もし仮にゲーム乗った参加者に遭遇したとして、自分一人では心許ない。手駒となる参加者が一人ないしは二人は欲しいところだ。
幸い、自分に支給されたのは遠距離からの砲撃を目的とした後方支援機。
盾となって前衛で戦ってくれる参加者を手駒に出来れば、襲ってきた参加者を撃退もしくは、最悪の場合は切り捨てて逃げることも出来る。
もしもドラグナー2型よりも優れた機体を支給されているのならば、殺して奪うのも悪くは無い。
そうしてこれからの行動を定めた彼が最初に出会ったのは、全身を黒いスーツに包んだ男と、栗色の長い髪をした少女だった。
「それは、こちらが信用できないととらえて構わないのかね?こちらは既に機体を降りている。敵意がないということはわかってもらえるはずだ」
ロジャー・スミスと名乗った、ネゴシエイターを自称する黒いスーツの男が再び声を張り上げた。
確かこの男は、主催者から殺し合いのルールを聞かされたドームで、たった一人毅然とした態度であの化け物に殺し合いの意味を問いただした人物だ。
「機体を降りたところを襲われない保障が何処にある?
君たちが信用にたる人間とわかるまで、機体から降りるつもりは無い。話があるのなら、そのまま話してもらおうか」
「では、どうあっても機体から降りないと?こちらは機体から降りている以上、これ以上は誠意の見せようが無い。対話をするつもりがあるのなら、
相手と対等の立場になって話すのが筋ではないのかな?」
「それは君の価値観だ。何でも自分の物差しで計ろうとするのは良くないな、ネゴシエイター」
九鬼は、このロジャーという男を警戒していた。
あのドームに集められた参加者で、一番冷静さを保っていたのはこの男だ。
そのような男なら、今自分達が置かれている状況を判断できないはずが無い。
自分と同じく、手駒を集めて安全を確保して、殺し合いを静観しようとしている可能性もある。
ともかく、状況が状況だ。慎重になりすぎて困る事は無い。彼はそう考えていた。


139 :The two negotiators  ◆Fk59CfYpJU :sage :2006/06/07(水) 12:03:48 (p)ID:ruOFIp8S(10)
「どいてください!」
二人がそうして問答を繰り返していると、それまでロジャーの後ろで事の成り行きを見守っていたリリーナが、ロジャーを押しのけて前に進み出た。
いつまでも姿を見せろ、見せないといった事を議論し続けるロジャーに業を煮やしたのだ。
「リリーナ嬢、何を…!?」
「機体から降りるつもりが無いと言うのなら、そのままで構いません。私の話を聞いてもらえませんか?」
唐突に自分を押しのけたリリーナにロジャーは抗議しようとするが、当のリリーナは聞く耳を持たずに九鬼の乗るドラグナー2型へと語りかける。
「やれやれ、堪え性の無いクライアントは困る…」
その様子に、ロジャーは首を振って肩を竦めた。
だが、それ以上止めるつもりは無いようだ。一歩後ろに下がり、リリーナの行動を見守る構えをみせる。
「いいだろう、話せ」
「ありがとうございます」
明らかに上から見下したような九鬼の物言いに気を悪くすることもせず、律儀に礼さえ返して、リリーナは自らの目的を語り始めた。
「私達は、ゲームに乗るつもりはありません。話し合いでこの殺し合いを止められないか、と考えています」
「ほう…それは立派な心掛けだ。だが、恐らく多くの参加者はこのゲームに乗ってしまっているだろう。
そのような相手に、君の言葉が通じるとは考え難いな」
「それでも、話せば解ってもらえるはずです。このような殺し合い、誰も望んでなどいないのですから。
ですから、私達はこうして機体から降り、武器を捨てて話し合いを―――」
「…まて、今、なんと言った?武器を…捨てる?」
リリーナの言葉を遮り、九鬼はたった今リリーナの発した言葉を反復する。
「はい。私の掲げる完全平和主義に、兵器は必要ありません。争いのない、平和な世の中。それが、私の願いです」
「では、君たちはゲームに乗った相手に襲われても、決して戦闘をしないと…?」
「はい。いかなる状況であれ、武力を誇示することはしない。それが、私の目指す理想なのですから」
一片の迷いも無く言い切るリリーナの姿に、九鬼は軽い眩暈さえ覚えた。
一体、この女は何を言っているんだ?自殺願望でももっているというのか?
戸惑いながら、九鬼はモニターに映るリリーナの顔を注視する。
その瞳に、曇りはなかった。つまりは、彼女は大真面目なのだ。
「…そうか、わかった」
しばらくリリーナを見詰めていた九鬼が、溜息混じりに呟く。
「解ってくれたのですね!?では、私たちと一緒に…ッ!?」
その呟きを聞き、嬉しそうに綻んだリリーナの表情は、次の瞬間に凍りついた。
「あぁ、お前らにはもう用は無い」
自身に向けられたドラグナーのハンドレールガンの銃口と降り注ぐ九鬼の言葉に、
リリーナの全身をロジャーと合流することで忘れかけていた恐怖が支配する。
その様子に、九鬼は嘲るように鼻を鳴らした。
ゲームに乗っていないのならば手駒に出来ないかと話を聞いてはみたが、
まさか目の前で人を一人殺されてこんな事をいえるような甘い連中だとは思いもしなかった。
ここで友好的な態度を見せれば、彼らの中にもぐりこみ、信用を得ることも難しくはないだろうが、
こんな馬鹿げた理想論を振りかざす人間など足手纏いにしかならない。
まぁ、参加者を二人減らせるのだ。ここはそれで良しとしよう。
「では、お別れだお嬢さん。君の話は中々に楽しかったよ、実に面白い笑い話だった」
唇を醜く歪めて言い放ち、九鬼が引き金を引こうとした瞬間、黒い影がリリーナを抱きかかえた。
黒い影―――彼女の背後で二人の話を見守っていたロジャーが、リリーナを抱きかかえたままその左腕を伸ばし何かを射出する。
放たれた何かがロジャーに支給された機体へと巻き付き、二人の体はまるで引き寄せられるようにロジャーの機体へと向かっていく。
「なにぃ!?」
九鬼の上げた驚愕の叫びを聞きながら、ロジャーは自らに支給された機体の展開した胸部装甲へと降り立つ。
あのドームで目覚めたとき、身に着けていた道具のいくつかは無くなっていた。恐らく、あの主催者に没収されたのだろう。
だが、幸いにも他の小物に偽装した道具―――例えば、この腕時計に偽装したワイヤーフック内臓の通信機はどうやら難を逃れられたらしい。
ワイヤーを撒き戻し、素早く支給された機体のコクピットへと乗り込む。
「しっかり掴まっていたまえ!」
コクピットの中に状況についてこれずに呆然とするリリーナを押し込めて言い放ち、
ロジャーは懐から取り出した小さな手のひらサイズの機械を握り締めた。


140 :The two negotiators  ◆Fk59CfYpJU :sage :2006/06/07(水) 12:04:47 (p)ID:ruOFIp8S(10)
「SP1!コマンドインストール!」
高らかに言い放ち、コクピット内のジョイントへ手にした機械―――ギアコマンダーを叩きつける。バイザーに隠された機体の瞳に、光が宿った。
次いでロジャーはかつての乗機―――ビッグオーを操る時にそうしていたように腕を胸の前で交差させると、もう一度、高らかに叫びをあげる。
「騎士凰牙!ショータァーイム!」
この声に呼応するかのように、凰牙の顔を覆っていたバイザーが開き、人を模したその顔が姿を現した。
両腕と両足に装備されたタービンが唸るように回転し、握り締めた拳を振りかざすと、宙に佇むドラグナー2型を射抜くかのように突きつける。
「ええい、貴様らァァァアア!」
通信機越しに聞こえる九鬼の憤怒に満ちた声と、その怒りを乗せて飛来するハンドレールガンの弾丸をロジャーは凰牙を膝立ちにし、
タービンの回転を利用した高速移動で避ける。
「はかったな!?何が完全平和主義だ、何が武力を誇示しないだ!偉そうな事を言いやがってェ!」
続く言葉と共に飛来するミサイルを巧みなタービンの操作で右へ左へとかわしながら、ロジャーは吐き捨てる。
「良くそんな台詞が吐けるものだ!謀り事にかけようとしていたのはそっちだろう!
残念ながら、君はあの主催者のように誠意が欠けていたらしい。そのような相手には、ネゴシエイションの価値もない!」
「だったらどうするゥ!?ネゴシエイタァーッ!」
九鬼の叫びと同時に放たれた肩のキャノン砲をくるりと回転してかわし、凰牙はその勢いのまま立ち上がる。
「ネゴシエイションに値しない相手には―――」
キャノンの反動によって動きの止まった一瞬の隙をついて、凰牙の右腕のタービンが唸りを上げた。
「―――こうするまでだ!」
更に回転を増すタービンに、凰牙の腕を中心とした烈風が巻き起こる。
そして裂帛の気合と共に、唸りを上げる凰牙のタービンは、渦巻く風を伴って突き出された。
吹きすさぶ風は、やがて竜巻となってドラグナーへと迸る。
「何だとォ!?く…おおおッ!?」
荒れ狂う竜巻は、更なる砲撃を行おうとしていたドラグナーを掠めて行く。
「くそ、聞いてないぞ…ッ!」
直撃を避けたとはいえ、その凄まじいまでの風の奔流はドラグナーの体制を崩させるのに充分だった。
揺れるコクピットの中、忌々しそうに九鬼が吐き捨てる。
外見から、火器を持たない接近戦特化の機体と高を括って、距離をとっての砲撃戦に持ち込めば勝てると踏んだのがまず間違いだった。
あのような飛び道具を持つ相手であるならば、ここは撤退するべきだ。
未だゲームは始まったばかり、生き残るためには、こんなところで消耗するわけには行かない。
「ちィ…覚えていろ!」
モニターに佇む凰牙に向かって捨て台詞を叩きつけると、九鬼はドラグナーを反転させ、すぐさまバーニアを吹かしてこの場を離脱していった。





141 :The two negotiators  ◆Fk59CfYpJU :sage :2006/06/07(水) 12:05:43 (p)ID:ruOFIp8S(10)
「…行ったか」
遠ざかっていくドラグナー2型の姿に、ロジャーは凰牙の構えを解いた。
「怪我はないかね?リリーナじょ―――」
「何故撃ったのですか!」
ゲームに乗った相手の撃退し、クライアントの安否を確認しようと振り向いたロジャーに、突然リリーナは食って掛かった。
見れば、頬を紅潮させ、眉を吊り上げてこちらを睨み付けている。今の相手に応戦した事を怒っているのは明白だった。
「…リリーナ嬢。君は状況が理解できているのかね?向こうはこちらを殺すつもりだった。
君だって、私がいなければ殺されていたのだよ?礼の一つも言って貰いたいものだな」
「そんなことを言っているのではありません!貴方は私の理想に賛同してくれたのではないのですか!?
私の掲げる理想に、兵器は必要ないといったはずです!なのにこんな―――」
ロジャーの反論に耳を貸さず、リリーナは顔を詰め寄らせて更なる怒りを募らせる。
火に油、だったか。
その後も騒ぎ立てるリリーナの言葉を耳から耳へと聞き流し、ロジャーは気付かれないように溜息をつく。
頑固なお嬢さんだ、とは思っていたが、まさかここまで筋金入りだとは。
失敗すれば良い薬になるかとネゴシエイションを任せてみたのも、まるで効果はないらしい。
この融通の利かなさは、まるであの無愛想なアンドロイドのようだ。
そうと解れば、まともに相手をする事はない。
こういった頭の固い相手にまともに取り合っても疲れるだけだと言う事を、ロジャーは長年の経験で知っていた。
「確かに、私は君の依頼を受けた。だが、クライアントはその方法まで口出しするべきではないな。
君には悪いが、私は私のルールでやらせてもらう」
「な…!?」
その言葉に、リリーナは耳まで真っ赤に染めて言葉を失う。
こういった反応を返してくれる分、無愛想なアンドロイドと比べてまだ可愛げはあるな。
そんな失礼な事を考えながら、ロジャーは話題を切り替えることにした。
こういうときは、また騒ぎ出さないうちにとっとと煙に巻いてしまうに限る。
「さて、何時までもここでこうしているわけにもいくまい。機体に戻りたまえ、まずは…そうだな、西の市街地へ向かうとしようか」
そう言ってロジャーはコクピットを開け放ち、やや離れてしまったリリーナの支給機体を指差した。
「人の話を聞いてください!それに、私は兵器になど乗りたくありません!」
「では、ずっとここでこうしていると?我々の囚われているこの箱庭は広大だ。人の足で移動するなら、どれだけ時間があっても足りはしない。
君は自分の考えを他の参加者に説いてまわるのだろう?その為には、例え嫌でもあの戦闘機に乗る必要がある。
まぁ、そこまであの戦闘機に乗るのが嫌だというなら、私の機体に同乗しても構わんよ。尤も、兵器に乗る事に変わりはないが」
再び燃え盛ったリリーナの怒りに、ロジャーはあくまで静寂を称える水面のように冷静に反論する。
尤も、その水面にはいくつかの棘が突き出てはいたが。
とはいえ、彼の言い分は正論だ。唇を噛み締めて、リリーナは言葉をつぐむ。
言いたい事は多々あれど、気が昂ぶりすぎて、胸中に渦巻く感情を上手く言葉にできない、そんな様子だ。
だが、例え言葉に出来たとしても、弁論の達人たる百戦錬磨のネゴシエイターに掛かれば、たちどころに皮肉を交えた返答が返ってくることだろう。
ロジャーと出会ってまだ間もないリリーナだったが、その僅かな時間で、この男の性格は充分に理解できた。
だけど、それでも収まりのつかない彼女は、ぽつりと精一杯の反抗を試みる。
「…貴方って、最低だわ」
「生憎だが、その台詞は言われ慣れている」
悪びれる風も無く、黒尽くめのネゴシエイターはそう言って肩をすくめて見せた。


142 :The two negotiators  ◆Fk59CfYpJU :sage :2006/06/07(水) 12:06:54 (p)ID:ruOFIp8S(10)
【ロジャー・スミス 搭乗機体: 騎士GEAR凰牙 (GEAR戦士電童)
 現在位置:F-7
 パイロット状態:健康
 機体状態:良好。ENを数%消費
 第一行動方針:リリーナと共に西の市街地へ向かう
 第二行動方針:リリーナを守りながら、参加者に彼女の完全平和主義を説く
 最終行動方針:依頼の遂行(ネゴシエイションに値しない相手には武力行使も厭わないが、相手を殺す事はしない) 】
 備考:凰牙は通常の補給ポイントによる補給は不可能。
    セルブースターのハイパーデンドーデンチでしかENの補給は出来ません。

【九鬼正義 搭乗機体: ドラグナー2型カスタム (機甲戦記ドラグナー)
 現在位置:F-7
 パイロット状態:健康
 機体状態:良好。弾薬を多少消費
 第一行動方針:手駒に使える参加者を集める
 第二行動方針:確実に勝てる相手以外との戦闘は避ける
 最終行動方針:ゲームに優勝する 】

【リリーナ・ドーリアン 搭乗機体:セルブースターヴァルハラ (GEAR戦士電童)
 現在位置:F-7
 パイロット状態:健康。ロジャーに対して少し(かなり?)ご立腹
 機体状態:良好
 第一行動方針:参加者達に完全平和主義を説く
 最終行動方針:話し合いによって殺し合いを止める】
 備考:セルブースターはハイパーデンドーデンチ12本(凰牙の補給6回分)を搭載。
    ちなみに二人乗り。】


143 : ◆Fk59CfYpJU :sage :2006/06/07(水) 14:10:01 (p)ID:ruOFIp8S(10)
申し訳ない、時間を記入するのを忘れていました。
【初日 13:30】
でお願いします。



144 :ブレンとグラン ◆OBzaXJXIWo :sage :2006/06/07(水) 16:21:33 (p)ID:y3LFRvM/(4)
「アイビスならやれるよ」
そうだ。やれるはずだったんだ。
「大丈夫、アイビスならやれるわ」
急加速のG、反転する視界、空が、離れる。
「この、負け犬が!」
私は、飛べる?飛んでいられるの?
違う、飛んでるんじゃない?───落ちている!
視界が、海を捉える。
どうして?どうしたの?アステリオン!?
脱出装置のレバーを探る、どこに!?
見付からない、解らない、墜ちる─────


「ッは!?」
「…やっと起きたか」
……………毛布?
目の前に居たのは、毛布を被せられていた自分。そして───
「暴れるなよ──あんたは疲弊している。どうやらあんたはアンチボディとやらには適性が無いみたいだな」
マグカップを持った、ツリ目の青年だった。
「あ、アンタは───」
「ジュシュア・ラドクリフ、流れ者の傭兵さ。君は?」
「あ………アイビス・ダグラス」
ペースを狂わされてしまった。
「やれやれ、腹減ってないか?」
何を言い出すの、コイツ?この、こんな殺し合いゲームのさなかに───そうだ、確かポケットに───
「拳銃なら、勝手だが預らせてもらったからな」
「……………」
無かった、確かに。
「────ほら。レトルトだが、無いよりマシだろ?」
「あ………ありがとう」
マグカップに入ってたのは、レトルト食品「母さんのシチュー」だ。
「………匙」
「ほら」
差し出されたスプーンで、アイビスはシチューをがっつきはじめた。


「っぷはぁ!」
「よく食べるもんだな……」
「……ごちそうさま」
赤毛の少女──アイビスは、まだジョシュアを警戒していた。攻撃してきた相手に、食糧を別ける………そんな道理はないのだ。
「ところで……一つ聞きたいことがある」
「?」

「あの機体に乗ってて、普段と違ってた所?」
「あぁ、今のアンタは、さっきまでのアンタとは違い過ぎる。(……普段のアイビスが今のアイビスだとしたら、あの機体に何かあるはずだ)」
「………特には、何も」
「本当に?」
「……ちょっと頭痛がしたくらい」
「………」
ジョシュアは思う。
アンチボディ………半機半生のこの機体の特性。それは何だ………………?
(乗ってみないと解らないな………)
「アイビス」
「な、何よ?」



145 :ブレンとグラン ◆OBzaXJXIWo :sage :2006/06/07(水) 16:24:57 (p)ID:y3LFRvM/(4)
「アタシがその機体に?」
「俺がその赤いヤツに乗る」
「………何でさ」
「さっきみたいに、また俺にヒステリックに攻撃されたら困るからな。……大丈夫、ブレンは優しいよ」
「………」
「……嫌ならここに縛って放置していく。自分が捕虜だということは理解出来るな?」
「………解った」
こうして、アイビスが薄桃色のブレンパワード…ヒメ・ブレンに、ジョシュアが紅いグランチャー…クインシィ・グランチャーに乗ることになった。

「これは………くっ………」
グランチャーに乗ったジョシュアに、容赦の無い頭痛が襲う。
(この頭痛……お前か、お前なのか、グラン………)
グランチャーのコックピットに、冷たい風が吹き込む。
(………)
(何だ…………抗体?…………オルファン………守る?)
(…………)
(……オルファンを守りたい?……だがそのオルファンとやら、どこにあるんだ?)
(……………)
(………ブレンパワードはオルファンに仇為す?………違う、ブレンは優しいんだぞ!グラン!)
(……………)
(………このゲームのフィールド上に……そのオルファンとやらはあるのか?)
(…………)
(………ない………んだな?だから………どうするんだ?このゲームから抜け出したいんだろ?)
(………)
(……じゃあ……ブレンとも協力するんだッ!)
(……)
(こんなところで………喧嘩はここでするんじゃない!戻ったら存分にやればいい!だから今は…………俺の頼みを聞いてくれ………)
(…)
「………解ってくれ、グラン。俺には守りたい人がいるんだ!」

「だ………大丈夫?」
「アイビス………か」
通信機ごしに、憔悴しきった声が聞こえた為、アイビスは少し驚いた。
「大丈夫………だ」
「ほ、ほんとに大丈夫なの?」
「あぁ」
(グランチャー………すまない。お前の力が必要なんだ)
ジョシュアはグランチャーを説得し、何とか動かした。
(…………)
(………?……解った、ありがとう。グラン)
「……ど、どうするのよ?」
「…西の水辺……A-3の方に行く。アンチボディは水圧に耐えれる作りらしいからな。水中を潜行して北のA-1へ向かう………出来るだけ戦わないようにな」
「わ、解った……」
そして………紅いグランチャーと、優しいブレンは、水辺の方へ移動を開始した。


146 :ブレンとグラン ◆OBzaXJXIWo :sage :2006/06/07(水) 16:26:14 (p)ID:y3LFRvM/(4)
【ジョシュア・ラドクリフ 搭乗機体:クインシィ・グランチャー (ブレンパワード)
 パイロット状況:少々の頭痛
 機体状況:ジョシュアに説得されて、協力している。無傷。
 現在位置:B-3からA-3へ移動中
 第一行動方針:とりあえず西へ
 第二行動方針:水中潜行し、北へ向かう
 第三行動方針:ラキを探す
 最終行動方針:ゲームから脱出】


【アイビス・ダグラス 搭乗機体:ヒメ・ブレン(ブレンパワード)
 パイロット状況:戸惑い
 機体状況:ブレンバー等武装未所持。手ぶら。機体は無傷。
 現在位置:B-3からA-3へと移動中
 第一行動方針:ジョシュアについていく
 最終行動方針:……どうしよう】

【時刻:14:00】


147 :始祖の破壊神 ◆oShO2fvib. :sage :2006/06/07(水) 16:44:40 (p)ID:QI47KhDo(4)
「とにかく、仲間を探さなきゃな……協力してくれる奴がいればいいんだが……」
RX-78-2ガンダムを街中で走らせながら、武蔵はそう独りごちた。
何故街中にいるかというと、ここには外を警戒して、ここに隠れている参加者がいるかもしれないからだ。
そんな人たちを集め、このゲームでどれだけ被害者を出すか分からないダイを倒す。
確かに、はっきりこのゲームをどうにかする方法が見つからないが、それはおいおい皆で集まって考えれば、見つかるかもしれない。
三つの力が一つになれば、というものだ。だから、今やらねばならないことは何か?
このゲームの被害者を減らすため、危険な連中を倒して、隠れてない泣いているような人たちを救うことだ。
「こんなとき、リョウやハヤトがいてくれればなぁ……」
あの2人がいれば、どれだけ力強いことか。
「と、そんなことを言ってる場合じゃないな。おーい!誰かいないのかー!?」
外部スピーカーをONにして、呼びかけてみるが、答えはなく、ただ異常なほどの静けさが際立つばかり。
「本当に、幽霊都市って感じだな……」
やれやれ、とガンダムの背をビルへと凭れさせる。
「おおっ!?」
ビルに食い込むように倒れだしたのが分かって、慌ててガンダムをまた起こした。カメラをそちらに向け、今崩れたところを見れば……
「なんだこりゃ?」
ボロボロに、ビルの構造がなっている。ガンダムの指で試しに触ってみると、飴細工か、泥の固まりか何かなのかいとも簡単に崩れていく。
この世界のビルがすべてこうなのか?それともここはなにかおかしいのか?
どちらにしろ、こんなところにいるのはあまりよくないだろう。
移動のため、足を一歩踏み出す。すると、足が勢いよく地面に深く突き刺さった。
ここにきて、疑念が確信へ変わる。さっきまで、いくらなんでもここまで地面は脆くなかった。
なのに、崩れたということは、この数分でずいぶんと脆くなっている。つまり、最初からこうなっていたのではない。
おそらく誰かが任意的にこの状況を引き起こしている――!
ヒュン!
風を切る音がして、咄嗟にガンダムを空へと上げて足を引き抜いた。
後ろで何かが崩れる重低音がする。しかし、振り向く余裕などない。ズブズブとめり込む地面に同時にまたジャンプ。
そのたびに、後ろから何かか崩れる音がする。
「敵がいるのか!?でも、いったいどこだ!?」
5度目の着地のとき、あえて道路ではなくビルの上に降りて周囲を見回す。すぐに崩れる足元。
しかし、ギリギリまで粘り、探しつづければ……
「いた!あいつか!?」
今いるビルから約200m前後の距離に、棒立ちで悠然と空に浮く機体を見つけた。
しかし、崩れる足場から薄い緑色をしたマガタマが3つ、こちらに向かって来て――
大きな音を立てて、ガンダムは瓦礫と粉塵へと飲み込まれていった。


148 :始祖の破壊神 ◆oShO2fvib. :sage :2006/06/07(水) 16:45:56 (p)ID:QI47KhDo(4)
「終わったの……かな?」
空から様子を眺めていたテニアは、シックススレイヴを戻しながらコクピットで呟いた。
これから、自分は人を殺すことになる。不意をつくにしても、正面からにしても、この機体を使いこなすことが必要となる。
そのため、見かけた相手に攻撃を仕掛けてみたのだ。
結果は、予想外、いや予想以上のものだった。これほどまでの威力をマシンセルが発揮するとは思わなかったし、
空間さえ把握できれば自由自在に動かせるシックススレイヴもこれほどとは思わなかった。
自分には、カティアのような精密射撃や、行動予測はできないし、メルアのようにブースターうまくを使って移動力を伸ばしたり攻撃を受け流すことはできない。
自分ができるのは、うまく相手の弱点を狙って打ち込むことと、武器の扱いを的確に使って攻撃力を上げることだ。
そういう意味では、このベルゲルミルは非常に相性がよかった。
マシンセルで足止めして、スックススレイヴが離れた確実にしとめる。防御の必要性などまるでない。攻撃に専念できるのだ。
瓦礫の山にそろりそろりと近づき、キョロキョロと周りを確かめる。
その辺に落ちている、割れた盾を見つけて、試しに持ち上げて、
「うおおおぉぉぉーっ!!」
瓦礫を吹き飛ばし、巨大なハンマーがベルゲルミル胴体に打ち込まれた。
コクピットの後ろに叩きつけられ、息が一瞬できなくなる。
生体自立金属マシンセルでできた胴体が大きく窪む。おそらく、もとの量産型ヒュッケバインなら、死亡していただろう。
後ろによろめくベルゲルミルを逃すことなく、ガンダムが両肩を掴んだ。
「悪いが、この闘いに乗った奴をほっとくわけにはいかねぇ!」
ズブズブと沈む地面をまとめて掻き出すように、脆くなったセメントを巻き込みながらガンダムを中心に竜巻が起こる!
「大!雪!山!おろしぃぃぃっ!!」
次の瞬間には、ベルゲルミルは脆くなったビルの上層に叩きつけられていた。
「か……は……ッ!」
意識が白く点滅する。コクピットがまるで絶叫マシーンのように揺れ、今度はベルゲルミルがビルの瓦礫に押しつぶされる。
(なん……で……?)
シックススレイヴは防げたとしても、あの高さから受身も取れず落ちて、しかも瓦礫に飲まれて無事なはずが……
なのにどうしてああも平然と行動できたのか?
答えは簡単だ。マシンセルは強力すぎた。
あの時、武蔵は3つのマガタマを2つを盾を犠牲にして防ぎ、残り1つはガンダムハンマーで弾いた。
当然、その後は瓦礫に飲まれたのだが……あまりにも溶けてスカスカになりすぎた瓦礫は、まるでクッキーのようにガンダムにぶつかると砕け、
地面に衝撃を与えるだけの高度はなく逆に緩衝材の役割を果たしたのだ。
結果、ガンダムに目立った傷はなく、近寄ってきたベルゲルミルを返り討ちにできた。
「これくらいでくたばる相手じゃないだろ……!」
対して、何故自分が助かったを知っている武蔵は、自分と同じ状況になった相手は自分と同じようになっていると理解し、
右手にジャベリンを、左手にサーベルを構えた。
相手がどうなっているかわからない以上、ヘタに仕掛けるのは不味いと窪んだ地面で瓦礫をにらむ。


149 :始祖の破壊神 ◆oShO2fvib. :sage :2006/06/07(水) 16:46:32 (p)ID:QI47KhDo(4)
その時。

異変が起きた。

「嫌……死にたく……ない」
頭がぼんやりする。はっきりしない意識の中、重く圧し掛かる呪い。
「………死にたくない……」
搭乗者の意識を感じ取り、自立金属が意思を持つように動き始める。どこかで、スイッチが切り替わる音がした。
「!?何だこれ!?」
瓦礫が突然内部から発生した黒い霧に包まれ、バチバチと電気が霧の中に何本も走る。
みるみるうちに瓦礫が黒と濃紫のマーブル模様の液体に変わっていく。粘性が高いのか、中で震えており、そして膨張している――!
霧が液体へと吸い込まれる。そこには、あのロボットの姿はない。
不気味に水泡を浮かべながら膨張を続け、周りのものまで飲み込んで直径50mほどの球体になった。
「なんだか知らないが、こりゃやばそうだぜ……!」
風船を割るような軽い音と共に、禍々しいマーブル模様がはじけ、空に消える。中にいたのは3機のベルゲルミル。しかもそのうち2機はまったく同じ姿勢をとっている。
手を前に合わせ、背中の輪を体に展開し、輪は高速回転――!
「やべぇ!!」
武蔵もその意味がわかったのだろう。ガンダム後ろに跳ねる。
直後。
12のマガタマがガンダムに殺到する!
まずは正面から2つのマガタマが複雑な軌道で迫る。
「くっ!!」
それをサーベルで強引に切り払う。すると、砕いたマガタマから中からさっきの奇妙な液体が現れ、ガンダムへと降り注いだ。
焼けるような音と煙と共に、触れた部分が白から淀んだ黒へと変わる。
しかし、そんなことを気にしている間ではない。次々迫り来るマガタマを両手の武器で打ち落とさねばならない。
右から迫る4つのマガタマを薙ぐようにやり過ごし、後ろから来るマガタマ2つをバルカンで打ち落とす。
左と上から同時に迫る2個ずつがバックパックと両肩を狙うのをジャベリンで砕く。
一つ落とすたびに、中から溢れる液体がガンダムの装甲を汚していく。
「しまったっ!?」
ガンダムの両腕を掻き抱くように2機のベルゲルミルが体を寄せる。
マガタマを落とすことに集中していたため、そちらへの意識が緩慢になっていたのだ。
左のベルゲルミルが、右手を右肩に乗せ、右のベルゲルミルが、左手を左肩に乗せた。
ゴポリ
ベルゲルミルの色が濃紫に変わると、形を失い液体へと戻り、ガンダムの各関節にマシンセルが流れ込んでいく。
「くそっ、いったどうしちまったんだ!!」
コクピット一杯に警告メッセージが表示され、かしずくように膝を突いた。
その周りを回る6つの影。死神が動こうともがくガンダムの周りを旋回する。
「頼む!動いてくれ!お願いだ!」
マシンセルに侵されたガンダムは、純白の白を失い、黒い石ころのように停止したまま。
くるくるくるくるくるくると……
徐々に回る円が狭くなる。だが、ガンダムに動く方法などない。
「頼む!動いてくれェェェェェ!!」
死神がガンダムへと滑り込む。慟哭があたりに響き渡る。
同時に、魂まで焼き尽くす炎が龍の形を取り、内部から全てを破壊した。


150 :始祖の破壊神 ◆oShO2fvib. :sage :2006/06/07(水) 16:47:15 (p)ID:QI47KhDo(4)
【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:ゲイムシステムON(死へ恐怖)
 機体状況:腹部に陥没  ガンダムハンマー所持 マシンセル暴走気味
 現在位置:D−8
 第1行動方針:参加者の殺害
 最終行動方針:優勝】

【巴武蔵 搭乗機体:RX-78ガンダム(機動戦士ガンダム)
パイロット状態:死亡
機体状況:中から焼かれており起動不可】

【初日 14:30】


151 :ブレンとグラン ◆OBzaXJXIWo :sage :2006/06/07(水) 21:01:30 (p)ID:y3LFRvM/(4)
「…やっと起きたか」 →「…やっと起きたか。──さっきはすまなかったな、叩き落とすしかなかったんだ」
に、前の話との繋がりからこうゆうふうに修正をお願いしまつ……


152 :美しくない ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/08(木) 00:01:11 (p)ID:xfyobE/9(4)
蒼空の彼方に僅かな染みが一つ浮かび上がる。

少しずつ大きくなっていくそれを外部センサーを通して認識しながら、
テンカワアキトは通信を開く。
「・・・こちらガイ、聞こえるか?」
『はい、こちらユリカ。感度良好です!』
「8時の方角からUnKnown一機接近中、かなりの高空を飛んでいる。」
『8時の方角ですか、こっちの計器は何も捉えてません。やはりレーダーは
効いていない様ですね。具体的な高度・速度はわかりますか?』
「いや、こっちも光学センサーでしか捉えていない。もう少し近づかない
と具体的な数値はわからないな。」
『・・・わかりました、ガイさんはそのまま当艦の直援で待機して下さい、
通信可能距離まで接近したら私が交信してみます。』
「了解。」
通信が終了すると、テンカワアキトは無敵戦艦ダイの上空で旋回飛行を
続けながら少しずつYF-21の高度を上げていく。
空戦では高度を取ることが大きなアドバンテージに繋がる。電波状況の
極端に悪いこの“箱庭”では通信可能距離も限られてくるのだが、その
ギリギリの高度までは上昇しておくに越したことはない。
直下では巨大怪獣そのものと言った外観の無敵戦艦ダイが足を止め、二つ
の鎌首をもたげ接近する未確認機を待ち構えている。

そのまま、ジリジリと時間は流れる


153 :美しくない ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/08(木) 00:02:38 (p)ID:xfyobE/9(4)
美しき風の魔装機神“サイバスター”を駆るブンドルはゲーム開始から
3時間以上経てようやく己以外の参加者に遭遇した。
「戦闘機か」
近づくにつれて少しずつ判明したその正体は、近代のジェット戦闘機の
ようだ。
「ふむ、美しい航空機ではあるが・・・」
彼の元居た世界にある戦闘機、あるいはその発展型程度の機体ならこの
サイバスターの脅威ではないが、全く未知の技術で作られた物なら警戒
が必要だろう。
「まあ、あちらに交戦の意思は無いようだが。」
こちらが相手に気付いたように、相手もこちらに気付いているはずである。
その上で離脱も接近もせず定点旋回を続けるということは、相手には交渉
の意思があるということだ。
その意思に応じ、ブンドルも一定の速度を保ちながらダークブルーの戦闘機
に接近する。

あと少しで通信可能な距離まで近づき、ブンドルはふと戦闘機の下を見る。
「・・・・」
見る見るうちに不機嫌に顔になり、そして行き成り機体を方向転換。純白の
神鳥は一気に速度を増し、北の空へと飛び去ってゆく。

