143話C「戦いの矢」
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「……ガロード、少し先に行っていてくれないか」
「また、急に何を言い出すんだよ、アムロさん!?」
「急なバイオ・コンピュータの負荷で、少しオーバーロードを起こしたようだ。
 すぐに追いつくから、先に行っていてくれ」

光の線の直下へ向けて進軍していたアムロがF-91の不調を訴える。

「この急ぎにどうしたっていうんだよ、急がなきゃお姉さんたちが手遅れになっちまう!」
「だからこそだ。治るのを待てば、そうなるかもしれない。
ガロードが向こうに今すぐ合流する。俺は直ったらすぐに追いつく」

焦るガロードに対して、とにかく冷静なアムロ。
小さくいらだつ調子でガロードはほんの数秒考えると、早口にしゃべりだした。

「わかった! でも、無理と思ったら動かないでくれよ、迎えに来るからさ!」
「……ああ、必ずまた合流しよう」

それだけ言い残して、飛んでいくガロード。
本当に焦っているのだろう。アムロの返事も待たず行ってしまった。


「……生きろよ、ガロード。お前のような人間がいれば、きっと世界は変わっていける。だから、振り向くな」

アムロの、小さなつぶやき。
F-91のエンジンがうなりをあげて、一気に戦闘出力まで上がっていく。
ニュータイプを有したことによって、キラでも、ジョナサンでも、ガロードでもできなかったF-91の最大の戦闘力が引き出される。
フェイスマスクがオープンされ、金色の粒子を振りまく姿は、夜の暗闇の中蛍のように輝いていた。

……その姿に、なんの不調もない。

「……そろそろ出てきたらどうだ?」

何もない暗いビルの闇に、アムロが語りかける。
ただ、闇が広がるだけの空間に、答える声があるはずも――――

「ほぉー……最初から気付いてたみたいだな、あんた」

下卑た男の声が、ゴーストタウンのビル壁面に反響しながら聞こえてきた。
闇から浮かび上がるのは、漆黒の――またも見たことがないガンダムタイプのMS。

「……いくら、気配とプレッシャーを消しても、その塊みたいな悪意ならどこでも分かるさ」
「ハハッ、悪意の塊とは言ってくれるな。そういうオタクはエスパーか何か、か?」
「違うさ……ただの人間だ」

アムロの不敵な声に、ガウルンは上機嫌に笑い出す。

「こりゃいいな! 最初からヤル気満々ってわけだ。
 打ち上げ花火に誘われてみりゃ、祭りばやしに誘われて……ってわけだ。
 なんなら、2対1でもよかったんだぜ?」
「悪いがそういうわけにはいかなかったんだ」

小さく、アムロが頭を振る。
この行動は、すべてアムロが考えた上で行ったことだ。

アムロには、このエリアのほぼすべてが理解できていた。
だから、真・ゲッターが逃げていることも、気配の動きから読み取ることができた。
相手の奇襲を受けて、逃げているのであれば、一刻も早く援軍と到着させることが重要だ。

だが、それも不安材料がなければの話。
異常なほどの悪意を放って自分の跡をつけてくる死の猟犬の臭気。
それも、はっきりと混乱や戦争を望む、最悪のものだ。
これを、放っておくわけにはいかない。
自分たちが仲間と合流し、さらに仲間を追って戦いに乗った人間が襲ってくる、そんな混乱の真っただ中……
間違いなくこの存在は仕掛けてくる。
その確信。

合流相手には、助けるために面識のあるガロードを向かわせた。

ゆえに、アムロはここで仕掛ける。
決して、混乱の中、手を出させない。混乱の場に、向かわせない。
これ以上、他人を傷つけさせない。

害意をむき出しにし、他者を傷つける存在………その後顧の憂いは、ここで断つ!
そして、決してシャアのときの失敗は繰り返さない! 必ず合流する!

「ガンダムF-91、出る!」

闇に溶ける黒と、闇を弾く白が交錯する。



【アムロ・レイ 搭乗機体:ガンダムF−91( 機動戦士ガンダムF−91)
 パイロット状況:決意、F-91によるニュータイプ能力の意識拡大、気力170
 機体状態:微細な傷(戦闘に支障なし)
 現在位置:C-8
 第一行動方針:ガウルンを撃破する。
 第二行動方針:ガロードの仲間と合流し、情報交換を行う
 第三行動方針:アイビスの捜索
 第四行動方針:協力者の探索
 第五行動方針:首輪解除のための施設、道具の発見
 最終行動方針:ゲームからの脱出
 備考:ボールペン(赤、黒)を上着の胸ポケットに挿している
    シャアの死亡を悟っています
    首輪(エイジ)を一個所持】

【ガロード・ラン 搭乗機体:ストレーガ (スーパーロボット大戦D)
 パイロット状態:全身鞭打ち・頭にたんこぶその他打ち身多数。
 機体状況:各部にダメージ(戦闘に支障無し)
 現在位置:C-8
 第一行動方針:襲われているクインシィとジョナサン(?)と合流する
 第二行動方針:勇、及びその手がかりの捜索
 最終行動方針:ティファの元に生還】

【ガウルン 搭乗機体:マスターガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
 パイロット状況:好調、DG細胞感染、気力130
 機体状況:全身に弾痕多数、頭部・左肩・胸部装甲破損、マント消失、ダメージ蓄積
        DG細胞感染、損傷自動修復中、ビームナイフとヒートアックスを装備
 現在位置:C-8
 第一行動方針:目の前のアムロを殺す
 第二行動方針:アキト、テニアを殺す
 第三行動方針:皆殺し
 最終行動方針:元の世界に戻って腑抜けたカシムを元に戻す
 備考:九龍の頭に埋め込まれたチタン板、右足義足、癌細胞はDG細胞に同化されました 】

全員の時刻 【2日目 6:36】
 ※もしも、C-8エリアに6時30分時点でいた参加者には、彼ら以外にも光刃閃の光が見えていた可能性はあります。


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