25話 「心に、悪魔宿りて」 ◆YmyLBuF3ag
「やっぱり見渡す限りこの世界が広がるだけ…か。簡単には逃がさないって訳だ」
あたりを森に囲まれた都市の一角。高層ビルの屋上に赤い人影が一つ。
「変身しても首輪はついたままか。いまいましいね」
人影は喉元に手をやり呟いた。
これで自分が死ぬかは分からないが、命をかけて確かめる気にはならなかった。
とりあえずあたりの様子を確かめ終えたのか、人影はひょいとフェンスを乗り越え……あろうことか高層ビルから飛び降りた。
何事もなかったかのように着地した赤い人影…テッカマンエビルは、
地面に横たわる黒い巨体に近づき、その機体に乗り込んだ。
「ふふ、モビルスーツ、か。思ったよりおもしろいおもちゃみたいだね」
操縦のため人間形態になった相羽シンヤは、与えられた記憶を確認しコクピットの中で独りごちる。
「人間どもを全滅させるだけなら僕の力だけでも十分だろうけど、わざわざ探すのも面倒くさいからね。
このデカブツなら向こうからやってきてくれるだろう。早くこんなゲームは終わらせて、タカヤ兄さんとの決着をつけにいかないとね」
ここにはいない宿敵に想いを募らせるシンヤ。
彼は、このゲームを兄との勝負の障害程度にしか考えていないようである。
「それじゃ人間どもをたたきつぶしにいこうか。この木偶と僕の力ならたやすいことだからね」
シンヤは胸にしまったクリスタルをなぜながらそうつぶやいた。
その言葉には全く妥協の余地はなく、その双眸にはなんの躊躇も見られない。
かつて一人の少女を狂わせたその機体は、赤い悪魔を身に宿し、今、ゆるやかに巨躯を震わせ始めた……。
【相羽シンヤ 搭乗機体:サイコガンダム(機動戦士Ζガンダム)
パイロット状況:良好、変身可能(今は人間形態:テッカマン形態では操縦しにくい)
機体状況:良好
現在位置:G-6
第一行動方針:他の参加者を全滅させる
最終行動方針:元の世界に帰る】
【時刻 12:45】
(備考:ブラスター化前。エビル初登場の少し後くらいの想定です)
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