13話「若い、黒い、脅威」
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「ったく、面倒なことに巻き込まれちまったなぁ……」
コクピットに付きながら、ベルナルド=モンシアは一人途方にくれていた。
いきなりの殺し合い開幕宣言。戦争ではない、敵しかいない戦場。
友軍機は存在せず、他の『死の第四小隊』メンバーも不在だ。
「敵が全員ジオンの奴らってんなら話は早いんだが……ん?」
どうするべきかとモンシアが思案していた最中に、さっそく敵影反応が。
「一直線に俺に向かって来てるてことは……どうやら殺る気みてぇだな」
徐々に視覚でも確認できるようになってきた。その『黒い何か』は、モンシアの機体目掛けて一直線に伸びてくる。
そのスピードは正に疾風――モビルスーツでもこれだけの運動性を発揮できる機体は中々ない。
「速いじゃねぇか。だがよぉ……どうにも動きが直線的過ぎるぜ。パイロットは若造か?」
向かってくる変動性のない動きから、モンシアは敵機のパイロットを経験にかける素人と判断した。
機体に頼りきっただけのスピード。よほど強力な武装でもしているのだろう。そうでなければ、こんな馬鹿な直進はありえない。
「しっかし、まさかこの俺がガンダムを動かすことになるとはな」
敵はこちらに攻撃を仕掛けてくるつもりだろう。あまりにも好戦的な直進をしている。
無駄に命は狩りたくないが、自分自身も死ぬつもりはない。
ならば――戦ってやろうじゃねぇか。
モンシアは熟練パイロットを思わせる手付きでその支給機体――ガンダムヘビーアームズ改を起動した。
迫る黒い機体、その姿を知る者は、それを『ブラックゲッター』と呼んだ。
漆黒のボディに備え付けられたマントは、巻き起こる風により轟音を生み出す。
ブラックゲッターの腕には取り付けられた刃は、目の前の標的を狙っていた。
見たところガンダムタイプ……連邦のモノだろうか?
詳細は知る由もないが、今は殺し合いの真っ最中なのだ。例え相手がガンダムだろうがザクだろうが、やらねばならない。
「――殺し合いを、するんだ」
バーナード=ワイズマンは、既に決めていた。
この殺し合いにおける、成すべきことを。
「――全部殺して、生き残る」
だから、バーニィはゲッターの力を借りた。
「――うわあああああ!」
がむしゃらに突進し、目の前のガンダムに斬りかかる。
戦法など思いつかなかった。ただ、この強力すぎるゲッターの力を信じて。
直進するブラックゲッターに、無数のミサイルが襲い掛かる。
全身が武器の塊であるヘビーアームズ改の特長を生かし、モンシアは惜しみなく攻撃を浴びせた。が、
「くそっ、けっこうやるじゃねぇか!!」
ブラックゲッターの動きは確かに直線的ではあったが、そのスピードは並大抵のモビルスーツでは追いつけない。
「一匹目から無駄遣いはしたくねぇんだがよ……くらいやがれェェ!!!」
それでも、ヘビーアームズ改が誇る重装備はさすがのものだった。
襲い掛かるは、上下左右前方後方全ての位置から降り注ぐホーミングミサイル。
「!」
気づいた時に既に遅し――逃げ場は、なかった。
爆炎が、黒いゲッターを包む。
「……逃げやがったか?」
ミサイルが命中した瞬間、モンシアは勝利を確信した。
だが、爆煙が収まりその場に残されたのは――漆黒のマントのみだった。
跡形もなく消し飛んだと思えなくもないが、辺りに残骸が散らばっていないのはおかしい。
爆煙に紛れて逃げたと思うのが、一番自然だ。
しかし、放ったミサイルは間違いなく命中した。
何発命中したかは知らないが、無傷であるはずはあるまい。でなければ逃げる理由がない。
あの機体の耐久力がどれほどのものかは知らないが、それでもそう遠くには行っていないはず。
「野放しにしたままってのは危険だな……ああいう輩はさっさと始末しとくにかぎるぜ」
モンシアは、名も知らぬ標的を追う。
殺し合いに乗る気はないが、殺されてやる義理もない。
襲撃に失敗したバーニィは、酷く焦っていた。
「――クソッ」
一言だけ漏らす。今は、独り言を吐く余裕もない。
突然参加を強制させられた殺し合い。齎されたザクを越える機体。
「――生き残ってやる」
バーニィは、漆黒のゲッターに勝利を願った。
生きるためには、殺すしかない。そのためにゲッターの力を。
先の戦闘でブラックゲッターのスペックは分かった。どうやらザク以上に一筋縄ではいかないらしい。
しかし、その分備わった力は強大だ。何しろあれだけのミサイルを受けきって、なおも健在なのだから。
この力をうまく使いこなせれば、きっとガンダムにも勝てる。
バーニィは、ゲッターに勝利を願った。
【ベルナルド・モンシア(機動戦士ガンダム0083
STARDUST MEMORY)
搭乗機体:ガンダムヘビーアームズ改(新機動世紀ガンダムW〜Endless
Waltz〜)
現在位置:H−3
パイロット状態:良好
機体状態:ホーミングミサイル弾数1/2消費
第一行動方針:黒い機体(ブラックゲッター)を追撃する。
最終行動方針:未定】
【バーナード・ワイズマン(機動戦士ガンダム0080
ポケットの中の戦争)
搭乗機体:ブラックゲッター(真(チェンジ!)ゲッターロボ
地球最後の日)
現在位置:H−4
パイロット状態:軽い疲労
機体状態:損傷軽微 マント損失
第一行動方針:ブラックゲッターを使いこなす
最終行動方針:優勝する】
【初日:13:00】
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