「まったく、美しくない・・・」



154 :美しくない ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/08(木) 00:05:44 ID:+3aP9jms
接近してきたUnNnownはあと少しで通信が可能、というとこで突如方向転換、
何故かそのまま凄い速さで北の方へ飛び去ってしまった。

『あれ、あれれ!?何で行っちゃうんですか〜?』
「・・・」
『どうしたんでしょうか?私たち何か不味いことしましたかな・・・』
「・・・」

テンカワアキトは眼下の巨大怪獣をYF-21の下部センサーで捉え
「ハァ・・・」
盛大に溜め息をついた。


155 :美しくない ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/08(木) 00:18:34 (p)ID:xfyobE/9(4)
【レオナルド・メディチ・ブンドル 登場機体サイバスター(魔装機神)
パイロット状態:不機嫌
機体状態:サイバードに変形、良好
現在位置:D-8
第一行動指針:美しくない機体(無敵戦艦ダイ)から離れる
第二行動指針:首輪の解除
最終行動指針:自らの美学に従い主催者を討つ】

【テンカワ・アキト 搭乗機体:YF-21(マクロスプラス)
パイロット状態:やや頭痛
機体状態:良好
現在位置:D-7
第一行動指針:ユリカを守る(そのためには、自分が犠牲になっても構わない)
最終行動指針:ユリカを元の世界に返す(そのためには、どんな犠牲も厭わない)】

【ミスマル・ユリカ 搭乗機体:無敵戦艦ダイ(ゲッターロボ!)
パイロット状態:首をひねっている
機体状態:良好
現在位置:D-7
第一行動指針:仲間を集める
最終行動指針:ゲームからの脱出
備考:YF-21に乗っているのがアキトだと知りませんが、もしかしたらとは思っています
   アキトの名前はガイだと思っていますが、若干の疑問もあります】

【初日 15:20】


156 : ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/08(木) 00:24:23 (p)ID:xfyobE/9(4)
>>155
ブンドルの現在位置は
・現在位置:D-6
です


157 :武人ギム・ギンガナムの独白 :2006/06/08(木) 00:40:27 (p)ID:XMmC7Jby(2)
「ぬぉぉぉぉぉっ!!!」
獣の如き叫びと共に空高くから巨大な質量の落下に伴う風切り音が聞こえる。
人を模した機動兵器「シャイニングガンダム」
モビルトレースシステムで操縦されるこの機体を駆るは月の武人 御大将ことギム・ギンガナム。
直後の落下の衝撃を軽くいなしてしまった点だけを鑑みても機体への順応性が解る。

「誰も居らんではないか!!!」
この何処とも知れぬ空間に放り出されてから早くも二時間以上が経過している。ギンガナムは最初に居たAー8からAー7へ移動したものの、未だ他の参加者との遭遇または発見には至っていない。
「いったいどうなっておるのだ…、計器に反応もない。えぇい、誰か居らんのか!誰でもよい…小生と勝負しろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
もう一度跳躍してみるも周囲に機影は確認できなかった。
「…………」
移動を始めたシャイニングガンダムの背中は心なしか寂しそうだった…
「このままでは武門を司るギンガナム家当主たる矛今持がおさまらん。今に見ておれよ、このシャイニングフィンガーで……ふふふ、はははハァッハハはぁ…」


158 :それも名無しだ :2006/06/08(木) 00:49:15 (p)ID:XMmC7Jby(2)
【ギム・ギンガナム】
機体:シャイニングガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
現在位置:Aー7から移動中(移動先未定)
パイロット状態:良好(気力95)
機体状態:良好(EN少し消費)
第一行動方針:人を探す
第二行動方針:倒すに値する武人を探す
最終行動方針:優勝

14:30現在


159 :葬送曲〜レクイエム〜 ◆gw.2K3uEb6 :sage :2006/06/08(木) 01:01:52 (p)ID:485BdCIG(6)
「どうして・・・キラが生きてるんだ・・・!」
ザフト軍のエースパイロット、アスラン・ザラは一人つぶやく。
彼は、部下であるニコルを亡くしたばかりであり、
ニコルを殺したストライクガンダムのパイロットを道連れに自爆したはずだった。
ストライクガンダムのパイロットであるキラ・ヤマト──親友を殺したはずであった。
目を覚ますと、いつもとは違う光景が広がり、そしてエクセレンと呼ばれた女性の死を経て、いつの間にかこの殺し合いに参加させらることとなっていた。

アスランに与えられた機体はジオン系MSの集大成とも呼べる深紅の機体サザビーであった。
ネオ・ジオンの指導者が自ら搭乗する機体である事を鑑みたその機体は、サイコミュ兵器の使用が不可能であっても、十分な戦力となる機体であった。
「なるほど・・・ミサイルに拡散メガ粒子砲、ビームトマホークにビームサーベル、ビームショットライフルか・・・十分だ。
ファン・・・ネル・・?遠隔操作できる兵器か・・・上手く使えれば確かに強力な武器となるが、演習なしでいきなり実戦投入できるような代物でもなさそうだな」
そして、機体構造をほぼ全て理解し終えようとしたとき、レーダーに一つの光点が映った。
その光点はあっという間に中心、つまりアスランのいる位置に近づいてきた。
森が揺れる、近づいてくるのが肌で感じられた。
そして肉眼で見えたその機体はどこか神々しく、そして非機械的であった。



160 :葬送曲〜レクイエム〜 ◆gw.2K3uEb6 :sage :2006/06/08(木) 01:04:05 (p)ID:485BdCIG(6)
ラーゼフォン、聖なる歌を奏でる機械の神。
その機体から通信が入った。
「おい、そこの機体。お前はゲームに乗ってるのかい?」
唐突な質問であり、どこか教養の無さも伺える声であった。
少しだけ間をおいて、その通信に答える。
「俺はゲームには乗っていない。だが、俺は殺さなければならないやつがいる。」
思いもよらない返事が返ってきて、少しバサラは戸惑ったが、
「おいおい、ぶっそうなこと言ってんじゃねえよ。なんで殺したり殺されたりしなきゃいけねえんだよ」
理由──キラを・・・親友を殺さなければならない理由。
「それは・・・俺がザフト軍のパイロットだからだ!
キラは・・・俺の親友なんだ・・・だけど!!ニコルは優しいやつだった!ピアノを愛し、静寂を愛し、平和を愛していた!!そのニコルを・・・キラは!!」
アスランの顔はほんの少しだけ泣きそうになっていたようにも見えた。
「俺は・・・俺は・・・キラを許すことはできない!!」
次に顔を上げたとき、アスランの目にはもはや涙は見えなくなっていた。
「ゲームに乗ることも、脱出することも今はどうでもいい、ただニコルの仇だけは討つ」
確かな決意を秘めた顔がそこにはあった。
そんなアスランの叫びを一蹴してバサラは言葉を放った
「けっ!くだらねえな。殺したから殺して、殺されたから殺して、それで争いが・・・憎しみが終わるのかよ!!」
その言葉にアスランは怒りと・・・そして少しの言い知れない感情が胸に浮かんだ。


161 :葬送曲〜レクイエム〜 ◆gw.2K3uEb6 :sage :2006/06/08(木) 01:05:47 (p)ID:485BdCIG(6)
「お前に何がわかる!?」
「へっ、わかんねえよ!だから、俺は俺のやり方で争いを終わらせる。
俺の『歌』でな。いっくぜぇぇぇ!」
そういうと、バサラは歌を歌い始めた。
そして、その歌に共鳴するかのようにラーゼフォンからも音が発せられていた。
「へっ。俺とデュエットしてくれるのかい?お前は最高の相棒だぜ。」
機械の神の声はとうてい音楽と呼ばれるようなものではなかったのに、不思議にも確かにそこには歌が生まれ、デュエットができあがっていた。
「ふざけるなぁぁ!!!」
アスランの怒りは考えるよりも先に行動に移らせた。
放たれたビーム、そしてミサイルの波状攻撃。
回避不可能な至近距離からの攻撃。
しかし、その攻撃はラーゼフォンへと届くことなく突如現れた音障壁に阻まれることになった。
「やっぱお前は最高の相棒だぜ。おい!そこの紅い機体!!
そのニコルってやつは優しかったんだろ?そんなやつが殺すことを望むと思ってんのか?
違うだろ!」
その言葉はアスランの胸を深くえぐった。
「だけど・・・俺は・・・」
「・・・だったら、歌って送ってやるしかねえだろおぉぉ!
俺の歌を聴けえぇぇぇぇ!!!!」
機械の神とバサラとのデュエットが森の中を木霊する。
「この歌は・・・葬送曲?」
多少は歌の知識があったアスランはそれが葬送曲であるというのがわかった。
木霊する歌の中で深紅の機体は立ち尽くしていた。



162 :葬送曲〜レクイエム〜 ◆gw.2K3uEb6 :sage :2006/06/08(木) 01:06:23 (p)ID:485BdCIG(6)
【アスラン・ザラ 搭乗機体:ガンダム試作3号機(0083スターダストメモリー)
 パイロット状況:動揺
 機体状況:良好
 現在位置:B-6
 第一行動方針:未決定(改心したかどうかは次の作者に任せます)
 最終行動方針:未決定】

【熱気バサラ 搭乗機体 ラーゼフォン:(ラーゼフォン)
 パイロット状況:絶好調
 機体状況:損傷無し
 現在位置:B-6
 第一行動方針:歌で死者を送る
 最終行動方針:自分の歌でゲームをやめさせる】



163 :葬送曲〜レクイエム〜 ◆gw.2K3uEb6 :2006/06/08(木) 01:13:26 (p)ID:485BdCIG(6)
>>162
搭乗機体:ガンダム試作3号機(0083スターダストメモリー)→搭乗機体:サザビー(逆襲のシャア)



164 : ◆gw.2K3uEb6 :sage :2006/06/08(木) 02:47:57 (p)ID:485BdCIG(6)
>>159の修正(機体変更については後ほどあるかもしれない)

最初に
「遠くから見てもすぐに分かるあの服装は確かにラクス・クラインだった・・・。
そしてその隣に居たのはやはり・・・間違いない。」
ザフト軍のエースパイロット、アスラン・ザラはあの部屋に居た人物を思い返していた。
一人は自分の許嫁であるラクス・クライン。
そしてもう一人は親友であるキラ・ヤマト。──そして彼の怨敵でもある。
「どうして・・・キラが生きてるんだ・・・!」

に変更


165 :ブレンとグラン ◆OBzaXJXIWo :sage :2006/06/08(木) 10:40:42 (p)ID:m2biahb5(2)
すんません

「拳銃なら、勝手だが預らせてもらったからな」
→「そういえば、拳銃とかそういうのは没収されちまったらしいな」


に訂正を………


166 :貫く、意地 ◆a1WpzCXC9g :2006/06/08(木) 15:12:08 (p)ID:q1SMg3IR(6)
木々をなぎ倒しがら森を駆け抜ける黒い竜巻の姿があった。
その名はブラックゲッター、幾多ものゲッター線の可能性の中から生まれた攻撃力に特化した機体である。
その能力は1対1の戦いならこのロワイアルの中でも五指に入るだろう。
無論、パイロットが使いこなしていればの話だが。

そしてそのパイロット、バーナード・ワイズマンは酷く焦っていた。
先程攻撃を仕掛けたガンダムがあれほどまでの攻撃力を有していたことは計算違いだった。
端から新兵同然の自分にあのガンダムが倒せるとは思ってはいなかったが、手傷一つ負わせることすらできないとは。
それどころか防御の要であるマントを失ってしっぽを巻いて逃げる始末だ。
きっとあのガンダムはすぐに自分を追ってくるだろう。
何をしに。勿論、とどめを刺しに、だ。
未だブラックゲッターを使いこなせていない今、自分に勝てる見込みはあまりに少なすぎる。
ミサイルの群れに爆散するブラックゲッターと自分の姿を想像して、バーニィは汗の滲む手で操縦桿を握りなおした。

「ちくしょう!ちくしょう!」

恐怖、そして強力な力を得ながらも、それを使いこなせない自分への歯がゆさにバーニィは更に機体を加速させた。
最大速度のゲッターは音の壁すら越える。
並みのMSなら到底追いつくことも叶わないのだが、今のバーニィにそのことに気づける余裕はなかった。
そしてその焦りなど無視するかのように、センサーが新たな敵機を捉えた。
アラームに一瞬びくりとしたバーニィだったが、すぐに気を引き締めてセンサーが敵機を示す位置へと方向転換する。

「やってやる!やるんだ!このブラックゲッターで!」


167 :貫く、意地 ◆a1WpzCXC9g :sage :2006/06/08(木) 15:13:45 (p)ID:q1SMg3IR(6)
そして森を抜けてしばらく、ついに敵機を肉眼で捕らえられる距離まで接近した。

「……なんだ、こいつ……?」

ずんぐりとした黒い体にまるで蛙のようなヘッドライト。
一応人型ではあるが、恐らく三頭身もないだろう。
それはまるで出来損ないのモビルアーマーか、初期型モビルスーツ、いわゆるモビルワーカーのようにも見えた。
背中に羽のようなものがついているが、果たしてまともな戦闘などできるのだろうか?
もしかしてこれ、単なる作業用ロボなんじゃないか……?

「は……ははっ!」

様々な疑問が頭をかけめぐるが、あのガンダムと違って強力な武装を施している様子もない。
何にせよツイてる。

「悪く思うなよ……!」

言う終わるより早くブラックゲッターの腹部から無数のゲッタービームが走り大地を焦がす。
蛙のような機体はそれを辛くも回避したようだが、スピードは圧倒的にこちらの方が上回っている。
現に続くこちらの攻撃からも逃げ回っているばかりで、反撃する気配はまったく感じられない。
今度こそ勝てる、バーニィは勝利を確信した。


168 :貫く、意地 ◆a1WpzCXC9g :sage :2006/06/08(木) 15:15:17 (p)ID:q1SMg3IR(6)
「ええい!この!このぉ!」

そして戦闘が始まって数十分もしただろうか、バーニィは再び焦りを感じていた。
こちらの攻撃が全く当たらない。

「いい加減にぃ!落ちろよぉぉぉ!」

速度はこちらの方が上回っているというのに、全て紙一重で回避されているのだ。
それはまるで無駄のないダンスのように。

これ以上はエネルギーの無駄使いだと判断し、トマホークを両手に携えて接近戦を試みる。
が、まるで嵐のように振り回される二つの斧もまるで踊るように回避されてしまう。
観客のいない舞踏場で鋼鉄のダンスパーティーはまだまだ続く。


新兵のダンスだな。まるでなっちゃいない。

覚醒人一号のパイロット、キョウスケ・ナンブは敵パイロットを心の中で酷評した。
動きが直線的すぎる上に、機体がパイロットを操っている感すらある。
あれでは折角の機体が泣くというものだろう。
いきなり攻撃をしかけてきたときはどんな血に飢えた獣かと警戒したのだが、正直拍子抜けしてしまった。
だがまあ、

(折角の機会だ。試運転に付き合ってもらうぞ)

そう判断し、決して反撃することなく、回避運動のみに徹している。
戦闘開始から20分は経っただろうか。
フル稼働で機体を動かしているお陰で大まかなコツはマスターした。
操縦方法はシンプルに自分の意識が投影されるフィードバックシステムのようなものを使っているらしい。
付属していたマニュアルにはもっと細かな詳細が載っていたのだが、専門用語が多すぎたので途中で投げ出してしまった。
そして最大の特徴といえば、背中に装備されたブースターである。
これは飛行能力を与えてくれるだけではなく、エネルギーの精製装置も兼ねているそうだ。
つまり、移動だけなら無限に稼動することも可能ということである。
しかし、流石に連続フル稼働には耐えられないのか、エネルギーゲージはイエローゾーンに入ろうとしていた。
キョウスケとしてもこのまま逃げ終わっているつもりはない。


169 :貫く、意地 ◆a1WpzCXC9g :sage :2006/06/08(木) 15:16:35 (p)ID:q1SMg3IR(6)
「……そろそろ仕掛けるか……。ブレイク・シンセサイズ!」

キーワード『ブレイク・シンセサイズ』により覚醒人一号は周囲の環境および敵機をスキャニング、その場に最適な化学物質を合成する。
覚醒人一号は敵機を覆う金属が特殊なものであることを理解した。
瞬時に大気中の物質を吸収し、強酸性物質を合成する。
常にベターな選択で戦う、これが覚醒人一号をニューロノイドたらしめている特徴でもある。
そしてそれらの情報はすべてキョウスケ自身にも伝わっていた。

(いけるか……!?)

そう判断したキョウスケは更にブーストして一気に黒い機体に迫る。
ブラックゲッターがトマホークをブーメランのように投擲するが、両足のローラーを逆回転させて回るように回避。

「な!?」

「Gセット!」

そしてキーワード『Gセット』により弾丸は右腕に装填された。
パイロットは状況が把握できていないのか間抜けな声をあげた。
キョウスケはそれに構うことなく右腕を腹部へとぴたりと寄せる。

「貫け。シナプス弾撃……!」

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

凄まじい衝撃がバーニィを襲う。
そして、目の前が真っ暗になって、彼の意識はここで途絶えた。


170 :貫く、意地 ◆a1WpzCXC9g :sage :2006/06/08(木) 15:19:06 (p)ID:q1SMg3IR(6)
「……俺を甘いと笑うか、エクセレン」

キョウスケの前には右腕が溶けたようになくなっているブラックゲッターが鎮座している。
あの時、咄嗟に狙いをわずかに外し、右腕を狙ったのだ。
どうやらパイロットは衝撃で気絶しているのか、こちらの通信に応じる気配はない。
だが生きていることには間違いなさそうだ。

(念のために殺しておこうか)

そんな考えが脳裏を過ぎるが、そのまま放置していくことにした。
どのみち、この腕で生き残ることは難しいだろう。
ひとまずブラックゲッターは犬のマーキングの後始末よろしく、四つん這いになって後ろ足で土を跳ね上げ、地中に隠していくことにした。
ここまでしてやる義理はないのだが、まあいいだろう。

キョウスケはこのゲームを戦い抜くと決めた。
だがそれは、優勝するために殺戮者になるという意味ではない。
優勝してエクセレンを生き返らせる、そのことを考えなかった訳ではないが、考える価値もない。
ゲームに乗った連中には悪いが死んでもらうが、飽くまでも狙いは主催者打倒ただ一点。
まずは仲間を集めよう。
特にあの男―――ネゴシエイターと呼ばれていたあの黒づくめの男だ。
彼がこんな馬鹿げたゲームに乗るような人間でないことは、あの場にいた誰もが知っているだろう。
あのネゴシエイターと接触しよう、そう決めたキョウスケは戦場の跡地から離れることにした。

アルフィミィ、もしお前がまた元の操り人形に戻ってしまったというなら、全力で止めてみせる。

それはきっとエクセレンの意思でもある。
今はなき彼女の意思が、彼女と最も一緒にいたキョウスケにはわかる気がした。

だが安心してくれエクセレン、全てが終わったら俺はお前の所へいく。
だから、それまで待っていてほしい。

「貫かせてもらうぞ、俺の意地を」

本当にキョウスケってば不器用ねえ。
そんな風に傍らでエクセレンが笑っていてくれる気がした。


171 :貫く、意地 ◆a1WpzCXC9g :sage :2006/06/08(木) 15:20:14 (p)ID:q1SMg3IR(6)
【キョウスケ・ナンブ (スーパーロボット大戦IMPACT)
 搭乗機体:覚醒人一号 (グリアノイド装備) (ベターマン)
 パイロット状況:良好
 機体状況:EN残存量少、徐々に回復中
 現在位置:E-5から移動
 第一行動方針:ネゴシエイターと接触する
 第二行動方針:信頼できる仲間を集める
 最終行動方針:主催者打倒、エクセレンを迎えに行く(自殺?)】


【バーナード・ワイズマン(機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争)
 搭乗機体:ブラックゲッター(真(チェンジ!)ゲッターロボ 地球最後の日)
 パイロット状況:気絶
 現在位置:E-5(地中に埋もれている。起動していないのでセンサーでも発見しにくい)
 機体状態:右腕融解、マント損失
 第一行動方針:ブラックゲッターを使いこなす
 最終行動方針:優勝する】


【初日 時刻:15:30】


172 :そして騎士は走り出す ◆OBzaXJXIWo :sage :2006/06/08(木) 15:54:57 (p)ID:m2biahb5(2)
「行ったか…………?」
統夜は、独りきりのコクピットでごちた。
白い、格闘戦主体と思われる機体………飛行せずとも、岩場を跳躍のみで駆け抜けた機体が北へ行ったのを見届けると、暗黒騎士─ヴァイサーガは岩陰から立ち上がった。
「さっきの機体は───」
この機体に比べれば随分と小型だった。しかし──跳躍等、見た目からではそのポテンシャルははかりしれない。
(懐に入られでもしたら、ひとたまりもないな)
機体の大きさはこちらの方が断然だった。しかし──小さい敵は小回りがきくのだ。
(偵察中に不利な相手を発見したら、無理せずやり過ごす。───だったっけか)
三人娘の誰だったか──戦術に関しての講義がこんなところで役立つとは。

「さて………」
統夜は、一度ぐるりと周囲を見渡した。
(………北はさっきのヤツ………東は少し岩場が続いてるから、岩陰に隠れられたりしたら戦闘しづらい………南か、西か………
そういやフィールドの端っこってどうなってるんだ?………こう考えると確認すべきことは山ほどあるな。今出来ることは今やる、か。………よし)
「………南、かな」
統夜は、ヴァイサーガの進路を南へと向け、真紅のマントを翻し、岩場の間をすり抜けて走りだした。


【紫雲 統夜 搭乗機体:ヴァイサーガ (スーパーロボット大戦A)
 パイロット状況:健康
 機体状況:無傷
 現在位置:A-8→A-1へ移動中
 第一行動方針:南に行く
 第二行動方針:敵を殺す
 最終行動方針:ゲームに優勝する】

【時刻:14:00】


173 :追悼 ◆Y3PBSdzg36 :sage :2006/06/08(木) 21:07:18 (p)ID:taRgl3cI(2)
―――カティアちゃん…
ふとメルアの声がした気がした
(気のせいよね)
カティアはMAPの南の方の町のほうに向かうことにしていた
理由はない
なんとなくその方が逢えるかと思ったからだ
できるだけ高度を上げ、目標に向かって飛び立っていった

―――しばらくして
「ひどい…!」
そこには大破した機体があった
もう辺りには誰もいないようだが
とりあえずバトロイドに変形して降り立つ
辺りを見回すと緊急離脱したのか穴だらけのコックピットが落ちていた
中を覗くとかろうじて女性と見分けられる死体があった
顔は無事であったので判別できたのである
女性の顔は悲しそうな顔をしていたが、気のせいか安らかにも見えた
とりあえずコックピットを調べる
撃墜した相手との戦闘データを得ようとしたが機体が特殊でわからなかった
(とりあえず埋めてあげよう)
機体で穴を掘りそこに死体を埋める
そして数秒黙祷をささげた

目を開けた瞬間強烈な吐き気がカティアを襲う
なんとかこらえ呼吸を整える
「私は、絶対に負けない!」
叫び、彼女は飛び立っていった






174 :追悼 ◆Y3PBSdzg36 :sage :2006/06/08(木) 21:11:37 (p)ID:taRgl3cI(2)
【カティア・グリニャール 搭乗機体:VF22S・Sボーゲル2F(マクロス7)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:E-3
 第一行動方針:7-Dに向かう
第二行動方針:仲間を集める
 第三行動方針:統夜、テニア、メルアを見つける
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【時刻:14:00】



175 :黄色い幻影 ◆caxMcNfNrg :sage :2006/06/09(金) 02:16:45 ID:lNu3XyFm
 青く澄んだ・・・殺し合いという名のゲームが行われている思えないほど、澄みきった空の下。
静寂に包まれた森の中を、周囲の木々と同じ緑を基調とした機体が南方へと進んでいる。
「くそっ!はやく・・・はやく、帰らなきゃいけないのに・・・」
 その機体、アルトロンガンダムの内部を埋め尽くすのは、少年の焦りにも似た呟き。
この機体に乗り込んで数十分。綾人は未だ、狩るべき他の参加者を見つけられずにいた。

「・・・朝比奈が待ってるのに・・・なんで、誰も出てこないんだよ!」
 絶え間ない苛立ちを押さえつつ、レーダーとモニターの間で視線をせわしなく動かす。
(探し方が悪いのか?・・・くそ、どうすりゃいいんだ?・・・いっその事、森に火でも点けて・・・)
そこまで考えたときだった。綾人の視界の端を、森の色とは違う原色がかすめる。
モニターの隅を横切ったものに、綾人は慌てて視線を向ける・・・
しかし、そこに参加者らしき姿は・・・黄色い何かは無い。

「気のせい、だよな」
 人のように・・・知り合いの少女のように見えた『それ』が存在していない事を確認すると、
綾人はパイロットシートに背を預け、ふっと溜息をついた。
どうやら、必要以上に過敏になっていたようだ。
もう一度、深呼吸をして、改めてモニターに目を移す・・・
そして、綾人は木々の向こうに、ビル街らしきものを見つけた。
「街か・・・あそこなら、人がいるかもしれないな」
 そう小さく呟いて、綾人は機体を南東へと向けた。



【神名綾人(ラーゼフォン) 
 搭乗機体:アルトロンガンダム(新機動戦士ガンダムW  Endless Waltz)
 現在位置:B-5森林地帯
 パイロット状態:健康
 機体状態:良好
 第一行動方針:南東に見える街へ向かう
 第二行動方針:帰るために他の参加者を探し、殺す。
 最終行動方針:ゲームに乗る。最後まで生き残り、元の世界へ帰る】


176 :お姉さんと一緒 ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/09(金) 02:53:18 (p)ID:58byWto+(5)
目覚めた場所はどうやら自分がマジンガーZを隠していたような大型ガレージの中らしい。
最もマジンガーZの倍以上ある赤い機体を楽々と収容できるなんて、唯のガレージとしては
いささか広すぎる気もするが。

「お目覚めかい?」
その声を聞き恐る恐る顔を上げると、やたら尊大な態度で見下ろしてくる一人の少女が。
「ふん、意識ははっきりしているようだな。安心しろ、殺しはしない。何せ…」
そこでいったん台詞を止め、彼女は“にやり”と唇を歪める。
「色々と聞きたいこともあるからな。」
ガロードの頭の中では物凄い音量で警戒警報が鳴り響いていた。


「とりあえず自己紹介しておこうか。私はクインシィ、クインシィ・イッサーだ。お前は?」
(逆らっちゃダメだ!)
ガロードの生存本能が警告を発する。
「オレはガロード、ガロード・ラン。ところでお姉さん…」
「なんだ?」
「話しをするのはいいんだけどさ、その前に毛布を解いてく…」
物凄い目つきで睨まれた
「やっぱりいいです、何でもないです。あはははぁ…」
乾いた笑みを浮かべながら、ガロードの脳みそはこの絶体絶命の窮地を乗り越えるべくフル回転する。
「ええと、お姉さんは何が聞きたいんでしょうか?」
「そうだな、先ずは伊佐美勇という名前に心当たりはあるか?」
首を横に振る
「では青いブレンパワードは?」
「ブレンパワードってのがどんな物かは知らないけど、ここに連れて来られてからはまだお姉さん以外の機体には遭遇していないよ。」
見下ろしてくる顔が見る見る不機嫌になっていく。
ヤバイ、と焦りを感じガロードは何とか話題をずらそうと試みる。
「そ、そうだ!!お姉さん、そのイサミユウって人はどんな人なんだ?」

この迂闊な質問のせいで、哀れガロードは2時間近く延々とクインシィの惚気話を聞かされる羽目にあった。


177 :お姉さんと一緒 ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/09(金) 02:54:58 (p)ID:58byWto+(5)
「〜誕生日プレゼント、って花を摘んできてくれてね。勇ったら本当にやさしくて……
どうした顔色が悪いぞ?」
宝石のごとく美しき思い出を語るのを中断し、クインシィは心配そうに簀巻きにしたガロードを伺う。
真っ白に燃え尽きてしまったガロードであったが、ここで下手な対応をするとたちまちクインシィの
機嫌が悪化することをこの二時間でいやと言うほど思い知らされていた。
「…ああ、実はオレ丸一日メシ食ってなくてさ…」
「そうなのか」
しゃがんでガロードの顔を覗き込んでいたいたクインシィは素直に信じると、
「そういえば私もだいぶ前に食べたきりだ。丁度いい、昼食にしよう。」
そのまま赤い巨人へと食料を取りにいく。その背中を見送りながらガロードは思わず安堵した。

話してみて判った事だが、クインシィは悪い人間ではない。今のようにこのゲームで出会ったばかり
(それも一戦交えた)の赤の他人を本気で気遣ったりするあたり、本質的には優しい女性なのだろう。
問題は彼女が恐ろしく短気で、考え方が短絡的で、その上思い込みが激しいということなのだが…
はっきり言って信管がむき出しの爆弾のようなモノである。いつ暴発するかわかったものではない。
いや、爆弾のほうがまだマシだろう。危険な爆弾は処分すれば済むが、彼女の場合は下手するとこちらが
処分されかねない立場だ。
(ティファ、助けてくれ…)
今は会うことの出来ない思い人に、救いを求める少年であった。


178 :お姉さんと一緒 ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/09(金) 02:56:37 (p)ID:58byWto+(5)
そのうち、美味しそうな匂いが漂ってきた。
その匂いにつられ顔を上げると、両手に湯気の立つマグカップを持ち小脇にパンを挟んだクインシィが歩いてくる。
「ほら、パンとシチューだ。」
と告げ、彼女はガロードの前に床に座る。
空腹だったのは事実なので、ガロードは歓喜とともにマグカップに手を伸ばそうとし…
自分が簀巻きにされている、という事実を思い出した。
「こっちが“母さんのシチュー”でこっちが“ドンキーのパン”だそうだ。中々おいしいそうだぞ。」
「確かにうまそうだけどさ、ちょっといいかな?お姉さん。」
「何だ?」
「オレ、このままだと食えないんだけど?」
なんだそんなことか、と言わんばかりの表情で彼女は床に置いたマグカップからスプーンでシチューをすくい
「ほら」
ガロードの口元にスプーンを持っていく。

「…」
「どうした、食べないのか?」
「いや、そういうわけじゃなくて…」
何とも言い難い表情のガロードをいぶかしそうに見るクインシィだが
「ああ、そうか!」
何か納得がいったらしく、スプーンを自分の口元に持っていき口で吹いてシチューを冷ます。
冷ましたシチューを改めてガロードの口元へと持っていき、一言。
「お前、猫舌なんだな」
(ごめんよ、ティファ…)
その一言で諦めのついたガロードは、口の中だけで思い人に謝罪し…
「ほら、あ〜んして」
顔を真っ赤にしながら口を開いた。


179 :お姉さんと一緒 ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/09(金) 03:08:41 (p)ID:58byWto+(5)
【クインシィ・イッサー 搭乗機体:真ゲッター1(真(チェンジ!)ゲッターロボ〜地球最後の日)
パイロット状態:良好、ガロードと話をして精神的にやや安定
機体状態:ダメージ蓄積、ドリルテンペスト一発分EN消費
現在位置:B-1 市街地のビルの超大型ガレージの中
第一行動指針:捕虜(ガロード)と話をする
第二行動指針:勇の撃破(ネリー・ブレンに勇が乗っていると思い込んでいる)
最終行動指針:勇を殺して自分の幸せを取り戻す】

【ガロード・ラン 搭乗機体:マジンガーZ(マジンガーZ)
パイロット状態:全身鞭打ち・簀巻き、クインシィにやや興味を持っている
機体状態:装甲にダメージ蓄積・片腕喪失(近くに落ちている)・ドリルミサイル10数ほど消費・ルストハリケーン一発分EN消費
現在位置:B-1 市街地のビルの超大型ガレージの中
第一行動指針:お姉さんと話をする
第二行動指針:何とかして毛布を解いてもらう
最終行動指針:ティファの元に生還】
備考:クインシィは気絶したガロードをマジンガーごとゲッターで持ち運びました。

【初日 15:30】


180 :お姉さんと一緒 ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/09(金) 03:37:30 (p)ID:58byWto+(5)
>>178の続きです

年上の美少女に手ずから食べさせてもらうという、ある意味では非常に羨ましい・・・
しかし、純情な少年にとっては拷問に等しい一時を終え、ガロードとクインシィは本格的な情報交換を行う。
「ふうん、宇宙革命軍にコロニー落しね。どうやら私たちは並行世界から連れて来られた様だな。」
「だろうね。オレもオルファンとかリクレイマーなんて聞いたことないし。」
まともな教育というものを受けたことのないガロードとって歴史とは15年前のコロニー落しから始まるものだ。
それでも大人たちから15年前以前の出来事を聞きかじったことはある。クインシィの言うオルファンなどと言う
代物が存在していたなら、必ず耳にしたことがあるはずだ。
「ええと、そのヘイコン世界だっけ?」
「並行世界だ、異なる可能性を選んだ似て非なる世界。」
「その並行世界だけど、オレたちを集めたあの化け物はさ、そんな色々な世界に干渉できる力を持っているんだよな・・・?」
話のスケールが大きすぎ、いまいち実感のわかない様子のガロードに対しクインシィは重々しくうなずく。
「恐らく・・・あいつは神にも等しい力を持っているのだろう。」
「やれやれ戦争の次は神様か・・・」
ため息をつく。
しかし、とガロードは思う。諦めるわけにはいかない、彼には帰りを待つ人がいるのだから。
「ニュータイプだろうが神様だろうが、オレは諦めない。オレは必ずティファのとこに帰ってみせる!」
確かな決意を言葉に表すガロード。そんな彼をクインシィはやさしく見つめる。
生まれた世界は違えど、同じように“家族”を失い孤独に生きてきた少年に密かな共感を抱く。
「そうだな、私も早く勇を見つけてあげなくちゃ・・・」
うつむき、悲しげにつぶやく。

   にぃ

と陰惨に唇を歪めながら。
簀巻きにされたままの少年はその表情に気づけまま、励ますように言う
「そうだよ、お姉さんも早く弟さんを見つけなくちゃな。弟さんだってきっとお姉さんのこと探してるぜ。」
失われる前に探せ、と促す。彼女はまだ自分が失った大切なものを持っているのだと思い込んで。
少女もまたうなずき返す。失われた“理想の”家族を取り戻す為に。


181 :貫く、意地(改) ◆a1WpzCXC9g :2006/06/09(金) 19:14:17 (p)ID:gXCyAU1O(6)
木々をなぎ倒しがら森を駆け抜ける黒い竜巻の姿があった。
その名はブラックゲッター、幾多ものゲッター線の可能性の中から生まれた攻撃力に特化した機体である。
その能力は1対1の戦いならこのロワイアルの中でも五指に入るだろう。
無論、パイロットが使いこなしていればの話だが。

