106話B「大いなる誤解」
◆C0vluWr0so


「……と、ここまでが俺の今までの行動だ。俺は……風の魔装機神の操者として、サイバスターを追わなくちゃいけない。
 そして……あの恐竜野郎もぶっ倒す!」

 武蔵の協力で、未だ眠り続ける少女をJアークの中へと運び込んだマサキは今までの道程とこれからの目的についてキラたちに話していた。
 カズイ、ゼクス、カミーユとの出会い、そして自らの相棒サイバスターとの遭遇。
 サイバスターを追って単身で探索を続け、その途中でこの少女を発見したこと。
 そして……少女を襲ったと見られる恐竜の姿をした機体。

「そいつは……無敵戦艦ダイだ。おいらが元居た世界での敵で、かなりの力を持っている」

 マサキの語る機体の特徴に武蔵が反応する。
 と、それと同時に――

「ン、ううん……。あれ? ここはどこなの?」

 ようやく少女が目を覚ました。
 純朴そうな瞳が一同を見渡す。その表情からは明らかな戸惑いが見られた。

「あなたたち……誰? ここはどこなの? ……ッ、痛っ!」

 立ち上がろうとした少女は尻餅をつく。骨折の激痛が少女の顔を苦悶で彩っていた。

「お、おい無茶するな! 骨折してんだぞ!
 安心してくれ、俺たちはお前を襲おうなんて思っちゃいないぜ」

 慌ててマサキが少女のもとへと駆け寄り、その肩を抱く。

「あなた……その言葉、信用していいの?」
「嘘なんかつくつもりはないぜ。信じてくれ……としか言えないけどな。お前名前は? 俺はマサキ、マサキ・アンドーだ」
「……ソシエ・ハイムよ。ソシエでいいわ。マサキ……あなたの言うこと、確かに嘘じゃないわね。
 もしあたしを襲う気なら気絶してる間にいくらでもチャンスはあったわけだし。
 なら、教えてちょうだい。あたしはなんでこんなところにいるの?」
「……もう一度説明、か。話すのはあんまり得意じゃないんだけどな……」
「仕方ないニャマサキ」
「……え? あれ? もしかして今、このネコ……」
「どうもはじめましてだニャ、ソシエ。アタシたちはクロとシロ。二人揃ってマサキの使い魔だニャ」
「えええええええ!? な、何なのこれ……!? ネコが喋るなんて非常識もいいとこじゃない!」
「あー分かった……。そこらへん含めてもう一回説明だな」

 で、かくかくしかじか……。
 マサキの説明を聞いたソシエはようやく納得の表情を浮かべる。

「そしたらマサキがあたしを助けてくれたってこと?
 ありがとう。おかげでどうにか生きてられたみたいだし、いくら感謝してもしきれないわね。
 それでこの子たち、あなたのしもべってわけかしら」
「しもべ……確かにそうニャんだけど……」
「はっきり言われるのはニャんだか複雑な気分ニャ……」
「あら、いいじゃない。あなたたち可愛いし」

「ま、まぁこいつらのことは置いといてだ……。ソシエ、お前はどうして機体にも乗らずにあんなところにいたんだ?」
「そうね、話せば長くなるんだけど……かいつまんで話せば襲われて機体が壊れてどうしようもなくなったから外に出たの。
 そしたらあの恐竜……無敵戦艦ダイだっけ? あれに攻撃されたみたい。
 情けないことだけどすぐに気絶しちゃったから、あまり詳しくは分からないんだけどね」

「やっぱりここでもダイはおいらたちの敵なのか……クソッ!」

 倒すべき宿敵――ダイの暴挙を聞いた武蔵は怒りに拳を震わせる。
 その目は今にも燃え出しそうな憤怒ではち切れんばかりだった。

「キラ……おいらたちでダイを倒せないか?
 隣のエリアにはテニアの仲間の遺してくれた機体が無傷のまま残ってる。
 マサキにも協力してもらって4機で攻めればいくらダイでも……。
 いや、おいらはやっぱり一人でもダイを倒しにいく。それがゲッターチームの一員としての……おいらの義務だ」
「……武蔵、その機体ってのはどこにあるんだ? 俺も手伝うぜ。あいつを野放しに出来ないのは俺も同じだからな」
「マサキ……! いいのか? ダイの恐ろしさは……直接戦ったおいらにはよく分かる。下手をすれば……」
「関係ないぜ。俺も武蔵と思いは同じだ。これ以上……傷つく人間を増やすわけにはいかねえ!」

