6話 「悪の美学」 ◆ZbL7QonnV.
「……美しい」
自らに与えられた機体を眺め、レオナルド・メディチ・ブンドルは溜息を吐いた。
彼が見据える視線の先には、優美な印象を受ける純白の機体。
兵器としての無骨な印象に程遠い、芸術品的な美しさを持つ機体があった。
その名を、サイバスター。地底世界ラ・ギアスにおいて、最強の呼び声も高い“魔装機神”の一つ。
それが、ブンドルに支給された機体であった。
「なんと……なんと、美しいのか。
サイバスター……まるで大空に羽撃く白鳥のようだ……」
胸元の薔薇を指で挟み、それを佇むサイバスターに向ける。
美を愛し、美の為に生きる。それが彼、レオナルド・メディチ・ブンドルである。
サイバスターの優美な姿は、彼の美意識を刺激するに十分過ぎるものであった。
「サイバスターよ、お前の美しさに私は誓おう。
この醜き催しを企てた無粋な主催者……あの者達に、我が美学を知らしめてくれんと……」
――悪には美学が存在する。それが、ブンドルの持論である。
ドクーガに席を置き最高幹部にまで上り詰めた彼の背景には、自らの美学に対する絶対的な信念があればこそだった。
その美学が、ブンドルに告げていたのだ。
このバトルロワイアルとやら――美しくない!
「……醜き者よ、今は驕っているが良い。だが、醜き者は滅ぶべき定めにある」
首輪の線を指でなぞり、ブンドルは小さな声で言う。
ドクーガの情報局長として、熾烈な情報戦争を勝ち抜いて来た彼である。
首輪に盗聴機能が仕組まれているだろう事には、とっくに見当が付いていた。
だからこそ、彼は言った。
この醜悪な遊戯盤を見下ろして、悦に浸っている主催者へと語り掛けたのだ。
「このレオナルド・メディチ・ブンドルが、滅びの美学を叩き込んでくれよう……」
【レオナルド・メディチ・ブンドル 搭乗機体:サイバスター(魔装機神)
パイロット状況:良好
機体状況:良好(ただしハイファミリアは使用不可能)
現在位置:A-8
第1行動方針:首輪の解除
最終行動方針:自らの美学に従い主催者を討つ】
【初日 12:20】
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