そしてそのパイロット、バーナード・ワイズマンは酷く焦っていた。
先程攻撃を仕掛けたガンダムがあれほどまでの攻撃力を有していたことは計算違いだった。
端から新兵同然の自分にあのガンダムが倒せるとは思ってはいなかったが、手傷一つ負わせることすらできないとは。
それどころかマントを失ってしっぽを巻いて逃げる始末だ。
きっとあのガンダムはすぐに自分を追ってくるだろう。
何をしに。勿論、とどめを刺しに、だ。
未だブラックゲッターを使いこなせていない今、自分に勝てる見込みはあまりに少なすぎる。
ミサイルの群れに爆散するブラックゲッターと自分の姿を想像して、バーニィは汗の滲む手で操縦桿を握りなおした。

「ちくしょう!ちくしょう!」

恐怖、そして強力な力を得ながらも、それを使いこなせない自分への歯がゆさにバーニィは更に機体を加速させた。
最大速度のゲッターは音の壁すら越える。
並みのMSなら到底追いつくことも叶わないのだが、今のバーニィにそのことに気づける余裕はなかった。


182 :貫く、意地(改) ◆a1WpzCXC9g :sage :2006/06/09(金) 19:15:11 (p)ID:gXCyAU1O(6)
気がつけば目前に真紅の機体がいた。
いつの間にここまで接近されたのだろうか。
センサーはとっくに警告音を発していたようだったが、まったく気づかなかった。
それでも敵であることだけは確かだ。
敵は全て倒す。そして優勝する。そう決めたのだ。
誰であろうと敵は倒すだけだ。

「おい、そこの黒い機」

真紅の機体から回線が繋がったが、

「うおおおおぉぉぉぉぉ!!」

バーニィはそれを無視してゲッタービームを放った。
赤い閃光が宙を走り、真紅の機体へと襲い掛かる。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「問答無用で攻撃とは、厄介なやつに声をかけたな……!」

コックピットでキョウスケ・ナンブは独りぼやいた。
バーニィの咆哮と共に放たれたゲッタービームをすんでのところでかわしたビルトファルケン。
旋回しつつスプリットミサイルを放ち、オクスタンライフルで反撃するものの、ゲッター合金の厚い壁の前に全て弾かれてしまう。

(典型的な特機か、つくづく厄介だ)

後方支援における遠距離射撃をコンセプトに開発されたファルケン。
装甲が分厚く、接近戦で畳み掛けてくる機体とは一番相性が悪いと言える。

「このぉ!当たれぇぇぇぇぇ!!」

「ちっ、ブースト!」

特にあの高出力のビーム兵器。
当たればファルケンの脆弱な装甲では一たまりもあるまい。
まともにぶつかりあって、勝ち目はないことをキョウスケは感じていた。
だとすればできることは一つだけ。

直接コックピットを叩いて、パイロットを黙らせる。

(あれだけの出力、炉心から直接エネルギーを供給しているのか?だとしたら……)

恐らくコックピットは胸部か、それより上の部分。
狙うとすればそこ以外になかった。
もし違っていればボン、だ。
だがまあ、

「分の悪い賭けは嫌いじゃない……!」


ここで若干時間は遡る。


183 :貫く、意地(改) ◆a1WpzCXC9g :sage :2006/06/09(金) 19:16:18 (p)ID:gXCyAU1O(6)
「……ままならんな」

と独りごちて、キョウスケは支給された真紅の機体を見上げた。
まだ計画書でしかその存在を知らなかったのだが、既にロールアウトしているとは驚きだ。
ひとまず機体の状態をチェックをすることにしてコックピットに乗り込み、コンソールを叩きながら計器類を睨みつける。
流石に最新型といったところか、諸々の出力はヴァイスやアルトのそれを上回っている。
特に背部に装備された新型テスラ・ドライブの出力は驚異的だ。
本当に計器が示す速度が出せるとしたら、とんでもないじゃじゃ馬である。
他にも様々な新型装備が施してあるが、それらのスペックになんら不満はない。……不満はないのだが。
問題は主に近接攻撃を得意とするキョウスケにとって、援護射撃用の機体はどうも性に合わないことだ。
せめて同様に開発段階であった愛機であるアルトの後継機ならば使い勝手も良いのだろうが。
近接用装備がハンマー一つだけというのももしかしたら主催者側の嫌がらせだろうか。
一旦モニターから目を離し、溜息をつく。

「文句ばかりいっても始まらんか……」

せめてと思い、ブーストの出力を変更してアルトのそれに近づけた。
接近して射撃戦か、我ながら分の悪い賭けだな、とキョウスケは自嘲する。
そしてふと思い当たることがあった。
計画段階ではアルトとヴァイスのコンビネーションを元に構築した、攻撃用プログラムがあったはずだが……。
そしてコンソールを操作すること数分、キョウスケは予測通り目当てのものを見つけた。


『MODE:TwinBirdStrike』


恐らく、本来は対になる機体―――アルトの後継機だろう―――とのコンビネーションで真の力を発揮するのだろう。
キョウスケはそれをファルケン一機でも起動できるようにプログラムに変更を施していく。

(テスラ・ドライブのフル稼働による無軌道飛行。これがジョーカーになればいいが)

その時、センサーが猛スピードでこちらに接近しつつある敵機を補足した。
無機質なアラーム音に否が応でも気が引き締められる。
コンソールから手を離して操縦桿を握る。
せめてこのゲームに乗っていない人間であってくれ、とキョウスケは切に願い、
“槍”の名を関するライフルと一振りのハンマーを携え、真紅のビルトファルケンは発進した。


184 :貫く、意地(改) ◆a1WpzCXC9g :sage :2006/06/09(金) 19:17:45 (p)ID:gXCyAU1O(6)
戦闘開始から何時間経っただろうか。
ほんの数十分だったが、バーニィにはそれぐらい長く感じられた。
遂にバーニィはゲッタービームの射程内にビルトファルケンを捕らえたのだ。
そしてそれはファルケンを貫き、爆散させるはずだった。
勝った……!今度こそ勝ったぞ!
この時、バーニィは今度こそ確かな勝利を確信した。
だがそれは、

「すまないが、俺も切り札を出させてもらう」

キョウスケが待ち望んでいた時でもあった。
相手は完全に詰んだと思い油断している。
仕掛けるなら、今しかない。

「はっ、負け惜しみを……」

「ファルケン、モードチェンジ『TBS』!シングルモード!」

「言うんじゃないっっっっ!!」

キョウスケの命令に応じて翼が展開され、遂にファルケンの真の力が発揮された。
ゲッタービームは確かにファルケンを貫いたが、それは残像として静かに消えた。

「なっ!?」

ゲッターを遥かに超えるスピードでファルケンが大空を舞い、ブラックゲッターを翻弄する。
想像を超えるGにキョウスケの意識は飛びそうになったが、何とか耐えて操縦桿を握り締める。

「これが俺の……」

「く、来るなぁ!来るなぁぁぁぁ!!」

ブラックゲッターがゲッタービームを乱射するが、それらもことごとく残像に命中して宙に消えてしまう。
ファルケンも負けじと高速軌道でオクスタンライフルをWモードで乱射。
数発しか命中しなかったものの、空中でぐらりとブラックゲッターの体制が崩れた。

「ジョーカーだ!」

背後に接近したファルケンがブーストハンマーを振るう。
狙いはただ一点、頭部のみ。
そしてそれはブラックゲッターに綺麗に命中した。

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

凄まじい衝撃がバーニィを襲う。
このまま地面に叩きつけられて自分は死ぬのだろうか……。
ぼんやりとした頭でそんなことを思う。
徐々に地面が迫ってくる。
そして、目の前が真っ暗になって、彼の意識はここで途絶えた。


185 :貫く、意地(改) ◆a1WpzCXC9g :sage :2006/06/09(金) 19:19:14 (p)ID:gXCyAU1O(6)
「……俺を甘いと笑うか、エクセレン」

キョウスケの前にはあちこちが弾痕でへこんだブラックゲッターが鎮座している。
あの時、咄嗟に狙いをわずかに外し、胸部を狙ったのだ。
どうやらコックピットは頭部にあったようだ。
恐らくあのままハンマーで頭部を狙っていれば、加減していてもパイロットの命はなかっただろう。
パイロットは衝撃で気絶しているのか、こちらの通信に応じる気配はない。
だが生きていることには間違いなさそうだ。

(やはり、念のために殺しておくべきか)

そんな考えが脳裏を過ぎるが、そのまま放置していくことにした。
どのみち、この腕で生き残ることは難しいだろう。
ひとまずブラックゲッターは土を掘り下げて、地中に隠していくことにした。
ここまでしてやる義理はないのだが、まあいいだろう。

キョウスケはこのゲームを戦い抜くと決めた。
だがそれは、優勝するために殺戮者になるという意味ではない。
優勝してエクセレンを生き返らせる、そのことを考えなかった訳ではないが、考える価値もない。
ゲームに乗った連中には悪いが死んでもらうが、飽くまでも狙いは主催者打倒ただ一点。
まずは仲間を集めよう。
特にあの男―――ネゴシエイターと呼ばれていたあの黒づくめの男だ。
彼がこんな馬鹿げたゲームに乗るような人間でないことは、あの場にいた誰もが知っているだろう。
あのネゴシエイターと接触しよう、そう決めたキョウスケは戦場の跡地から離れることにした。

アルフィミィ、もしお前がまた元の操り人形に戻ってしまったというなら、全力で止めてみせる。

それはきっとエクセレンの意思でもある。
今はなき彼女の意思が、彼女と最も一緒にいたキョウスケにはわかる気がした。

だが安心してくれエクセレン、全てが終わったら俺はお前の所へいく。
だから、それまで待っていてほしい。

「貫かせてもらうぞ、俺の意地を」

本当にキョウスケってば不器用ねえ。
そんな風に傍らでエクセレンが笑っていてくれる気がした。


186 :貫く、意地(改) ◆a1WpzCXC9g :sage :2006/06/09(金) 19:23:48 (p)ID:gXCyAU1O(6)
【キョウスケ・ナンブ (スーパーロボット大戦IMPACT)
 搭乗機体:ビルトファルケン(L) (スーパーロボット大戦 ORIGINAL GENERATION2)
 パイロット状況:良好
 機体状況:ブーストハンマー所持
      スプリットミサイル数発消費、オクスタンライフルを半分程消費
 現在位置:E-5から移動
 第一行動方針:ネゴシエイターと接触する
 第二行動方針:信頼できる仲間を集める
 最終行動方針:主催者打倒、エクセレンを迎えに行く(自殺?)】


【バーナード・ワイズマン(機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争)
 搭乗機体:ブラックゲッター(真(チェンジ!)ゲッターロボ 地球最後の日)
 パイロット状況:気絶
 現在位置:E-5(地中に埋もれている。起動していないのでセンサーでも発見し
にくい)
 機体状態:地中、あちこちがへこんでいるが、戦闘に支障はない
      マント損失 、エネルギーを半分程消費
 第一行動方針:ブラックゲッターを使いこなす
 最終行動方針:優勝する】


【初日 時刻:15:30】


187 :インターミッション ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/10(土) 01:45:26 (p)ID:nw1jN0QL(7)
「おい、そこの金ピカのやつ、お前はこのゲームに乗っているのか?」
なんて事なんだ、よりによっていきなり他の参加者と当たるなんて。
というより、何で僕がこんなゲームに参加しなければいけないんだ。
僕なんてコーディネイターでもなんでもない、ただのナチュラルなのに。
「おい、そこの金ピカ、聞こえないのか」
まずい、このまま何も答えないと攻撃されるかもしれない。
幸い相手は積極的に参加してるようなわけでもないようだし・・・・・・
でも、それが罠だったらどうしよう、もしかして僕からいろいろ聞き出したらズドンと・・・・・・
「おい、何とか言えよ、もしかしてゲームに乗ってるのか?」
「まあ待つニャ、マサキ」
「そうよ、こんな状態でいきなり話し掛けたから驚いてるかもしれないニャ」
どうやら一人じゃないらしい。
とするとこの人は本当にゲームに参加してないようだ。
「ご、ごめん、僕はMSは乗ったことなくて」
「なんだ、一般人か?だけどここに移動したとき操縦や操作方法は頭ン中に流れ込んできただろう?それとも俺だけか?あれは」
それは自分にもあった事だ、どういうわけだかこのMSはコーディネイターではない
ナチュラルの自分にも操れるようだし色々な操作方法も何故だかわかる。
「ちょっと惑っちゃって」
「あーそうか、まあラッキーだったぜ、どうやらゲームに乗ってるってわけじゃないようだしな」
「それじゃあ君も?」
「ああ、こんな胸糞の悪いゲームに誰が乗るってんだ、俺はとりあえずこのゲームに乗ってない奴等を集めてこのゲームをぶち壊してやるつもりさ」
「でも、この首輪はどうするの?これがある限りどうしようもなんじゃ・・・・・・」
そうだ、もし主催者に逆らうような事をすればあの女の人のように・・・・・・
「逆にいえばこの首輪さえ外しちまえばどうとでもなるって事だろ?どうだ?俺についてこないか?こんなとこに一人でいても危険なだけだろ?」
確かに、一人でいても危険なだけだし、今は彼を信じるほかないのかも・・・
「・・・・・・分かったよ、とりあえず君を信じるよ、僕はカズイ、カズイ・バスカーク」
「俺はアンドー・マサキだ、とりあえず街のほうに向かおうぜ、地図によると南の方にあるみたいだ」
そういうと、彼の緑色のMSは北に向かって歩き出した。


188 :インターミッション ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/10(土) 01:47:27 (p)ID:nw1jN0QL(7)
「という訳なんですよ」
「迷ってねーよ、ここで戦闘している気がしたんだよ」
「口からでまかせニャ、マサキの方向音痴はもうお約束よ」
「一人だったら絶対に禁止地区に入って『ボン』ニャ」
「なるほど、つまり我々は彼の方向感覚の無さに助けられたというわけか」
「僕等にとってはラッキーでしたね」
ゴステロを追い払った後、ゼクス達4人は機体を降り、
今までの経緯とお互いの経緯についてを話し合っていた。
「しかし、CE、AC、そして地底世界ラ・ギアスですか、
にわかには信じられない話ですね」
カミーユはそう呟きマサキのそばにいる喋る猫二匹を見て。
「まあ、もうこれ以上驚く事も無いと思いますけど」
と肩をすくめる。
異なる4つの世界、そんなものそう簡単に信じられるわけじゃないが、
喋る猫を見てしまうと何でもありなのかなとも思ってしまう。
「俺としては有り得る話だけどな、俺のいた所にもヴォルクルスってとんでもない怪物がいたし、
これに近い体験もしたことがある」
マサキはそういうが他の3人にすると、やはり夢物語だ。
「それと分かった事が一つあるぜ、ここにいる全員が地球人だって事だ」
そうなのだ、異なる4の世界があるというのにすべての世界には地球がある。
「何か意味があるのかな?」
「さーな、でも何かヒントになるかもしれないだろ?」
「マサキにしては鋭い事をいうニャ」
「そうだな、しかしそれを考えるのは後でもいいだろう、問題はこれからどうするかだが」
そう、今は仲間を集めるのが先決なのはここにいる4人の共通の認識事項だ。
「どうします?カズイ君達は街を目指していたようですけど」
「そうだ、街みたいな目立つ場所なら誰かいるかもしれないだろ?」
「僕はただマサキに付いていっただけだけど」
「それはやめた方が無難だな」
その意見をゼクスがそう否定する。


189 :インターミッション ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/10(土) 01:48:17 (p)ID:nw1jN0QL(7)
「何でだ?」
「恐らくこのゲームに乗った参加者も同じことを考えているはずだ、
街と補給ポイントは確実に抑えられていると思った方がいい」
そう、ゴステロのようにゲームに積極的に参加している参加者はそういった場所をまず抑えるだろう。
「じゃあ、どうします?闇雲に探すのも大変ですし」
カミーユがそう尋ねる、確かにこの広い地形では闇雲に探し回っても人と出会える可能性は少ない。
「同じ危険を侵すなら補給ポイントだ、カミーユのメリクリウスのエネルギーを補給したいのもある、
メリクリウスの防御力は我々の生命線にもなりかねないしな」
「そうですね、さっきの戦闘のおかげでもうエネルギーもかなり減ってしまいましたし」
「危険はあるけど他の参加者に会えるかもしれないしな」
「マサキ、そっちの方向に補給ポイントは無いのよ」
ゼクスの提案に反対するものはいなかった。
「それとカズイ、君はMSの操縦はまったくした事は無いといっていたな」
「はい、そうですけど」
「幸い私のメディウスは複座で操縦は私一人でできる、メディウスに乗るといい」
これはカズイにとっては有り難い提案だった。一も二も無く同意する。
「という事は一機捨てる事になりますね、ならマサキ、百式に乗り換えた方がいい、性能は段違いだ」
「OK、俺としてもこいつのトロトロした動きに飽き飽きしてたんだ」
そして全員が機体に乗り込む。
こうして、ゼクス達一行はこの場に旧ザクを置き去りに補給ポイントへ向かうのだった。


190 :インターミッション ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/10(土) 01:48:34 (p)ID:nw1jN0QL(7)
【ゼクス・マーキス 搭乗機体:メディウス・ロクス(スーパーロボット大戦MX)
 パイロット状況:健康
 機体状況:良好
 現在位置:C-5
 第一行動方針:補給ポイントに向かう
 第二行動方針:味方を集める 
 最終行動方針:ゲームからの脱出、またはゲームの破壊】

【カミーユ・ビダン 搭乗機体:メリクリウス(新機動戦記ガンダムW)
 パイロット状況:健康
 機体状況:EN残量少
 現在位置:C-5
 第一行動方針:補給ポイントに向かう
 第二行動方針:味方を集める
 最終行動方針:ゲームからの脱出またはゲームの破壊】

【カズイ=バスカーク 搭乗機体:メディウス・ロクス(スーパーロボット大戦MX)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:C-5
 第一行動方針:ゼクス達についていく
 第二行動方針:補給ポイントに向かう
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【マサキ=アンドー 搭乗機体:百式(機動戦士Zガンダム)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:C-5
 第一行動方針:補給ポイントに向かう
 第二行動方針:味方を集めえる
 最終行動方針:ゲームからの脱出またはゲームの破壊】

 【初日:13:30】


191 :インターミッション ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/10(土) 01:49:50 (p)ID:nw1jN0QL(7)
Power trip -AI1-

メディウス・ロクスの複座に座った瞬間、カズイの頭の中に再び流れるものがあった。
しかし、それは操縦などとは関係ない、あるものに対する知識。
(ツェントル・プロジェクト・・・・・・自己再生・・・自己進化・・・・・・自己増殖・・・・・・・・・ターミナス・
エナジー・・・・・・・・・・・・ラズムナニウム・・・ガルムレイド・・・・・・学習・・・・・・超エネルギー体・・
・・・・・・全てを一つに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ALL INONE・・・・・・AI1)
カズイは震える。
これは・・・・・・これは歓喜だ。
(はは・・・・・・はははははははは!凄い!これなら僕は生き残れる!
僕はAI1とともに生き残れる!これならあの怪物にだってきっと勝てる!
キラにだって勝てるんだ!)
このゲームに参加したときの絶望感が消えていく。
「どうした、気分でも悪いのか?」
震えだしたカズイを見て、ゼクスがそう尋ねる。
「いえ、ちょっと緊張しちゃって」
とりあえずはそう答える。
(ゼクスさん達がこのまま上手くやってくれるならそれでいいけど、もし駄目なら、
僕は一人でこのゲームを勝ち抜く、このメディウス・ロクスが、いや、AI1があれば簡単だ、
この力があれば地球に戻った後でも、僕は英雄になれる!今までの足手まといじゃないんだ!
そうだ、もしゼクスさん達が駄目になったらこの力を持ってキラの所に行こう、キラに見せ付けてやるんだ、今の僕の力を!)
内心で笑いながらカズイはゼクスに気付かれないようにAI1の情報を引き出す。
一人の少年を狂気に染めて、AI1は待ち続ける、己の進化を。


192 :Power trip -AI1- ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/10(土) 01:50:18 (p)ID:nw1jN0QL(7)
【カズイ=バスカーク 搭乗機体:メディウス・ロクス(スーパーロボット大戦MX)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:C-5
 第一行動方針:ゼクス達についていく
 第二行動方針:補給ポイントに向かう
 第三行動砲身:AI1を完成させる
 最終行動方針:ゲームからの脱出または優勝またはゲームの破壊】

【初日:13:31】


193 :Power trip -AI1- ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/10(土) 01:51:02 (p)ID:nw1jN0QL(7)
191のタイトル
インターミッション→Power trip -AI1-


194 :狂宴 ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/10(土) 15:10:40 (p)ID:RYpHR7//(6)
「ひゃーはははっ!!ブロォォォクン…
獅子を胸に宿した鋼の勇者が大きく右腕を振りかぶり、
ファァァァアントォォォムッ!!」
光のリングを纏った鉄拳が撃ち出される。
すさまじい勢いで迫る鉄拳は赤い巨人を掠め、

 ズウウウゥゥゥン

巨人の背後にあったビルを打砕いた。


「いかんな」
紙一重で恐るべき鉄拳を回避した赤い巨人の操者・ユーゼス=ゴッツォは酷く冷静に状況を分析する。
敵の戦術は極めて単純、パワーと装甲を頼りにした力押し一辺倒。
しかし、敵パイロットは単純ではあっても無能では無いらしい。確実に間合いを詰め、的確な攻撃を
繰り出してくる。敵機のスペックはこちらを遥かに凌駕いている、現状では打開は極めて困難。

「ひゃーははは!死ねぇ!死ねぇい!!」
姿勢を崩した赤い巨人に向かって一気に踏み込んでくる敵機だが、
「むぅぅぅ!?プロテクト・シェェェェェド!!」
急速停止し、左手を眼前に掲げて…
後方から飛来した多数のビームが掲げられた左手に、正確には左手前面に展開された障壁に突き刺さる。

「やはり効果なし、ね。」
そう言って月の巨人を操るベガは唇を噛み締める。
事前の話し合いの結果、小回りが効き近接戦闘に特化したユーゼス機が前衛、的が大きく射撃武器の豊富な自機が
後衛、と役割分担は決めてある。二人の技量故か、即席のコンビネーションとしてはかなり上手くいっている。
それでもこの敵相手には絶対的に火力が足りていない。
月の巨人の放つ無数の光も、赤い巨人の繰り出す一撃も、獅子の勇者を貫くことは出来ない。


195 :狂宴 ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/10(土) 15:12:33 (p)ID:RYpHR7//(6)
このままではジリ貧である。危険を冒してでも接近戦に打って出るか?
ベガがそう考えていると、突然ユーゼスから通信が入る。

『一つ提案があるのだが?』
「何かしら。」
『やつは私が引き付けよう、君はその間に逃げたまえ。』
「…!!」
まさかの提案に息を呑む
「何を言っているの、あなた一人ではなぶり殺しにされるわよ!」
『現状でもそれは変わるまい。現に今の我々の火力ではやつの障壁を貫けんからな。ならば分が悪くとも可能性のある方に賭けるべきだ。』
ズズンッ
前方では新たな衝撃が
『レディーファーストだ。君の機体では大きすぎるから逃げるのも難しいが、私のアルトアイゼンなら多少の無茶は出来る。』
頑丈さが取り得の機体だからな、と。
その言葉の意味を違わず捉え、ベガは問う。
「…あなたの言う通りね。それで、単機でどのくらい耐えられるかしら?」
『よくもって五分というとこだな。』
5分あれば十分。
「判ったわ。あなたの意思は絶対に無駄にしない。」
そう告げると同時に、こちらに向かってきた鉄拳を回避し敵機へと牽制のビームを放ち…

背を翻したローズセラヴィーは北の市街地へと急速に離脱した。


196 :狂宴 ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/10(土) 15:20:31 (p)ID:RYpHR7//(6)
やはり聡明な女性だな、とユーゼスは改めて実感する。
こちらの意図を正しく読み取り、躊躇無く実行してのけた。
あとは、賭けの結果を待つだけ。
「とは言え、寝て待つだけでは果報は得られんな。」
『ひゃはは!お別れの挨拶はすんだか?』
言いながらタックルを繰り出す敵機をサイドステップで回避しマシンキャノンを撃つ。
「済ませた。ひと時の別れの挨拶はな。」
厚い装甲に弾かれるが、気にすることも無く射撃を継続。
『そうだよなぁ、すぐに天国で再会できるからなぁ!!』

やがて、怒涛の連続攻撃をことごとく首皮一枚で回避するユーゼスに苛立ちが募ったのか
『ちょろちょろちょろちょろと、テメーはゴキブリかぁ!?』
言うなり獅子の勇者は動きを止める。
『こいつは取っておきたかったんだがなぁ、特別に食らわしてやる!ゲェェルギィィムガァァン…』
両腕が組み合わされ、その機体から強烈なエネルギー場が放出される。

大技を使うのかとユーゼスは判断し、回避しようとして
「ぬぅ!動かん!」
アルトアイゼンは空間に固定されたかのごとく動きを止める
『おおおぉぉぉッ!!ウィィィィィィィイタァァァァァァァアァァァァ!!』
地を砕き、大気を打ち破り、組み合わせた拳を前に怒涛の勢いで突進してくる鋼の勇者王


197 :狂宴 ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/10(土) 15:25:30 (p)ID:RYpHR7//(6)
「ひゃははは!やるじゃねえか。」
嘲笑するゴステロ。彼の視線の先には左腕を失い、力尽きたように倒れる赤い巨人。
「今の一撃を避けるなんて大したもんだぜぇ!」

「そうでもない。」
苦笑するように呟くユーゼス。
謎のエネルギー場によって動きを止められ、必殺の一撃を受けそうになったユーゼスは
とっさに左肩のスクエア・クレイモアをハッチを閉じたまま撃つことで暴発させ、その
爆発で敵の一撃を回避したのだ。
もっともスクエア・クレイモア暴発の衝撃はすさまじく、敵の突進の衝撃波と相まって
アルトアイゼンは機能停止寸前まで追い込まれているが…

「でも、これでお終いだなぁ!!もうちょろちょろ動けないかななぁ!」
そういって拳を掲げ狙いを定めるゴステロに対し、ユーゼスは仮面の下で嘲笑を浮かべた。
「そう、お終いだ。それも私ではなく、貴様がな。」
「ああん?頭打っておかしくなったのかぁ!?」
「丁度5分だ。」
ユーゼスが告げると、鋼の勇者王に巨大な閃光が降り注いだ…

「…すごい威力ね、電童のファイナルアタック並みだわ。」
ローズセラヴィーの最大最強の一撃・Jカイザー。その凄まじい威力にベガは戦慄すら覚えていた。
先ほどの戦闘で並大抵の火力では通用しないと判断したユーゼス。彼は自分たちの持ちうる最大の火力である
Jカイザーを使わせるべく、それを敵に悟らせぬよう囮となってベガを逃がしたのだ。
やがて通信が回復
『Jカイザー、素晴らしい威力だな。』
「ユーゼスさん、無事ですか?」
『機体の損傷は激しいが命に別状は無い。やつと多少距離があったのが幸いしたな。』
「よかった。それで、敵は?」
『なかなか勘のいいパイロットだったようだな、逃げられた。さすがに完全回避は出来なかったようだが、
機体の左半身が大きく損傷していたから、今後下手には動けまい。』


198 :狂宴 ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/10(土) 15:30:40 (p)ID:RYpHR7//(6)
「そうですか…」
思わず声が沈む。あの凶悪な敵を取り逃がしたのだ、少なからぬ落胆はある。
だが、とベガは思う。今は誰も犠牲になることなく得た勝利を喜ぶべきだろう。
この理不尽ゲームは始まったばかりで、あのような凶悪な輩はまだまだいるのだろうから。
『我々は勝利した。今はそのことを祝おうではないか。』
「はい」

「我々は勝利した。今はそのことを祝おうではないか。」
そう言いながら、ユーゼスは仮面の下で冷笑する。
アルトアイゼンの損傷は手痛いが、得たものも大きい。
命を賭けて見せたことでベガの信用を得た、強力な機体に乗り、優れた能力を得た手ごまを
手に入れたことはユーゼスにとって大きな“勝利”である。もともと、彼は自分で動くより
人を動かすことをコトをなす方が得意なのだ。

今はこの“勝利”を祝おう。



「ちくしょう、殺してやる!」
傷ついた巨人が地を駆ける。
その身を守護する左腕は失われ、それどころか左半身が砕け・溶けてボロボロになっている。
「殺してやる殺してやる殺してやる」
脳だけでなく全身を襲う激痛に身を焦がしながら、半ば機会と化した男は呪詛をはき続ける。
「殺してやるぞぉぉぉぉー!ユゥゥゥゼスゥ!ベガァァァ!!」


199 :狂宴 ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/10(土) 15:32:06 (p)ID:RYpHR7//(6)
【ユーゼス・ゴッツォ 搭乗機体:アルトアイゼン(スーパーロボット大戦INPACT)
パイロット状態:やや疲労(上機嫌なのも私だ)
機体状態:左腕損失、ダメージ蓄積、3連マシンキャノン少々消費
現在位置:D-4 南の平原
第一行動指針:首輪の解除
最終行動指針:主催者の超技術を奪い、神への階段を上る】

【ベガ 搭乗機体:月のローズセラヴィー(冥王計画ゼオライマー)
パイロット状態:良好(ユーゼスを信頼)
機体状態:Jカイザーを撃ってENスッカラカン。移動には支障なし。
現在位置:D-4 南部市街地
第一行動指針:首輪の解析
最終行動指針:仲間を集めてゲームから脱出】

【ゴステロ 搭乗機体:スターガオガイガー(勇者王ガオガイガー)
パイロット状態:全身と脳に激痛、怒りと興奮
機体状態:左腕損失(プロテクトウォール不可)、左半身にダメージ、EN大幅に消費
現在位置:E-4へ逃亡
第一行動指針:エイジ・カミーユ・ゼクス・ユーゼス・ベガを殺す
最終行動指針:生き残り優勝】

【初日 14:30】


200 :狂宴(修正版) ◆T6.9oUERyk :sage :2006/06/11(日) 00:17:05 ID:2tNpsPpm
「そうですか・・・」
思わず声が沈んでしまう。あの凶悪な機体を取り逃がしたのだ多少の落胆はある。
通信機からユーゼスの声
『我々は勝利した。今はそのことを祝おうではないか。』
ベガはその一言に力づけられる。
彼の言う通りだ、と彼女は思う。
この理不尽なゲームは始まったばかりで、あの様なゲームに乗った輩はまだまだいるのだ。
ここで落ち込んでいる暇などない、今はただ前を見るのみ。
「そうですね、今はこの勝利を喜びましょう。」
(北斗、あなた、待っていて下さい。私は必ず、この殺人ゲームを止め家に帰ります。)

「我々は勝利した。今はそのことを祝おうではないか。」
いいながら、ユーゼスは仮面の下に冷笑を浮かべる。
そう、確かにユーゼスは勝利した。
敵機を取り逃がしたことは問題ではない。
深手は負わせたし、何よりあれほど凶暴なパイロットだ、遠からず他の参加者と戦い自滅するだろう。
アルトアイゼンの損傷は手痛いが、その代償としてベガの信用を得た。
強力な機体に乗った有能な手駒、機体の左腕一つの対価としては十分すぎる。
元々、ユーゼスは他人を動かして事を成すことが本分である。
『そうですね、今はこの勝利を喜びましょう。』
通信機から、幾分晴れやかな声が伝わってくる。
そう、今はこの“勝利”を祝おうではないか。

「ちくしょう、殺してやる!!」
傷ついた巨人が地を駆ける。すでにその身を守護する左腕は失われ、左半身は砕け、溶け、ぼろぼろである。
「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる」
脳だけでなく全身を襲う激痛に身を焦がしながら、狂人は呪詛をはき続ける。
「殺してやるぞぉぉぉぉぉぉお!!ぶぅっっっっ殺してやるぅぅぅぅぅう!!」


201 :盤の上で駒は計略を巡らせて ◆IA.LhiwF3A :sage :2006/06/11(日) 02:08:35 (p)ID:2rvTANsr(5)
 雄大な大空をも覆わんとする、重厚かつ巨大なマシンが、バーニアを吹かし移動を続けている。
 白と赤、二色の相反するカラーリングによって構成されているその機体の名は、ガドル・ヴァイクラン。
 バルマー帝国の人型機動兵器、ヴァイクランとディバリウムの二機が合体することによって生まれる、俗に言う『スーパーロボット』である。
 しかし、人型とは形容したが、傍目から眺めたその機体の頭部の形状は、むしろ『怪獣』と呼んだ方が相応しいような、凶悪で獰猛な相貌。
 『スーパーロボット』という言葉から連想される、正義を守り悪を打ち砕く偉大なる勇者の片鱗は、その姿形からはまるで見受けられない。
「――間もなくD−3に入るか。周囲の状況はどうなっている?」
 ヴァイクランのパイロットが言う。
「……異常無し。機影なんて欠片も見えやしないよ、兄さん」
 ディバリウムのパイロットがそれに応じる。彼はヴァイクランのパイロットを、兄さん、と呼んだ。
 兄と弟。そう、彼らは共に『カテゴリーF』と呼ばれる特殊能力を保持する、実の兄弟同士。
 合体メカを兄弟で操る――この魅力的にして美味しい現在の状況が、しかし、当の兄弟本人である弟の方にとっては、好ましくなかった。

「……あのさ、兄さん」
「どうした、オルバ。敵を見つけたか?」
「いや、そうじゃなくてさ……」
 フロスト兄弟の弟――オルバ=フロストは、回線越しに伝わる兄、シャギア=フロストの声――
 ――幾度となく言われた『敵は?』という問いかけに対し、いい加減うんざりして深く溜息を吐いた。
 ヴァイクランとディバリウムの合体が無事に成功してからというものの、シャギアは事あるごとに、「オルバよ、敵の反応はあるか?」
 「静かだな、オルバよ」「オルバよ、いいか、1,2,3のタイミングだ。喉を震わせ声を絞り出せ。それが勝利に繋がる、分かるな?」
 ――最後に至ってはキャラが波状を起こしているような気がするが、とにかく戦闘のことばかり考えているのだ。当然、このガドル・ヴァイクランでの。
 オルバの懸念というのは、ガドル・ヴァイクランの放つことが出来る唯一の武装についてのことであった。
 先刻、こっ恥ずかしい台詞を叫んだ末にどうにかこうにか合体までは終えることが出来たが、このガドル・ヴァイクランにはもう一つの問題点がある。
 この世界に呼び寄せられた際に頭のネジが一本か二本ほど外れたのか、やたらとテンションが最高にハイな感じになっているシャギアはともかく、
 もう一度あの『ガドル・ヴァイクラン!』と叫んだときのような羞恥心を味わうのは、オルバとしては真っ平御免であった。


