20話  「……ぶっちゃけ、すっげー恥ずかしかった。」  ◆ZbL7QonnV.


 ゲームの開始から、およそ二時間。
 カテゴリーFの共感能力によって互いの位置を確認したフロスト兄弟は、背中を預けられる人間同士合流すべきとの結論に辿り着き、
 互いの情報を交換しながら機体を移動させていた。
 彼らの目的はただ一つ、兄弟揃って生き延びる事。
 故に、この殺し合いに乗る事は出来ない。兄弟の片方を殺して生き延びるなど、彼らに出来る訳がなかった。
 兄弟揃って生き延びるには、このゲームを壊すしかない。
 その為にはまず、自分達の意に添わない人間の排除、そして首輪の解除である。
 そう結論付けた兄弟は、まずは自分達の戦力を確認すべく、合流後機体の慣らしを行っていたのだが……。

「に、兄さん……本当にやるのかい?」
「当たり前だ、オルバ。まずは機体の性能を確かめん事には、動き様が無いからな」
「だ、だけど……なんて言うのかな、これはちょっと……」
「恥ずかしがっている場合か、オルバ!」
「に、兄さん……」
「……お前の気持ちは分からなくもない。だが、この状況で生き残る為に手段を選んではいられない」
「それは……そう、だけど……」
「何の因果か我ら兄弟、対になる機体を与えられた。そして、単体での性能は既に確認した。
 ならば次は、我々に支給された機体の真なる力……それをこの目で確かめん事にはどうにもならん」
「で、でもさあ、ちょっとこれは……」

 兄に対して絶対の信頼を置く彼にしては珍しく、オルバはシャギアの言葉に言いよどむ。
 互いの状況を確認する事によって、二人は自分達に与えられた機体が二機揃ってこそ真の力を発揮出来る事を知った。
 ……だが、何と言えば良いのだろうか。
 オルバ・フロストは“それ”を使う事に、そのキーワードを言う事に、妙な気恥ずかしさを感じざるを得なかったのだ。
 まあ兄の方はと言えば、真顔で“私の愛馬は凶暴です”等と言う台詞を吐ける男である。
 こっぱずかしい台詞を吐かせるのならば、自分の遙か上を行く。
(そういう彼にしてみても“愛しています、殺したいほど……”とかは相当に恥ずい台詞だと思うが)
 オルバが感じている気恥ずかしさなど、だからこそ全く感じていない様子だった。
 だが、自分は……。

「ええい、オルバよ! 悩むな、躊躇うな! さあ、私と一緒に――」
「っ――――!」
 途惑いを見せる弟に、シャギアは力強い声で言う。
 そうなると、強い態度で出られると兄に逆らえないのが弟である。
 そんな弟の悲しい習性が、オルバの身体を突き動かし――
 その“キーワード”を、とうとう叫ばせてしまっていた!



『――ガドル・ヴァイクラン!!!!』

 ……ぶっちゃけ、すっげー恥ずかしかった。



【シャギア・フロスト 搭乗機体:ヴァイクラン(第3次スーパーロボット大戦〜終焉の銀河へ〜)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:C-3
 第1行動方針:意に添わない人間の排除
 第2行動方針:首輪の解析及び解除
 最終行動方針:オルバと共に生き残る(自分達以外はどうなろうと知った事ではない)
 備考:ガドル・ヴァイクランに合体可能(かなりノリノリ)】

【オルバ・フロスト 搭乗機体:ディバリウム(第3次スーパーロボット大戦〜終焉の銀河へ〜)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好
 現在位置:C-3
 第1行動方針:意に添わない人間の排除
 第2行動方針:首輪の解析及び解除
 最終行動方針:シャギアと共に生き残る(自分達以外はどうなろうと知った事ではない)
 備考:ガドル・ヴァイクランに合体可能(かなり恥ずかしい)】

【初日 14:00】


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