19話 「花言葉は「勇敢」」 ◆6.x14AMM0o
「アインストだかなんだかしらねえが、こんな事許せるかよっ!」
一人だけの艦橋で少年―兜甲児―が叫ぶ。
Drヘルとの一年以上にも及ぶ戦いを終え、彼はアメリカへの留学直前にこの殺し合いの場に連れてこられた。
あの部屋での記憶を蘇らせば、ふつふつとこの理不尽なゲームに怒りがこみ上げる。
Drヘルの一味でさえもあそこまで残酷な仕打ちはしなかったはずだ。
今すぐにでも、このゲームを打ち壊しあの化け物を倒しにいきたかった。
だが支給された機体、いや戦艦であるナデシコ級一番艦「ナデシコ」ではその巨躯からして、身動きがとりにくい。
そしてこのナデシコを動かす上で兜甲児に決定的に足りなかったものがある。
それはIFSと呼ばれるナノマシンを体内に注入し自分の意思をダイレクトに機体に伝える為のシステムである。
当然、ナデシコの存在した世界とは異なる世界の住人である甲児がIFSを持っているはずが無かった。
もどかしさを感じながらもどうする事も出来ず、コンソールに右手を置く。
すると今まで感じた事の無い感覚が全身に伝わる。
右手には見たことのない模様が浮かび、ナデシコの様々な部分から動き始めた音が聞こえる。
「こいつが、IFSって奴なのか・・・でもいつの間に。」
連れ去られた間に体をいじられたのかと思うといい気持ちはしない。
だが、おかげでどうやら操縦する事はできそうだ。
しかし、まだ問題は残る。
戦艦はマジンガーの様にパイロット一人がいれば良いというものではない。
オペレーター、通信士、操縦士など、様々な人間が居ることではじめて成り立つのである。
だが、「オモイカネ」と呼ばれるコンピューターが使用できればそれもどうにかなるはずである。
「オモイカネ、俺に力を貸してくれ!」
IFSというなれない操作方法にぎこちないながらもオモイカネに語りかける。
だがオモイカネからの返答は一切無い。
本来、正規クルーではない甲児に不審を抱いているのかオモイカネは沈黙を続けるだけである。
「お願いだ!俺はこのゲームに乗っているわけじゃない!どうにかして止めたいんだ!
だから、どうしてもお前の力が必要なんだ!オモイカネ!」
構わず、甲児はオモイカネに伝え続ける。
殺し合いを止めたいと言う熱い勇敢な意思を。
数秒の沈黙の後、ナデシコが浮上する。
「答えてくれたのか、オモイカネ。・・・へへっ、これからよろしくな相棒!」
―花言葉は勇敢、その通りの思いを乗せナデシコは動き出す―
【兜甲児 搭乗機体:ナデシコ(機動戦艦ナデシコ)
パイロット状況:良好、少し興奮気味
機体状況:良好
現在位置:D-3
第一行動方針:ゲームを止める為に仲間を集める。
最終行動方針:アインスト達を倒す】
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