202 :盤の上で駒は計略を巡らせて ◆IA.LhiwF3A :sage :2006/06/11(日) 02:10:44 (p)ID:2rvTANsr(5)
 しかしまあ、今のシャギアにはその事をいくら抗議しても聞き入れてもらえないような気がしたので、
 オルバは別の問題を話題に挙げることにした。
「――敵を減らさなきゃいけないのはいいよ。けど、
 このゲームで生き残れるのは一人だけだっていうルールは、ちゃんと頭に入ってるんだろうね?
 そのために、首輪を解除出来るような、技術のある奴を見つけて利用する。僕達はそれも一緒にこなさなくちゃならないんだ」
「分かっているさ。そのために今こうして飛んでいるのだろう?」
「いや、だからさ。適当に飛び回って手当たり次第っていうよりは、何処か目的地でも決めて動いた方がいいと思うんだけど。
 ……第一、今兄さんが探してるのって絶対――」
「待て、オルバよ。モニターを見ろ」
「兄さん! ちょっとは僕の話も――ん?」
「――他の参加者か。どうやら、支給される機体というのは実に区々のようだな」
 そう言うシャギアの表情は、何やら不満気であるようにオルバには映った。
 ――まあ、この子達相手に『アレ』を使う訳にもいかないだろうしね。
 モニターに映っているのは、各自様々な機体が支給される筈のこのゲームにおいては異端であろう、
 生身でこちらを眺めている一人の少女と――
 ――その隣で、彼女に連れ添い立っている、人間と比べれば大柄の、青い装甲に包まれたロボットだった。




「ブレンともグランチャーとも、君とも違うみたい……そっか。飛行機とかと同じで、人を乗せて飛んでるだけなんだ」
「ラーサー」
 大型のマシンは彼女達の頭上で静止しており、降り注いでくる筈の太陽光は遮断され、地表には大きな影が築かれている。
 それを見上げている少女――宇都宮比瑪は、目の前を浮遊し己の視界を埋め尽くしているその機体に対し、
 言い様のない嫌悪を感じて、半ば怯えるように隣で佇む青いロボット――機動兵ペガスへと寄り添った。
 ――暖かいとか、冷たいとか、そんなのがなんにもない。これって、ただの『力』なんだ。壊したり、殺したり。
 そういうことだけに使われるものを人に持たせるのって、何でさ? わかんないよ。ノイ=レジセイアさん――
『――そこの君、聞こえるか? 我らはこのゲームから脱出するための手段を探している。行動を共にする気はないか?』
 機体の外部スピーカーから放たれた声によって、比瑪ははっと我に返った。数瞬遅れて、相手の発した言葉の意味を理解する。
 脱出する。このゲームには、乗らない。
 目の前の機体のパイロットは、これだけの大きな力を持ちながら、戦うための力に使う気はないということだ。

 ――ああ、そうなんだ。そうだよね。『力』だって、結局は使う人の気持ち次第でどうにでもなるんだ。
 何となく、嬉しくなった。
 それは独りよがりな確信かもしれないが、在り来たりな言葉で表してみれば、『やっぱり人は、分かり合えるのだ』――と。


203 :盤の上で駒は計略を巡らせて ◆IA.LhiwF3A :sage :2006/06/11(日) 02:12:33 (p)ID:2rvTANsr(5)
『――どういうつもりだい、兄さん?』
 オルバには、少女を仲間に誘った兄の意図がまるで読めなかった。通信回線がそのままなので、
 カテゴリーFの共感能力を持ってシャギアへと問いかける。
 相手は同じゲームの参加者で、どう見たって首輪の解析能力を持っているとか、そう言った利用するメリットを持っている人間には見えない。
 おまけに支給された機体のサイズもこちら側とは段違い、いや、
 このサイズではもはや機体とすら呼べない。第一人が乗り込んでいないのだ。
 今自分たちの目の前にいるのは、無防備な姿を晒している一人の少女と、機械仕掛けで稼動している、
 本来の意味での『ロボット』が一体。それだけだ。
 機体を降ろし、ただ踏み潰すだけで事は終わる。それを何故――
 通信回線上に映し出されている、ヴァイクランのコックピットの中にいるシャギアが、
 芝居がかった動作でふっと笑みを浮かべ、それから応えた。
『彼女は言わば、技術者を引き入れるための『保険』だ。オルバよ』
『――『保険?』』
『お前の思っている通りだ。ルールに則り参加者達を始末するだけなら、あの少女の存在は我らにとって負担でしかない。
 戦力としても当てには出来んのだからな。だが、仮にお前と同じ思考へと技術者が思い至れば、技術者は我らに彼女を始末する気などなく、
 崇高な『脱出』という旗の下に手を組んだ同士だと、そう思い込んでくれるという訳だ。そうなれば、事は我らにとって有利に運ぶ』
『へぇ……』
 この世界に飛ばされて以来、若干地に堕ち掛けていた兄の威光が、流暢に語られたその企みによって輝きを取り戻したように思えた。
 いやホントに、
 ほんの数刻前まで『数価変換、ゲマトリア修正……受けろ! ベリア・レディファァァー!!』などと叫んでいた男とはえらい違いだ。
『第一、嘘も言っていないしな』
『嘘?』
『『我ら』はこのゲームから脱出するための手段を探している。我らは――そう、最後に笑うのは、我ら兄弟だ。その事実に代わりは無い。
 技術者もこの少女も全て、我らが利用するための『駒』でしかないということだ』
 この世界にまで持ち込めていたのか、シャギアが愛用のナイト――馬を象ったチェスの駒を取り出して、眼前へと高々と掲げるその姿を、
 オルバは苦笑交じりに眺めていた。まったく、何だかんだ言って何処までも計算尽くされているということか。




 だがその時、彼らのいるD−3空域にはもう一つ、この殺戮劇においても屈指の質量を誇る機体――否。『船』が存在していた。
 人為的に創られた『箱庭』とはいえ、大気圏内に属するこの世界においては、その膨大なエネルギーを完全に活かすことは出来ないが、
 相転移エンジンと呼ばれる、火星のオーバーテクノロジーによって浮上したその機動戦艦の名は、ナデシコ。
 そして、ナデシコのメインブリッジの中、搭載されたメインコンピュータと協力してそれを飛ばしている、一人の『勇敢』なる青年の名は――


「――やいやい、そんな悪そうなマシンに乗って女の子をいたぶろうなんざ、この兜甲児様が許さねぇぞ!!」

 ――といった。


204 :盤の上で駒は計略を巡らせて ◆IA.LhiwF3A :sage :2006/06/11(日) 02:14:48 (p)ID:2rvTANsr(5)
 突如割り込んできた通信に顔を上げ、前方のモニターへと視線を向けてみれば、
 そこには自分達の機体と同じ、白と赤で構成された一隻の戦艦。
 ――巨大戦艦だって? このゲームにはそんなものまで支給されていたのか……。
 ガドル・ヴァイクランよりも、更に二回りは大きいその空飛ぶ方舟を眺めて、オルバは少なからず驚嘆した。
 メカの選出に節操が無いというか何というか。
 それはさておいて、次から次へとよくもまあ現れるものだ。人間サイズから一気に巨大戦艦。見下ろす側から見上げる側へ。
 さて、次はどう出たものか――
『ほう……戦艦か。これはいい』
 再び届いてきたシャギアの思念は、先刻と同じ歓迎の言葉だった。またも何か考えがあってのことなのだろう、素直に問いかける。
『今度は何故だい? 兄さん』
『彼が保持しているのは、
 MSや我らのヴァイクラン、ディバリウムのような人型機動兵器とは違う。それらをまとめて収容することが出来る『戦艦』だ。
 このゲームにおいて、その存在は徒党を組む者にとっての拠点であり、シンボルになり得る。
 これから我らは、主催者打倒という希望に縋り、ノアの方舟へと乗り込んだ革命軍ということになるのだよ』
『あれへ着艦を求めるつもりかい? そんな簡単に受け入れてもらえるかな』
『そこであの少女を使えばいい。元々彼は、彼女を庇うために飛び出してきたようだ。
 その彼女を連れて仲間になりたいと申し出れば、断ることもあるまい』
『なるほどね――』
 大したものだ――先程の計略が、既にここで活きている。このような事態が起こることも、想定の範囲内だったというのだろうか。
 実際問題、通信での台詞を聞く限り、あの戦艦の艦長は然程知恵の回る相手ではないようだ。幾らでも言い包めることは可能であろう。
 この駆け引き、既に詰んでいる。
『さて……そうと決まれば、まずはこの誤解を解くとしよう。オルバよ、このゲームはまだ始まったばかりだぞ』
『分かっているよ、兄さん。――兄さんにとっては、この殺し合いも本当の意味での『ゲーム』ってところなのかな?』
『フッ。――そうかもしれんな』
 口の端を吊り上げて不敵な笑みを浮かべる兄の姿が、今のオルバは素直に頼もしいと思えた。


205 :盤の上で駒は計略を巡らせて ◆IA.LhiwF3A :sage :2006/06/11(日) 02:15:59 (p)ID:2rvTANsr(5)



『――そうとも。少女と戦艦を蹴散らすだけで仕舞いなど、私のヴァイクランの初陣には相応しくないのだからな……』

 最後に聞こえてきた呟きというか、思念の中から強烈に湧いて出てきた願望については、もはや何も言うまい。







【シャギア=フロスト 搭乗機体:ヴァイクラン(第3次スーパーロボット大戦〜終焉の銀河へ〜)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:D-3
 第1行動方針:比瑪を利用して甲児の誤解を解き、ナデシコへと着艦する
 第2行動方針:意に添わない人間の排除
 第3行動方針:首輪の解析及び解除
 最終行動方針:オルバと共に生き残る(自分達以外はどうなろうと知った事ではない)
 備考:ガドル・ヴァイクランに合体可能(かなりノリノリ)】

【オルバ=フロスト 搭乗機体:ディバリウム(第3次スーパーロボット大戦〜終焉の銀河へ〜)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:D-3
 第1行動方針:比瑪を利用して甲児の誤解を解き、ナデシコへと着艦する
 第2行動方針:意に添わない人間の排除
 第3行動方針:首輪の解析及び解除
 最終行動方針:シャギアと共に生き残る(自分達以外はどうなろうと知った事ではない)
 備考:ガドル・ヴァイクランに合体可能(かなり恥ずかしい)】

【宇都宮 比瑪 搭乗機体:ぺガス(宇宙の騎士テッカマンブレード)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:D-3
 第1行動方針:シャギア、オルバと共に甲児の誤解を解く
 第2行動方針:依衣子(クインシィ・イッサー)を探す
 最終行動方針:主催者と話し合う】

【兜甲児 搭乗機体:ナデシコ(機動戦艦ナデシコ)
 パイロット状況:良好、少し興奮気味
 機体状況:良好
 現在位置:D-3
 第1行動方針:比瑪をフロスト兄弟から救う……つもりだが、何やら状況がおかしい?
 第2行動方針:ゲームを止める為に仲間を集める。
 最終行動方針:アインスト達を倒す】

【初日 15:00】


206 :一応スゴい人達 ◆30UKBYJFE. :sage :2006/06/11(日) 05:27:47 (p)ID:c99tqs5P(6)
 見渡す限りの一面に広がる緑の平原。吹き抜ける風、そよぐ草花。抜けるような青空の下。
その風景にはあまりにも似つかわしくない、ド派手な色をした一機の戦闘機と一基のミサイルが停まっている。
そして、その間で二人の人間が話し合いをしていた。
「全く、ヘルメット(とパイロットスーツ)が無ければ即死だった」
憔悴しきり、青い顔でぼやいたのはしっかりとしたパイロットスーツに身を包み、珍妙なヘルメットを付けた男、シャア・アズナブル。
何度も書かれるが一応ネオジオンの総帥である。
「それは、お前が姑息な真似ををするから!……自業自得だろう」
あのまま放っておけば離れられたものを、怒りに任せて――
そうちょっと後悔しながら返すのは、アムロ・レイ。
連邦軍髄一のMSの操縦技術を持つエースパイロットだ。
「全く、何もこんな場所で休む事はあるまい」
「散々降ろせと喚いて、そこで大量に嘔吐していた男が言うことか」
呆れるように言うシャアに、アムロは明確な苛立ちを持って返す。
それを落ち着けと手で制し、シャアは続ける。
「そうではない。
 何故このような目に付く場所で場所で今後の方策の会議をするのか、という話だ。
 それでなくとも我々の機体は目立つというのに。
 地図によればもう少し進んだ所に都市か何かの施設がある筈だろう。
 ――地図の端と端が繋がっているという話を鵜呑みにすれば、だが。
 落ち着いて話すならばそこの方が良かろう。」
「自覚があったのか!?目立っているって!」
「……は?何を驚いて……?」
「いや、すまない、忘れてくれ」
「いや、まあ、良いのだが」
アムロの奇妙な反応にシャアは少しヘルメットに隠れた首を傾げたが、正直今はどうでも良かった。
それより現状である。



207 :一応スゴい人達 ◆30UKBYJFE. :sage :2006/06/11(日) 05:30:21 (p)ID:c99tqs5P(6)
遮蔽物の無い平原は、レーダーの効かず、目視で情報を確認せざるこの世界では非常に敵に発見されやすい。
「道理が分からないお前でもあるまい」
アムロに筋立った答えを求めてそう問掛ける。
「さっき交戦した赤い機体だが、奴も市街地に向かった恐れがある」
答えを聴き、シャアは成程と軽く頷いた。と、同時に、突然アムロがシャアの体を捕まえた。
「おい、納得する振りをしてこちらの機体に近付くな」
どさくさに紛れて機体を盗られては堪ったものではない。
残されるのは核ミサイルなのだ。――しかもピンクの。
鬼の形相でアムロは拳を振りかざす。
「待て。誤解だ。まだ気分が良くなくてな。些かふらつくのだ」
「いいからそっちへ下がれ。修正するぞ」
「わ、分かったから拳を引け!全く、そんな事だから貴様は……」
ぶつくさと文句を言いながらあっさりとシャアは後ろに下がる。
アムロにはそれが少しだけ妙に感じられたが、それで問題が出るわけでも無いので気に留めなかった。
「……話を続けるぞ」
油断ならないシャアのことだ。っていうかあんなもん支給されたら誰だってそうする。
俺だってそうする。内心、自分に支給された機体に安堵しながらアムロは言葉を続ける。



208 :一応スゴい人達 ◆30UKBYJFE. :sage :2006/06/11(日) 05:32:47 (p)ID:c99tqs5P(6)
「オーラバリアと言ったか。
 分かっていると思うが、さっきの戦闘でこちらの攻撃を無効化した、実弾兵器にも影響を及ぼすバリアの事だ。
 バルキリーの武装では、おそらくアレを抜く事は不可能に近い。
 もう一度離脱出来るかと言われれば、それは可能だと思う。だが――
 キ サ マ を 逃 が す た め に ! !
 ……時間を稼がなければならない。
 イタズラに消耗するのは出来る限り避けたい」
わざわざ語気を強めて、大業にシャアに向け体を突き出しながらアムロは言う。
「ふむ。そうか」
しかし、それに対して悪びれる様子はシャアには全く無い。
本当にコイツは……。
アムロは心の中で舌打ちをした。
「それに、お前がそうしようとしたように、最初に一旦市街地に集まろうという人間も少なくはないだろう」
「……つまり、それを狙う輩も、か。」
「そういうことだ。
 話の途中で戦闘に巻き込まれて機体に乗る暇も無く死んだ、なんて事になっては目も当てられないだろう」
「比べれば目視で近付く機影をを発見しやすいここならば、幾分かマシ、か」
互いが互いを確認出来るのだ。
NTとしての直感を生かして索敵すれば、先手を取ることは出来ないが後手に回ることもない。
また、地上に居れば先のレプラカーンのように高高度を飛んでいる機体からは補足されない。
それは高高度を移動できるバルキリー、核ミサイルが離脱する上では非常に有利な条件だ。
「それで、これからの方針だが――」



209 :一応スゴい人達 ◆30UKBYJFE. :sage :2006/06/11(日) 05:36:17 (p)ID:c99tqs5P(6)


 しばらくの間、アムロ達は自分達の所持品のチェックを行った。
「食糧は……充分とは言えないが数日持つ程度にはあるな」
「何故貴様はレーションで私は乾パンなのだ」
「いや、そんな事を聞かれても困るんだが……ほら、その分缶詰があるじゃないか」
「……缶切りが無いのだが」
「石でも使え」
「こ、これは……!」
「どうした、シャア!」
「核ミサイルのトランクからマニュアル、食糧だけではなくこんな物が……!」
「これは……ブライト?樹脂のマスクか?」
「ソロモンの悪夢、ガトー小佐のもある。こっちの金髪は……誰だ?」
「俺も見たことは無いな」
「……。」
「お、おい被るのか!?。」
「弾幕薄いぞ!と、何!?」
「う、うわ!ブライトの声に!?」
そして、大体それぞれが互いの物も含め持ち物のチェックを終えた頃、それぞれのマニュアルの最初の方のページにあった余白は少なくなっていた。



210 :一応スゴい人達 ◆30UKBYJFE. :sage :2006/06/11(日) 05:39:26 (p)ID:c99tqs5P(6)


 ――首輪が爆破される条件がゲームからの逃走だけとは考えられない。
筆談は、この文で始められた。
アムロはパイロットであると同時にMSの設計者でもある。
日常、上着のポケットにペンの一本も挿していることもあるのだ。
そして、ガンダムの設計の他にもハロを作り、電子機器やコンピューターについてもそれなりの知識を持っている。
『当然だな。君のような人種が呼ばれているのだ。
 解析される可能性も考慮されているだろう。
 となると盗聴機能の一つも付けて未然に防ごうとしている恐れもある。』
『その前にそもそも設備関係で詰まれている可能性もあるがな。』
『設備さえあれば外すことはできそうか?』
『そもそも首輪そのものを見てみなければなんとも言えない。
 それに、首輪に使われている爆薬の事もある。
 そちらの関係に詳しい人間も居た方が良い。』
『首輪と人材の確保が必要か。』
「できれば殺し合いに乗っていない人間とは協力関係を結びたい所だな」
「うむ。戦力は有るに越したことはない」
『つまり首輪は殺し合いに乗った人物から奪うか、やられた機体の残骸を当たるかという事になるな。』

【アムロ・レイ 搭乗機体:VF-1Jバルキリー(ミリア機)(マクロス7)
 パイロット状況:頭が冷えて至って冷静
 機体状況:ガンポッド、ホーミングミサイル共に若干消費
 現在位置:H-2、草原側、地上
 第一行動方針:首輪を確保する
 第二行動方針:協力者の探索
 第三行動方針:首輪を解析できる施設、道具の発見
 第四行動方針:核ミサイルの破棄
最終行動方針:ゲームからの脱出
 備考:ボールペン(赤、黒)を上着の胸ポケットに挿している】



211 :一応スゴい人達 ◆30UKBYJFE. :sage :2006/06/11(日) 05:42:24 (p)ID:c99tqs5P(6)


 貴様は気が付いていないようだが――
話し合いを終え、アムロ・レイが自機に戻っていく後ろ姿を見ながらシャア・アズナブルは心の中で呟いた。
私は貴様の機体を奪おうと思えば奪えたのだ。
遥か高空に吹き付ける暴風。高速で飛ぶミサイルと空気による摩擦熱。
そして、バルキリーによる振り回しの遠心力からも我が身を守ったパイロットスーツ。
これさえあればたかが生身の人間一人、いや、例え刃物や銃を持っていたとしても――
振り切る事は容易い。
だが。貴様自身が言っていたのだ。戦いになったら私の核ミサイルを逃がさねばならんと。
そして、それは先の赤い機体との戦闘で証明されている。
これに乗ってさえいればアムロという知る限りの兵器の乗り手中で最強の手駒を従える事が出来る。
いや、それどころか他の参加者を仲間に引き入れれば引き入れるほど壁は厚くなるだろう。
強力な機体が無いのならば、しばらくは核ミサイルで粘ってみるのも悪くはないかもしれんな……。
「チャンスは最大限に生かす。それが私の主義だ」
シャアは呟く。
随分と地平に近くなった太陽に照らされ、そのピンク色の角が怪しく光る核ミサイルのコックピットシートに身を預けながら。
【シャア・アズナブル 搭乗機体?:核ミサイル(スーパーロボット大戦α外伝)
 パイロット状況:嘔吐によりやつれ気味
 機体状況:真っピンク
 現在位置:H-2、草原側、地上
 第一行動方針:核ミサイルをダシにアムロに身の安全を確保させる
 第二行動方針:仲間を増やし自分(と核ミサイル)を守らせる
 第三行動方針:強力な機体の入手
 第四行動方針:首輪を確保する
 第五行動方針:缶切りを手に入れる
最終行動方針:ゲームからの脱出
 備考:核ミサイルの荷物収納箱からブライト、ガトー、アズラエルのマスクを発見、所持。
 ボイスチェンジャー機能付き。
 H-2の何処かにシャアの吐瀉物あり】
【初日 16:00】



212 :始まりの葬送曲(>>159-162の修正) ◆gw.2K3uEb6 :sage :2006/06/13(火) 23:35:57 (p)ID:OIvteVf/(5)
「遠くから見てもすぐに分かるあの服装は確かにラクス・クラインだった・・・。
そしてその隣に居たのはやはり・・・間違いない。」
ザフト軍のエースパイロット、アスラン・ザラはあの部屋に居た人物を思い返していた。
一人は自分の許嫁であるラクス・クライン。
そしてもう一人は親友であるキラ・ヤマト。──そして彼の怨敵でもある。
「どうして・・・キラが生きてるんだ・・・!」
ザフト軍のエースパイロット、アスラン・ザラは一人つぶやく。
彼は、部下であるニコルを亡くしたばかりであり、
ニコルを殺したストライクガンダムのパイロットを道連れに自爆したはずだった。
ストライクガンダムのパイロットであるキラ・ヤマト──親友を殺したはずであった。
目を覚ますと、いつもとは違う光景が広がり、エクセレンと呼ばれた女性のナマナマしい死を見せ付けられ、いつの間にかこの殺し合いに参加させられることとなっていた。



213 :始まりの葬送曲(>>159-162の修正) ◆gw.2K3uEb6 :sage :2006/06/13(火) 23:37:25 (p)ID:OIvteVf/(5)
アスランに与えられた機体はファルゲンマッフ。
自分の愛機である深紅のイージスガンダムとは対照的な蒼い機体。
細部までチューンアップされた機体は惚れ惚れするほどであった。
「かなりハイスペックな機体だな・・・。コーディーネーターの俺だからこの機体の性能をなんとか引き出せそうだが・・・。ナチュラルならエースパイロットクラスでないとこの機体は扱えそうにないな。」
試しに動かしてみようと操縦桿を握る。
蒼き機体はふわりと浮き、そして風を切って見事に飛んだ。
「いい感じだ。どうやらこの機体は俺と相性がいいみたいだな」
その後、数分間のテスト飛行を終えて機体構造をほぼ全て理解し終えようとしたとき、レーダーに一つの光点が映った。
その光点はあっという間に中心、つまりアスランのいる位置に近づいてきた。
森が揺れる、何か大きなものが近づいてくるのが肌で感じられた。
そして肉眼で見えたその機体はどこか神々しく、そして非機械的であった。
ラーゼフォン、聖なる歌を奏でる機械の神。
その機体から通信が入った。
「おい、そこの機体。お前はゲームに乗ってるのかい?」
唐突な質問であり、どこか教養の無さも伺える声であった。
少しだけ間をおいて、その通信に答える。
「俺はゲームには乗っていない。だが、俺は殺さなければならないやつがいる。」



214 :始まりの葬送曲(>>159-162の修正) ◆gw.2K3uEb6 :sage :2006/06/13(火) 23:38:03 (p)ID:OIvteVf/(5)
思いもよらない返事が返ってきて、少しバサラは戸惑ったが、
「おいおい、ぶっそうなこと言ってんじゃねえよ。なんで殺したり殺されたりしなきゃいけねえんだよ」
理由──キラを・・・親友を殺さなければならない理由。
「それは・・・俺がザフト軍のパイロットだからだ!
キラは・・・俺の親友なんだ・・・だけど!!ニコルは優しいやつだった!ピアノを愛し、静寂を愛し、平和を愛していた!!そのニコルを・・・キラは!!」
アスランの顔はほんの少しだけ泣きそうになっていたようにも見えた。
「俺は・・・俺は・・・キラを許すことはできない!!」
次に顔を上げたとき、アスランの目にはもはや涙は見えなくなっていた。
「ゲームに乗ることも、脱出することも今はどうでもいい、ただニコルの仇だけは討つ」
確かな決意を秘めた顔がそこにはあった。
そんなアスランの叫びを一蹴して、
「けっ!くだらねえな。殺したから殺して、殺されたから殺して、それで争いが・・・憎しみが終わるのかよ!!」
その言葉にアスランは怒りを覚えた。
「お前に何がわかる!?」
「へっ、わかんねえよ!だから、俺は俺のやり方で争いを終わらせる。
俺の『歌』でな。いっくぜぇぇぇ!」
そういうと、バサラは歌を歌い始めた。
そして、その歌に共鳴するかのようにラーゼフォンからも音が発せられていた。
「へっ。俺とデュエットしてくれるのかい?お前は最高の相棒だぜ。」
機械の神の声はとうてい音楽と呼ばれるようなものではなかったのに、不思議にも確かにそこには歌が生まれ、デュエットができあがっていた。



215 :始まりの葬送曲(>>159-162の修正) ◆gw.2K3uEb6 :sage :2006/06/13(火) 23:40:04 (p)ID:OIvteVf/(5)
「ふざけるなぁぁ!!!」
アスランの怒りは考えるよりも先に行動に移らせた。
放たれたビーム、そしてデュアルミサイルの波状攻撃。
回避不可能な至近距離からの攻撃。
しかし、その攻撃はラーゼフォンへと届くことなく突如現れた音障壁に阻まれることになった。
「くっ、なんだあの機体!?PS装甲よりも堅い!?・・・ならば!!」
二本のレーザーソードを取り出し
爆破による砂埃が晴れるまでもなくファルゲンマッフを急速接近しようとする。
「やめろおぉぉぉぉ」
バサラの叫びにラーゼフォンが呼応し赤い目が額に隠れ“真実の目”が現れる。
 
『ラーーーーーーーーーーーーーーーーー』
 
その幻想的な声は地を抉り、森の木を倒す。
ファルゲンマッフに直接的な被害はなかったが、急停止させられざるをえなかった。
「へっ。俺を守ってくれてるのかよ。ラーゼフォンか、お前は最高の相棒だぜ!
おい!そこの蒼い機体!!俺の話を聞け。
そのニコルってやつは優しかったんだろ?そんなやつが殺すことを望むと思ってんのか?
違うだろ!」
その言葉はアスランの胸を深くえぐった。
「だけど・・・俺は・・・」
「・・・だったら、歌って送ってやるしかねえだろおぉぉ!
俺の歌を聴けえぇぇぇぇ!!!!」
『ラーーーーーーーーーーーーーー』
機械の神の声はとても優しく、そして哀しい響きをしていた。
そして森の中にはラーゼフォンとバサラのデュエットが木霊する。
「この歌は・・・葬送曲?」
多少は歌の知識があったアスランはそれが葬送曲であるというのがわかった。
木霊する歌の中で蒼き機体はただ立ち尽くしていた。



216 :始まりの葬送曲(>>159-162の修正) ◆gw.2K3uEb6 :sage :2006/06/13(火) 23:41:46 (p)ID:OIvteVf/(5)
【アスラン・ザラ 搭乗機体:ファルゲンマッフ(装甲騎兵ドラグナー)
 パイロット状況:動揺
 機体状況:良好
 現在位置:B-6
 第一行動方針:未決定(改心したかどうかは次の作者に任せます)
 最終行動方針:未決定】

【熱気バサラ 搭乗機体 ラーゼフォン:(ラーゼフォン)
 パイロット状況:絶好調
 機体状況:損傷無し
 現在位置:B-6
 第一行動方針:歌でニコルを送る
 最終行動方針:自分の歌でゲームをやめさせる】

【初日 14:45】


217 :はじめてのしゃいにんぐふぃんがー :sage :2006/06/14(水) 00:00:32 (p)ID:1UKevQvi(4)
昆虫のようで、昆虫と呼ぶには余りにも巨大なロボットが空を飛んでいる。
「…なんてことだ」
パイロット、孫光龍は少し複雑そうな笑みを浮かべ、眼下に聳える山々を見据える。
「少し進む方向がずれたかな?ま、いいか。たいして距離が変わるわけでもないし」
本来彼はA−1に向かっていたのだが、現在彼がいる場所はA−7とA−8の境目。
「少し調子に乗りすぎてたかな?ふふ………」
実際、彼はじわじわと己の念動力を吸って力を付けていくレプラカーンに心酔し、集中力をやや削られていた。
「いけないいけない………少し落ち着こうか」
念動力を抑え、レプラカーンの成長を止める。
「さて、こっちだな」
昂ぶる心を鎮め、A−1へと向かおうと機体を街の方向に向ける。
山の上にロボットがいた。
「………………はい?」
モニターを望遠にしてもう一度良く見る。
山の上にロボットがいた。


218 :はじめてのしゃいにんぐふぃんがー :sage :2006/06/14(水) 00:01:22 (p)ID:1UKevQvi(4)

「ふはははははっ!風雲再起よ!あれを見ろ!」
皆さんこんにちは、風雲再起です。馬です。この五月蝿い人はギム=ギンガナム君です。
「黒歴史に無い機体!珍妙だなぁ!モビルスーツが虫のようだ!」
あ、ちなみに僕はこのシャイニングガンダムのコックピットと装甲の間の空間にいました。
そこをこのむさ苦しい人に見つかったのです。暑苦しい人は嫌いです。(あ、マスターアジアは例外です)
僕を見つけるや否やなにやら興奮してマスターアジアの台詞をパクっていました。
マスターアジアに貰った第12回ガンダムファイト優勝賞品でもある僕の愛馬…馬の僕が愛馬というのもおかしいですね(笑)、
愛モビルホースもなくなっていて、もうホント踏んだり蹴ったりです。むしろ僕が人の恋路を邪魔する奴を踏んだり蹴ったりしたいです。
「イレギュラーとでも呼ぼうか!?あの機体!仕掛けるぞ、風雲再起!!」
そのうえこのおっさん僕を気に入ったらしく…もうね、阿呆かと馬鹿かと。おや、ギンガナム君が通信を虫ロボットに繋ぎました。
『ぬおおおおおおっ!!小生は、ギム=ギンガナムであるッ!いざっ!』
なんですかこの人。武士?武士ですか?
「ヒヒーン!」
でも一応乗ってあげました。馬の僕が乗るとは我ながら上手いことを(ry。


219 :はじめてのしゃいにんぐふぃんがー :sage :2006/06/14(水) 00:02:15 (p)ID:1UKevQvi(4)

「フン…!いいだろう、相手になってあげるよ!」
光龍は山から山へと飛び移って近づいてくるロボットにフレイボムを放つ。火球がロボットに迫り――だが、かわされる。
『あたるわけねえだろぉ!こっちはモビルファイターだぞ!』
太い声が通信機を通して聞こえる。
既に足元まで寄ってきた『モビルファイター』なる機体が頭部のバルカンを発射した。
「そんなもの、かわすまでもないさ!」
オーラバリアを展開してバルカンを防ぎ、オーラソードを抜く。相手が地上にいて射撃武器が当たらない限り接近戦が最も効率的だろう。
牽制と眼暗ましの意味を兼ねてオーラバルカンとフレイボムを撃ち、爆炎と硝煙で辺りが覆われるのを確認して急降下する。
煙の中に敵機影が映り、オーラソードに念動力を注ぐ。オーラ斬り、いや念動斬とでも言うのだろうか。
機影に接近し―――煙を掻き分け―――敵に気付かれたが、もう反応できるような距離ではなく―――オーラソードを振り下ろす。
「もらっなっ!?」
反応すらできないはずの攻撃がビームで形成されたサーベルに止められる。念動力とビームが混ざり合って弾けあい、耳障りな音を立てる。
『このシャイニングガンダムは機人一体!普段なら反応できない攻撃にも…十分対応できるのだぁぁ!』
耳が痛くなるような大声を聞きながら光龍はオーラソードを引き、空中に離脱しようとする。
『逃がさん!』
シャイニングガンダムがもう一本のビームソードを抜き、レプラカーンに斬りつける。
オーラバリアを展開させる暇さえない高速の攻撃。だが、その一撃はレプラカーンの左脚部を切り落とすだけに留まる。瞬間、爆発。
空中に舞い戻った光龍は舌打ちしながら呟く。
「まったくやってくれる…どうやら脚部に装填されていたグレネードが爆発したようだね。これでくたばってくれていればいいが…」
しかしその思いも虚しく、殆どダメージを受けていないように見えるシャイニングガンダムが山岳に立っていた。
『はーはっはっは!どうしたイレギュラー!そんなことでは小生の闘争本能は満足せんぞ!』
高らかに、挑発的に笑うギンガナム。
その挑発に乗ることもなく、光龍は思考する。


220 :はじめてのしゃいにんぐふぃんがー :sage :2006/06/14(水) 00:03:07 (p)ID:1UKevQvi(4)
(接近戦では恐らく勝ち目は無い…この機体は結構な重武装だから、装甲と機動力が低い。かといって遠距離戦闘では決着がつくまい。
 いっそ逃げようかな?)
特に戦いから逃げることを忌避しない光龍はそんなことを考えたが、しかし思いとどまる。
(今の僕にはあるじゃないか…切り札が!)
先にあげた全ての弱点をなくせる手段。危険は伴うが―――きっと、爽快だ。制御できる自信だってある。
『どうした虫けらぁ!臆したか?ならば、さっさと御伽噺の世界に帰りな!』
その言葉を皮切りに、光龍は決意した。
『ふふふ、ギンガナム、とかいったね?面白いものを見せてあげよう』
『何ぃ!?』
光龍は今まで意図的に抑えていた念動力を開放する。レプラカーンの小さな体が徐々に膨れ上がる。
『これが…こいつの本当の姿さ!まだまだ大きくなるよ!吸えっ!僕の念動力を吸えっ!レプラカーンよ!』
強大なオーラを周囲に漂わせながら、巨大化していくレプラカーン。既にそのサイズはオーラバトラーの、そしてモビルスーツの常識を超えている。

『まだまだ大きくなるだとぉ…貴様!そんなにパワーアップが好きかぁぁぁ!』
『好きさ!』
『実は小生も大好きだぁぁぁぁあ!むうん!』

今までにない跳躍。レプラカーンの位置よりはるか上に舞い上がるシャイニングガンダム。
『小生の!月面で溜まりに溜まったフラストレーションが真っ赤に燃えるぅぅぅ!』
両腕を広げ、荒ぶる声で叫ぶギンガナム。
『な、なんだ!?』
いきなり飛び上がったシャイニングをみて、光龍が疑問の声を上げ、だが尚念動力をレプラカーンに注ぎ続ける。

『剋目せよ!これぞ!  ス   ー   パ   ー   モ   ー   ド    で   あ    る    !』

急激に機体色を金色へと変えていくシャイニングガンダム。その余りの美しさに、一瞬光龍も目を見張る。

『そぉして!これが!』


221 :はじめてのしゃいにんぐふぃんがー :sage :2006/06/14(水) 00:03:53 (p)ID:KWn22mQ5(6)

凄まじい勢いで自分のレプラカーンの懐に飛び込んで来るシャイニングガンダム、オーラバリアは…何故か、展開しない。
(巨大化中の副作用…?いや、僕が恐れているとでもいうのか、この孫光龍が!?あいつを!)
もはやシャイニングガンダムは目の前。
(く……だが、サーベルを抜くのにはその機体でも数瞬かかるだろう、ギンガナム!)
レプラカーンの口部にある近接用の隠し武器でもある牙が開き、シャイニングガンダムを真っ二つにせんと迫る。
やはりシャイニングはサーベルを抜かない。苦し紛れだろうか、右手を突き出して牙に挟ませる。
(無駄さ!このまま腕ごと本体も―――なんだ?)
牙が動かない―――それどころか、砕けていく―――?

