122話D「・――言葉には力を与える能がある」
◆C0vluWr0so
◇
『しかし……嘘が下手だな、あの娘は。最高のアドバンテージになりうる首輪をみすみす渡しておくということがあるはずもない。
それではあの二人は騙せても私たちの目までは誤魔化せんよ』
『同感だけど……なら兄さん、どうしてテニアを仲間にするような真似をしたんだい?
どうやらあの二人は完全に丸め込まれたみたいだし……』
『あれは仲間にしたのではない。あくまで戦略上の判断だ。
私たちを含め、あの場にいた五機――同じバトルロワイアルをするのなら、二対一対一対一と三対一対一ではどちらが得なのか、ということだよ。
今回はたまたま利害が一致したからこちらも利用させてもらったがね。
現に、こちらはさしたる被害も無いまま白いガンダムは撃墜、黒いのも何処かへ撤退した』
『それは確かにそうだけど……なら、これからどうするんだい?
早めに手を打たないと、僕らも何時後ろから撃たれることになるか』
『手を打つといっても甲児と比瑪の前でどうこうすることは難しいだろう。私たちの信頼にも関わってくる。
だが、あの二人が見ていないところならどうなる? こんな状況だ――少し離れている間に誰かに襲われてしまう、というのは珍しくないだろうな。
二手に別れて行動していたのならなおさらだ。なに、協力者探索の効率化とでもうそぶけば問題は無い』
『その時に――ということだね? なら兄さん、その役は僕がやるよ』
『頼むぞオルバ。その間に、私はナデシコで首輪について調べるつもりだ。丁度、サンプルも余計に手に入ったからな』
『兄さん、首輪解析なんて出来るの――って、確かにあの二人には任せられないね』
『そういうことだ。その前に、休息の時間も必要だな。行動開始は放送後にしよう。それまでは束の間の休息を楽しもうではないか』
『了解。それからもう一つだけ。……あの戦艦、あのまま放っておいてよかったの?』
『Jアーク、とテニアは言っていたか……。心配ないだろう』
『どうしてそう言えるんだい?』
『さすがだな、抜け目がない男だよ、アレは。……電池になっているのか、これは。小脇に挟んでいたのはこれだったのだな。
――ん、オルバ。その質問についてだが……それは私だけのヒ・ミ・ツ☆だ』
『――分かったよ、兄さん……』
◆
市街地から離れたJアークは、進路を北にとり、移動を続けていた。
大規模な戦闘の結果、Jアークの各部には多くの損傷が残り、消耗も激しい。
五人いた仲間も――今はキラとソシエの二人だけだ。
いや、もう少しアバウトに考えれば――彼は参加者ではないが――あと一人いる、と言えないこともないだろう。
『――それで良かったのか? ソシエ』
Jアークに備え付けられた超AI、トモロがいる。
彼の判断と戦闘補助が無ければ、今頃Jアークは轟沈していてもおかしくない。
けれど、そんな彼の問いかけに、ソシエは少し、いやかなり不機嫌な感じでぶっきらぼうに答える。
ちなみに、ソシエの放った頭部への一撃は、未だキラを目覚めさせないほどの威力はあった、と言っておこう。
「何が?」
『先ほどの撤退のことだ』
「――良いわけ、ないじゃない」
「でも、生きるためにはやらなくちゃいけないことってあるのよ。
ミリシャだって、好きで戦争してる人たちばかりじゃなかったわ。
辛い思いしてまで故郷の人と戦ってるバカもいた。
……うん、あたし何が言いたいのかしら。とにかく……あたしも、辛いってことよ。
……まったく、キラったら気持ちよさそうに寝ちゃって。って、これ――」
物憂げに話しながら――ソシエはふとキラの顔を眺める。
キラは泣いていた。とても静かに、けれど大粒の涙をこぼしながら。
「泣いてるの?」
『キラの知人の名が呼ばれた。第一放送のことだ』
「なんていうか――辛いわね」
『そうだな』
「ああ、私もそう思うよ」
「……って、誰よ貴方!?」
「通信回線を開いたままでプライベートな会話とはいただけないね、ソシエ嬢。
だが今の会話で確信したよ。――君たちは、交渉に値する人物だ」
Jアークのモニターに青年の顔が映る。
黒髪を短く整え、黒のスーツに身を包んだその風貌を、ソシエは見たことがある。
「もしかして貴方……一番はじめにあの化け物に喧嘩売ってた人!?」
「喧嘩では無いさ。ネゴシエイトだ。
私の名はロジャー・スミス。これでもネゴシエイターをやっている。
改めて、君たちに交渉を申し込もう」
【キラ・ヤマト 搭乗機体:Jアーク(勇者王ガオガイガー)
パイロット状態:気絶中・ジョナサンへの不信
機体状態:ジェイダーへの変形は可能?各部に損傷多数、EN・弾薬共に30%
反応弾を所持。
現在位置:D-6上空
第一行動方針:?
第二行動方針:仲間の無事の確認
第三行動方針:このゲームに乗っていない人たちを集める
最終行動方針:ノイ=レジセイアの撃破、そして脱出】
備考:Jアークは補給ポイントでの補給不可、毎時当たり若干回復。】
【ソシエ・ハイム 搭乗機体:無し
パイロット状況:右足を骨折、気力回復
機体状況:無し
現在位置:D-6上空
第一行動方針:ロジャーと交渉?
