23話「情け無用のロンリーウルフ」
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「……気にいらねぇな」
コクピットのシートに深くもたれて、木戸丈太郎――ブラスター・キッドは独りごちた。
殺し合い。あの訳の分からない化け物は、確かにそう言った。
そして、見せしめにでもするかのように殺された女性。
銀河の必殺仕事人、コズモレンジャーJ9のメンバーであるキッドにとって、死は決して遠い世界のものではない。
キッド自身、幾多の悪人共をハンドガン片手に闇の中へと葬り去ってきた。
必要とあれば自分の手を血で汚すことに躊躇いは無い。事実、自分は今までそうやって生きてきた。
しかし、それとこれとは話が別だ。
悪に苦しめられる人々を救いその無念を晴らす為に、J9は今まで戦ってきたのだ。
自分の銃は、決して罪無き人の命を奪う為にあるのではない。
始末屋にだって誇りはある。いきなり殺し合えと言われて、はいそうですかと従うほど安い生き方はしていない。
それに……こんな所で殺し合いに乗っているようでは、仲間達に会わせる顔が無い。
アイザック、お町、ボウィー。いくつもの死線を共に越えてきた仲間だからこそ分かる。
あいつらが今の自分の立場でも、決して殺し合いに乗ったりはしない。
あくまでアウトローらしく、最後まで自分の信念に従うはずだ。
だからこそ、自分もここで無様な姿を見せる訳にはいかない。
「銀河に名高きJ9をこんな首輪一つで飼い馴らせると思ったら、大間違いだ」
背中に背負ったウルフのマークは、伊達ではないのだ。


身体を起こし、操縦桿を握る。
機体の操縦方法こそブライガーとは大きく異なる物だったが、キッドはすでに器用にものにしていた。
まずは他の参加者を探そう。
他人をむやみに信用できるほど平和ボケしているつもりは無いが、それでも情報を集めなくてはどうにもならない。
それに他の参加者も自分と同じように連れてこられたのなら、ゲームを快く思わない奴もいるだろう。
しかし、相手が殺しを望まない人間では無かったとしたら?
生粋の悪人ならまだいい。こちらも容赦をしてやる余地は無いからだ。
そうでは無く、ただ恐怖に駆られて襲ってくるような相手だったら?
――やりたくは無いが、そのときは覚悟を決めるしかない。
「善人を泣かすような奴らには情無用……だったな、アイザック」
どんな理由があろうと、野放しにしておいてはただいたずらに死人を増やすだけだ。
いざとなったら非情に徹するしかない。
「……ま、今はそんな事考えてたってしょうがねぇな」
一瞬浮かんだ影もどこかへ消えて、キッドの目には不敵な光が宿る。
スラスターを展開。バスターランチャーを肩に担いで、彼の乗機は走り出す。
その額に輝くドクロのマークは、天下無頼のアウトローにこそふさわしい。


「さ〜て、ちょっくらお出掛けと参りますか!」



【木戸丈太郎 搭乗機体:クロスボーンガンダムX2(機動戦士クロスボーンガンダム)
 パイロット状況:良好
 機体状況:良好。バスターランチャーを所持
 現在位置:E-6
 第一行動方針:他の参加者と接触
 第二行動方針:ゲームに乗っている奴らには情無用(場合によっては殺害も辞さない)
 最終行動方針:未決定】

【初日 12:40】


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