『本物の!  シ   ャ   イ   ニ   ン   グ   フ   ィ   ン   ガ   ー  というものかぁぁぁぁっ!』

「なにぃぃぃっ!……う、うわぁぁぁぁっ!?」

発光した掌がレプラカーンの頭を掴み、地に引き吊り下ろしていく。
間もなく地上に撃突し、押し切られて山岳を滑り落ちる。レプラカーンの牙が完全に砕ける。
『ヒート!エンドォォォォ!』
その叫びとともに掌は離され、そして――レプラカーンは隣の山に激突し、その巨体を消した。


222 :はじめてのしゃいにんぐふぃんがー :sage :2006/06/14(水) 00:07:32 (p)ID:KWn22mQ5(6)
ギンガナムは再び山岳を移動していた。
「先程の戦い―――中々に楽しめた」
噛み締めるように言って、跳ぶ。
「だが、足りん…全く持って足りん!開放のカタルシスが足りんぞ!」
鬱屈としていた闘争とは無縁の生活を、闘争に最適な精神で過ごしてきた男、ギンガナム。
目指しているのは奇しくも孫光龍と同じ、A−1の市街地。
ただし目的は全く違う。
地図の端と端がつながっていることに気付き、人が集まる場所に行って更なる戦いを。

「我が世の春!ここに来たれりぃぃぃぃぃッ!」

あ、どうも風雲再起です。熱い戦いでしたね。
この人が何でこんなにテンション高いのかは知りませんけど。
まあ、あの人もいないことだし、一応この台詞は言っときましょうか。

「ブヒヒーン、ヒヒヒーン!!(次回もガンダムファイト、レディ、ゴー!)」

ところで僕さっき見たんですけど、あの虫ロボット…。


【ギム・ギンガナム 搭乗機体:シャイニングガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
現在位置:A-8から移動中(A-1へ向かっている)
パイロット状態:超絶好調、興奮状態(風雲再起を見つけたため)(気力140)
機体状態:良好(EN割と消費)
第一行動方針:市街地で人を探す
第二行動方針:倒すに値する武人を探す
最終行動方針:優勝】



223 :はじめてのしゃいにんぐふぃんがー :sage :2006/06/14(水) 00:08:24 (p)ID:KWn22mQ5(6)
山に穿たれた穴。
そこには、虫のようなロボットが横たわっていた。
牙を砕かれ、足を一本失っている。
「面白い奴だったな…先刻のミサイルといい、どうも常識外の機体がこのレプラカーン以外にもたくさんあるようだね」
独りごちているのは、孫光龍。
吹き飛ばされた後、外部からのダメージか、それとも別の要因かは分からないが、レプラカーンは通常サイズに戻っている。
「しかし…完全に僕の念動力を注ぎこめていれば、勝てていた」
どの程度が巨大化の限界かは知らないが、自分の感覚では戦艦に匹敵するまでに成長してもおかしくない、と光龍は考える。
だが。
彼の自信は、先程の男、ギンガナムとやらに打ち砕かれた。
「このままではおかないよ…僕はあんたを倒さないと、前には進めないんだからさ」
【主】と認めるには力不足なはずのただの人間に受けた恐怖と屈辱。
ならば、その屈辱の根源を断たねば、レプラカーンに完全に自分の念動力を注ぎ込んでも、制御できるとは思えない。
「だがしかし」
仇敵を討とう、と覚悟したのはいいけれど。
「どうやって出ようか………」
穴の出口は、大岩で覆われていた。


【孫光龍 搭乗機体:レプラカーン(聖戦士ダンバイン)
 パイロット状態:オーラバリアの多用により若干の疲労、ギンガナム怖い…でも頑張る!
 機体状態:オーラキャノン一発消費、グレネード二発消費、ハイパー化の兆し在り、顔の牙消滅、左脚部切断
 現在位置:A-8
 第一行動方針:山から脱出する(大岩が出口をふさいでいる)
 第二行動方針:ギンガナムに打ち勝つ
 第三行動方針:己の力を上回る主を見つける
 最終行動方針:生き残る】


224 :はじめてのしゃいにんぐふぃんがー :sage :2006/06/14(水) 22:10:59 (p)ID:KWn22mQ5(6)
>>218を以下に修正


「ふはははははっ!やっと見つけたぞ!」
ギンガナムは遂に見つけた念願の敵をしっかと見据えながら哄笑する。
だが、その目に映るは黒歴史にもなかった謎の機体。
「黒歴史に無い機体!珍妙だなぁ!モビルスーツが虫のようだ!」
実際には目の前の機体――レプラカーンはモビルスーツではないのだが、ギンガナムにそんなことが分かるはずもない。
「地球人共が造ったか、あの化物の産物か、それとも【かぐや姫】だのなんだのの御伽噺から飛び出てきたか…」
一瞬逡巡するが、しかし直ぐにどうでもいいことだ、と自己完結し。
「戦えればよいのだからな!イレギュラーとでも呼ぼうか!?あの機体!」
通信を繋ぎ、相手に明確な敵対意思を伝える。
『ぬおおおおおおっ!!小生は、ギム=ギンガナムであるッ!いざっ!』
……理不尽な、敵対意思を。


225 :はじめてのしゃいにんぐふぃんがー :sage :2006/06/14(水) 22:12:59 (p)ID:KWn22mQ5(6)
>>222を以下に修正

ギンガナムは再び山岳を移動していた。
「先程の戦い―――中々に楽しめた」
噛み締めるように言って、跳ぶ。
「だが、足りん…全く持って足りん!開放のカタルシスが足りんぞ!」
鬱屈としていた闘争とは無縁の生活を、闘争に最適な精神で過ごしてきた男、ギンガナム。
目指しているのは奇しくも孫光龍と同じ、A−1の市街地。
ただし目的は全く違う。
地図の端と端がつながっていることに気付き、人が集まる場所に行って更なる戦いを。

「我が世の春!ここに来たれりぃぃぃぃぃッ!」

彼は既に先程の敵に興味などない。
彼の関心を得られるのは、強く、自分を楽しませてもらえる物のみ。
故に、彼は先程の敵の、生死を確かめさえしなかった。

そして、【先程の敵】は。


【ギム・ギンガナム 搭乗機体:シャイニングガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
現在位置:A-8から移動中(A-1へ向かっている)
パイロット状態:絶好調であるッ!(気力140)
機体状態:良好(EN割と消費)
第一行動方針:市街地で人を探す
第二行動方針:倒すに値する武人を探す
最終行動方針:優勝】


226 :はじめてのしゃいにんぐふぃんがー :sage :2006/06/14(水) 22:14:30 (p)ID:KWn22mQ5(6)
>>223を以下に修正

山に穿たれた穴。
そこには、虫のようなロボットが横たわっていた。
牙を砕かれ、足を一本失っている。
「面白い奴だったな…先刻のミサイルといい、どうも常識外の機体がこのレプラカーン以外にもたくさんあるようだね」
独りごちているのは、孫光龍。
吹き飛ばされた後、外部からのダメージか、それとも別の要因かは分からないが、レプラカーンは通常サイズに戻っている。
「しかし…完全に僕の念動力をこいつに注ぎこめていれば、勝てていた」
どの程度が巨大化の限界かは知らないが、自分の感覚では戦艦に匹敵するまでに成長してもおかしくない、と光龍は考える。
だが。
彼の自信は、先程の男、ギンガナムとやらに打ち砕かれた。
「このままではおかないよ…僕はあんたを倒さないと、前には進めないんだからさ」
【主】と認めるには力不足なはずのただの人間に受けた恐怖と屈辱。
ならば、その屈辱の根源を断たねば、レプラカーンに完全に自分の念動力を注ぎ込んでも、制御できるとは思えない。
「だがしかし」
仇敵を討とう、と覚悟したのはいいけれど。
「どうやって出ようか………」
穴の出口は、大岩で覆われていた。


【孫光龍 搭乗機体:レプラカーン(聖戦士ダンバイン)
 パイロット状態:オーラバリアの多用により若干の疲労、ギンガナム怖い…でも頑張る!
 機体状態:オーラキャノン一発消費、グレネード二発消費、ハイパー化の兆し在り、顔の牙消滅、左脚部切断
 現在位置:A-8
 第一行動方針:山から脱出する(大岩が出口をふさいでいる)
 第二行動方針:ギンガナムに打ち勝つ
 第三行動方針:己の力を上回る主を見つける
 最終行動方針:生き残る】

【初日 16:00】


227 :楽勝! ◆Nr7qwL8XuU :sage :2006/06/15(木) 01:43:06 (p)ID:ow6UiTOZ(3)
E-5地区、砂に埋もれた黒き機体があった。機体の名はブラックゲッター
今は動かぬ機体、あちこちに見える装甲の凹みが受けた攻撃の激しさを物語っていた
その中で気を失っている男バーナード・ワイズマンは夢を見ていた

(ここはどこだ?)
眼下には森が広がっていた。その中を緑の機体が動き回っている
その動きは森の深いところに何かを誘きこんでいるようであった
(ザク・・・何と戦っているんだ?)
ザクの視線の先に目を向ける。木々の間から白いボディーのところどころに青をちりばめた機体が姿をあらわす
瞬間、背筋が凍りついた
(ガンダム・・・)

森にサンタのバルーンが現れるは散っていく
ガトリングガンがザクを捉え火を噴く
ザクの装甲は火花を散らしコックピットが破損する
破片が頭に当たったのか中の男の綺麗な金髪はみるみる赤く染まっていった
しかしその男にひるむ様子はない
接近戦に打って出たザクのヒートホークとガンダムのビームサーベルが激しく交錯する
その攻防にバーナード・ワイズマンは言葉を忘れ見入っていた
「もう戦わなくていいんだ!」
驚いて声が聞こえたほうに顔を向ける。少年が叫んでいた
(アル・・・)
しかし、ザクを操る男はそれに気づくことなくヒートホークを振り上げ双方必死の間合いの中へ男は迷うことなく踏み込んでいった

次の瞬間、バーナード・ワイズマンは真っ暗な空間の中にいた
(続きは?振り下ろしたヒートホークの結果は?核は?コロニーは?アルは?クリスは?)
「どうなった!!俺はガンダムに勝てたのか!!!!」
声を荒げる。しかし、答えは返ってこなかった



228 :楽勝! ◆Nr7qwL8XuU :sage :2006/06/15(木) 01:43:48 (p)ID:ow6UiTOZ(3)
真っ暗な空間から再び周囲の風景が変わる。バーナード・ワイズマンは周囲の景色から気づく
(殺し合いの会場の中で最初にいた場所だ・・・)
そして、目の前の黒い機体の中には先ほどザクを操っていた男。その男は今の自分同様あせっていた
しかし、そのあせりはまったく異質のものだった
周囲の物音を恐れ、あたりを見回し臆病なほど気を張り詰めているその様子は先ほどの男と本当に同一人物かと疑わせるほどかけ離れた姿だった
明らかにいつ何時襲われるかわからないという状況が生み出した恐怖に駆られ余裕を失ったものからくる焦りに男は支配されていた
そしてそれは客観的には短く体感的には長い時間をかけて男の精神を追い詰め思考を短絡的な結論に追いやる
殺られる前に殺れ――――
攻められる前に攻めろ――――
そして、男の目に狂気がやどる
そうだ。このブラックゲッターなら皆殺しにできる――――
みんな殺して生き残るんだ――――
そして、目を流しただけの機体の性能を根拠に狂気と恐怖に支配された男の目を見てバーナード・ワイズマンは慄く
(普通じゃない・・・)
ブラックゲッター動き出す。自らが生き残るために獲物を探して
しかし同時に冷静な思考もこのとき男は失っていたこと男は気づいていなかった




229 :楽勝! ◆Nr7qwL8XuU :sage :2006/06/15(木) 01:44:30 (p)ID:ow6UiTOZ(3)
「痛ッ!」
鋭い痛みが頭部をおそいバーナード・ワイズマンは目覚めた。ブーストハンマーが命中した際にコックピット内で頭部をぶつけたらしく血がついてる
彼は痛む頭部を押さえ状況を確認する
ゲッターは起動していない上、地中に埋もれている。どうやら情けをかけられたらしい
そう。情けをかけられるほど自分は弱い。全員殺して生き残ると決意した結果がこれだ
何故自分は忘れていたのだろうか?
自分はまだ一機も撃墜したことのない学徒動員の新米にすぎないと
「恐怖にかられ、生き残ることに焦ってたんだろうな・・・。あとは機体にうぬぼれたのか・・・」
(過去の戦闘数は4回、初陣は撃墜。次の結末は途中から記憶になく。三戦目は奇襲失敗の上逃走。最後にいたっては敵に情けをかけられる始末か・・・)
これまでの散々な戦果を思い出し苦笑いする。惨めさが胸を支配する
しかし、彼はこの殺し合いに放り込まれて以来はじめて冷静さを取り戻していた
『もし運良く生き延びて、戦争が終わったらさ。必ずこのコロニーへ帰ってくるよ。会いに来る! 約束だ!!』
一つの約束が再び胸をよぎる
(俺は生きてる。だったら会いにいかなきゃ)
そして自分の技量の低さも未熟さも思い出しそれでもなお以前と同じ決意を固める
(やることは変わらない。全員殺して生き残る)

『生き残れる?』
どこからかアルの声が聞こえた気がした
「楽勝!」
そう答えたそこには、恐怖に駆られ焦っていた新兵の姿はなかった

【バーナード・ワイズマン(機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争)
 搭乗機体:ブラックゲッター(真(チェンジ!)ゲッターロボ 地球最後の日)
 パイロット状況:頭部に軽い傷
 現在位置:E-5(地中に埋もれている。起動していないのでセンサーでも発見しにくい)
 機体状態:地中、あちこちがへこんでいるが、戦闘に支障はない
      マント損失 、エネルギーを半分程消費
 第一行動方針:ブラックゲッターを使いこなす
 最終行動方針:優勝する】
【初日 16:30】



230 :髑髏と悪魔が踊るとき ◆IA.LhiwF3A :sage :2006/06/15(木) 03:15:19 (p)ID:qRqmBMBK(6)
 命はやがて息絶えて、肉は削げ落ち骨と化す。
 骸骨とは、言わば死の象徴。その骸骨を額に掲げし異端のMS、クロスボーン・ガンダムX2が緑の大地を往く。
 背部に取り付けられた『交差する骨』の如き外観を持つ大型スラスターにより突き進む漆黒の機体は、
 眩いばかりの陽射しの下にいながらも、大海原の波を渡りし幽霊船を髣髴とさせる。
 しかし、幽霊船の舵を取るのが常に朽ち果てた身の亡霊船長であるとは限らない。この場合においてもまた、然り。
「ゲームがヤな奴、この指止ーまれ……ってか」
 陰鬱とした死の匂いを纏わせる機体を駆るのは、そのような負のイメージとは程遠い、飄々とした印象を与える容姿をした黒服の青年。
 宇宙の始末屋、コズモレンジャーJ9に属する超一流のスナイパー、ブラスター・キッドこと木戸丈太郎は、
 機体の中心、コア・ブロック・システムと呼ばれる特殊な構造により設計されたコックピットの中、何の気もなしにそんな事を呟いた。
 何者にも縛られないというアウトローの信念に基づき行動を開始してから一時間余り、
 当初の目的である他の参加者との接触は未だ果たせずにいる。
 とりあえず、相手がこのクソ益体もないゲームに乗ってしまった相手であれば、容赦せずにこちらも牙を剥いてやるという決意は固めたが、
 最終的にどう動くつもりかと問われれば、キッドの中でもそのビジョンはまだ明確に定まってはいない。
 ゲームに乗らないということは、『最後の一人になるまで生き残る』というこのゲームでの基本原則に逆らうということだが――
 ……アレから無事に逃げ切ろうってのも、結構無茶な話じゃありません? いや、まったくその通りで御座いますとも。
 思考の中で勝手に始まって勝手に終わった問答だったが、実際のところ、間違ってはいない。
 この何処とも知れない世界へと自分達を呼び寄せ、状況の把握も済まない内に「殺し合いをしてもらう」などという戯言を吐き、
 無謀とも言えた少女の反抗に対してその異形を曝け出したこのゲームの主催者。
 自分達が元の世界で戦っている相手も、幽体離脱だの新たな宇宙の想像がどうだのという、
 いささか浮世離れした事柄をやってのける存在ではある。
 けれど、あの空間で見たものは――違うのだ。
 カーメン=カーメンがイカレ野郎である事に関してはあらゆる異議も通すつもりはないが、アインスト――ノイ=レジセイアとか言っていたか。
 在り来たりな一言で、表してしまえば。
「……人間じゃねぇしな、どう見たって」
 次元が違うという言葉は、きっとああいったモノに対して使うべきなのだ。自分達が持っていた常識も、認識も、何もかもを覆してしまうモノ。
 コズモレンジャーJ9の誇りと、背中に刻んだウルフのマークに誓って、
 たとえ対抗する力がどれだけ巨大であろうとも、それに縛られるつもりなどは毛頭ない。
 が、仮に鎖を引き千切ることが出来たとして、そのまま飼い主の喉下へと喰らいつけるかどうかというのはまた別の問題である。
 いくら狼であろうとも、大怪獣が相手となれば流石に分が悪いというものだ。
「……かといって、このまんまって訳にもいかないでしょう、キッドさん」
 『現状維持』で固まる意識を、どうにかこうにか打破したいとは思う。
 けれど、結局答えの出てこないまま、いつの間にか目の前には鬱蒼と茂る雑木林が広がっていて――


 悪魔は、そこにいた。


231 :髑髏と悪魔が踊るとき ◆IA.LhiwF3A :sage :2006/06/15(木) 03:17:29 (p)ID:qRqmBMBK(6)
 安易にあのような間の抜けた格好の可変形態に頼らず、わざわざ足を向けてここまでやって来た甲斐があった。
 自分にとっては最高のシチュエーション、相手に対しては最高のインパクトを与える登場の仕方が出来たので。
 重厚なる巨体をもって一歩一歩を踏み締めるたびに、薙ぎ倒される木々、沈み行く大地。
 圧倒的な"力"を誇示して全てを蹂躙するこのマシンを、相手は如何なる思いで目の当たりにしているだろうか。
 ――それは、クロスボーンと同じ漆黒のガンダム。けれど、一般的なMSの範疇を逸脱したその大柄な体躯から放たれる威圧感は、
 世間一般に有り触れている有象無象のMSの比ではない。剥き出しになったパイロットの悪意が、それを一層増幅させている。
 彼とこの機体が出会ってしまったことは、運命の巡り合わせだと言ってしまっても過言ではないだろう――
 サイコガンダムのコックピットの中、相羽シンヤはようやく出会うことが出来た"餌"の存在を前に、
 これ以上にない歓喜を露にして頬を緩ませている。
 面白い偶然があったものだ、と思う。
 対峙している相手の機体は、自分の乗っているマシンと同じ、黒の装甲で身を固めた"ガンダム"と呼ばれるMS。
 このゲームに、"ガンダム"の名を冠する機体は二つも必要ない。
 木偶――サイコガンダムの初陣の相手としては、うってつけの存在と言えるだろう。
 と、その時、断続的な電子音が二度、コックピットの中に鳴り響く。通信回線が繋がっている、目の前にいる"ガンダム"からだ。
 答える必要などまるでなかった。
 これから自分は、何の容赦もなくサイコガンダムの力を持ってこの"ガンダム"を叩き潰し、新たな獲物を求め往く。
 目の前にいる相手など、自分にとっては所詮通過点でしかない。
 通り過ぎていくだけの存在。忘れ往くだけの存在。己の糧となってもらうだけの、存在。
 けれど、何となく、興味が湧いた。
 理由など在りはしないだろうが、自分と同じ黒の"ガンダム"を与えられた人間が、自分に何を伝えるつもりなのか、
 それが少しだけ、気になった。
 通信回線を開く。
 ノイズ交じりの小さなモニターに映し出されたのは、余裕綽々とでも言えばいいのだろうか、掴み所のない、飄々とした表情の青年。
 向けられている双眸には、あたかもこちらの全てを見透かしているような光が宿っている。
 気に入らない、顔だった。
 満面の笑みを浮かべている訳でもなければ、逆に陰気臭い空気を漂わせている訳でもないが、ただ、気に入らない。
 生意気だ。不愉快だ。苛々する。鬱陶しい。
 何なんだよ、その目は。お前のことなんか相手にしている暇はない、とか言いたそうな、その目は。いや、違う――
 ――僕を哀れむような、そんな目を、向けるな。
「オカルト染みた感覚なんてのは、カーメンみたいな頭の大事な部分がどっかにイっちまった野郎だけが当てにするもんだと思ってたが――」
 訳の分からない言葉を途中で切って、男の表情が変わる。
 ある種の人間――人間が持つ『闇』の一面を知る者だけが纏うことの出来る、特有の剣呑な空気が、男の顔一面に張り付いていた。
「そういうのって、あったんだな。根拠も何もねぇってのに、頭のどっかが『これしかない』って決め付けちまう時が。
 でもって、どうもそいつは今みたいだな。お前みたいなのを放っておいたら、絶対にヤバいことになる。
 出会って早々で悪いが――止めさせて、もらうぜ」
「……何だ? 何なんだよ、お前は? 正義の味方でも、気取ったつもりなのか……?」
「そういうご大層な役職とは、違うな。オレは木戸丈太郎、人呼んでブラスター・キッド――」
 X2の紫色の瞳が鈍い輝きを放ち、両手で構えた巨大なライフルの銃口が真っ直ぐ、こちらへと向いて――
「――お前みたいな悪党を消す、宇宙の始末屋J9だ! イェイッ!!」
 ふざけた掛け声とともに、光は放たれた。


232 :髑髏と悪魔が踊るとき ◆IA.LhiwF3A :sage :2006/06/15(木) 03:19:50 (p)ID:qRqmBMBK(6)
 一切のブレを許すことなく、バスターランチャーから放たれた光の粒子はサイコガンダムの漆黒のボディ目掛けて向かっている。
 完全な直撃コースだ。しかし――
 妙だ。呆気なさ過ぎる。あれだけ無防備に機体を曝け出しておきながら、何の策も打たずにいるなどただの馬鹿でしかありえない。
 何かがある。あの機体には、こちらの銃撃を意に介す必要のない、何かが。そして、その正体は――
 "見えざる壁"の存在だった。
 機体の胸部を今正に貫かんとするところで、光の噴流はそこから先に進むことなく掻き消えて、サイコガンダムへは届かなかった。
「じょっ――」
「はッ! 死になよッ!!」
 無効化された。いとも簡単に――その事実を認めるのと同時にすぐさまバスターランチャーを引き戻すが、
 お返しとばかりに相手側からもビームが飛んでくる。
 "見えざる壁"の原理を想像するような暇もない。何より驚嘆すべきなのは、反撃に使われるビームの、その数が、数が多過ぎる……!
「――冗談だろっ!?」
 横嬲りの暴風雨を連想させる苛烈さを持って、サイコガンダムの拡散メガ粒子砲がX2へと殺到する。
 ビームシールド、ABCマント――馬鹿な、防ぎ切れるものか。
 下手な一個小隊の一斉射撃よりも、降り注いでくるビームの総量は多い。
 これを避け損なえば、X2の小さなボディはバラバラになって、間違いなく、自分は、死ぬ。
 ――ボウィーさん、オレに飛ばし屋の運転技術を貸してくれるかい――!
 咄嗟の判断。キッドはX2の背部に取り付けられた可動式スラスターの噴射口全てを左側へと向け、推力を一気に全開へと引き上げる。
 四つの噴射口から急速に吐き出される炎。
 射線上のあらゆる存在を飲み込もうとする光の嵐から、X2が稲妻の如き鋭さで横っ飛びに逃れる。
 押し潰される――そんな錯覚すら抱かせる凄まじいGが、キッドの身体を襲った。
「……ッ!!」
 歯を食い縛って必死に耐える。緊急回避を遣って退けたX2のコントロールのために、操縦桿から手を離すことだけは決して出来ない。
 風に煽られマントが翻る中、どうにか機体を着地させる。横滑りに止まったX2の両脚部が激しく地面を削り取り、砂埃を舞わせた。
 ――回避、成功。


233 :髑髏と悪魔が踊るとき ◆IA.LhiwF3A :sage :2006/06/15(木) 03:21:19 (p)ID:qRqmBMBK(6)
「……これからは、飛ばし屋キッドとでも名乗ってみるかな」
「お前ッ……!」
 決め台詞とともに駄目押しでウインクなどをかましてやると、通信回線上に映る端整な顔立ちの少年が、その表情を獣の如く獰猛に歪めた。
 ――怖い怖い、食われちゃたまんねぇな。
 そんな能天気なことを考える一方で、ようやく与えられた思考の時間を有効に使うべく、慣れない頭脳労働へと取り掛かる。
 ――知恵を頼むぜ、アイザック。
 先刻のバスターランチャーを防いだ"見えざる壁"。
 あれの正体については、考えるまでもない。俗に言うバリアのようなものを、あのガンダムは持っているのだろう。
 問題なのは、バリアが防ぐことの出来る攻撃の種類。まず、X2が持つ最大火力のビーム兵器であるバスターランチャーが通らなかった以上、
 ザンバスターのような遠距離からのビーム兵器は完全に無効化されると考えるべきだ。
 となれば、残されたのはバルカン砲やヒート・ダガーといった実体兵器と、ビームザンバー、ブランド・マーカー等の近距離ビーム兵器。
 しかし、目の前にいる巨躯に対して、口径の小さいバルカン砲の銃撃や、小振りのヒート・ダガーによる斬撃が有効打になるとはとても思えない。
 対して、後者にはバスターランチャーと同じ光学兵器の類であるという問題が挙げられるが、直接斬りつける武装であるという相違点がある。
 あの弾幕を掻い潜り、至近距離からの一太刀を浴びせる。スナイパーの自分には、聊か荷が重い役割というものだ。
 ――やれやれ、我らが紅一点の声援でもないとやってられないぜ。
「ま、ぼやいてみても始まらないってな」
「――ごちゃごちゃ言ってないで、さっさと掛かってきたらどうだい……!」
「まあ、そう急かしなさんなって」
 何の躊躇いもなく手にしていたバスターランチャーを放り捨てて、腰からザンバーを引き抜く。
 この作戦において、最も大切なものは機動力。
 ビーム兵器が通用しないと分かった以上、ランチャーの存在は文字通り、無用の長物でしかない。
 ――ブラスター、飛ばし屋と来て、次はサムライねぇ。無節操にも程があるってもんだが、これはこれで。
「――コズモレンジャーJ9の名に懸けて、貴様は我が斬り捨てる……なんてなッ!」
「――ふざけるなぁああああああああッ!!」
 サイコガンダムの胸元に光が灯る。それが弾けて向かってくるのとほぼ同時に、キッドは素早くX2のスラスターを上向きに切り替えて――
 何処までも青く澄み切った大空の中へと、X2は飛翔した。


234 :髑髏と悪魔が踊るとき ◆IA.LhiwF3A :sage :2006/06/15(木) 03:23:52 (p)ID:qRqmBMBK(6)
 漆黒の巨体から放出される無数の光の矢が、『交差する骨』を象りしスラスターを駆使して接近する、
 同じく漆黒の小型MSを目掛けて突き進む。
 木戸丈太郎が駆るクロスボーン・ガンダムX2は空中で巧みにその軌道を変えて、
 サイコガンダムから迫り来るメガ粒子の雨を次々に躱していく。
 スラスターから青い焔を撒き散らし飛ぶその姿は、さながら優雅に舞い踊る蝶――と呼ぶには、額に刻まれし髑髏が少々邪魔になるか。
 一方、相羽シンヤの駆るサイコガンダムもその圧倒的火力を存分に撃ち出して、決してX2を懐へ飛び込ませるような真似はしない。
 シンヤにとっては鬱陶しく飛び回る羽虫のような存在でしかないX2を撃ち落とすべく、主兵装である胸部の三連拡散メガ粒子砲に加え、
 新たに空へと向かう火線は、機体の各部からぞろぞろと姿を見せた小型のメガビーム砲。射線は続々と、その幅を広げて展開していく。
 一度牽制のつもりか、X2が脚部から小型の刀を抜き出して投げつけてきたことがあったが、
 それも即座に迎撃のビームが粉砕して、終わった。
 どうやら相手はIフィールドの特性を見抜いており、接近戦を仕掛けるつもりのようだが、狙いが分かっている以上、対処も容易いというもの。
 或いは、こちらがジリ貧になるまで避け続けるつもりなのかもしれないが――仮にそのつもりだったとしても、既に手は打ってあるのだ。
 シンヤはX2を弾幕によって引き剥がす度、一門ずつ、銃撃の数を減らしている。
 弾切れが起こり始めたと、あのいけ好かない海賊ガンダムのパイロットに誤認させるため。
 これまでは相手もサイコガンダムの火力を警戒してか、接近してくる時も決して不用意ではなく、
 こちらに照準を合わせさせまいとする不規則な軌跡を描いて向かってきていたが――手数を無くしたと思い込ませることで油断を誘い、
 まんまと罠に嵌った相手が一直線に突っ込んできたところを、『奥の手』で仕留める。それが、シンヤの張り巡らせている策だった。
 ――フン、生意気な人間め。お前なんて僕の敵じゃないって事を、思い知らせてやるよ。
 充分にお互いの距離が離れたところで、サイコガンダムの砲撃を完全に止めた。
 同時に、緩慢な速度で機体の右腕を持ち上げて、X2へと向ける。
 そして、狙い通り。ここぞとばかりに、空中でX2がスラスターを吹かして、これまでにない急激な速度で向かってきていた。
 そう、それでいい。お前はそうやって、間抜けに一人で図に乗っていればいい。勝利を確信していればいい。そんな幻想を抱いたままで――
「――死ねぇぇッ!!」
 これこそがシンヤの隠していた、文字通りの『奥の手』。サイコガンダムの右手の指先に仕込まれた、5門の内蔵式ビーム砲。
 X2へと真っ直ぐに伸びた指先から、確実に避けようのないタイミングでそれは発射された。X2の小さなボディに、それは確かに命中し――
 ――X2の纏っていたマントを僅かに焦がして、それだけだった。爆散が起きたわけでも、機体の一部が損傷を受けたわけでもない。
 サイコガンダムへと突き進む、X2の勢いは、止まらない。
「な、何だと……!?」
 馬鹿な――サイコガンダムのIフィールドとは違う。
 傍目から見れば単なるマントでしかないそれが、『奥の手』を、ビーム砲を弾いたなどと……!?
「目には目を、バリアにはバリアをってとこだ……!」
 ――シンヤの誤算は、X2を単なる機動力頼りのMSだと思い込んでいたこと。
 己の乗ったサイコガンダムの圧倒的防御力を過信するあまり、
 それと同等の防御力を持つ存在がいる可能性に微塵も思い当たらなかったこと。
 策士策に溺れる。決着の一撃となる筈だった『奥の手』は、同じくキッドがその力を隠していた、
 ABC――アンチ・ビーム・コーティングマントによって呆気なく弾かれて、そして――
「悪党に掛ける情けはない。……ABAYO」
 ――X2の繰り出したビームザンバーが、サイコガンダムの胸部へと、根元まで突き刺さった。
 その切先は、重厚な巨体の中心部を完全に貫いている。スパークが飛び散り、膨れ上がる、熱量。
 ザンバーへのエネルギー供給をカットして、X2は崩れゆくサイコガンダムの肩を踏み台にして飛び上がり、漆黒の巨体から離れる。
 そして、サイコガンダムの胸元から、メガ粒子砲のそれとは違う、より破滅的な輝きを持った光が大きく膨れ上がって――
 ――悪魔の機体は爆発四散し、緑の大地へ炎と装甲の破片をばら撒いて、このゲームから、退場した。


235 :髑髏と悪魔が踊るとき ◆IA.LhiwF3A :sage :2006/06/15(木) 03:28:06 (p)ID:qRqmBMBK(6)
 全てが終わった事を見届けてから、キッドはX2を残骸となったサイコガンダムの手前に降ろすと、
 ぐったりとシートに凭れかけ、心底深い溜息を吐いた。
 骨が折れる相手だった。何より、決着を付けるまでの過程が酷く長い時間に感じられた。
 一瞬でも気を抜いていれば、あのありったけの弾幕によって、白熱に焼かれ塵と化していたのはこちらだったのだから。
 ――考えてみりゃ、一人で戦り合ったのなんて随分久しぶりのような気がするな。
 我ながら、よく奮闘したと思える。
 操縦も、作戦も、覚悟も全て、一人で背負い、一人で挑んだ戦い。ブラスター・キッドの面目躍如といったところか。
 しかしまあ、結局のところ、勝負を決めたのは機体の性能差だったように思える。
 高機動でありながら、確かな防御力をも兼ね備えている機体。
 ――やれやれ、ガンダム様々ってところだな。これからも末永く、お付き合い願いま――
