第二行動方針:新しい機体が欲しい
第三行動方針:仲間を集める
最終行動方針:主催者を倒す
備考:右足は応急手当済み】
【ロジャー・スミス 搭乗機体:騎士凰牙(GEAR戦士電童)
パイロット状態:肋骨数か所骨折、全身に打撲多数
機体状態:左腕喪失、右の角喪失、右足にダメージ(タービン回転不可能)
側面モニターにヒビ、EN70%
現在位置:D-6(Jアーク甲板)
第一行動方針:Jアークと交渉
第二行動方針:ゲームに乗っていない参加者を集める
第三行動方針:首輪解除に対して動き始める
第四行動方針:ノイ・レジセイアの情報を集める
最終行動方針:依頼の遂行(ネゴシエイトに値しない相手は拳で解決、でも出来る限りは平和的に交渉)
備考1:凰牙は通常の補給ポイントではEN回復不可能。EN回復はヴァルハラのハイパーデンドーデンチでのみ可能
備考2:念のためハイパーデンドー電池四本(補給二回分)携帯
備考3:ワイヤーフック内臓の腕時計型通信機を所持】
【ガウルン 搭乗機体:マスターガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
パイロット状況:疲労小、DG細胞感染、気力135
機体状況:全身に弾痕多数、頭部・左肩・胸部装甲破損、マント消失、ダメージ蓄積
DG細胞感染、損傷自動修復中、ビームナイフとヒートアックスを装備
現在位置:?
第一行動方針:近くにいる参加者を殺す
第二行動方針:アキト、テニアを殺す
第三行動方針:皆殺し
第四行動方針:できればクルツの首を取りたい
最終行動方針:元の世界に戻って腑抜けたカシムを元に戻す
備考:九龍の頭に埋め込まれたチタン板、右足義足、癌細胞はDG細胞に同化されました 】
【シャギア・フロスト 搭乗機体:ヴァイクラン(第三次スーパーロボット大戦α)
パイロット状態:良好、テニアを警戒
機体状態:EN60%、各部に損傷
現在位置:D-7市街地
第一行動方針:休息
第二行動方針:首輪の解析を試みる
第三行動方針:比瑪と甲児を利用し、使える人材を集める
第四行動方針:意に沿わぬ人間は排除
第五行動方針:首輪の解析
最終行動方針:オルバと共に生き延びる(自分たち以外はどうなろうと知った事ではない)
備考1:ガドル・ヴァイクランに合体可能(かなりノリノリ)、自分たちの交信能力は隠している。
備考2:首輪を所持】
【オルバ・フロスト搭乗機体:ディバリウム(第三次スーパーロボット大戦α)
パイロット状態:良好、テニアを警戒
機体状態:EN60%、各部に損傷
現在位置:D-7市街地
第一行動方針:休息
第二行動方針:テニアと共にナデシコと別行動をし、テニアを殺害
第三行動方針:比瑪と甲児を利用し、使える人材を集める
第四行動方針:意に沿わぬ人間は排除
第五行動方針:首輪の解析
最終行動指針:シャギアと共に 生き延びる(自分たち以外はどうなろうと知った事ではない)
備考:ガドルヴァイクランに合体可能(かなり恥ずかしい)、自分たちの交信能力は隠している。】
【兜甲児 搭乗機体:ナデシコ(機動戦艦ナデシコ)
パイロット状態:良好
機体状態:EN50%、相転移エンジンによりEN回復中、ミサイル20%消耗
現在位置:D-7市街地
第一行動方針:ヒメ・フロスト兄弟と同行
第二行動方針:ゲームを止めるために仲間を集める
最終行動方針:アインストたちを倒す
備考1:ナデシコの格納庫にプロトガーランドとぺガスを収容
備考2:ナデシコ甲板に旧ザクを係留】
【宇都宮比瑪 搭乗機体:ナデシコ(機動戦艦ナデシコ)
パイロット状態:良好、ナデシコの通信士
機体状態:EN50%、相転移エンジンによりEN回復中、ミサイル20%消耗
現在位置:D-7市街地
第一行動方針:テニアを慰める
第二行動方針:甲児・フロスト兄弟に同行
第三行動方針:依々子(クインシィ)を探す
最終行動方針:主催者と話し合う】
【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)
パイロット状況:非常に不安定
機体状況:左腕喪失、マニピュレーターに血が微かについている、ガンポッドを装備
現在位置:D-7市街地
第一行動方針:ナデシコの面々に取り入る
第二行動方針:どのように行動を取ればうまく周りを騙せるか考察中
第三行動方針:とりあえず甲児達についていく
第四行動方針:参加者の殺害
最終行動方針:優勝
備考1:甲児・比瑪・シャギア・オルバ、いずれ殺す気です
備考2:首輪を所持しています】
【パイロットなし 搭乗機体:ぺガス(宇宙の騎士テッカマンブレード)
パイロット状態:パイロットなし
機体状態:良好、現在ナデシコの格納庫に収容されている
現在位置:D-7市街地】
【熱気バサラ 搭乗機体 プロトガーランド(メガゾーン23)
パイロット状況:神経圧迫により発声不可、気絶中
機体状況:MS形態
落ちたショックとマシンキャノンの攻撃により、故障
現在位置:D-7市街地(ナデシコ格納庫内)
第一行動方針:新たなライブの開催地を探す
最終行動方針:自分の歌でゲームをやめさせる
備考:自分の声が出なくなったことにまだ気付いていません】
【巴武蔵 搭乗機体:RX-78ガンダム(機動戦士ガンダム)
パイロット状態:死亡
機体状況:大破
現在位置:D-7市街地】
※備考(無敵戦艦ダイ周辺)
・ハイパーデンドー電池6本(補給3回分)は無事(ロジャーが二本持っていきました)
・首輪(リリーナ)は艦橋の瓦礫に紛れています
【二日目2:30】
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