168話E「獣の時間」
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          □


「じゃあ、ブンドルさんとそのガロードってやつは味方ってことでいいんですね」
「ああ。ナデシコはどうなるかはわからないが、ガロードについては信用できる。カミーユ、お前も一度彼に会っておくべきだ」
「え? どういう意味ですか?」
「会えばわかるさ」

「ユーゼスに、アキトか。この先ぶつかることになるだろうな……それまでにナデシコと合流できればいいが」
「特にユーゼスです。あいつは何をしてくるかまったく予想できない。ゼストって機体が修復される前に排除しなければ」
「基地から西の方に逃げたってことは、南の市街地に行ったんだろうね。ロジャーって人達、大丈夫かな……?」
「あの人なら大丈夫だと思うけど……ソシエがいるから、心配だな」

「そう、やっぱりテニアは……」
「事情があったんだってことはわかる。だが、彼女はもはや説得でどうにかなる相手じゃないぞ」
「うん……そうだね。たぶんダイとの戦いのときにも、彼女は動いていたんだ。気付かなかった僕のミスだ。そのせいでマサキとムサシは……」
「マサキの死にも……テニアが関わっていたのか」
「ごめん。あのときは撤退するのが精一杯で、とてもマサキのフォローしている余裕はなかったんだ」
「キラのせいじゃない。それにしても、ガウルンか。厄介な相手ですね」
「もし奴と戦うことになったら、俺に任せろ。一度戦った経験が役立つだろうしな」
「でも、そのガンダムってギンガナムの機体と同じタイプなんでしょ? F91が強力な機体なのはわかるけど、アムロ一人じゃ危ないよ」
「いや、俺だけじゃなくブンドルもいる。彼とは早く合流したいところだが、ナデシコでガロードと合流していてくれれば心強いな」

「カミーユ。お前、たしかZガンダムを自分で設計したという話だったな。なら、協力してもらいたいことがある」
「はい、何です?」
「カミーユ、これを見て」
「……、これは。つまり、俺にやれって言いたいことって」
「そうだ。俺とキラとお前とで、『機体の整備』を行っておく。お前はキラとは違ってハード面に強い。期待しているぞ」

「ああ、そうだ。F91のビームライフル、回収したんだけどもう使えそうにないよ、どうする?」
「それなら、バルキリーのガンポッドを使えばいい。俺は一つで十分だ。キョウスケ中尉からもらったライフルもあるしな」
「わかった、じゃあ後でF91用に調整しておくよ」

「そうだ、カミーユ。今何年だったか覚えているか?」
「何年って……UC0087でしょう」
「そうか……いや、そうだったな。俺も歳かな? 物忘れがひどくてな」
「何言ってんです、アムロ大尉はまだ22かそこらのはずでしょう。しっかりして下さいよ」



「アムロさん……ちょっといいですか?」

一通り情報を整理し終えたところで強張った顔のキラが声をかけてきた。カミーユとアイビスは離れたところでシャアの話をしている。
声を潜めているということは彼らに聞かれたくない話だろうか。

「どうした、キラ」
「これを見てください。VF-22Sのデータです」

データが示すものは、カミーユの乗ってきたVF-22S。それと、そのVF-22Sに搭載されているはずの反応弾――核。
だが彼からは一言も核を持っていることなど聞いていない。忌避しているとしても、一言もないのはおかしい。

「キラ……これは?」

アムロが支給されたバルキリー、VF-1Jにも反応弾は搭載されていたが使用することもないまま破壊されてしまったために忘れていた。
たった一発で数万の命を消し去るほどの、常軌を逸した火力。そして何より、シャアの命を奪った光。

「ムサシ……仲間が持って来たんです。多分テニアが友達を殺した時に、彼女の目を盗んで。一個人が持つのはあまりに危険だから、このJアークで保管してくれって」
「そう、か。そのテニアという少女に見つからなかったのは不幸中の幸いだったな」

もしテニアなる少女が反応弾を手にしていれば、このJアークも今はなかったかもしれない。
それを考えればたしかに幸いではあったが――

「これを使うときは、アムロさん。あなたが決めてください」
「……俺が?」

キラの目は真剣だ。単に重い選択をこちらに投げているという訳でもないだろう。

「核は、一人の人間が持つには大き過ぎる力です。使い方を誤れば、とても危険なものですから。でも、大きな力であることには変わりない……。
 特に、主催者――ノイ・レジセイアと戦う時には役立つかもしれません。アムロさんなら、使うべきタイミングがわかるでしょうから」
「……わかった。できることなら使いたくはないが、そうも言ってはいられないしな」