「……人間、如きが」
 F-6。二機の"ガンダム"が激突し、壮絶な決着を持ってその全てが終わった筈の場所。その場に築かれたマシンの残骸の数は、
 ――二つ。
 粉々になったサイコガンダムの残骸の横で、機体の中心に大穴を開けてその機能を停止しているのは、クロスボーン・ガンダムX2。
 当然、パイロットの命など、無い。
「人間如きが、この僕を、ここまで……!」
 草木を糧に燃え上がる、"ガンダム"達のすぐ側に、一つの黒い人影があった。
 それは、巨大な"悪魔"を駆り、"悪魔"と共に滅びた筈の男の、変わり果てた姿。
「……大丈夫だよ。人間なんかにこの僕は、殺されないよ、兄さん」
 先刻まで、彼は人間だった。
 たとえ歪んだ情念を抱き、人間に対する明確な殺意を持っていたとしても、その姿形は『ヒト』の範疇に含まれていた。
「だから……すぐに戻って、殺してやるから、さぁ……」
 けれど、今は違う。たとえ彼が相羽シンヤを名乗ろうと、兄の存在を紡ごうと、それはもはや、この世界においては意味を成さない。
 今の彼に相応しい呼称は、テッカマンエビル。
 異形の姿を持ち、このゲームの参加者達を屠るためだけに動く、悪鬼でしかないのだから。

 髑髏と悪魔が踊るとき。
 ――"邪悪"は、目覚める。


【相羽 シンヤ(テッカマンエビル) 搭乗機体:無し
 パイロット状況:テッカマン形態、PSYボルテッカ使用により激しい疲労
 機体状況:無し
 現在位置:F-6
 第一行動方針:他の参加者を全滅させる
 最終行動方針:元の世界に帰る】

【木戸 丈太郎 搭乗機体:クロスボーン・ガンダムX2(機動戦士クロスボーン・ガンダム)
 パイロット状況:死亡
 機体状況:コックピットブロック消滅、ABCマント貫通、それ以外の箇所には目立った損傷無し】

※F-6にX2のバスターランチャーが落ちています。

【時刻 14:30】


236 :閃光 ◆caxMcNfNrg :sage :2006/06/16(金) 03:50:09 (p)ID:X/zy0+QW(3)
 青空を突き抜けるように、箱庭に轟音が響き渡る。
他の空間から隔絶された、殺し合いの盤上。
草一つ無い荒地で、森を背にして青いMSが火器を連射している。
「ったくよ・・・ゲームに乗ってない奴は、ここには居ないのか?」
 コクピット内に響く、モンシアのぼやき。
その視線は、モニターに移ったMSを追っている。
・・・奇しくも、こちらと同じガンダムタイプである相手。
空を飛び回るそれに向けて、ミサイルやガトリングガンを放つ。
しかし相手は、迫りくるミサイルを難なくかわす。
ガトリングガンに到っては、数発当たりはするものの、
特殊装甲か何かなのか、その身に傷一つつける事はない。
 そのままの勢いでこちらに接近してくると、相手は頭部からビームを放った。

「うおっ!・・・さっきの奴よりゃ、やるみてえじゃねえか」
 相手の攻撃を辛うじてかわす。
口ではそう言うものの、それほどの余裕がある訳でもなく・・・
(できれば、こいつは取っときたいんだがな)
そう考えながら、モンシアはホーミングを数発放った。
 ヘビーアームズから伸びる、数条の軌跡。
それは、曲がりくねった進路をたどり、敵のガンダムへと迫る。
しかし・・・命中する直前。
MAへと姿を変えたガンダムが、光の間をすり抜ける。
敵機の後方で爆発四散するミサイルに、モンシアは軽くしたうちをした。

(チッ・・・このままじゃ、ジリ貧か・・・ガトリングはきかねえし、ミサイルは避けられる・・・)
相手の攻撃を何とか回避しながら、考える。
「ホーミングに到っては、自滅と来たもんだ」
 先ほどの光景を思い出し、モンシアは再び舌打ちをする。
(なんか方法はねえのか・・・いや、まてよ・・・)


237 :閃光 ◆caxMcNfNrg :sage :2006/06/16(金) 03:51:54 (p)ID:X/zy0+QW(3)
(思った以上に弾数が多いか・・・)
 上空を飛び回るMS―レイダーの内部で、ヒイロはそう一人ごちた。
モニターに映るのは、彼の知る機体・・・ヘビーアームズの、おそらくカスタム機であろう機体。
(PS装甲ならば、問題はないはずだが・・・念には念を入れる)
そうして、ヒイロは相手を牽制しつつ、その弾薬が切れるのを待ち続けていた。

(・・・なんだ?)
不意に、ヘビーアームズからの攻撃がやんだ。
見ると、相手の機体は攻撃をやめ、じっと佇んでいる。
(弾切れか?・・・いや、あれは・・・)
モニターを通して、胸部の装甲が開かれるのを確認する。
やがて、ヘビーアームズは全身の火器を全て露出させ・・・一斉に火を吹いた。

(そうきたか・・・だが)
ヒイロは迫り来るミサイルの間を、軽やかにすり抜ける。
通り過ぎたミサイル二基が後方で衝突、四散する。
その様子を確認することもなく。ヒイロは次のミサイルへ向かい・・・
それが、己の側方で爆発するのを見た。それだけではなかった。
上で、下で、右で、左で、後ろで・・・自機の周囲を爆発が覆う。
同時に、正面から迫る無数の弾幕を確認し、ヒイロは相手の狙いを理解した。


「ひゃっほう!これなら逃げらんねえだろ!」
 上空で起こった爆発を確認し、モンシアは手を叩いた。
彼の取った作戦は単純。
ミサイル同士をぶつけ爆発の壁を作り、相手を閉じ込めた上での全弾連射。
「ありったけを食らわせてやったんだ。これで仕留め切れなけりゃ・・・」
 モンシアの呟きを打ち消すかのように・・・煙を裂いて、黒い影が飛び出した。


238 :閃光 ◆caxMcNfNrg :sage :2006/06/16(金) 03:54:12 (p)ID:X/zy0+QW(3)
 衝撃。ミョルニルを通した感触に、ため息を吐く。
あの時、大量の爆風に囲まれ、無数の弾丸やミサイルに晒されたヒイロは、
左腕のミョルニルを回転させ、前方からの弾幕を辛うじて防いだのだった。
(もっとも、無傷とはいえないがな・・・)
PS装甲で機体へのダメージは防いだものの、その代償として失われたENは大きく・・・
また、コクピットを襲った衝撃によるダメージが、体中に幾分か残っていた。
「・・・名前は知らないが、いい腕のパイロットだった・・・」
 自機にここまでのダメージをあたえた相手を思いつつ、レイダーで周囲の黒煙を振り払う。
そこには、無残な姿で転がるガトリングガンの姿があった。



【ヒイロ=ユイ 搭乗機体:レイダーガンダム(機動戦士ガンダムSEED)
 パイロット状態:疲労、体中に軽い痛み
 機体状態:EN残量僅か
 現在位置:G-3
 第一行動方針:この場から逃走、補給する
 第二行動方針:参加者の殺害
 最終行動方針:元の世界に戻ってリリーナを殺すため、優勝する(リリーナが参加していることは知らない)】


【ベルナルド・モンシア 搭乗機体:ガンダムヘビーアームズ改(新機動世紀ガンダムW〜Endless Waltz〜) 
 パイロット状態:疲労
 機体状態:右腕ガトリングガン消失、残弾残り僅か
 現在位置:G-4
 第一行動方針:この場から逃走、補給する
 最終行動方針:未定】

【14:30】



239 :それも名無しだ :2006/06/17(土) 12:34:34 ID:FIgKVQHi
保守


240 : ◆w4z2Zc6V4M :sage :2006/06/18(日) 00:12:43 (p)ID:TwAapwMW(3)
「見つけた…!」
眼下の草原には、白い機体が一機駆けている。
それを見下ろすこの機体も、白い。
コックピットには、真っ赤な髪の少女が一人。
フェステニア・ミューズは、地上を移動するRX-78-2ガンダムを捉えていた。
まだ、向こうには発見されていないようだ。

テニアの目的は、このゲームでの優勝。
そのためにはほかの参加者を殺さなければならない。
だが、このまま戦闘をするのははばかられた。
もし相手が強かったら、返り討ちにあう危険性がある。それは避けたい。
遠距離からの狙撃も却下。これはカティアの得意分野だ。

「ピピッ」

迷っているうちに、気付かれてしまったらしい。あの機体から通信が入る。
『おい、そこのロボットのパイロット。あんたはこのゲームに乗ってるのか?』


武蔵の質問からしばらく間が空いて、答えが返ってきた。
『…ううん』
目の前にロボットが降下する。
女の声だ。モニターに赤毛の少女の姿が映った。
「君はあのときの…」
そう、あのとき最初にあの化け物に文句を言っていた少女だ。確か黒髪の子や金髪の子と一緒にいたはず。
「ほかの仲間はいないのか?」
『ほかの…仲間は……』
そこで返答が切れた。
「?」
『…く…ぅう…』
聞こえてきたのはすすり泣く声。
『…メ…ルアが…メルアが……あいつに…ころ…された…』
しまった。武蔵は後悔した。酷なことを聞いてしまった。
そして、同時に驚いた。
やはり、少なからずゲームに乗っている参加者もいる。
無敵戦艦ダイがそういった連中に使われるのは避けなければならない。
そのためにも、早く行動を開始すべきだが…


241 : ◆w4z2Zc6V4M :sage :2006/06/18(日) 00:13:39 (p)ID:TwAapwMW(3)
『…うぅっ…ぐすっ…』
この場合、なんと慰めるべきなんだ?
「ご愁傷様」? いやダメだ。いつ自分たちが死ぬかもしれないのに、言える訳が無い。
「元気出せ」? これもこの状況下では無意味だろう。
いくら考えても適当な答えが浮かばない…

「えっと…そうだ、ほ、他に仲間はいないのか?」
言った後で激しく後悔した。もし殺されていたら、それこそ一巻の終わりだ。
『…2人いる』
「2人?」
予想外の答えに驚きながら、額の冷や汗をぬぐう。地雷を踏まずにすんだようだ。
「よ、よし。じゃあこうしよう」
『え?』
「君の仲間を探そう。そのほうが心強いだろ?こっちも協力してくれる仲間がほしいんだ。
だから、もう泣かないでくれ」
正直、女の子に泣かれるのは男として辛い。
また少し間があって、答えが聞こえた。
『…うん、分かった』


テニアは涙をぬぐった。
通信機からため息の音が聞こえてくる。よほど気をもんでいたようだ。
ただ、今はあの2人に会いたくは無かった。
優勝するためとはいえ、統夜たちとは戦いたくない。
『じゃあとりあえず…北に行ってみよう。
 このまま見通しの利く所にいれば、急に襲われたりもしないだろう』
そういって機体を旋回させ、こちらに背を向けた。
テニアは、この状況に少し驚いた。あまりにもあっさり信用されたからだ。
相手は特に警戒する様子も無く、移動を始めている。
今なら、簡単に撃ち殺せる――
マシンナリーライフルを構えようとして、テニアは手を止めた。
いつでも殺せるからこそ、利用できるかもしれない。
2人で行動すれば、危険性は半減するし、強い参加者に襲われても戦いやすい。
いざとなったら、切り捨てて逃げればいい。
『どうした?』
白い機体が、振り返ってこっちを見ている。
「な、なんでもないよ!」
テニアは笑顔を作って答え、追いかけた。確かな殺意を胸に秘め、いつか聞いた言葉を思い出しながら…



―女の涙は最強の武器―


242 :核ミサイルより強い武器 ◆w4z2Zc6V4M :sage :2006/06/18(日) 00:16:12 (p)ID:TwAapwMW(3)
【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:武蔵との会話で若干安定
 機体状況:良好
 現在位置:F−8
 第一行動指針:とりあえず白い機体についていく
 第二行動方針:参加者の殺害
 最終行動方針:優勝
 備考:武蔵もいずれ殺す気でいます】

【巴武蔵 搭乗機体:RX-78ガンダム(機動戦士ガンダム)
 パイロット状態:良好 泣き止んでくれて一安心
 機体状況:良好 オプションとしてハイパーハンマーを装備
 現在位置:F-8
 第一行動指針:赤毛の少女の仲間を見つける
 第二行動指針:赤毛の少女の仲間に協力してもらう
 第三行動指針:無敵戦艦ダイ打倒の為に信頼できる仲間を集める
 最終行動指針:主催者を倒しゲームを止める
 備考:テニアのことはほとんど警戒していません】


【初日 15:00】


243 :東北東に進路を取れ ◆eK/Y5OG4jw :sage :2006/06/18(日) 12:46:24 (p)ID:Sf+n7fVq(5)

「あ、あの・・・すみません。あなたはこのゲームに乗った人ですか?
 乗っていないのなら・・・よければなんですけどこのゲームから逃げるために協力しませんか?」



Jアークに相対する白い機動兵器、そのパイロットが発した言葉に驚いたというより呆れ返って、
ジョナサン・グレーンは返事代わりに鼻を一度鳴らして見せた。
周囲に敵影は無し。だからというのでは無いだろうが、随分と暢気なことを言うものだと脱力する。
あの少年とて見ただろう。あの異形の化け物の幻影を、主催者の楯突いた女の無残な死に様を。
それを踏まえた上でそんな考えに至るとは、度胸があるのか考え無しなのか。
こちらを欺く策かとも思ったが、正面からノコノコ顔を出した地点で策としては下の下だ。
ならばあの少年は、生まれついてのお人好しか――もしくは、人の善意で世界が救えると思っているような偽善者か。
どのみち、ジョナサンの好むところではない。
いっそ回線を開かぬままミサイルでもぶち込んでやろうかと思った矢先、トモロが声を掛けてきた。
『どうするつもりだ、ジョナサン・グレーン』
「黙っていろよ計算機、俺はあやつにいかにして現実の厳しさを教えてやるかを考えるのに忙しい」
『コンピューターから計算機への格下げとは、随分な物言いだな』
「ハッ、機能不全のコンピューターに他の使い道などあるものかよ」
その後のトモロの反論とその他諸々を無視し、ジョナサンは考える。
もしもあの少年がこのゲームを壊す為の人身御供にでもなるつもりなら、それは賞賛に値する。なんなら花の一つも贈ってやっていい。
それとも脱出の為の策でもあるのか。それならそれで、協力した上でそのお零れに預かるのも悪くない。
だが、そうでは無かったら。ただ浮ついた理想論だけでそういうセリフを吐くのなら。
そんな奴に振り回されるのは迷惑だ。むしろ足手まとい以外の何者でもない。
それにここで自分が手を貸さなくても、いずれ他の誰かに騙された上で裏切られて無様に死ぬだろう。
それこそ、ジョナサンの知ったことでは無いが。
ただ――ふと、気紛れが起こった。


244 :東北東に進路を取れ ◆eK/Y5OG4jw :sage :2006/06/18(日) 12:47:35 (p)ID:Sf+n7fVq(5)
「おい、計算機」
『トモロ0117だと言っている。いい加減に旧時代の電子機械と一緒にするのはやめてもらおう』
「気を悪くしたのか? そいつは済まなかった。ところでトモロよ、対地レーザー、照準だ」
『あの機体を狙うのか?』
「命まで奪ってやる気は無い。あいつの正義感とやらがどれだけで音を上げるか、試してやるんだよ」
『照準は僅かに外す、ということか』
「お、物分りがいいじゃないか。確かに計算機と呼ぶには少しばかり気が回るなぁ?」
『…………』
「おっと、拗ねるなよ。まずは砲門を向けてくれ……そら、第一射、撃てよ!」
まずは小手調べ。これで逃げ出すか、あるいは襲い掛かってくるようでは話にならない。
レーザーは狙いあやまたず白い機体の足元から僅か5メートルの位置に着弾してその地面を抉った。
モニター越しに、相手の驚きと緊張が伝わってくる。
続けて第二射を放とうとして、ジョナサンはふと素朴な疑問に思い当たった。
「……トモロよ。もしあやつが打ち返してきて、そのまま俺が花畑を駆け回るような羽目にはなり得るか?」
『お前なら花畑より紅蓮の釜がお似合いだが……生憎、このJアークを舐めて貰っては困る』
「……あー、そうかよ」
口ぶりから察するに、相手の攻撃でこちらが一撃でお陀仏という事にはならないらしい。一安心といったところだ。
ついでにトモロの発言の前半部分は聞かなかった事にしてやる。俺という男は実に心が広い。
「さて、改めて第二射ぁ!」
先ほどとは逆に右側4メートル。さっきよりも狙いは絞ってある。
すでに威嚇射撃の意図は先方にも伝わったはずだ。
さて、どう動くか……


245 :東北東に進路を取れ ◆eK/Y5OG4jw :sage :2006/06/18(日) 12:48:35 (p)ID:Sf+n7fVq(5)
通信。
「待って下さい! 話を、話を聞いて下さい!」
ジョナサンの眉間に皺が寄る。
どうやらこのまま説得を続けるつもりか。妙に気分が悪い。
ならばいつまで持つか、付き合ってやろう。
「トモロ、等間隔で連続砲撃! 少しずつ狙いはあやつのマシンに近づけていけよ!」
『機械遣いが荒いぞ、ジョナサン・グレーン』
連続して放たれるレーザーが、F91周辺に集中する。
脚部を掠め、アンテナのすぐそばを通過し、ボディの僅か2、3メートル脇の空間が撃ち貫かれる。
白い機体は反撃無しには飛び立つ事すら出来ないはずだ。
続けてミサイル。恐怖感を煽る為、あえて狙いを大きく外して爆煙で視界を遮る。
目を塞がれた状態でレーザーに狙われ、それでもまだ言葉を投げ掛ける元気があるか――
その疑問が晴れるのに、そう時間は掛からなかった。
「駄目なんだ……僕達は、いや僕達だけじゃない! 
 このゲームに連れて来られた誰だって、このゲームに乗せられたまま殺し合うべきじゃないんだ!
 確かに僕達はあの化け物の掌の上で踊らされるしかないのかも知れないけど……それでも、何か方法があるはずです!
 闇雲に憎しみの連鎖を繰り返すだけじゃ駄目なんですよ! 僕達にだって、何かやれる事が!」
説得、というより自分の底から言葉を吐き出しているような少年の声に、ジョナサンはしばし呆然とする。
発言から察するに、本当に奴は無策らしい。何一つ主催者に抗う術をもってはいないのだ。
それなのに何故、奴はあそこまでゲームを止めるという意思に疑いを持たない?
分が悪すぎる。誰が考えたって、あの化け物に相対するよりは大人しく従ってやった方が賢明というものだ。
それなのに、何故?
そこまで考えて、急に先ほどから感じていた不快感の正体にジョナサンは思い当たった。

あやつは、ユウの奴に似ているのだ。

欠陥品のブレンパワードに乗ってオルファンを飛び出し、ノヴィス・ノアの一員となってリクレイマーの敵となったユウに。
何の考えも無いくせにオルファンを止めると言い、リクレイマー以外のやり方を見つけようとしているユウに。
奴の真っ直ぐさが気に食わなかった。理想を語るところが気に食わなかった。
それでも、あの雪山の一件……リバイバルのチャクラ光の中から生還してから、奴の何かが変わった。
まるで自分の道を見据え、迷わずに一歩一歩前進する、そういった「覚悟」を感じるようになったのだ。
そして、その覚悟に似た何かを目の前の少年からも感じる。
ユウに対してそうであるように、ジョナサンは彼の事は好きになれそうにない。
それでも、少しは興味が湧いた。ユウと似たあの少年が、この状況下でどういう道を選ぶのか。
「……トモロ、砲撃は止めだ」
本日二度目の気紛れ。ジョナサンは、白い機体との通信回線を開いた。


246 :東北東に進路を取れ ◆eK/Y5OG4jw :sage :2006/06/18(日) 12:49:32 (p)ID:Sf+n7fVq(5)
まずは威嚇射撃の詫びを入れ、それからジョナサンは少年――キラ・ヤマトというらしい――の話を聞いていた。
どうやら彼には知り合いの少女がいるらしく、まずは彼女との合流を果たしたいらしい。
それから、仲間を集めてなるべく死者を出さずにゲームを止める方法を探す。
彼は言った。殺して殺されて、それを繰り返すだけでは何も生まれないと。
青い、実に青臭い理想論だとジョナサンは思う。
だから、こう言ってやった。
「俺は理想論というものに何の興味も持っちゃあいないし、綺麗事を吐くだけの能無しなど死ねばいいと思っている」
キラもそんな事を面と向かって言われるとは思っていなかったらしく、口をだらしなく開けている。
ただ、ジョナサンも少し言い過ぎたかと思ったのもあり、言葉を付け足した。
「だが、ちょうど俺も探し人がいるのでなぁ、クインシィ・イッサーというのだが……
 オルファンのクイーンにはしかるべき座に付いてもらわねば、バロンに選ばれたこの俺の名折れというものだ。
 貴様の品定めはその道中でも遅くはあるまい?」
「え!? それじゃ……一緒に来てくれるんですか!?」
「勘違いするな、お前が俺についてくるなら構わないと言ったんだ。
 まぁ乗れよ、オーガニックなるものの加護を持たないただのマシンでは、空をあても無く飛び続ける訳にもいかないだろうが」
「は……はいっ!」
ホバリングを繰り返したF91が、Jアークの艦上部に着陸する。
「まずはこの箱庭とやらの中央の市街地を経由した上で、北西の都市エリアを目指す。
 人探しは人が集まりそうなところからが基本だ。異論は無いな?」
「はい。それと……ありがとうございます、ジョナサンさん」
「なっ……別に俺は礼を言われるようなことなどしていない!」
『照れるものではないぞ、ジョナサン・グレーン』
「うるさい! 黙っていろよ計算機が!」
白い箱舟は、こうして東北東の市街地へと飛び立った。


247 :東北東に進路を取れ ◆eK/Y5OG4jw :sage :2006/06/18(日) 12:50:39 (p)ID:Sf+n7fVq(5)
Jアークの艦上。キラ・ヤマトは、安堵の息をついていた。
敵艦からの砲撃を受けた時はどうなるかと思ったが、それでも最終的には共に行動する事が出来るようになった。
あのジョナサンという人は自分の事を決して好意的に見ているばかりではないようだが、
それでも同行を許してくれたことは純粋に嬉しかった。
楽観的すぎる見方だとは分かっているが、これなら他の参加者とも分かり合える気がしてくる。
そう、一度は互いに銃を向け合った親友とも分かり合えたのだ。希望を捨ててはいけない。
決意の宿る瞳で、キラは遥か進路上の空へと視線を延ばす。

(待ってて、ラクス……今、迎えに行く!)

これから5時間後の放送で何を知ることになるのか、この時の少年は何も知らなかった。

【ジョナサン・グレーン(ブレンパワード) 
 搭乗機体:Jアーク(勇者王ガオガイガー)
 現在位置:Bー4上空
 パイロット状態:健康
 機体状態:良好 (キングジェイダーへの変形は不可)
 第一行動方針:クインシィの捜索
 第二行動方針:キラが同行に値する人間か、品定めする
 最終行動方針:クインシィをオルファンに帰還させる(死亡した場合は自身の生還を最優先)】

【キラ・ヤマト(機動戦士ガンダムSEED)
 搭乗機体:ガンダムF−91( 機動戦士ガンダムF−91)
 現在位置:B−4・Jアーク艦上
 パイロット状態:健康
 機体状態:良好
 第一行動方針:ジョナサンと共にラクス及びクインシィを捜索する
 第二行動方針:ジョナサンの信用を得る
 第三行動方針:ゲームに乗ってない参加者を見つける
 最終行動方針:なるべく死者を出さずにゲームを止める】

【初日:12:55】


248 :狩 ◆T0SWefbzRc :sage :2006/06/21(水) 19:15:17 (p)ID:Da8vnS81(5)
 獲物は二匹。共に機体の動きがぎこちなく、如何にも馴れてないのが目に取れる。
機体の性能は未知数だが、中の人間があれならば問題はないだろう。しかし。
「何の冗談だ。あの小さいのは兎も角、あんなもんが空から降りてくるってのは」

 立ち並ぶ岩山の梺に立つ巨大な白い機体。その影に隠れるように青い戦闘機。二機の機体が、そこには停留していた。
「移動しながら話せれば良かったんだろうけど、私、操縦に不馴れで。
機体の性能が良すぎて逆に手に負えないんです」
「ううん。私だって空を飛ぶ乗り物なんて動かしたことなかったし。それより良かった」
「何がですか?」
「最初に会った人が優しそうな人で」
最初に会った人。私が『ここ』に来て最初に会った人は…。
頭に浮かんだその姿を、黒髪の少女、カティア・グリニャールは胸の奥にしまいこんだ。
「私も良かった。ここであなたのような子に会えて」
死んだ人間の事を持ち出しても徒に不安を煽るだけ。
ましてやそれが自分達と同じくらいの少女というなら、尚更に。
注意を促す為にはいつかは話した方がいいんだろうけど、それは今じゃない。
出来る限り相手の少女を安心させてあげられるように笑顔を作り、カティアは言葉を続けた。
「ソシエさん、でいいんですよね」
「ソシエ、って呼び捨てでいいわ。アナタの方が年上みたいなのに、何か変だもの。その敬語も」
「じゃあ、ソシエ」
「うん。カティア」
こんな簡単な事でも、モニターの向こうの栗毛のショートカットの少女は嬉しそうに笑っている。
あの少女も、生きていればきっと。
「本当は機体から降りて話しが出来ればいいんだけど」
「しょうがないよ。他に誰かいるならいいけど、私達だけじゃ降りちゃったらもしもの時心許ないし」
「そうね」
「そんな顔しないでよ」
言われて気付く。相手を安心させようと笑いかけたのに、こんな些細なことでそれを崩してしまっている自分に。
「ほら、建物も近いんだし。きっと、あそこに行けば他にも人がいるよ」
それどころか、逆にソシエに励まされていた。
「ふふ、ありがと。私の方がお姉さんなのにね」
「え、何?」
「貴方に会えて良かったってコト。」
「それ、さっきも聞いたよ」
「ええ、そうね」



249 :狩 ◆T0SWefbzRc :sage :2006/06/21(水) 19:18:55 (p)ID:Da8vnS81(5)
 どうやら、動くらしい。何故かここでは索敵機器が碌に働いていない。
自分の仕事くらいキチッとしろってんだ。機械に言っても仕方の無い事だが。
うまく岩山に隠れればあんな連中やりすごすのは訳ないが…。
「それじゃあ面白くねぇな。一丁仕掛けるか」
言いながら、このゲームの中の殺戮者、ガウルンは岩山から飛び出した。

『チッ、ウマくねぇな』
辛うじて繋げた通信の向こうで、下打ちが聞こえた。
「いきなり、なんで!」
なんで?そんな事は解っている。
モニターに映る男の、心肝が冷えるようなドス黒い眼。
『なんでって、そんなモン』
男の乗っている、黒い機体の足が地面をえぐる。
まるで消えたように見える程の突進。
「クッ!」
カティアは相手の姿を確認するより早く、機体を変形させる。
『みりゃあ分かるだろうがぁぁ!!』
叫びとともに暗い影を引き連れ現れた悪魔は、ボーゲルの背後から手刀を振り下ろした。
「きゃっ!?」
『おっ!?』
しかし、それは空を切っただけだった。
戦闘機から手足が生え、奇妙に足間接が逆向きになっている状態、ガウォークモード。
カティアが変形させたその形態がホバー機能で地面を滑るように急発進しため、ガウルンの攻撃を運良く避けられたのだ。
「うっ、く…!」
なんとか変形は出来たが、それを操縦出来るかは別の話だ。
ましてや彼女は単独で機動兵器を動かした事は無い。
訳の分からないまま、フラフラと岩山から離れていく。
『なんだそりゃ、面白れぇな』
薄ら寒く笑うその姿を見て、これ以上無意味とカティアは男との通信を切った。
『カティア?』
刹那、ソシエとの通信が繋がった。
「ソシエ!大丈夫!?」
なんとか機体の操縦を持ち直し、大きく旋回させながら話を続ける。
『分からない、何なの!?』
少し前、岩山か突然飛来した黒い弾丸(言うまでもなく、跳躍しブースターを全開に噴かしたマスターガンダムである)が、ソシエのドスハードを貫いた。
そして、そのままボーゲルの方に向き直り、先の通信に入ったのだった。
「落ち着いて、大丈夫だから…」
視界の端に映る黒い影。カティアは操縦竿をデタラメに動かし、機体を無理矢理方向転換させる。



250 :狩 ◆T0SWefbzRc :sage :2006/06/21(水) 19:21:14 (p)ID:Da8vnS81(5)
巨大な足が、尾翼をかすめて空を切った。
『カティア!!』
「大丈夫よ、心配しないで」
ソシエとの距離も稼げた。
このまま、機体を戦闘機形態、ファイターモードに移行させれば離脱出来るはず…!
カティアはそう考え、操縦系に手を掛けた。
「おいおい、そう何度も外すと思ってんのか…」
男の声が聞こえた。通信は切ってあるから、おそらくオープンチャンネルで拡声しているのだろう。
「よォ!!」
「きゃあ!?」
耳障りな金属音が鳴り響き、機体が激しく揺れる。
「クク、つーかまーえ…」
「カティアァァーッッ!」
突然、地面に陰が落ちた。
「ソシエ!!」
「わあぁぁ!!」
ホワイトドールが上方から急降下し、ドスサーベルを突き下ろす。
「ちぃっ…!!」
ただのサーベルとはいえ、機体の体長差が二倍以上あるので当たれば致命傷は免れない。
男の機体は手を離し、大きく後ろに飛び退いた。
「今っ!」
カティアはそのままホワイトドールの急上昇に転じるのを確認するとともに、ガウォークを発進させた。
「よし!」
速度は充分。後はファイターモードに移行して…。
「きゃあっ!?」
機体が、突然ガクンと揺れた。
「捕まえたって、言ったろォ?」
機体後部を見ると、巨大な手が有った。
指の先端の、尖った爪のような部分が食い込み、ガッチリと掴まれている。
「ディスタントォ!クラッシャー、てかあぁぁぁ!!!」
男は腕から伸びる紐状のビームを思い切り引っ張り、ボーゲルをたぐり寄せる。
「カティア!」
それを見て、ソシエは再び降下しようとした。が。
『駄目っ!!逃げて!!』
それをカティアが制した。
『大丈夫、逃げるくらいなら私だってなんとか出来るから、行って!!』
「そんなこと…」
話す間に、黒い機体にボーゲルは引っ張られて行く。
どうしよう?どうしよう?どうする?どうしよう?どうしようどうしようどうしようどうしよう?
『逃げなさい、ソシエ!!』



251 :狩 ◆T0SWefbzRc :sage :2006/06/21(水) 19:23:47 (p)ID:Da8vnS81(5)
 夢中でホワイトドールを飛ばしていた。
気が付いた頃には太陽が地平に飲み込まれそうなくらいに沈んでた。
「なんで…」
なんで逃げてしまったのだろう。カティアを置いて。
立ち並ぶ建物、きれいに伸びた、石の道。
最初の予定通りの場所には辿り着けた。
「カティア?カティア…?」
当然、返事など返ってこない。
「ロラン?お姉様、ギャバン?」
そもそも居るはずもない。
「ねえ、誰か…」
暗くなってきた市街地を、片腕が欠けた白い巨人はただただうろつき続けるだけだった。

【カティア・グリニャール 搭乗機体:VF22S・Sボーゲル2F(マクロス7)
 パイロット状況:不明
 機体状況:不明
 現在位置:D-6
 第一行動方針:ガウルンからの逃走
 第二行動方針:仲間を集める
 第三行動方針:統夜、テニア、メルアを見つける
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【ソシエ・ハイム 搭乗機体:機鋼戦士ドスハード(戦国魔神ゴーショーグン)
 パイロット状況:茫然
 機体状況:左腕を欠損、運用には支障なし
 現在位置:D-7
 第一行動方針:カティアの救出
 第二行動方針:仲間を集める
 最終行動方針:主催者を倒す】

【ガウルン 搭乗機体:マスターガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
 パイロット状況:癌によりかなりの体調不良。やる気は十分。病状はなんとか戦闘可能な程度には落ち着いている。
 機体状況:全身に弾痕あり。装甲がへこんだ程度なので戦闘は支障無し。DG細胞があるかは不明だが、現在は活動していない様子。
 現在位置:D-6
 第一行動方針:カティアをどうするか決める
 第二行動方針:近くにいる敵機を攻撃
 最終行動方針:皆殺し】

※カティアがどうなったのかは次の作者さんお願いします。



252 :それも名無しだ :sage :2006/06/21(水) 21:07:06 (p)ID:Da8vnS81(5)
>>248->>251を破棄します


253 :死活問題 ◆Nr7qwL8XuU :sage :2006/06/23(金) 01:33:41 (p)ID:hmmCdZlk(4)
一つの人影がF-6地区からE-6地区の南東の端に踏み入った。2mほどしかないその影の移動速度はすさまじく彼か人ではないこと物語っている。
彼の名は相羽シンヤ。壮絶な戦闘の末辛くも勝利を収めた彼はテックセットを解くことなく移動していた
目指すは南西方向に見える市街地。人が集まりそうなそこならば、ただの人間にあそこまで追い詰められ苛立つ神経を癒してくれる相手がいるだろうとふんだのである
しかし、このゲームの参加者が彼を癒せる手段はただ一つ――
彼を癒すことはすなわち彼に屠り殺されること意味していた――
哀れな贄を求め渇望する心は強く衝動に身を任せ彼は全力で市街地を目指していた


同時刻、相羽シンヤと目的地を同じとする二人組みがいた。ロジャー・スミスとリリーナ・ピースクラフトである
とはいえ二人の現在地はE-7地区であり、相羽シンヤとの間にはそうとうの距離があるため互いは気づいていない。移動開始時刻が一時間ほどはやかったのも彼らに幸いしていた
「リリーナ嬢、何度も言うようだが・・・」
いっこうに返事を返してこない依頼者に対して話しかける
「仕様書を見るかぎり凰牙の補給は君のヴァルハラでも可能なようだ。一度、デンドーデンチのストックを確認させていただけないか?」
「・・・・・・・・・」
通信機の先の彼女は以前沈黙を守ったままである
返答すら返ってこないのでは交渉にすらならない。ため息が漏れる
ああは言ったが実のところ凰牙の補給はヴァルハラでしか不可能なようだ。そしてこの機体は燃料効率がすこぶる悪い
この遅々とした移動もリリーナ嬢にばれないように凰牙の移動速度をいろいろ試してみて最も燃料効率のいい速度を選んだ結果である
補給のめどが立たない以上、節約するほかなかった
ふてくされてしまったこの依頼者相手にどうしたものかと彼は頭を悩ませつつ西進していた