 ダイを倒す――! その目的に武蔵だけでなくマサキも賛同する。
 そして勇気を心に秘め持つ少年もまた――

「……トモロ、Jアークの残りの武装を確認してくれ」
『キラ……』
「僕も……僕も願いは同じだから。誓ったんだ。一人でも多くの人を助けるって。だから……」
『……Jアークの武装は現在80%まで回復している。持久戦にでもならない限り戦闘を行うには十分な数値だ』
「分かった。それなら大丈夫だね。武蔵さん、マサキさん。僕も……戦います。一人でも多くの命を助けるために」

 キラもまた、名乗りを上げる。

「みんな行くんなら……アタシだけ行かないわけにもいかないよね」
「テニア……! でももし……」
「その時は武蔵たちが守ってくれるんでしょ? ……大丈夫。やれるよ」
「もちろんあたしもついていくわよ! そりゃ操縦はこの足じゃちょっと難しいけど……
 でも出来る限りで手伝うわ。あたしだってあの恐竜にはお返ししなきゃと思ってたところだしね」

 そして少女たちもまた……。

 ◆

 ここに竜を討たんとする者たちが五人。
 竜――無敵戦艦ダイとの戦いは熾烈を極め、穿たれる傷も数多くなることだろう。

 しかし、本当に最悪なのは……。
 彼らが大きな誤解をしていたこと。
 一人の少女を除いて彼らの願いは同じもの。
 それすなわち『この場からの脱出』。
 彼らは知らない。彼らの思う敵もまた――同じ目的のもと動く同志だということを。



【共通認識】
・無敵戦艦ダイ、およびそのパイロットを危険だと判断。
・D-6に放置されたVF22S・Sボーゲル2Fを回収次第ダイへと攻撃予定。

【キラ・ヤマト 搭乗機体:Jアーク(勇者王ガオガイガー)
 パイロット状態:良好・ジョナサンへの不信
 機体状態:ジェイダーへの変形は可能?・左舷損傷軽微良好(補給修復開始)
      EN、弾薬共に80%まで回復
 現在位置:C-6
 第一行動方針:ダイを倒す
 第二行動方針:テニアがもしもゲームに乗っていた場合、彼女への処遇
 第三行動方針:このゲームに乗っていない人たちを集める
 最終行動方針:ノイ=レジセイアの撃破、そして脱出】
 備考:Jアークは補給ポイントでの補給不可、毎時当たり若干回復。】


【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)
 パイロット状況:非常に不安定
 機体状況:良好・マニピュレーターに血が微かについている・ガンポッドを装備
 現在位置:C-6
 第一行動方針:どのように行動を取ればうまく周りを騙せるか考察中
 第二行動方針:とりあえずキラ達についていく
 第三行動方針:参加者の殺害
 最終行動方針:優勝
 備考1:武蔵・キラ・マサキ・ソシエ、いずれ殺す気です
 備考2:首輪を所持】


【巴武蔵 搭乗機体:RX-78ガンダム(機動戦士ガンダム)
 パイロット状態:カラ元気でも元気、ダイに対する激しい怒り
 機体状況:良好・オプションとしてハイパーハンマーを装備・反応弾を所持
 現在位置:C-6
 第一行動方針:ダイを倒す
 第二行動方針:統夜を探しテニアを守る
 第三行動方針:信頼できる仲間を集める
 最終行動方針:主催者を倒しゲームを止める
 備考1:テニアのことはほとんど警戒していません
 備考2:キラと行動を共にする場合は反応弾を彼に任せてもいいと思っています。】


【マサキ・アンドー 搭乗機体:無し
 パイロット状況:良好、シロとクロも健康
 機体状況:
 現在位置:C-6
 第一行動方針:ダイを倒す
 第二行動方針:サイバスターを追いたい
 第三行動方針:サイバスターを邪悪な者には渡さない
 第四行動方針:味方を集める
 最終行動方針:ゲームからの脱出またはゲームの破壊
 備考:謎の小石はクロが銜えています。
     地下道はマサキ達が確認できている範囲では一本道です】


【ソシエ・ハイム 搭乗機体:無し
 パイロット状況:右足を骨折、気力回復
 機体状況:
 現在位置:C-6
 第一行動方針:ダイを倒す
 第二行動方針:新しい機体が欲しい
 第三行動方針:仲間を集める
 最終行動方針:主催者を倒す
 備考:右足は応急手当済み】

※百式(機動戦士Ζガンダム)
 機体状況:外見がボロボロ、機体各部の装甲や駆動系にダメージ
      修理をしなければ稼働不可

 がC-6エリアに乗り捨てられています。

【初日 21:30】


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