40話 「黄色い幻影」 ◆caxMcNfNrg
青く澄んだ・・・殺し合いという名のゲームが行われている思えないほど、澄みきった空の下。
静寂に包まれた森の中を、周囲の木々と同じ緑を基調とした機体が南方へと進んでいる。
「くそっ!はやく・・・はやく、帰らなきゃいけないのに・・・」
その機体、アルトロンガンダムの内部を埋め尽くすのは、少年の焦りにも似た呟き。
この機体に乗り込んで数十分。綾人は未だ、狩るべき他の参加者を見つけられずにいた。
「・・・朝比奈が待ってるのに・・・なんで、誰も出てこないんだよ!」
絶え間ない苛立ちを押さえつつ、レーダーとモニターの間で視線をせわしなく動かす。
(探し方が悪いのか?・・・くそ、どうすりゃいいんだ?・・・いっその事、森に火でも点けて・・・)
そこまで考えたときだった。綾人の視界の端を、森の色とは違う原色がかすめる。
モニターの隅を横切ったものに、綾人は慌てて視線を向ける・・・
しかし、そこに参加者らしき姿は・・・黄色い何かは無い。
「気のせい、だよな」
人のように・・・知り合いの少女のように見えた『それ』が存在していない事を確認すると、
綾人はパイロットシートに背を預け、ふっと溜息をついた。
どうやら、必要以上に過敏になっていたようだ。
もう一度、深呼吸をして、改めてモニターに目を移す・・・
そして、綾人は木々の向こうに、ビル街らしきものを見つけた。
「街か・・・あそこなら、人がいるかもしれないな」
そう小さく呟いて、綾人は機体を南東へと向けた。
【神名綾人(ラーゼフォン)
搭乗機体:アルトロンガンダム(新機動戦士ガンダムW
Endless
Waltz)
現在位置:B-5森林地帯
パイロット状態:健康
機体状態:良好
第一行動方針:南東に見える街へ向かう
第二行動方針:帰るために他の参加者を探し、殺す。
最終行動方針:ゲームに乗る。最後まで生き残り、元の世界へ帰る】
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