254 :死活問題 ◆Nr7qwL8XuU :sage :2006/06/23(金) 01:34:19 (p)ID:hmmCdZlk(4)
「・・・確認させていただけないか?」
何度目かの通信が入る。それに彼女は無視を決め込んでいた
うかつに通信に応じれば彼の弁論に打ち負けてしまう危険がある。沈黙が一番だった
彼女が沈黙を守る理由、それには多少の理由がある。彼女とてただ不機嫌なだけで無視を決め込んでいるわけではない
確かに先の戦闘で自分の理想に同乗してくれたかと思えばあっさりと裏切った彼にたいして胸中渦巻くものはあった
しかし、それにいつまでも腹を立てているほど自分は子供ではない
彼女の狙いは凰牙の燃料切れにある
そう燃料さえ切れてしまえばもう勝手に攻撃をおこなわれることもない
もう一人乗せるスペースくらい十分にある。移動はヴァルハラでおこなえば十分なのだ
無論、操縦などはさせる気はない
自身の考えを確認し彼女は思う
そう、自分は決して腹を立てているわけではないのだと・・・
彼女の腹の底は意外に黒いのかもしれない
そして、二機は目的の場所にたどり着く市街地はもう目の前だった


その頃、相羽シンヤも市街地を確認していた。同時にそこに入っていく二機の姿も見えた。目的地まであと少し、しかも獲物つきとはがぜん殺る気が沸き起こる
しかし、殺る気とは裏腹に不意に彼の視界は歪む。ここまでやってきたその勢いのまま姿勢は崩れ倒れこむ。ロワ開始からわずか3時間と少し、彼は死活問題に直面した
倒れこんだテッカマンエビルは自らに起こった状況を悟る
(しまった・・・。うっかりしていた)
彼は悔やむ
(二度のテックセットとボルテッカのツケか・・・クソッ!気をつけていさえすればこんなことには・・・)
そう気をつけていさえすればこんなことにはならないはずだった。サイコのコックピットにはこの状況に陥らないだけの量が支給されていた
今更ながらにサイコを失ったことが悔やまれる。くわえて言えばX-2のコックピットブロックを消滅させていなければ防げていた状況でもあった
彼は気づく。テックシステムを多用すれば現在の状況に陥る。しかし、人間体のまま移動するには一つ当たり50キロ四方のブロックが64もあるこの会場は広すぎる
なによりテッカマンではあれは大量に持ち運べない。テックシステムだけで乗り切れるほどこのロワは甘くはなかった
彼は悟る
自分にとっても機動兵器は重要であることを―――
何より他の参加者からあれを早急に奪う必要があることを―――
いつとまるとも知れず彼の腹の虫は盛大に鳴いていた・・・



255 :死活問題 ◆Nr7qwL8XuU :sage :2006/06/23(金) 01:36:09 (p)ID:hmmCdZlk(4)
【ロジャー・スミス 搭乗機体: 騎士GEAR凰牙 (GEAR戦士電童)
 現在位置:D-7市街地
 パイロット状態:健康
 機体状態:良好。ENを数%消費
 第一行動方針:リリーナと共に西の市街地へ向かう
 第二行動方針:リリーナを守りながら、参加者に彼女の完全平和主義を説く
第三行動方針:補給の交渉を成功させる
第四行動方針:燃料の節約
 最終行動方針:依頼の遂行(ネゴシエイションに値しない相手には武力行使も厭わないが、相手を殺す事はしない) 】
 備考:凰牙は通常の補給ポイントによる補給は不可能。
    セルブースターのハイパーデンドーデンチでしかENの補給は出来ません。


【リリーナ・ドーリアン 搭乗機体:セルブースターヴァルハラ (GEAR戦士電童)
 現在位置:D-7市街地
 パイロット状態:健康。ロジャーに対して少し(かなり?)ご立腹
 機体状態:良好
 第一行動方針:参加者達に完全平和主義を説く
 最終行動方針:話し合いによって殺し合いを止める】
 備考:セルブースターはハイパーデンドーデンチ12本(凰牙の補給6回分)を搭載。
    ちなみに二人乗り。】

【相羽 シンヤ(テッカマンエビル) 搭乗機体:無し
 パイロット状況:テッカマン形態、PSYボルテッカ使用により疲労
 機体状況:無茶苦茶空腹
 現在位置:D-7市街地周辺
第一行動方針:食料の確保
第二行動方針:機体の確保
 第三行動方針:他の参加者を全滅させる
 最終行動方針:元の世界に帰る】
備考:テックシステムの使用はカロリーを大量に消費


【初日 15:30】



256 :死活問題 ◆Nr7qwL8XuU :sage :2006/06/23(金) 01:45:22 (p)ID:hmmCdZlk(4)
即効で修正、申し訳ない
シンヤの状況を以下に修正


【相羽 シンヤ(テッカマンエビル) 搭乗機体:無し
 パイロット状況:テッカマン形態、PSYボルテッカ使用により疲労、無茶苦茶空腹
 機体状況:良好
 現在位置:D-7市街地周辺
第一行動方針:食料の確保
第二行動方針:機体の確保
 第三行動方針:他の参加者を全滅させる
 最終行動方針:元の世界に帰る】
備考:テックシステムの使用はカロリーを大量に消費



257 :見る能力 ◆w4z2Zc6V4M :sage :2006/06/25(日) 00:55:57 (p)ID:9Q9v5rXc(4)
コンビニの自動ドアが開き、少年が1人出てきた。
手に、食料品などが入ったビニール袋を提げている。
そこからスポーツドリンクのペットボトルを取り出して、飲む。
さして変わった事の無い光景だ。
ただ一点、店の前に巨大な黒いロボットが鎮座していることを除けば。


その数十分前。
黒衣の騎士を駆る少年、紫雲統夜は、目の前の光景に驚いていた。
光の壁。こう形容するのが一番妥当だろう。
白く輝く壁のようなものが、自分の前に存在している。
「地図の端と端とはつながってるとは言ってたけど…通れるのか?」
思わず呟きがもれた。何とかこの先にある(らしい)都市部に行きたいのだが…
(まずは実験だな)
近くにあった岩を放り投げてみる。
岩は、まるで水面に触れたときのように消えていった。
どうやら、通り抜けることは可能らしい。
次に、ヴァイサーガの頭を突っ込んでみる。
計器に異常は見られない。カメラは壁の向こう側の様子を映しているようだ。遠くにビルが立ち並んでいるのが見える。
「よし…!」
意を決して、統夜は一歩を踏み出した。


マップの境界を抜けたヴァイサーガは、今は市街地の上空を飛んでいた。
「まさにゴーストタウンだな…」
その街は、全てが止まっていた。
機体のカメラに映るものでは、時折風に揺れる木立ぐらいしか動かない。
降下して辺りを探索しても、人影らしきものは見つからなかった。


258 :見る能力 ◆w4z2Zc6V4M :sage :2006/06/25(日) 00:56:38 (p)ID:9Q9v5rXc(4)
その途中、見つけたコンビニで食料などの調達をすることにした。
無論、店内にも人の姿は無い。
かといって代金を払わずに店を出るつもりは無かったが、財布を持っていないことに気付き諦めた。
レジ裏から取り出したビニール袋に、水や保存の利く食べ物を入れていく。
機体と一緒に支給されたものもあるが、このふざけたゲームがいつまで続くか分からない今の状況下では、
食料があるに越したことは無いだろう。
必要なものはある程度詰め終わり、店を出ようとしたとき、棚に並んだチョコレートが目に入った。
それは統夜に、あの3人のことを思い出させた。

手にいっぱい甘いお菓子を抱えてチョコレートをほおばるメルア。
メルアがコクピットにお菓子を持ち込んだことを叱るテニア。
そんな二人の言い争いを止めに入るカティア。

(…あいつら…無事なのか…)
なぜか、言いようの無い不安にとらわれた。
その不安を打ち消すように、棚のチョコレートをひとつ袋に入れる。
いずれ3人のうちの誰かに渡してやれるかもしれない。
「きっと無事…だよな」
そう言わせたのは、確信ではなく願望だと、統夜は自覚していた。


259 :見る能力 ◆w4z2Zc6V4M :sage :2006/06/25(日) 00:58:57 (p)ID:9Q9v5rXc(4)
店の前で、軽く食事を取った。
ゴミをひとまとめにしてゴミ箱に放り込み、機体に乗ろうとした時――
「――――!」
統夜の脳裏にある映像が映りこむ。
ここから東の方角、大きな建物の中で2体のロボットが並んでいる。
それほど大きくは無い黒い機体と、かなりの大きさの赤い機体。
どちらにも戦闘の痕跡は見られるが、今現在交戦中、という訳ではないようだ。

(サイトロン…か…)
自分に備わった未知の能力。
遠く離れたものの情報も得ることができる粒子を、自分は扱える。まだ慣れてはいないが。
この"箱庭"にも、サイトロンは存在しているようだ。
レーダーが極端に利かないここでは、うまく使えばかなり有利になれるだろう。

何にせよ、今はあの2機に接近するのはやめておこう。
交戦していないのなら、協力関係にあるのかもしれない。さすがに2対1は分が悪い。
優勝するためには他の参加者を殺さなければならないが、わざわざ不利な状況で戦ってやる必要は無い。
まずは気付かれないように移動して、戦いやすい相手、地形を見つけるべきだろう。
ヴァイサーガは大きな機体だ。ビルの立て込んだここでは戦いにくい。
「…とにかく行くか」
統夜は操縦桿を握り締めた。


【紫雲 統夜 搭乗機体:ヴァイサーガ (スーパーロボット大戦A)
 パイロット状況:良好
 機体状況:無傷
 現在位置:A-1
 第一行動方針:B-1の2機に発見されないように移動する
 第二行動方針:敵を殺す
 最終行動方針:ゲームに優勝する】

 ※サイトロンはこの世界にも存在しているものとします

【時刻:15:30】



260 : ◆w4z2Zc6V4M :sage :2006/06/25(日) 10:12:03 (p)ID:9Q9v5rXc(4)
>>257-259
いったん破棄、修正後再投下します。


261 :淡い記憶と、現実 ◆w4z2Zc6V4M :sage :2006/06/26(月) 00:20:22 (p)ID:G4HnKycu(2)
コンビニの自動ドアが開き、少年が1人出てきた。
手に、食料品などが入ったビニール袋を提げている。
そこからスポーツドリンクのペットボトルを取り出して、飲む。
さして変わった事の無い光景だ。
ただ一点、店の前に巨大なロボットが鎮座していることを除けば。


その数十分前。
真紅のマントを翻し、ヴァイサーガは大地に降り立った。
コクピットの中で、その騎士を駆る少年―紫雲統夜は、目の前の光景に驚いていた。
光の壁。こう形容するのが一番妥当だろう。
白く輝く壁のようなものが、自分の前に存在している。
「地図の端と端とはつながってるとは言ってたけど…通れるのか?」
思わず呟きがもれた。何とかこの先にある(らしい)都市部に行きたいのだが…
(まずは実験だな)
近くにあった岩を放り投げてみる。
岩は、まるで水面に触れたときのように消えていった。
どうやら、通り抜けることは可能らしい。
次に、ヴァイサーガの頭を突っ込んでみる。
計器に異常は見られない。カメラは壁の向こう側の様子を映しているようだ。
それほど遠くない距離で、ビルが立ち並んでいるのが見える。
「よし…!」
意を決して、統夜は一歩を踏み出した。


マップの境界を抜けたヴァイサーガは、今度は市街地の上空を飛んでいた。
「まさにゴーストタウンだな…」
その街は、全てが止まっていた。
機体のカメラに映るものでは、時折風に揺れる木立ぐらいしか動かない。
降下して辺りを探索しても、人影らしきものは見つからなかった。

その途中、見つけたコンビニで食料などの調達をすることにした。
無論、店内にも人の姿は無い。
かといって代金を払わずに店を出るつもりは無かったが、財布を持っていないことに気付き諦めた。
レジ裏から取り出したビニール袋に、水や保存の利く食べ物を入れていく。
機体と一緒に支給されたものもあるが、このふざけたゲームがいつまで続くか分からない今の状況下では、
食料があるに越したことは無いだろう。



262 :淡い記憶と、現実 ◆w4z2Zc6V4M :sage :2006/06/26(月) 00:21:42 (p)ID:G4HnKycu(2)
必要なものはある程度詰め終わり、店を出ようとしたとき、棚に並んだチョコレートが目に入った。
それは統夜に、あの3人のことを思い出させた。

手にいっぱい甘いお菓子を抱えてチョコレートをほおばるメルア。
メルアがコクピットにお菓子を持ち込んだことを叱るテニア。
そんな二人の言い争いを止めに入るカティア。

(…あいつら…無事なのか…)
なぜか、言いようの無い不安にとらわれた。
その不安を打ち消すように、棚のチョコレートをひとつ袋に入れる。
いずれ3人のうちの誰かに渡してやれるかもしれない。
「きっと無事…だよな」
そう言わせたのは、確信ではなく願望だと、統夜は自覚していた。


店の前で、簡単に食事を取った。
ゴミをひとまとめにしてゴミ箱に放り込む。
「ふぅ……」
大きなため息をついた。
いつ誰に襲われるか分からない。常に警戒を要する今の状況は、精神的にこたえる。
息抜きもかねて、軽く体を動かす。
気分転換の後、コクピットに乗り込んで、もう一度自分の置かれた状況を考え直してみた。

殺し合い。生きて帰る方法は、ほかの参加者を皆殺しにすること。

「くそっ…」
やり場の無い怒りがこみ上げる。
いや、正確にはこの感情を向けるべき相手はいる。しかし、あの化け物に刃向かえば自分は殺されるだろう。
それこそあの女性のように、あっさりと。
死への恐怖が、統夜を駆り立てる。
生きて帰るために必要なら――やるしかない。
確実に勝ち残っていくには、戦いやすい相手、地形を見つけるべきだろう。
ヴァイサーガは大きな機体だ。ビルの立て込んだここでは戦いにくい。
「…とにかく行くか」
統夜は操縦桿を握り締めた。


【紫雲 統夜 搭乗機体:ヴァイサーガ (スーパーロボット大戦A)
 パイロット状況:良好
 機体状況:無傷
 現在位置:A-1
 第一行動方針:戦いやすい相手、または地形を見つける
 第二行動方針:敵を殺す
 最終行動方針:ゲームに優勝する】


【時刻:15:30】



263 :迷いの行く先 ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/27(火) 02:05:28 (p)ID:fE/ORXh7(5)
ニコルのために葬送曲。
(だけど、それがどうしたって言うんだ!)
ニコルの死を悼んで、悲しんで、それでニコルが生き返るわけでもない。
だからといってキラを殺す事にも意味はない。
一体なにが悪かったのか。
ニコルを殺したキラが悪かったのか。
キラにやられそうになった自分の弱さが悪かったのか。
自分を助けようとしたニコルの優しさが悪かったのか。
戦争という状況が悪かったのか。
その全てなのだろう。
ニコルは優しかったから死んだ。
戦場でその優しさが正しくないのだったら、ここでも同じ論理が通ずるはずだ。
目の前で馬鹿みたいに歌ってる奴をまず殺せばいい。
簡単な事だ。
「だからって!だからってニコルのために歌ってくれてる奴を殺すなんてできるかよ!」
だからアスランは逃げた。
ラーゼフォンに背を向けて。
追ってくる悼みの歌から逃げだした。
戦場でなら殺す事に躊躇は不要だ。
しかしここは違う。
ここは戦場ではなく誰かが作ったゲーム盤だ。
戦場なら、そこにいるのは戦う意志をもった兵士だけだ。
しかしここには、あんな奴や戦う力のない女子供もいる。
「だったらどうしろっていうんだよ・・・・・・」
分からない、生きて帰りたい、心からそう思う。
だが、殺したくない。
全てを保留してアスランは蒼き鷹を走らせる。
目的も目標もなく、ただ歪に真っ直ぐと。


264 :迷いの行く先 ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/27(火) 02:06:06 (p)ID:fE/ORXh7(5)
ヘビーアームズとの戦いを爆風にまぎれて離脱したヒイロは焦っていた。
(うかつだった、俺のミスだ)
コンソールを見るとレイダーのエネルギー残量は極小になっていた。
無理もない、開始早々の二連戦、しかも二人目はかなり戦い慣れした相手だった。
ここに来てから自分はどうもおかしい、それはヒイロ自身自覚している事だ。
そもそも、このゲーム、生き残りを目指すなら序盤はステルスに徹するべきだ。
そして残り少ない人数になってから勝負をかける。
これが正しいやり方だ。
序盤からの無差別殺戮など自殺志願者のやる事だ。
(いや、おかしくなったのはここに来る前からか)
サンクキングダムの崩壊。
そしてロームフェラの傀儡になったリリーナ。
その二つに失望したのだ。
そして自暴自棄になった、そういうことか。
一人目に殺した女。
以前の自分、ノベンタを殺してしまった後の自分なら殺す事も戦う事もなかっただろう。
「答えろレイダー!どうすればいい!俺は!」
ヒイロの問いかけに、しかしレイダーが答えるわけがない。
エネルギーは刻一刻と減っていく。
TP装甲はすでにカットしてあるがそれもでも何処まで持つか怪しいものだった。


265 :迷いの行く先 ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/27(火) 02:06:28 (p)ID:fE/ORXh7(5)
そして蒼い鷹は力なく飛ぶ黒鴉見つける。
いや、正確には見つけてしまった。
(どうする!相手は気付いてない、攻撃を仕掛けるなら今のうちだ)
しかし、行動には移せない。
アスランはここにきて、今だに迷っていた。
(もし戦う意思のない相手だったらどうする、そんな相手を殺して生き残り、それでキラを殺してもニコルは・・・・・・)

やがて黒鴉も蒼い鷹に気付く。
(クッ!後ろに付かれたか、今戦うわけにはいかないが)
ヒイロは冷静に相手を見てファルゲンに向き合うよう。
だが、攻撃は出来ない。
一撃でしとめなければもはや戦う力はレイダーに残ってはいないだろう。
かといって逃げるだけのエネルギーももはや残ってはいまい。
(相手の出方次第だが・・・・・・)

奇妙な均衡を保ったままお互い動くことなく睨みあい続ける。
動くきっかけも、迷いの答えも見つけられぬまま。



266 :迷いの行く先 ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/27(火) 02:08:16 (p)ID:fE/ORXh7(5)
【アスラン・ザラ 搭乗機体:ファルゲンマッフ(装甲騎兵ドラグナー)
 パイロット状況:動揺
 機体状況:良好
 現在位置:F-6
 第一行動方針:生きて帰る、それ以外は保留
 最終行動方針:未決定】

【ヒイロ=ユイ 搭乗機体:レイダーガンダム(機動戦士ガンダムSEED)
 パイロット状態:疲労、体中に軽い痛み
 機体状態:EN残量僅か
 現在位置:F-3
 第一行動方針:なんとか補給する
 第二行動方針:参加者の殺害(多少迷いが出てきた)
 最終行動方針:元の世界に戻ってリリーナを殺すため、優勝する(リリーナが参加していることは知らない)】

【時刻:15:50】



267 :迷いの行く先 ◆vQm.UvVUE. :sage :2006/06/27(火) 10:22:58 (p)ID:fE/ORXh7(5)
>>266
ヒイロの現在地を
F-3→F-6に


268 :殺意は昏き火が如く ◆ZbL7QonnV. :sage :2006/06/27(火) 15:50:39 (p)ID:5XqLbEPH(2)
「ち……さっきの奴は逃しちまったか……」
 流竜馬は苛立っていた。自分が現在置かれている今の状況に、激しく怒りを憶えていた。
 何もかもが気に喰わなかった。
 このクソッタレなゲームの事も、こんな馬鹿げたゲームを企てたあの化け物も、そしてそれに巻き込まれてしまった事も、全てが苛立ちの対象だった。
 生きる為に他人を蹴落とす。これは、まだいい。これまでに繰り広げた戦いの中でも、そういった局面には何度も出くわしてきた。
 他人の為に自分を犠牲にしてやるなど、甘ったれたガキの考えだ。名前も知らない他人の為に、自分の命を譲ってやる道理は無い。
 だが……それでも、この状況は気に喰わなかった。
 あんな得体の知れない化け物に従わされている事が、無性に腹立たしかった。
 そして、なにより――永らく待ち望み続けていた復讐の機会が奪われた事が、なによりも我慢ならなかった。

「さっきのジジイみてえに、俺以外の全員が殺る気になってるって言うんなら、面倒臭え事は考えずに済むんだがな……」
 獰猛な殺気を隠そうともせずに、竜馬は冷たい声で言う。言葉の内容とは裏腹に、男の声に情容赦など微塵も無かった。
 ……以前の自分ならば、こんなゲームに乗ろうとは思わなかったのかもしれない。
 ここから抜け出す方法を、必死に探し出そうとしたのかもしれない。
 だが……長い獄中の生活は、彼を変えてしまっていた。
 自分を裏切ったあの男……神隼人。
 かつては戦友でありながら、自分を裏切り獄中に貶めた神隼人!!
 奴に対する激しい憎悪が胸の奥に積み重なり、このドス黒い復讐心以外には何も残らなくなってしまった。
 そしてその復讐心は、今この瞬間も自分を燃やし続けている……。

「待ってろよ、早乙女のジジイ……それに、隼人……! このゲームから抜け出して、てめえらを必ず血祭りに上げてやる……!」
 ……思い出す。
 復活の早乙女、空を覆い尽くさんばかりのゲッタードラゴン、それに単身立ち向かう自分。
 そして……ゲッターG軍団との戦闘中、のうのうと自分の前に姿を現した裏切り者の神隼人。
 もう少しだ……もう少しで、あの裏切り者をブチ殺してやれたものを……!!

「俺が戻るまで……絶対に死んだりするんじゃねぇぞ……!」
 憎悪に目をギラつかせながら、流竜馬は拳を握る。
 迷いは無かった。この手で隼人を地獄に叩き落してやれるのならば、他など知った事ではない。
 このふざけたゲームで勝ち上がらなければならないのなら、そうしてやるまでの事だった。
 かつての愛機――ゲッター1のマントさながらに、大雷鳳のマフラーは吹き抜ける風に棚引いていた。


269 :殺意は昏き火が如く ◆ZbL7QonnV. :sage :2006/06/27(火) 15:51:52 (p)ID:5XqLbEPH(2)
【流 竜馬 搭乗機体:大雷鳳(バンプレストオリジナル)
 パイロット状態:良好
 機体状態:良好
 現在位置:C-8
 第一行動方針:サーチアンドデストロイ
 最終行動方針:ゲームで勝つ】

【初日 13:30】


270 :カフェ・タイム─あんたらつくづく…─ :sage :2006/06/27(火) 16:28:48 (p)ID:C2t7XJbB(2)
「ふぅ───」
妙にエロいライダースーツを着ている、カテジナ・ルースは、支給食糧の携帯飲料──
どこぞの7のつくコンビニに売られているようなものと似ているが、綴りを読むと「バルトフェルド・カフェ」と書かれたカップのコーヒー
──を飲みながら、機体操作の一切をしていなかった。
する必要もなかったのだ。
「機体が大きくて、尚且飛べると本当に便利よね」
「いやはや、全くですな」
通信機から、ギャリソンさんの声が聞こえる。
「……こんな状態でバランス取りながら操縦するのは難しいんだからな。振り落とされても文句を言うなよ」
「そのくらい、解っている」
アフロの声。今一番働いているのは彼だ。
今、彼等は───空にいた。

「ガンドロの肩に?」
「えぇ」
数十分前、襲撃された後に動きだそうとした矢先、カテジナはふと思い付いたことを話した。
「私の機体も、ギャリソンさんの機体も、あなたの機体とはサイズ差が大きすぎる。
逆に移動力は私の機体が断トツで、あなたの機体は鈍い。
そして私とあなたの機体は飛べるけれど、ギャリソンさんの機体は飛行不可能───
つまり、三人で固まって動くには足並み揃えるのは難しいのよ。
だから、飛行可能で私とギャリソンさんの機体を乗せて運べそうなあなたのガンドロの肩を貸して欲しいのよ」
「んな言ったって………」
「悪くない考えですな」
二対一、多数決の理論でコスモは押し黙った。

「空を飛ぶ連中はあまり居ないわね」
「目立ちますからな。後2時間ほど移動したら、着陸して食事と致しましょうか」
「あぁ確に。まあ、私たちで迎撃出来るから、ある程度の敵なら大丈夫よね。G・テリトリーもあるし」
「…………」
ユウキ・コスモは、通信機に入らない程度の声で呟いた。
「…………平和ボケ、してんじゃねぇよ」


【カテジナ・ルース 搭乗機体:プロトガーランド(メガゾーン23)
 パイロット状況:健康。マターリ中。
 機体状況:MS形態
 現在位置:C-5から西(B-5)に向け移動中
 第一行動方針:マターリ索敵
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【ギャリソン時田 搭乗機体:ガンダムレオパルドデストロイ(機動新世紀ガンダムX)
 パイロット状況:健康、マターリ中。
 機体状況:全弾薬の半分近くを消費
 現在位置:C-5から西(B-5)に向け移動中
 第一行動方針:マターリ索敵
 最終行動方針:ゲームからの脱出】



271 :カフェ・タイム─あんたらつくづく…─ ◆dHWlzxs/ng :sage :2006/06/27(火) 16:30:15 (p)ID:C2t7XJbB(2)
【ユウキ・コスモ 搭乗機体:ジガンスクード・ドゥロ(スーパーロボット大戦OG2)
 パイロット状況:軽い眩暈、呆れ
 機体状況:G・ワイドブラスター一発分の消費、自重以上を肩に乗せて移動中のため、ENを徐々に消費
 現在位置:C-5から西(B-5)に向け、肩の機体を振り落とさないようにゆっくり移動中
 第一行動方針:西へ移動
 最終行動方針:ゲームからの脱出】

【時刻:15:00】
※ジガンスクード・ドゥロのエネルギーに関しては、移動によってどのくらい消費したかは次の書き手に任せます。


272 :磨り減っていく心 ◆Y3PBSdzg36 :sage :2006/06/28(水) 18:06:22 ID:jrQedTO1
いつも、傍には誰かがいた
だから、不安なときは誰かと話すことができた
だけど、今は一人だ
誰とも話すことは出来ない
正直、これが夢ならどんなにいいか
さっき、参加者が一人死んでいるのを見た
冷静な振りをしていた心が崩れそうになるのを感じた
統夜たちの内誰かが死んでいてもおかしくはない
そして自分も…
カティアは心が押しつぶされそうになっていた
そんな少女に容赦なく敵は襲い掛かる


レーダーに機体の反応がでる
「もしかしたら、このゲームの反対派かもしれないわね」
しかし、相手の機体から何かが発射された
かなりのスピードのそれを何とか避ける
「いきなり攻撃!?相手はゲームに乗っているの!?」
飛んできたのは腕、ロケットパンチの攻撃だった
相手の機体が姿を現す
その機体は左側にひどいダメージを受けていた
腕は無くなっている
「今度の奴は絶対に殺してやるぜぇ!」
相手の機体から声が放たれる
どうやら一度相手に襲い掛かって返り討ちにされたらしい
相手の機体に射撃武器らしきものはなく飛び道具はアレ一つだけらしい
「なら、あの腕を破壊するか発射できなくして逃げます」
―反応弾なら一撃で撃破できそうだけど使いたくはない
作戦を決め気持ちを落ち着かせ、戦いは始まった


273 :磨り減っていく心 ◆Y3PBSdzg36 :sage :2006/06/28(水) 18:56:10 (p)ID:ExCQSnvv(3)
「うおぉぉぉっ!死ねえぇぇっ!」
ゴステロが乗るガオガイガーはブロウクンマグナムを放つ
そのまま飛んで行き機体のところで爆発が起こる
「ひゃははは!あっけねえなあ」
しかし、爆発の煙の両脇からミサイルが2発ずつ飛来してくる
「くそっ!」
右腕は飛ばしていて左腕はない、何とか足で一発は防ぐが他は全て命中する
右はたいしたことはないが左側には少し損傷を増やしている
煙が晴れるが相手の機体は見えない
「どこだ、何処へ行ったぁ!」

腕が飛んできたときミサイルを一発当て、煙幕にしてミサイルを射出しながらガウォ−クに変形して地上を走り相手の裏に回りこんだのである
やはり左側に攻撃すればミサイルも効くらしい
(腕を破壊するよりも駆動形を破壊した方がが効率が良いかしら)
そう考え、目標を変える
相手はまだ気づいていない
ビーム砲とミサイルを3発発射する
命中、相手の左装甲にかなりのダメージを与えることが出来た
相手が振り返り、また腕を放ってくる
今度は光を伴った攻撃だ
紙一重でよけた後、後ろにかなりの衝撃が奔る
後ろを見る暇はない、腕を放っている今がチャンスなのだ
ミサイルを一発顔に向かって放つ、当然防ぐことも出来なく当たり相手がひるむ
その隙に脆くなっている装甲にビームを浴びせ、勢いを殺さずバトロイドに変形、バリアを張った拳がわき腹の下辺りに激突し、とうとう穴を開けて貫通した
すぐに離脱するともくろみ通り下半身が動かなくなりうつぶせに敵は倒れた
(今の内だわ)
ファイターに変形するとその場から離脱する
早く誰か安心できる仲間の人に出会いたい、でないと、
私の心が壊れてしまうかもしれない…






274 :磨り減っていく心 ◆Y3PBSdzg36 :sage :2006/06/28(水) 18:58:23 (p)ID:ExCQSnvv(3)
【カティア・グリニャール 搭乗機体:VF22S・Sボーゲル2F(マクロス7)
 パイロット状況:精神的に不安定
 機体状況:機体EN少しとミサイル9発消費
 現在位置:E-3
 第一行動方針:7-Dに向かう
 第二行動方針:仲間を集める
 第三行動方針:統夜、テニア、メルアを見つける
 最終行動方針:ゲームからの脱出】



275 :磨り減っていく心 ◆Y3PBSdzg36 :sage :2006/06/28(水) 19:07:55 (p)ID:ExCQSnvv(3)
「くそぉぉぉっ!次あったらぶっ殺してやるっ!」
なんとか体を起こし周辺を確認したときには相手に逃げられていた
思わず、叫んでいたがそれはもう無謀に近いことをゴステロは気づいていない

【ゴステロ 搭乗機体:スターガオガイガー(勇者王ガオガイガー)
パイロット状態:全身と脳に激痛、怒りと興奮
機体状態:下半身制御不能、左腕損失(プロテクトウォール不可)、左半身に穴が開いている、EN大幅に消費
現在位置:E-4
第一行動指針:エイジ・カミーユ・ゼクス・ユーゼス・ベガを殺す
最終行動指針:生き残り優勝】

【時刻:16:30】

※カティアの現在地をE-5にしてください




276 :それも名無しだ :sage :2006/06/28(水) 21:32:57 ID:bF90y1ho
>>272から>>275を破棄します


277 :それも名無しだ :2006/07/02(日) 01:31:56 ID:fQc9snIx
忘れるなこの痛み


278 :それも名無しだ :2006/07/06(木) 01:45:04 ID:mMvENuMR
ほっしゅどぽてと


279 :碧依 :2006/07/06(木) 01:54:19 ID:s18zTP/I
無料でブレ―カーが出来ます(人´▽`)ワーイ 攻撃して倒したり治療したり略奪したりして逝くゲーム.チーム戦争(旗の取り合い)も有ります。
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暇つぶしにどうぞ
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280 :気になる、あの子 ◆caxMcNfNrg :sage :2006/07/06(木) 01:57:54 ID:0ocdchs+
「目的地に到着です!」
 ユリカの声と共に、大地を揺るがす巨竜が動きを止める。
その周囲を旋回していた戦闘機から通信が開かれた。
「補給口か・・・だが艦長、補給はまだ必要ないと思うが?」
 黒衣の青年が発した疑問に、ユリカはダイを補給施設の上に移動させつつ答える。
「私達は必要ないですけど、必要な人がいるかもしれないじゃないですか」
「俺達以外の、この周囲にいる参加者か」
「はい!他の人達に待ち伏せするために、ここを占拠しちゃいましょう」
 ユリカがそう言い終える頃には・・・ダイの体は、補給路を完全に覆い隠していた。

「しかし・・・それでは効率が悪いんじゃないか?
 ここで、来るかもわからない参加者を待つよりは・・・」
「いえ、ガイさん・・・の戦闘機ならともかく、
 機動力の無い地上戦艦では、移動に時間が掛かりすぎます
 それに、この目立つ機体で移動するよりは、
 相手を待ち受けたほうが、リスクは小さいと思いますし」
ユリカの言葉に・・・暫しの沈黙の後、通信機から言葉が返される。
「だが、補給をするという事は戦闘を行ったという事だ。
 ゲームに乗っている可能性が高いと思うが」
「戦闘をしかけられて、迎撃しただけの可能性もあります
 ・・・とにかく、攻撃されたら通信をして説得しましょう」
「了解した」
 多少の問答の末に、了承の返事がもたらされる。
青年の返答を聞き満足げに頷くと、ユリカは続けて言った。
「というわけで少し休憩にしましょう。着艦してください、ガイさん」
「どういうわけかはわからないが、俺はまだ問題ない。
 周囲は俺が警戒するから、君は休んでいてくれ」
「で、でも・・・」
「大丈夫だ。問題はない」
「・・・むぅ」
 不服そうに頬を膨らませるユリカ。
その様子を眺めつつ・・・テンカワ・アキトはヘルメットの下で、微かな笑みを浮かべた。



【テンカワ・アキト 搭乗機体:YF-21(マクロスプラス)
 パイロット状態:良好
 機体状態:良好
 現在位置:D-7補給施設
 第一行動指針:ユリカを守る(そのためには、自分が犠牲になっても構わない)
 最終行動指針:ユリカを元の世界に返す(そのためには、どんな犠牲も厭わない)】

【ミスマル・ユリカ 搭乗機体:無敵戦艦ダイ(ゲッターロボ!)
 パイロット状態:良好、ちょっと不満
 機体状態:良好
 現在位置:D-7補給施設
 第一行動指針:補給施設を占拠して、仲間を集める
 第二行動方針:ガイ(アキト)を着艦、休息させる(切実に顔が見たい)
 最終行動指針:ゲームからの脱出
 備考:YF-21に乗っているのがアキトだと知りませんが、もしかしたらとは思っています
    アキトの名前はガイだと思っていますが、若干の疑問もあります】