カミーユへ説明しに向かうキラに背を向け、格納庫へと歩き出す。反応弾をVF-22Sに積み込まねばならない。
シャアの死の原因たる核を自分達が扱うことになろうとは思わなかった。
アイビスとカミーユは、おそらく核を使うことを良しとしないだろう。
エゥーゴがジャブローを強襲した際、あの堅牢な基地は核によって崩壊を迎えたらしく、カミーユもその現場にいたと聞いている。
アイビスにしてみても、シャアを看取ったとき間近でその輝きを見ているはずだ。
あの威力を知っている者なら、引き金を引くことの重さは嫌というほどわかる。無理もないことだ。
しかし、もしこれを使わなければ切り抜けられないような事態になったとき、アムロに躊躇うことは許されない。
己が逡巡でキラやアイビス、カミーユの若い命が失われるなどあってはならないのだ。
あの男、シャアが自分の立場であったなら迷いはしないだろう。子どもを守るのが大人の務めというものだ――
そうだ、カミーユの時代とアムロ・シャアの時代が違っていることは彼にはまだ話さない方がいいだろう。
歴史が変わるなどの心配もあるが、カミーユの繊細な心を無駄にかき乱すこともない。

(やれやれ。ブンドル、早いところ合流してくれ。俺一人が大人役では荷が重いよ……)

友の顔を思い浮かべ、苦笑する。この苦味はしばらくのところ、続きそうだった。



【アイビス・ダグラス 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード)
 パイロット状況:精神は持ち成した模様、手の甲に引掻き傷(たいしたことはない)
 機体状況:ソードエクステンション装備。ブレンバー損壊。 EN100%
       無数の微細な傷、装甲を損耗
 現在位置:D-3
 第一行動方針:協力者を集める
 第二行動方針:基地の確保
 最終行動方針:精一杯生き抜く
 備考:長距離のバイタルジャンプは機体のEN残量が十分(全体量の約半分以上)な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べません】

【キラ・ヤマト 搭乗機体:Jアーク(勇者王ガオガイガー)
 パイロット状態:健康、ジョナサンを心配  疲労(大) 全身に打撲
 機体状態:ジェイダーへの変形は可能? 各部に損傷多数、EN・弾薬共に100%  
 現在位置:D-3
 第一行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
 第二行動方針:ナデシコ組と和解する
 第三行動方針:首輪の解析
 第四行動方針:生存者たちを集め、基地へ攻め入る
 最終行動方針:ノイ=レジセイアの撃破、そして脱出
 備考:Jアークは補給ポイントでの補給不可、毎時当たり若干回復】

【アムロ・レイ 搭乗機体:ガンダムF91( 機動戦士ガンダムF91)
 パイロット状況:健康、若干の疲労
 機体状態:EN40% ビームランチャー消失 背面装甲部にダメージ  ビームサーベル一本破損
       頭部バルカン砲・メガマシンキャノン残弾60% ビームライフル消失 ガンポッドを所持 
 現在位置:D-3
 第一行動方針:ブンドルと合流
 第二行動方針:キラに付き添い協力者を集める
 第三行動方針:首輪の解析
 第四行動方針:基地の確保
 最終行動方針:ゲームからの脱出
 備考:ボールペン(赤、黒)を上着の胸ポケットに挿している  ガウルンを危険人物として認識
    首輪(エイジ)を一個所持】

【カミーユ・ビダン 搭乗機体:VF-22S・Sボーゲル(マクロス7)
 パイロット状況:強い怒り、悲しみ。ニュータイプ能力拡大中。疲労(大)
 機体状況:オクスタン・ライフル所持 反応弾所持 EN40%   左肩の装甲破損
 現在位置:D-3
 第一行動方針:しばらくはJアークに同行する
 第二行動方針:ユーゼス、アキト、キョウスケを「撃ち貫く」
 第三行動方針:首輪の解析
 第四行動方針:遭遇すればテニアを討つ
 最終行動方針:アインストをすべて消滅させる
 備考1:キョウスケから主催者の情報を得、また彼がアインスト化したことを認識
 備考2:NT能力は原作終盤のように増大し続けている状態
 備考3:オクスタン・ライフルは本来はビルトファルケンの兵装だが、該当機が消滅したので以後の所有権はその所持機に移行。補給も可能】


【二日目 12:00】


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