【初日:15:30】


281 :【Death+ p7125-ip02fukuokachu.fukuoka.ocn.ne.jp+Note】 :sage :2006/07/06(木) 02:11:43 ID:c6wAeMY0
7125 : :

    


282 :それも名無しだ :sage :2006/07/10(月) 01:33:48 ID:b2eGSfQc
hosyu


283 :それも名無しだ :2006/07/13(木) 14:19:21 ID:HOH1VDqD
保守



284 :それも名無しだ :sage :2006/07/13(木) 16:50:03 ID:oLmz+mhx
何この池沼スレ


285 :薄氷の同盟 ◆T6.9oUERyk :sage :2006/07/16(日) 12:17:49 (p)ID:n57z1XQm(6)
どうしたものか。

蒼いMS(少なくともMSとよく似た)らしき人型機動と対峙しながらヒイロ・ユイは考える。
背後を取っていながら奇襲を仕掛けなかったことから、相手に“今は”交戦の意思が無いことが分かる。
だが、相手は未だ何のアクションも仕掛けてこない。
対話の意思があるのか、値踏みでもしているのか、それとも単に戸惑っているだけなのか…

こちらから通信を開くべきか。
油断無く蒼い機体を見定めながら、そう考え始めた矢先。

「新手か、」
レーダーに反応、南方から一機接近してくる。
見ると対峙する蒼い機体も気づいたようだ、機体の向きを南側へと僅かにずらす。


そのままじりじりと時間は流れ。


やがてあらわれたのは、2門の巨大な砲を担いだ重厚なMS(?)。
その長距離砲撃戦用らしき機体から通信が入る。
「こちらは九鬼正義。そちらの2機、聞こえるかね?」


286 :薄氷の同盟 ◆T6.9oUERyk :sage :2006/07/16(日) 12:22:09 (p)ID:n57z1XQm(6)
『こちらはヒイロ・ユイだ。』
黒い機体からは即座に感情の感じられない平坦な声が返る。
ややあって蒼い機体からも反応が。
『こちらはアスラン・ザラ』
こちらは何かを押し殺すような、そんな声が。
どちらの声音もまだ若々しい、少年らしいもの。
「ふむ、ヒイロ君にアスラン君か。一つ提案があるのだが、ここはまず情報交換と行かないかね?」
しばし沈黙があり。
『『いいだろう』』
二人の声が重なった。


「MU戦争に東京ジュピター、か。」
『信じられないのも無理ないな、私でも実際に体験していなければ到底信じられんだろう。
もっとも、人型機動兵器が主力の宇宙戦争というのも十分信じがたいがね。』
九鬼と名乗る軍人はそう苦笑したが、科学技術の集大成であるコーディネーター・アスラン
にしてみればMUだのドーレムだのといったオカルト話は正直受け入れがたい。
逆にヒイロの語るA.C.歴の世界は宇宙移民やMSの台頭、など自分たちC.E.の歴史とよく似ており
受け入れやすかったのだが。
最も、二人には肝心のナチュラルとコーディネーターの対立やコーディネーターの存在そのものを
教えてはいない。当然、自分がコーディネーターであることもだ。
自分と親友を引き裂いたナチュラルたちへの不信感はアスランの中で拭い難いものへとなっていた。

『MUとやらは俺たちをここに集めたあの怪物と関係があるのか?』
そのヒイロからの質問に、はっ、と我に返る。
そうだ、オカルトじみた存在ならこのゲームに巻き込まれた時点で嫌と言うほど思い知らされている。
『残念ながら、私もあのノア・レジセイアとやらは見たことも聞いたことも無いな。』


287 :薄氷の同盟 ◆bMNHLgAhrE :sage :2006/07/16(日) 12:23:42 (p)ID:n57z1XQm(6)
『残念ながら、私もあのノア・レジセイアとやらは見たことも聞いたことも無いな。』
「そうか。」
落胆はなかった。
元々、さほど期待していたわけでもなく。
九鬼が真実を述べているとも限らないのだ。

(リリーナ…)
九鬼はリリーナ・ピースクラフトと名乗る少女とその仲間に襲撃された、と言った。
武器を捨て話し合いましょう、と言われ信用して近づいた所で奇襲を喰らい、ほうほうの呈で逃げ出したと。
その話を無表情に聞きながら、ヒイロはこの男は信用できないと確信した。
同時に思うのはリリーナの安否。
九鬼の話し方から彼女がまだ無事らしいのことは分かったが、行動をともにする輩が信用できるとは限らない。
リリーナを誰かに殺させる訳にはいかない。彼女は自分が殺さなければならないのだから。

ヒイロ・ユイの行動方針は定まった。
リリーナ・ピースクラフトを探し出す、いかなる手段を使ってでも。


288 :薄氷の同盟 ◆T6.9oUERyk :sage :2006/07/16(日) 12:26:31 (p)ID:n57z1XQm(6)
情報交換は順調に進み、頃合を見計らって九鬼は提案する。
「それでだ、身を守るためにも私たちでチームを組まないかね?」
しばし沈黙があり
『いいだろう』『分かりました』
少年たちからは承諾の返事が。

その返事を聞き、九鬼は内心狂喜する。有力な手ごまが二人、手に入ったのだ。
アスラン・ザラはザフトという軍隊の、ヒイロ・ユイはOZという私設軍でそれぞれ
エリートパイロットだったらしい、軍人らしく武器を捨てて話し合うなどと言った
腑抜けた考えは持っていない。
さらに二人の機体は高機動中距離・近距離戦用で、自機は長距離支援用。
二人を前衛に立たせ、自分は火力支援に徹すれば身の安全は確保される。
ようやく、自分にもつきが回ってきたようだ。

こうして仮初の同盟は成立した。


289 :薄氷の同盟 ◆T6.9oUERyk :sage :2006/07/16(日) 12:34:20 (p)ID:n57z1XQm(6)
【ヒイロ・ユイ 搭乗機体:レイダーガンダム(機動戦士ガンダムSEED)
パイロット状況:冷静、疲労、体中に軽い痛み
機体状況:EN切れ寸前
現在位置:F-6
第一行動方針:何とかして補給する
第二行動方針:リリーナの捜索
最終行動指針:???】

【アスラン・ザラ 搭乗機体:ファルゲンマッフ(機甲戦記ドラグナー)
パイロット状況:冷静
機体状況:良好
第一行動方針:生きて返る、それ以外は未定
最終行動方針:未決定】

【九鬼正義 搭乗機体:ドラグナー2型カスタム(機甲戦記ドラグナー)
パイロット状況:上機嫌
機体状況:良好、弾薬を多少消費
第一行動方針:手ごま二人の信用を得る
第二行動方針:確実に勝てる相手以外との戦闘を避ける
最終行動方針:ゲームに乗って優勝】

備考:ヒイロは経歴を詐称しています(OZのパイロットと偽る)
   また九鬼に不信を抱いています。
   アスランもコーディネーターのことを伏せています


290 :それも名無しだ :sage :2006/07/16(日) 12:38:06 (p)ID:n57z1XQm(6)
>>289
【初日 16:00】


291 :戦場の帰趨 ◆ZimMbzaYEY :sage :2006/07/20(木) 00:44:23 (p)ID:h/Zw5G1v(5)
コックピットハッチを開き砂中に埋もれた機体から一人の男が顔を出す。周囲を見渡し敵がいないことを確認すると装甲の確認に入る。
いたるところに銃痕が散らばりあちらこちらにへこみが見えている。資材か何かあれば補強したほうがよさそうな感じではある。
だが先ほどチェックした内部システムと合わせてみて戦闘に問題はなさそうだった。
パチパチパチ・・・とスイッチが規則的に入り小気味いい音をたてていく。
「システム、異常なし。よし!ブラックゲッター、起動する」
黒いゲッターは再び起動する。その進路は東南東、目的地はG-6基地。
ふと喉が渇いていることに気づく。オートパイロットに切り替え支給品の袋に手をやり飲み物を取り出す。
そしてドリンクに口をつけた瞬間、視界が狭まっていく感覚に襲われた。
20分後、ゲッターは信じられない速度で駆け進んでいく。その内部、操縦席の足元に転がる空き缶。そこにはこう記載されていた。
『健康ドリンク 販売者:楠葉製造株式会社』と


「まったく補給ポイントってなどこにあるんだ?」
愚痴をこぼしながらモンシアは南下していた。仮に補給ポイントを見つけられなくともG-6地区の基地には何かしらの資材がおいてあるだろうとの算段での南下だ。
そのとき不意にレーダーが敵機の存在を捉える。
「なっ、レーダーに反」
「ゲッタートマホオオオオオォォォォォォク!!!」
ゲッタートマホークが飛来する。
「くそっ!はずした」
「うおっ!あぶねえ。あぶねえ。なんつー索敵範囲の狭さだ。」
それを間一髪でかわすとモンシアは距離をとり近づいてくる黒い機体を視認する。
そして、臍を噛み潰すように呟く
「まったく会いたいときには会えなくて会いたくないときに現れる。押してだめなら引いてみなってか?女かよ、お前は」
弾薬の損耗が激しい現在、戦闘はできることなら避けたかった
だが、先の戦いで見せた奴の機動力。小回りが利くのかどうかは不明だが撒くには少々厄介だ。それに奴程度の腕の相手なら不意をつけれなければ切り抜ける自信は十分にある。残弾数を一度確認する。
やるか―――




292 :戦場の帰趨 ◆ZimMbzaYEY :sage :2006/07/20(木) 00:45:02 (p)ID:h/Zw5G1v(5)
そう決めた瞬間にはもうマイクロミサイルを放っていた。最初に二発、相手の回避行動を見極めてもう二発。
最初の二発を交わした相手に次の二発が順調に命中する。その後も手を休めることなく相手に的確に攻撃を加えていく
「くっ!かわしきれない・・・何とか接近しないと。グッ!くそっ!!」
かわしきれない相手の攻撃にバーニィは翻弄されていく。気持ちに焦りが生じる。
その間も間断なくゲッターの装甲は火花を散らす。しかし、そのことごとくは装甲の表面で弾かれていた。その様子を見てモンシアは憎々しげに呟く
「チッ!予想通りやっかいな装甲だぜ」
(そろそろか?奴が遠距離戦の分の悪さに気づくのは・・・)
遠距離射撃からは致命傷を与えられないことは半ば予想通りだった。
残弾が多ければ話は別だがいつまでも雨あられと打ち込めない現状相手にそれなりの損傷を与えるためには零距離射撃しかなかった。
「くそっ!何故かわせない!!」
(これがMSならとっくに大破している状況だぞ・・・どうにか接近しないと・・・ん?大破??)
不意に機体の損傷が少ないことに気づき内部機器に目を走らせる。機体の損傷は・・・やはり少ない。
「この装甲の厚さなら」
覚悟を決めたそのとき二基のホーミング弾が着弾しゲッターは大きく揺らぎ周囲は爆煙に包まれた。
(さあ御膳立てはしてやった。据え膳食わぬは男の恥だぜ?)
牽制のバルカンを爆煙の中に撃ち込みながらレーダーに目をやる。ゲッターを示すレーダー上の点が急激に接近して来ていた。
「まったく決断が遅いんだよ・・・来な!」
黒い影が煙をさいて現れヘビーアームズに襲い掛かる。バーニィは雄叫びをあげた。
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「まずは足を止める・・・」
モンシアは落ち着き払ってゲッターの動きにあわせてダブルガトリングガンを放ち相手の回避に合わせて動けるように身構える。
ゲッターの装甲は火花を散らし次の瞬間ヘビーアームズはゲッターの体当たりを受け弾き飛ばされた。
「考えなしに突っ込んできやがって!この素人が!!」
愚痴をこぼしながら機体を起こし一瞥しただけで計器から損傷をすばやく確認すると敵の追撃に備える。自分が奴ならこれで終わりはしない。必ず追撃が来るということだ。
「クッ!逃がすかよおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」



293 :戦場の帰趨 ◆ZimMbzaYEY :sage :2006/07/20(木) 00:45:48 (p)ID:h/Zw5G1v(5)
相手は体当たり時の衝撃に顔をしかめながらも追撃を見舞おうと気迫とともに間合いを詰めてくる。
全身の血が沸き立つのを感じた。
ゲッターは間近に迫りトマホークを振り下ろす。それをモンシアは斜めに踏み込んでかわしつつ砲撃を浴びせ背後に抜ける。
そしてゲッターが横薙ぎにトマホークを振り払い振り返ったその瞬間を見計らい。胸部ガトリングとダブルガトリングガンの一斉に火を噴く。
その直撃を受けたゲッターは完全にバランスを崩され仰向けにひっくり返る形で地に崩れ落ちた。
「クソッ!まだ・・・」
「いや、チェックメイトだ。坊主、変な気起こすなよ。その重装甲、確かに強固だがコックピット直に打たれりゃ話は別だろ?」
起き上がろうとしたゲッターの鼻先に銃口が突きつけられ、胸部からその姿を覗かせているガトリングはゲッターの胴体を狙っていた。
接近戦に勝負をかけたバーニィであったが、両者の操縦技術には確たる差が存在していたといえる。勝敗は決した。


「だいたいお前さんは機体の扱・・・・」
なにやら相手のパイロットが自慢げにレクチャーを始めたらしいが、たいして耳に入ってこない。
全身から嫌な汗が一斉に吹きだしてくる。動いたら撃たれる。その恐怖がかろうじて気が動転しそうになるのをおさえつけていた。
「・・・常に全力で緩急がねぇ。緩急が。だから動作も大きくなってその隙を」
「どういうつもりだ?なぜ撃たない?」
「何、ちょいと情報収集したいだけだ。遺言ぐらいは聞いてやるぜ」
レクチャーは終わり、ここからは情報収集の時間だった。
「そうだな・・・。まずは所属と姓名から名乗ってもらおうか・・・」
「・・・・・・」
「どうした?別に俺はこのままさようならでもいいんだがな・・・」
「・・・ジオン軍サイクロプス隊所属・・・バーナード・ワイズマン伍長」
(ジオン・・・デラーズ・フリートの連中か・・・)
「まぁいい。ここに連れてこられた経緯は?」
「わからない。ガンダムとの交戦中から意識が途切れ・・・気づいたらここにいた」
その後、暫くの間ここで遭遇した他の機体の情報、首輪や主催者についてなどいくつかの質問をうけバーニィそれに答えていった。



294 :戦場の帰趨 ◆ZimMbzaYEY :sage :2006/07/20(木) 00:47:39 (p)ID:h/Zw5G1v(5)
「ハンマー持ちの赤い機体か・・・」
(わざわざこいつを生かしておくってことはゲームに乗った連中じゃなさそうだな・・・)
そして暫くの沈黙の後モンシアの口がひらく
「何か言い残すことはあるか?」
「・・・サイド6に・・・ジオンによる核攻撃があったかどうか教えてくれ・・・・・・」
「サイド6?おいおい。あそこは中立コロニーだろ?お前さんに何の関係が・・・」
「頼む・・・教えてくれ・・・」
相手の様子に眉をひそめるも自身の記憶を思い返してみる。そういえば表ざたにはなってないが軍のデータに何か残っていた気がする。たしか―――
「俺の記憶に残っているかぎりだがあの時の核攻撃は事前に防がれジオンの作戦は失敗に終わったはずだ」
通信機越しに相手が安堵のため息を吐くのが聞こえてきた。
「ありがとう・・・」
「さて、そろそろ・・・」
唐突に現実に引き戻され忘れかけていた自身の状況を思い出す。奥歯が噛み合わず音をたてる。
「さよならだ」
その最後の引き金がひかれる瞬間、目に何かが飛び込みバーニィは無我夢中でゲッターを動かす。そしてあらん限りの声を振り絞り叫んだ。
「ゲッタアアァァァビイイイィィィィィィム!!」
銃弾と閃光が交錯しあたりに爆音が響き渡る。弾丸は障害物に当たり火花を散らし、ゲッタービームは進路を阻むもの全てを抉り取りまっすぐ大空へ伸びていった。


G-6地区森林部に一機の人型機動兵器が別の一機を見下ろしただずんでいる。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハ・・・ハハ・・・やった。やったぞ!」
そのパイロットの息は荒く呼吸は落ち着かない。
一度相手の機体を確認する。右半身が吹き飛んでいる。動いていない。動くはずがない。
自然に笑いがこみあげてきた。強敵を打ち倒した充実感と高揚感に体が満たされる。
ついで機体のチェックを始める。山ほど撃ち込まれたせいか損傷がひどい。一度しっかりと整備をするべきだ。
ふと気づくと体の興奮は既に冷めていた。もう一度相手を見やる。
「戦場なんだ・・仕方ないだろ・・・。誰だってやらなきゃならないと思ったことをするだけなんだ・・・」
言い訳をするように呟くとゲッターは沈黙した敵機に背を向け基地へと歩き出した。



295 :戦場の帰趨 ◆ZimMbzaYEY :sage :2006/07/20(木) 00:48:55 (p)ID:h/Zw5G1v(5)
「詰めが・・・甘いな・・・」
大破したヘビーアームズのコックピットの中モンシアは生きていた。
しかし、その体は乗機同様抉り取られ血が溢れ出す。
どれほどの傷なのか。だがまだ死んではいない。死んでいなければ闘えるということだ。
相手はこちらの生存に気づいていない。隙だらけだ。今なら奴を落とせる。
最後の一撃を見舞うべく照準をゲッターの後頭部に合わせる。
ふっと、目の前の光景が遠のいていくような感じにモンシアは襲われた。
(クソッ・・・俺も・・・やきがまわったものだ・・・ぜ・・・)
ヘビーアームズの左腕からガトリングガンがまっすぐに伸びている。その照準はしっかりと目標を捉えパイロットの腕の良さを物語り、銃身は最後の出番を待ちわびる。
しかし、その最後の引き金がひかれるときは永遠にこなかった。





【バーナード・ワイズマン(機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争)
搭乗機体:ブラックゲッター(真(チェンジ!)ゲッターロボ 地球最後の日)
パイロット状況:頭部に軽い傷 
現在位置:G-6森林部
機体状態:装甲に多数のへこみ 戦闘に若干の支障(整備をおこなえば問題はない)
     マント損失 、エネルギーを3/4程度消費
 第一行動方針:G-6基地に移動し機体の整備と補給をおこなう
第二行動方針:ゲッターを使いこなす
最終行動方針:優勝する】


【ベルナルド・モンシア 搭乗機体:ガンダムヘビーアームズ改(新機動世紀ガンダムW〜Endless Waltz〜) 
パイロット状態:死亡(失血死)
現在位置:G-6森林部
機体状態:大破 右半身消失】


【初日 17:40】



296 : ◆ZimMbzaYEY :sage :2006/07/20(木) 20:30:01 ID:ke/055ty
>>291-295を破棄します


297 :戦場の帰趨(訂正版) ◆ZimMbzaYEY :sage :2006/07/23(日) 17:54:01 (p)ID:i0F80dly(7)
コックピットハッチを開き砂中に埋もれた機体から一人の男が顔を出す。周囲を見渡し敵がいないことを確認すると装甲の確認に入る。
いたるところに銃痕が散らばりあちらこちらにへこみが見えている。資材か何かあれば補強したほうがよさそうな感じではある。
だが先ほどチェックした内部システムと合わせてみて戦闘に問題はなさそうだった。
ただしEN残量には気を配る必要がありそうだ。
パチパチパチ・・・とスイッチが規則的に入り小気味いい音をたてていく。
「システム、異常なし。よし!ブラックゲッター、起動する」
黒いゲッターは再び起動する。その進路は東南東、目的地はG-6基地。
地中から姿をあらわしゲッターは行動を開始した。


「まったく補給ポイントってなどこにあるんだ?」
愚痴をこぼしながらモンシアは南下していた。仮に補給ポイントを見つけられなくともG-6地区の基地には何かしらの資材がおいてあるだろうとの算段での南下だ。
補給ポイント見つからないこと以外は順調。既にG-5地区まで移動し目の前には大きな川が流れている。
近くには橋も見当たらない。
「やれやれ・・・浅いといいんだがな・・・」
ため息をつくとヘビーアームズは川に入っていった。


E-5地区の橋を渡りF-5地区南東から森林に足を踏み込んだバーニィは川を越えてくるヘビーアームズを目撃する。
背中にヒヤッとしたものを感じたが相手の動きに変化はない。こちらのレーダーに反応がないことからおそらく相手のレーダーもこちらを捉えてないものと推し量れる。
大丈夫。まだ見つかってない。心を落ち着ける。
仕掛けるか?
先の戦闘と外見からさっするに相手は中・遠距離砲撃戦の機体。こちらは近距離格闘戦中心の機体。加えてさっきは近づくことすらできなかった。
ならばここはやりすごして逃げるか?
敵機の進路方向から推測するに目的地は一緒。おそらく目的も同じ補給だろう。戦闘痕も見て取れる。つまり相手も疲弊しているということだ。
ここでむざむざと相手に補給を譲って次に会うときこちらが不利になる必要はない。
仕掛けるべきか・・・仕掛けぬべきか・・・。仕掛けるべきだろうな―――
そう決めると川を渡り終えD-5地区へと向かっていく敵機の尾行を開始した。



298 :戦場の帰趨(訂正版) ◆ZimMbzaYEY :sage :2006/07/23(日) 17:55:49 (p)ID:i0F80dly(7)
ヘビーアームズが周囲の様子をうかがう。汗が頬を伝って滴り落ち、鼓動が早くなる。緊張が体を支配する。目標から・・・目が離せない。
(大丈夫、相手に不自然な動きはない・・・大丈夫)
(まだ見つかってない・・・平気だ・・・)
『大丈夫』『平気だ』と相手が周囲を気にするたびに何度も何度も自分に言い聞かせる。
尾行開始から約二十分。すでに森林は抜け二機はG-6基地内へ入り込んでいた。
建物の影に身を潜めレーダーに写らないように距離をとって目標を追っていく。身をかがめつつ用心深く建物の角を曲がると左前方に開けた土地と小型の箱のような装置が目に入った。補給ポイントだ。
一瞬気を取られたが急いで視線を標的に戻す。しかし、そこにいるはずの標的は姿を消していた。


「あぶねえ。あぶねえ。なんつー索敵範囲の狭さだ」
無数にある建物の陰に身を隠したヘビーアームズの中、モンシアは一人愚痴っていた。いつの間にか後ろにつかれていたことがどうにも気に食わない。
まぁ、それも気づいたからよしとすることにしてモンシアは今後の方針を自問する。
(さてと・・・どうしますかねっと、モンシアさんよぉ・・・)
決まっている。危ないストーカーさんにはご退場いただくのみである。
一度こちらを襲ってきた相手。戦闘開始前に通信をつなげ降伏を促す必要も気もなかった。
一度残弾を確認し相手の様子をうかがう。こちらを見失って若干慌てている様子が見て取れた。
はじめるか――
そう腹をくくった瞬間にはもうホーミングを放っていた。そして、相手の回避行動を見極めてガトリングガンの掃射を浴びせる。
その後も絶えず射撃ポイントを変えこちらの位置を悟られないようにしながら建物の影に隠れた敵を炙りだし誘導していく。
絶え間なくゲッターの装甲は火花を散らす。しかし、そのことごとくは装甲の表面で弾かれていた。その様子を見てモンシアは憎々しげに呟く。
「チッ!予想通りやっかいな装甲だぜ」
遠距離射撃からは致命傷を与えられないことは半ば予想通りだった。
残弾が多ければ話は別だが(戦闘後補給をおこなうことを前提としても)いつまでも雨あられと打ち込めない現状相手にそれなりの損傷を与えるためには零距離射撃しかなかった。
そのための接近の手段はもう考えている。
あとは仕掛けるときを待ちつつ敵を追い込むだけだった。



299 :戦場の帰趨(訂正版) ◆ZimMbzaYEY :sage :2006/07/23(日) 17:56:47 (p)ID:i0F80dly(7)
断続的な銃撃にさらされゲッターは翻弄されていた。しかも絶え間なく移動しているのか発射位置の特定も難しい。
しかし、これでいい。敵機は補給ポイントを探していた。それはつまり残弾かENの残量が少ないことを意味している。
補給ポイントを確認した今惜しみなく撃ち込んできている現在なるべく相手の残弾は減らしておきたかった。
それに逃げ回ってりゃそうそう死ぬこともないだろう。
とはいえ相手の技量は高く、決して少なくない量の弾をすでに浴びせられている。いかに強固なゲッターの装甲といえど金属疲労が起こり始めていた。
もう敵の残弾はもう十分に減らしたはずだ。それに前回のガトリングの射線から大雑把に相手の位置も把握できた。なによりこれ以上食らうのはゲッターといえど危ない。
仕掛ける―――
これまでの逃げの姿勢から一転、ゲッターのブーストをフル稼働させバーニィは突撃を開始した。
「ここで突撃だと・・・何考えて・・・。しまった!」
その動きから直感的に相手の意図を読み取ったモンシアもプランを短縮して勝負をかけることを決意する。
ここで出し惜しみしても意味はない。相手がうとうとしている手が決まる前に勝負をつける必要があった。
マイクロミサイルの残弾全てをゲッターの進路に広域散布しさらに残ったホーミング二基も撃ち込む。
ゲッターのレーダーが熱源反応に埋め尽くされる。
異常なほどの量のマイクロミサイルがゲッターとその周囲を破壊していくがゲッターはひるまず最大速度で駆け続けマイクロミサイルの雨を抜けた。
前方に標的を確認。あと200m・・・100m・・・・・・30、20、10、いまだ!
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
気合と共にトマホークを一閃。補給ポイントを破壊する。あとはこの戦域から一旦離脱するだけだ。
直後、警報がコックピット内に響き渡る。熱源反応が三つ、何かが背後から迫ってくる。
背中に悪寒が走る。ホーミングが爆煙を裂いてあらわれた。振り返りざま一基目をトマホークで切り払い続いて飛来する二基目を強引にかわす。
そして、その直後を狙って三基目の熱源―――ヘビーアームズの胸部ガトリングとダブルガトリングガンが至近距離で一斉に火を噴く。
その直撃を受けたゲッターは完全にバランスを崩され仰向けにひっくり返る形で地に崩れ落ちた。
「クソッ!まだ・・・」



300 :戦場の帰趨(訂正版) ◆ZimMbzaYEY :sage :2006/07/23(日) 17:57:46 (p)ID:i0F80dly(7)
「いや、チェックメイトだ。坊主、変な気起こすなよ。いくら固くてもコックピットを直に撃たれりゃ話は別だろ?」
オープンチャンネルをかいしてここで始めて通信が入る。
起き上がろうとしたゲッターの鼻先に銃口が突きつけられ、胸部からその姿を覗かせているガトリングはゲッターの胴体を狙っていた。
全身から嫌な汗が一斉に吹きだしてくる。動いたら撃たれる。その恐怖がかろうじて気が動転しそうになるのをおさえつけていた。
勝敗は決した。


今回、ベルナルド・モンシアがたてていた作戦は第一段階で敵を撒き姿を隠し、第二段階で敵を補給ポイントから離れるように誘導。
続く第三段階でマイクロミサイルを広域散布。第二段階の誘導はこのとき補給ポイントに損害を与えないためである。
そして最終段階で先ほどのマイクロミサイルと弾速を調整したホーミングの爆煙と熱源反応を隠れ蓑に接近、至近距離からの射撃で相手をしとめるというものであった。
対してバーナード・ワイズマンの策は第一段階でなるべく相手の残弾を削り、第二段階で補給ポイントを破壊。
第三段階でそのまま一時離脱しその後交戦と離脱を繰り返し相手を消耗させるというものである。
結果的にはモンシアは補給ポイントに急速接近をし始めたバーニィを確認して第二段階を切り上げ最終段階に移行。
バーニィを取り押さえるも補給ポイントは破壊されていしまうということとなった。両者の思惑の完遂率は共に50%といったところだろうか・・・。
そして現在、モンシアはゲッターを片足で踏みつけ銃口を鼻先に突きつけている。その状態のまま残弾チェックをおこなっていた。
「クソッ!・・・まったく憎憎しい小僧だぜ」
「どういうつもりだ?なぜ撃たない?」
「気は落ち着いたようだな・・・。何、ちょいと情報収集したいだけだ。遺言ぐらいは聞いてやるぜ」
ここからは情報収集の時間だった。
「そうだな・・・。まずは所属と姓名から名乗ってもらおうか・・・」
「・・・・・・」
「どうした?別に俺はこのままさようならでもいいんだがな・・・」
「・・・ジオン軍サイクロプス隊所属・・・バーナード・ワイズマン伍長」
(ジオン・・・デラーズ・フリートの連中か・・・)



301 :戦場の帰趨(訂正版) ◆ZimMbzaYEY :sage :2006/07/23(日) 17:58:38 (p)ID:i0F80dly(7)
「サイクロプス隊?聞いたことねぇな・・・ここに連れてこられた経緯は?」
「わからない。ガンダムとの交戦中から意識が途切れ・・・気づいたらここにいた」
その後、暫くの間ここで遭遇した他の機体の情報、首輪や主催者についてなどいくつかの質問をうけバーニィそれに答えていった。
「ハンマー持ちの赤い機体か・・・」
(わざわざこいつを生かしておくってことはゲームに乗った連中じゃなさそうだな・・・)
そして暫くの沈黙の後モンシアの口がひらく
「何か言い残すことはあるか?」
「・・・サイド6に・・・ジオンによる核攻撃があったかどうか教えてくれ・・・・・・」
「サイド6?おいおい、あそこは中立コロニーだろ?お前さんに何の関係が・・・」
「頼む・・・教えてくれ・・・」
相手の様子に眉をひそめるも自身の記憶を思い返してみる。そういえば一年戦争の末期にそんな作戦があったというのを軍のデータで見た気がする。たしか―――
「俺の記憶に残っているかぎりだが、そのジオンの作戦は失敗に終わったはずだ」
通信機越しに相手が安堵のため息を吐くのが聞こえてきた。
「ありがとう・・・」
「さて、そろそろ・・・」
唐突に現実に引き戻され忘れかけていた自身の状況を思い出す。奥歯が噛み合わず音をたてる。
「さよならだ」
(これで終わりなのか?いや、まだだ。まだ俺は全てのカードを切ったわけじゃない!!)
最後の引き金がひかれる瞬間、バーニィは無我夢中でゲッターを動かす。そしてあらん限りの声を振り絞り叫んだ。
「ゲッタアアァァァビイイイィィィィィィム!!」
銃弾と閃光が交錯しあたりに爆音が響き渡る。弾丸は障害物に当たり火花を散らし、ゲッタービームは進路を阻むもの全てを抉り取りまっすぐ大空へ伸びていった。



302 :戦場の帰趨(訂正版) ◆ZimMbzaYEY :sage :2006/07/23(日) 17:59:34 (p)ID:i0F80dly(7)
G-6地区森林部に一機の人型機動兵器が別の一機を見下ろしただずんでいる。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハ・・・ハハ・・・やった。やったぞ!」
そのパイロットの息は荒く呼吸は落ち着かない。
一度相手の機体を確認する。右半身が吹き飛んでいる。動いていない。動くはずがない。
自然に笑いがこみあげてきた。強敵を打ち倒した充実感と高揚感に体が満たされる。
ついで機体のチェックを始める。山ほど撃ち込まれたせいか損傷がひどい。なかでも頭部は最後の一撃で前面の右側にヒビが生じている。一度しっかりと整備をするべきだ。
ふと気づくと体の興奮は既に冷めていた。もう一度相手を見やる。
決意を固め参加者を殺すことに迷いはない。しかし、いざ人を殺して見るとやはり心のどこかに割り切れないものがあるのを感じる。こればっかりは慣れるしかなかった。
「戦場なんだ・・仕方ないだろ・・・。誰だってやらなきゃならないと思ったことをするだけなんだ・・・」
言い訳をするように呟くとゲッターは沈黙した敵機からピエロの仮面を剥ぎ取りヒビの入った箇所にあてがうと背を向け整備可能な場所を探しに歩き出した。


「詰めが・・・甘いな・・・」
大破したヘビーアームズのコックピットの中モンシアは生きていた。
しかし、その体から血が溢れ出し滴り落ちシートを瞬く間に染め上げていく。
(不死身の第四小隊が・・聞いて・・・あきれるぜ・・・)
どれほどの傷なのか。だがまだ死んではいない。死んでいなければ闘えるということだ。
傷口の周辺を縛り上げ止血をおこなう。
(まったく・・詰めが甘い・・・やつも・・・・・俺も・・・な・・・)
ふっと、目の前の光景が遠のいていくような感じにモンシアは襲われた。


【バーナード・ワイズマン(機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争)
搭乗機体:ブラックゲッター(真(チェンジ!)ゲッターロボ 地球最後の日)
パイロット状況:頭部に軽い傷 
現在位置:G-6基地
機体状態:装甲に多数のへこみ 戦闘に若干の支障(整備をおこなえば問題はない)
     マント損失 、エネルギーを3/4程度消費
 第一行動方針:機体の整備をおこなう
第二行動方針:ゲッターを使いこなす
最終行動方針:優勝する
備考:頭部に生じているヒビをヘビーアームズのピエロの仮面で隠している】



303 :戦場の帰趨(訂正版) ◆ZimMbzaYEY :sage :2006/07/23(日) 18:00:25 (p)ID:i0F80dly(7)
【ベルナルド・モンシア (機動戦士ガンダム0083 Stardust Memory)
搭乗機体:ガンダムヘビーアームズ改(新機動世紀ガンダムW〜Endless Waltz〜) 
パイロット状態:気絶中 
負傷(負傷の度合いに関しては次の書き手の方にお任せします)
現在位置:G-6基地
機体状態:大破(運用不能)
第一行動方針:傷口の手当て
第二行動方針:機体を手に入れる
最終行動方針:???】


【初日 17:40】



304 : ◆ZimMbzaYEY :sage :2006/07/25(火) 20:22:09 ID:s0cKJRHf
一部訂正失礼します
>>300
訂正前
「クソッ!・・・まったく憎憎しい小僧だぜ」
「どういうつもりだ?なぜ撃たない?」
訂正後
「クソッ!・・・まったく憎々しい小僧だぜ」
「・・・・・・どういうつもりだ?なぜ撃たない?」

>>302
訂正前
G-6地区森林部に一機の人型機動兵器が別の一機を見下ろしただずんでいる。
訂正後
G-6基地の廃墟と化した一角に一機の人型機動兵器が別の一機を見下ろしただずんでいる。